子が、国語の教科書におもしろい小説が載ってるよと教えてくれた。
椎名誠さんの『アイスプラネット』。
学校の宿題をきっかけに、子と感想をいろいろ話したのが楽しかった。
宿題のテーマは、「この手紙でぐうちゃんがゆうくんに伝えたかったことはなんでしょう」だった。話しながら子から出てきたこともなかなかよかった。
・ほらね、ほら話じゃなかったでしょ?
・やっぱり旅は楽しいな。
・今いる世界がすべてじゃない。世界にはひろい。自分の目でみてほしい。
・ゆうくんが一生懸命聞いてくれたから、ほんとにアイスプラネットを見る旅に出よう、自分の目で確かめようと思えたよ。
・こんな生き方もあるよ。
・みんなからは居候とかダメ人間みたいに言われてるけど、自分では自分のことを、そう思ってない。誰から何を言われても自分は自分としていればいいんだよ。
親でもない、先生でもない、こういう「斜めの関係」の大人が身近にいるのっていいよねということなども話した。そう、このお話はやっぱりそこがいいんだよなぁ。愛があって、慈しんでくれているけれども対等で、相手がただいてくれることが成長や挑戦のきっかけになるような。
友達とのLINEの会話で「ぐうちゃん」の話が出てくるのもいい。授業のあとに授業であったことをあーだこーだ話すのは、同級生のいる醍醐味。たっぷり味わってほしい。
課題になると途端に思考が固まってしまうのはわかる。
「考えを書きましょう」という設問に一人で向かうのは最初は難しいけど、こうやって友達でも親でも、誰かと感想を話し合いながら、アイディアを出しながら考えてみる経験を何回かすると、自分と相談しながら言葉にしていけるようになる。
これもミニ鑑賞対話の場と言っていい。
『アイスプラネット』について調べてみたら単行本もあるらしく、図書館で借りて読んでみた。教科書のほうが先で、単行本のほうは続きでもなく、あの物語から膨らました物語という位置づけだった。ぐうちゃんが世界を旅していろんなものを見聞きしてきたことを、悠くんにおすそわけしている。
教科書のほうは二人の関係性の変化や、悠くんの内面の成長にスポットが当たっていたが、単行本のほうはぐうちゃんの話の中身に「へええ」となるつくり。単なる土産話でもホラ話でもなく、わりと自分が当たり前だと思っていることは、一歩外に出ると当たり前ではないんだよということを、国を変え、テーマを変えて教えてくれる本。
どちらがどうと比べられないけれども、教科書のほうの中2の国語の教科書という目的を与えられた短編のほうが詰まっている願いとしては熱いような気がする。
学校に通って国語の授業を受けたら必ず通る時間、そのときに手渡される物語として何がよいかと考えて作られていると感じる。
国語の教科書に載っていて好きだった物語、初めて知って驚いた物事のことは、大人になってもけっこう覚えているものだから、子には一つでもそういうものに出会ってくれるといいなと親としては願う。
去年の西加奈子さんの『シンシュン』もよかった。
『アイスプラネット』も『シンシュン』も教科書の一番初めのページに掲載されている。しかも書き下ろし!いいなー子ども!
https://www.shiina-tabi-bungakukan.com/bungakukan/archives/14971
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共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年)