2021年11月、金沢21世紀美術館より招聘いただき、映画祭「まるびぃ シネマ・パラダイス!」にて、鑑賞対話ファシリテーションのレクチャー&サポートを務めました。
シネマ・チュプキ・タバタで開催している鑑賞対話の場〈ゆるっと話そう〉の実践経験を来場者の皆様にシェアし、その場で鑑賞対話を体験していただきました。
運営メンバーが実施する鑑賞対話の場をサポートしました(事前および当日)。
以下は詳細レポートです。
まるびぃ シネマ・パラダイス!とは
まるびぃとは、その建築の形状「まるいびじゅつかん」からとられた、金沢21世紀美術館の愛称です。
「まるびぃ シネマ・パラダイス!」(通称:まるシネ)は、地元金沢の大学生を中心とする10代後半から20代半ばの、いわゆる「デジタル
自分たちで考えて、一つの場をつくり上げていく実践経験を通じて何かを学ぶ機会を、美術館や市民のサポーター、地元の映画館が応援する。美術館を起点に地域の様々な資源が育まれる場にもなっています。
上映する作品は、毎年、国立映画アーカイブの優秀映画鑑賞推進事業のラインナップから選定されています。
関連企画も開催しており、2020年はシネマ・チュプキ・
https://www.kanazawa21.jp/
過去のまるシネ一覧(金沢21世紀美術館ページ)
https://bit.ly/3BnyFz0
2021年度 vol.8 「まるびぃ シネマ・パラダイス!」
https://www.nfaj.go.jp/coo.../yusyueiga/yusyueiga2021_place/
チャールズ・チャップリンの名言「人生は近くで見れば悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」にもあるように、悲劇と喜劇は紙一重ではないか。
ご依頼経緯と内容
事前ワークショップ
ほとんどのメンバーが、イベントの主催や運営側になるのがはじめてで、ファシリテーションの経験も少ないかほとんどないとのこと。
まずは初対面の人と映画の感想を話す「場」の具体的なイメージをつけるため、1ヶ月前に〈ゆるっと話そう〉を体験してもらいました。
・メンバーの中から2人募集し、20分ずつ「感想を話す場」のファシリテーターを体験する→
・参加者から話してみた体験、ファシリテーターをやってみた経験をシェアする→
・舟之川への質問や相談を受ける
という流れで進めました。
1日目:レクチャー「映画を観て語り合う時間のススメ」
活動のきっかけ、準備の内容、参加者はどんな人、仕事が役に立った経験、感想を話すにあたっての心理的ハードルなど
2日目はいよいよ運営メンバーの進行での〈ゆるっと話そう〉です。
担当メンバーと打ち合わせを重ね、
・40分の時間配分
・冒頭に共有すること(名乗り、場の目指すもの)
・オープンに聞くか、問いを立てるか
・想定されるトピックの頭出し
・雰囲気づくりのコツ
・会話につまったときのテクニック
などについて話し合いました。
ファシリテーションはいろんな要素がありますが、現場で意識することとしてシンプルに挙げるなら、
・みんなができるだけまんべんなく話せているか、
・いろんな話題を扱えているか
の2つだと伝えました。
メイン・ファシリテーターとサブ・ファシリテーターの2人で、お互いが補完しあいながら進めてもらいました。
当日は、『吹けば飛ぶよな男だが』上映終了後、シアター内の舞台部分にサークル状に椅子を配置しました。お客さんも入り、10人ほどの場になりました。
終始和やかな雰囲気で、その場に集った人だからこそ出てきた話題で、楽しく対話が進んでいました。喜劇か悲劇か、お笑いかグロテスクか、理解できることとできないこと、時代が象徴するものなど。
やや緊張のあるメイン・ファシリを、サブ・ファシリがサポートするように動きながら、時間通りに終了しました。
私は客席で見守っていて、あらためてファシリテーションというのは、技術と経験の積み重ねなのだなと気づきました。盛り上がってくると、特定の話者とのやり取りに集中してしまって場の全体感をつくることが抜けたり、自分の感想が整理されていないと、参加者の話を聴くべきところで自分の感想を多く話してしまったりする部分もありましたので、メンバーにフィードバックしました。
しかしそれよりもなによりも、その場でその場で自分を全部使い続けている姿や、そもそも初めての難しいことにチャレンジしている姿がすばらしいと思いましたし、これからも機会があれば、ぜひ手を挙げて経験を積んでいってほしいと伝えました。
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ふりかえり
誰かと語りながら観る、語りながら創り出す場所。
何かと何か、誰かと誰か、何かと誰かが出会う場所。
いろんな単位でいろんなスケールで。
そのような場所で、8年続いてきた事業「まるびぃ・
自分を少しひらいて感想を語るって楽しい、知らない人とでもこんなに楽しめるんだ、こんな仕事をしている人もいるんだ、仕事ってつくれるんだ、など知る機会になっていたらうれしいです。
運営メンバーの皆さん、ご来場の皆さん、美術館スタッフの皆さん、サポーターさん、そしてつないでくださったシネマ・チュプキ・タバタの平塚さんにもありがとうございました。
来年度以降も、若者の挑戦の場として、さまざまな出会いの場として、映画文化を継ぐ場として、ますますの発展をお祈りしています。
▼当日開場中、来場者を迎えているところ。限られたスペースで、どう動線を作るのかなど、メンバーはオペレーションをギリギリまでブラッシュアップしていました。
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▼映写室担当メンバー。セッティングの手つきも慣れたもの。自分が20代前半に映画館の映写室で働いていた時代が重なります。思えば貴重な経験でした。今の皆さんにとっても貴重でしょうし、この先きっともっと貴重に感じる日がくるでしょうね。
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▼会場のシアター21。可動式で156席。フィルムの映写機も備えています。
▼映画作品もすべて観せてもらったのですが、これまで観たことがなかったジャンルの日本映画に、この時代、この日本を再発見しました。特に『おかしな奴』は素晴らしかった。終わってからすぐには立ち上がれないほどでした。鑑賞記録はこちらの記事。
▼記念にいただいたバッヂと特製クッキー。この毒々しさがたまりません。
▼空き時間に「フェミニズムズ」展、「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」展も鑑賞。翌月の「金沢未来展望ラジオ」にも参加。
▼夜の金沢21世紀美術館。なかなか見られない景色。
▼夜+雨。特別の叙情。
▼めまぐるしく変わる天候。一日の中で晴天、曇天、雨天を何度も繰り返す。北陸の初冬の洗礼を受けました。
▼紅葉も眩しく。市中は雪吊りの準備も整ってきて、冬の到来を感じさせました。
▼天候で来館者が変動することがありそう。1日目は夕方から雨、2日目は朝からずっとお天気でした。
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鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。
2020年12月著書(共著)を出版しました。
『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社)