4月上旬に読んだ安達茉莉子さん の新刊『毛布』。
今回もひるねこBOOKSさんで購入。安達さんが初めて個展を開いた書店で、私もそのときに訪れたので、思い入れがある。
発刊記念ペーパーをいただいた。まずはこれから読む。
「すべてを袋に入れるのよ」
安達さんがもらって今も覚えている大事な言葉のひとつ。
そうそう! 私もずっとそうしてきたんですよ! これらはぜったいぜんぶ何かになると信じて。
今もそう、これからもそう。
ペーパーの言葉に浸って、この日は終了。
何日か経ってから、なんとなく今読み始めるといいような気がして、『毛布』本体を読み始める。
ページをめくっていたら涙が止まらなくなった。
そうだ、平気な顔をして生きているけれど、私はたくさんの大切なものを失くしてきて、そしてそのことを忘れたことはないのだ。
何一つ忘れることができない。忘れられないまま、これからどうやって生きていけばいいんだろうと思っていた、その気持ちを大事な箱に入れてしまっていたのだ。
もう傷つきたくないというのが正直なところだ。
はぁ。 本という、分かち合える場所があってよかった。
これはぜひ多言語、他地域で翻訳出版されるとよい作品だと思う。もうお話が出ているかもしれないけれど。
この感覚、このエネルギーは、言語を超えて分かち合えるものだと思う。いや、むしろ積極的に分かち合いたい。同じ読者として感想を交換してみたいと思う。
この作品を必要としている人は今地球上にたくさんいると思う。
安達さんご自身のあり方としても、いろんなボーダーを超えておられるので、伝わることと思う。
不思議なことに、読んでしばらく経って気になってきたのは、ブライトンという街について、安達茉莉子さんとブレイディみかこさんとは全然違うように見えているという点だ。安達さんも『毛布』の中でそのことに触れておられた。
単身学問のために「他所」から来て一時期を過ごしている人(の過去の記憶)と、現地の人と結婚して子どもを通じて地域コミュニティとつながっている人とでは、同じ街にいても違う世界が見えていることは、それは当然あるだろう。
居住地域も違ったりするのかもしれない。そうすると同じ街でも全然違う暮らし方になる。世界ってこういうところだよな、と印象深く心に残っている。今後ブライトンという街について見聞きする機会があれば、また違う印象が重なっていくんだろう。
これからも「ふと気になってくる」箇所が出てくるだろう。あの感覚、あのエネルギーに触れたいときにいつも本棚にいてほしい。そういう本の一冊となった。
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共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年)