東京大学総合博物館
空間博物学という企画展を開催中で、担当した研究者による解説があるというので、その回を予約した。
博物館が所属するのは基本的に物であり、空間は保存の対象にならない。
ここで空間を模型という形で制作し、選抜または分類し、収集し、保存することを通してわかったことなどを展示している。
展示を見てアッとなった。
私が思い浮かべていたのはもっと別のことだったのだ。空間「体験」の保存について知りたかった。たぶんこのブログでひたすら書き綴っているような、体感や感触や記憶に結びつくようなもののこと。だから正直なところ、一瞬がっかりした。
3DVRももちろんあるが、私が想定しているものとはだいぶ違うのだ。
東京大学 総合研究博物館 小石川分館 アーキテクニカ
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/3dvr/koishikawa_annex.html
メタバースという手もあるかもしれない。
"参加した12歳の児童は「仮想空間『メタバース』であれば建物も残せると思う。芝居小屋としても使った建物を見られる貴重な体験だった」と話した。"
ただ、模型はもともと見るのは好きだし、有名建築の模型がユニークな切り取られ方と詰められ方をしているのはおもしろかった。建築という素材に編集をかけて集合させたような作品は初めて見る。
何より解説してくれた松本教授の、情熱や興奮を含みながらもてきぱきと要点を抑えた説明や、共に探究している学生さんたちへの尊敬の念や愛情のようなものも端々に感じられてよかった。
たぶん模型とキャプションを見ていただけでは全然わからなかっただろう。というか、松本さんの存在があって展示が完成していると言ってもいい。(私の感想)
展示や制作物の意図、20世紀の建築がそれまでと大きく変わった点、ル・コルビュジエの果たした最も大きな役割、住宅を構成する要素とは、寺社建築の特徴、模型化することの意味など50分ほどでコンパクトにたっぷりと聴けた。
メモを取りながらこれが無料で受講できるとはなんとありがたいのだ!と興奮していた。学びの機会は至るところにある。自分のために使おうと思い、その気になれば見つかる、出会える。貪欲にいこうとあらためて思った。
常設コーナーもコレクション、アーカイブということに熱のある方にはおもしろい場所だと思う。剥製や標本、土器など、なんだか怖い感じがするところもいい。呪術的な怖さや、ロマンが取り去られた後の物として淡々と分類、分析されていくような冷たさのようなもの。
学術、学問というのはそういうことか、とここでもハッとなる。
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共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年)