ひととび〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

映画『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』鑑賞記録

ユーロスペースで映画『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』を観た記録。

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忘れられた巨人ヒルマ・アフ・クリント。
ヒルマの作品、ヒルマの生涯、現代アート界の受け止め、そして残された問い……。

ヒルマ・アフ・クリントの作品を通して、この映画が問題提起および批判しているのは、権威主義であり、父権主義であり、差別と偏見であり。

#MeTooを皮切りに始まったここ数年の「いないことにされていた者たちの権利を求める声」とも関係がある。


観た日はトークがあり、理解が深まった。
こういう映画は、専門家や識者の言葉が噛み砕きやすくしてくれる。できるだけ狙っていくべし。

 

鑑賞メモ

・独自の法則

・科学者の態度と現実を見る冷静さ、父によって授けられた、数学、天文学、航海術も土台。

・恵まれた環境

・不運では片付けられない「妨害」(今もあるある、私にもあったあった)

・美術史は誰が作る? 権威とは? 誰の恐れ? 排除の可能性、存在そのものが問いを投げかける、だれが「美術史」をつくってきたのか。正史に乗らない存在。特に女性はそうされがち。

・不遇な女性の悲劇話よりも、成果や野心や社会背景に注目する流れが女性から起こる。樋口一葉しかり、尾崎翠しかり。

・映画がはじまってすぐ、尾崎翠の『第七官界彷徨』を思い出した。この映画を観た影響。

ヒルマの言葉?「恐怖を無視するべき。己を信じる意識がないと良いことは起こらない」、映画『DUNE』を思い出す。

・「今の美術史が確立して50年」、ずっと変わらない真理のように思われていたことは、実はそうではない。たかだか50年!人類全史から見ればほんの50年!変わる可能性大。

霊性、神秘的なものはアートではないという反論があるとしたら、「カンディンスキーがよくてなぜアフ・クリントが認められないのか?」という問題提起だったと思う。そうすると自然と湧いて出てくるのは、「何がアートか?」。「アウトサイダーアートではなく美術史に加えられるべき」ということが、「アフ・クリントは正規の美術教育を受けていた」が理由だとしたら、アートとアートでないものを分ける線があるということだし、正規の美術教育を受けているものだけがアートということになる。これは差別的なことでは? 誰かにとっての区分に過ぎない? そういう意味でもControversialな存在? アートとは何かは変わっていく!

・「死後20年経ったら公開していい」の理由。ヒルマが亡くなったとき、シュタイナーは亡くなっていて、既に19年経っていた。そのことと関係あるのか?

1862年スウェーデン王立美術院に入学したとき、ヒルマは女性としては3期生にあたる。つまりその前から女性で学校で美術を学んでいた人はいた。フィンランドの女性作家をフィーチャーした西美のモダン・ウーマン展を思い出した。デンマークのスケーエン展も西美だったなそういえば。スウェーデンも女性への美術教育が早いうちから始まっていた。なぜ可能だったのか図録を読み返そう。

・男性モデルをデッサンすることは許されなかった。独自にやったヒルマ。(たしかこの頃、女性は見られる対象であり、見る主体ではなかった)

・「当時結婚していない貴族の女性が多かったから、良い教育を受けて、仕事を持ち、自立してもらう必要があった」その時代にしてはかなり進んだ考えでは。

・「神智学。女性解放の進学。女性も宗教者になれる。反権威主義的な面があった」

・「シュタイナーはヒルマの作品の写真を持っていた。何人かが彼女の絵を見て、パリに持ち込んだ可能性がある」パクリ?!ミステリー。。嫉妬はあったんじゃないかなー。

・作品を生で観たいな〜日本でも展覧会やってほしい。 グッゲンハイムのような螺旋構造を持つ館ってどこだろう。螺旋が難しくても、せめて曲線、連続を作れるといちいち空間で分断されない展示方法を望む。

・トレイラーにも出てくるけど、「女性作家を紹介してポリコレ的にOK、さあ次っていうんじゃなくて、美術史に加えてほしい」ってほんとそう。「美術学校と市場との間に何があるのか考えてほしい」もそうだし。「本当に取り組むべき問題だと思う」それに対して素直に「YES」と言えない感じがあるとしたら、それ自体をまず見つめたほうがいい。

森美術館のアナザーエナジー展も思い出したな。作り続けていくこと。あのエナジーと呼応するものがある。もちろん野心だってあるし、悔しい思いをすることもたくさんあるけど、彼女たちの作りたいものを作りたいように作るのだ、という声に励まされる。

・同時代の気になる人

ヒルマ・アフ・クリント 1862-1944(82歳)

カミーユ・クローデル 1864-1943(78歳)

尾崎翠 1896-1971(75歳)

樋口一葉 1872-1896(24歳)

ルドルフ・シュタイナー 1861-1925(64歳)

ワシリー・カンディンスキー 1866-1944(78歳)

ピエト・モンドリアン 1872-1944(71歳)

・色彩、色、構図。2万5千ページに及ぶメモ。合理的で緻密な仕事。

・湖、海、水のシーンが多く出てきて心地がよい映画。

・「絵の所蔵先を探していて、キーパーソンを見つけようとした」現実的。


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荒木夏実さん(キュレーター)×野中モモさん(翻訳者)のアフタートークのメモ

 -ヒルマと学友アンナ・カッセルとの生涯の友情。社会との繋がりが地縁、血縁のみになりがちだった女性。教育の場でできた関係によって創作活動が支えられた。教育の重要性。

 -カミーユ・クローデルも同時代。才能と性の搾取 ・今の時代、ヒルマの言葉に共感する人は多いのでは

 -ヒルマが世界をどのように見ていたのか、それは混迷を深める今の時代に必要な感性ではないか。

『社会を変えた50人の女性アーティスト』

 

 
 
 
 
 
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novellieren.com

 

 

女性と美術史に関しての参考資料

シモーヌ VOL.2 ――特集:メアリー・カサット――女性であり、画家であること』

 

『絵画の政治学』リンダ・ノックリン

 

ジェンダー分析で学ぶ 女性史入門』

 

ヒルマの作品を現代アートとして組み込むのは難しい。今の現代アートの市場システムは「どれだけ稼げるか」でできていて、ヒルマの作品はそことは相容れない」

というくだりを聞いて、映画『アートのお値段』を見ようと思っていたことを思い出した。このタイミングで見るの、良さそう。

artonedan.com

 

ヒルマの世界、なんとなくこういう世界観とも関連するのでは。

オンドマルトノ

オンド・マルトノ (Ondes Martenot) とは、フランス人電気技師モーリス・マルトノによって1928年に発明された、電気楽器および電子楽器の一種である。

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テルミン

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*追記 2022.5.7

キュレーターの藪前さんの評。

https://www.facebook.com/1280391740/posts/10219557362866254/

 

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鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。

 
共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年