ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

展示「デビュー50周年記念くらもちふさこ展 」@弥生美術館

弥生美術館で開催中の「デビュー50周年記念くらもちふさこ展 」を鑑賞した記録。

www.yayoi-yumeji-museum.jp

www.artagenda.jp

artexhibition.jp

 

私は少女漫画雑誌もコミックスも全盛期の頃に、小中高校生だったのだけれど、別マ(別冊マーガレット)はあまり通らずに来たので、実はくらもちふさこさんのことをあまり知らなかった。

1995年ごろに、大学の同じサークルの子から貸してもらって、一気読みした。

『おしゃべり階段』
『いつもポケットにショパン
『いろはにこんぺいと』
『東京のカサノバ
『A-Girl』
『Kiss+πr2 』
『チープスリル』
あたりの、ごく初期の作品しか知らなかったのだけど、展示はとても楽しめた。


幼なじみ、許嫁、年上、モデル、俳優、アイドル、カメラマン、留学、英語、ピアニスト、才能、ライバル、片想い、一人暮らし、メイク……などなど、いろんな憧れがいっぱいに詰まっていた1980〜1990年代の少女漫画。

「この50年間の活動の一環は、ツール旅と言っても過言ではありません」と直筆挨拶文に書いてらっしゃった通り、常に表現手段を追求してこられた日々が、ここにどーんと開陳されている。水彩→カラーインク→カラートーン、コピック→PCなどの画材の変遷もそうだし、画風もけっこう変わってらっしゃるのね。

くらもちさんの絵は、線が細くて繊細。そして画面構成がすごい。カッコいい。『天然コケッコー』とコピック時代、好きだな〜

近年、どんどん上手く、人間らしく、ナチュラルに表現されている感じ。

作画についての工夫や苦労も聞けるので、漫画の原画展はいい。

『東京のカサノバ』のあたりは作品やキャラクターにかなり入り込んで精神的に体調を崩してしまったと紹介されていたけれど、実際に作品もただごとではない濃度だったな。切れ味が。ゾワッとする感じ。

「あたしの手で消毒してやるんだから」ってセリフ、すごい覚えてる。

成田美名子さんも『CHIPHER』を描いてるときはめちゃくちゃ辛かったとおっしゃっていたな。魂を込めるから残るし、今読んでも響くものがあるんだろうなぁ。

大病もされてきて、そこから復帰して、描き続けてこられて。
1972年、17歳でデビューして以来、50年。
一つのことを続けて生きるって、すごいなぁ。

漫画の原画展はやっぱりいい。
私もがんばろうと思える。
手の作業をイメージしやすいからなのかな。

よかった。

 


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2020年12月著書(共著)を出版しました。
『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社