ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

〈レポート〉4/13『夢みる小学校』でゆるっと話そう w/ シネマ・チュプキ・タバタ

2022年4月13日、シネマ・チュプキ・タバタさんと、映画感想シェアの会〈ゆるっと話そう〉を開催しました。(ゆるっと話そうとは?こちら

 

第29回 ゆるっと話そう: 『夢みる小学校』

学校法人きのくに子どもの村学園が運営する、 山梨県の「南アルプス子どもの村小学校」をメインに取り上げ、生活の中で学びあう子どもたちと、かれらにかかわる大人たちのあり方を紹介しながら、 日本の学校教育の可能性を提示するドキュメンタリー映画です。
60年間にわたって総合学習を続けてきた長野県伊那市立伊那小学校や、 校則や定期テストを廃止した東京都世田谷区立桜丘中学校も取材しています。

 

▼ オフィシャルサイト

www.dreaming-school.com


▼ イベント告知ページ

chupki.jpn.org

 

フリースクール運営、スクールカウンセラー、保育園職員、教育に関心のある方、きのくに子どもの村をよく知る方、そして小学4年生と保護者の方。まるでキャスティングしたかのような顔ぶれ。

場のルール、話し方のルールを共有した後は、一つの輪になって全員で話していきました。それぞれの立場や現場で見えているものをシェアしたり、映画の印象に残る言葉や場面に触れながら思いを語りました。


ご感想(一部)

・子どもの村の卒業生はその後違う価値観に触れてどうなる?
・「校長になればいいんだよ」思いのある先生が増えてつながりができたら!
・学校が変わる未来にワクワクする
・大人がすべてを決めないのがいい
・何かをしなくてもいていい場所が必要
・みんな自分のままでいられたら
・仕事で行く学校では、大人も子どもも先生も役割を演じている
・『夢みる小学校』的な価値観を保護者が受け入れられない面も
・大人が楽しそう、大人が自由
・子どもの頃、大人とのよい出会いの記憶
・こんなに人が違うことにもっと早く気づけていたら
・「自分の意見が聞かれないといる意味がない」

今回特に面白かったのは、参加者が他の参加者へ質問をしながら進んでいく流れでした。「みなさんがどんなふうに見たのか聞きたくて」という方が多かったので、ならばとファシリテーターから「気になる方には質問してみてくださいね」と振ってみたら、「〇〇さんに聞いてみたいのですが」という質問がどんどん出てきました。

しかもそれが一人の人に偏るのではなく、満遍なく質問しあうような、網の目のような行き交いになり、場が活性化していきました。

子どもの村をよく知る方からは、日々のミーティングのこと、始めた人たちが大切にしてきた濃い価値観が受け渡されて身体化されていく過程についても、シェアしていただきました。映画と現実がつながる貴重なお話でした。

小学生の人は、この場に「自分で参加したい、他の人がどういうことを思ったか聞きたい」と言ってくれました。これもとてもうれしかったです。まさか10歳の人とこの映画について話せると思っていなかったので。「この感想シェアの場に参加した後で、また映画を見てみたい」とも言っていました。

 

皆さんのふりかえり

・いろんな人がいることをあらためて知った
・職場でもっといろんなことを話し合いたくなった
・自分の教育観の大切な部分を言葉にできた
・みんなにいる意味があるってお互いに思える社会になれば
・将来の夢の一つが校長先生になった
・子の学校の先生に映画を勧めたい

 

ファシリテーターのふりかえり

たった70分とは思えないとても濃い対話時間になりました。

映画を通じて話し合えたのは、「子どもと大人が共につくる、学びの場の可能性」ということだったかなと思います。

お一人お一人の背景もじっくりと聞いてみたいと思いつつ、やはり場の趣旨として、映画の感想を話すことから何かを発見していきたい思いがありましたので、なるべく映画に言及しながら、映画に紐づけて語るように整理しました。映画と自分の経験とを行ったりきたりしながら、漏れ出るものを少しずつ積み重ねながら進めていくことで、この顔ぶれだからこそ見えた景色があったように思います。

チュプキ代表の平塚さんが、「映画館という仕事を通じ、映画や作り手の力を借りて、もしかしたら"教育"ということをやっている面もあるのかもしれない」とおっしゃってました。私も、このような場をはじめとして、自分の仕事を通じてできていること、これからもできることがたくさんあるなとワクワクしてきました。

アンケートより(掲載許可済)

・映画を観て、「誰かと今の気持ち共有したい!」と思って、職場で「映画観て!」って勧めたりもしましたが、なかなかそこまでは行き着かず、今回、こういう場があり、色々な立場の方のお話が聞けてとても有意義な時間でした。

・映画を観て、すぐに思いを忘れないうちに語り合える場がいつかあるといいなと思います。

ドキュメンタリー映画と、ミニシアターが好きで色々な映画館へ行きましたが、とても良い映画館に巡り会えたなって思ってます。これからも通わせて?いただきます。

 

ご参加くださった皆様、ご関心をお寄せくださった皆様、チュプキさん、ありがとうございました!

〈ゆるっと話そう〉は来月も開催します。
次回は第30回。詳細が決まりましたらまたお知らせします。

 

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▼監督の舞台挨拶

 

南アルプス子どもの村の中学生の出した声明

対話を重ねて共に生き、学ぶ日常を作ってきたかれらだからこその、ほんものの言葉。ぜひ全文読んでいただけたら。

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=4973107669422269&id=255994201133663

 

▼パンフレットの表紙に書かれている言葉

"Let's make children happy first, everything follows. " (A.S.Neill, 1883-1973)

ニイルは、きのくに子どもの村学園の理事長・学園長の堀さんが影響を受けた教育者の一人。彼が創立した学校 Summerhill Schoolは現在もイギリス、サフォーク州レイストンにあります。ついでに調べていたので、ご興味ありましたら。

www.summerhillschool.co.uk


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鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。

 
共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年