『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』石井妙子/著(文藝春秋, 2021年)を読んだ記録。
ユージン・スミスとアイリーン・スミスのそれぞれの人生裏話や夫婦関係に終始しているのかと勝手に思い込んでいたが(すみません)、かれらを通して水俣病を見て、水俣病からかれらの人生を見ている。
ユージンに出会うまでのアイリーンを2代前まで遡っている。アイリーンに出会うまでのユージンも親の代まで。
水俣病に出会うまでの二人。
水俣病が起こるまでの水俣。
そこまで私が知ってしまっていいんだろうか、ということまで書かれていてちょっと抵抗も感じる。『女帝』もこういう感じだったのかな。それで売れていたのかな。読んでいないのでわからないけれども。
患者さんたちのこと、
自主交渉派の川本輝夫さん、
チッソの嶋田社長も描かれている。
映画『MINAMATA』を観て、原因企業の社長役の國村隼さんの演技に複雑さと疑問を抱いた人は、この本のチッソとのやり取りの箇所を読むと、かなり合点がいくのでは。
いちいち並べられないけれども、いやほんと、これだけの曼荼羅をよく350ページにまとめられることがすごい。二人を軸にしたから、時代もある程度絞られるからできることではあるだろうけれど。
大河ノンフィクションだから、編集がかかっているとはいえ、ある事実は提示している。
「事実に対し、あまりにも様々な要素が複合的に絡み合っている」
物事や歴史、社会ってそういうものだと思うけれど。あるいは人間そのものが。
あまりにも複雑で言葉にならん。
複雑なままに持ち続けておく強さがほしい。
あらためて写真集を読むと、また違って見えてくる。
▼次はやっぱりこれかな。
『MINAMATA NOTE 1971-2012 私とユージン・スミスと水俣』石川武志/著(千倉書房)
▼映画『MINAMATA -ミナマタ-』
_________________________________🖋
鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。
2020年12月著書(共著)を出版しました。
『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社)