ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

仕入れた本を売る

西日暮里BOOK APARTMENTで本棚を借りて、自分の著作と選書した本を販売しています。
https://scramblebdg.com/book-apartment/

ここを始めた理由はいくつかあります。

イベントに出店して販売もしているのですが、常設の場所がほしいということ、町とつながっているという現実の手応えを持つこと、同じ場所を共有する人とほどよい交流をすること。それから、自分の仕事の一環である「作品選び」、つまり選書をしたい。その結果に対して、通りすがりの方々からどんな反応を得られるのか見てみたいという気持ちもあります。

現実にある場所だけど、わたしは不在というところも気に入っています。たまにお店番ができるのもよい。場のルールとしては、してもいいし、しなくてもいいので、この自由度がありがたいです。

 

せっかくなので、この機会にやってみたかったことをいろいろ試してみます。

その一つが本の仕入れです。個人なのでリスク軽めで、できる範囲で、ご縁のある作家さんの著作からはじめています。

自分が本を出版し、卸した経験から、やっぱり売り場が増えるのは作り手にとって非常に重要なことだと思います。31cm四方の小さい棚ですが、厳選されているというところで、何か価値が出るのではと思っています。出版文化、読書文化の継続という点において、本業として営まれている本屋さんとはまた違う役割が果たせるのではないかとも思ってます。

 

現在扱っているのは3点。

太田明日香『言葉の地層』(夜学舎, 2022年)

この本はわたし自身、出るのをとても楽しみにしていた本。太田さんに『仕事人脈』という雑誌でインタビューをしていただいたご縁で、この経験を本にして出版したいうお話をちらりとうかがっていました。

太田さんがパートナーに帯同して渡ったカナダでの2年間の記録。英語ができない移民の主婦として、居場所をつくるためにもがいた日々。『愛と家事』(創元社)の続編にあたる随筆です。『愛と家事』もとても驚いたというか、ありがたい読書体験でした。

yagakusha.hatenablog.com

 

人は言葉とともに生きていきます。 その厚みは人生とともに変わりゆきます。 これから私はどんな言葉の地層を積み上げ、どんな声を生み出すのでしょうか。 (本文173ページより)

自分の手で居場所をつくっていくの、あの緊張や喜びや手応え。少しずつ自信がついてくる、あの感じ。 自分の中に複数の"言葉"や文化の行き来が起こってくる、あの感じ。 今、自分の足元はどんなだっけとふりかえりたくなります。

表紙が繊細な紙なので、薄いビニールカバーをつけて販売しています。

 

続いて2冊目。

田巻秀敏『貨物船で太平洋を渡る』(2021年)

田巻さんは、2023年2月の文学フリマ広島でわたしの斜め前のブースで出店されていました。クローズぎりぎりに試し読み台でサンプルを読んで、あ、これは買わなくっちゃと思い、もう片付けが終盤の頃に、すみません、なんとか一冊だけお願いしますと無理を言って購入させていただきました。

じっくり読んでみたらやっぱりとてもよかったので、本棚を借りるときにこれも紹介したいと思い、ご本人にご連絡して仕入れをしました。

note.com

詩情あふれる写真と文体が、読み手を遠くの洋上に誘います。表紙も裏表紙も美しいのです。サンプルもありますのでぜひお手にとってご覧ください。

 

そして3冊目。

杉山由香『おうちさよなら日記』(2021年)

建築家の杉山さんが、実家にさよならとお母さんにさよならを記録した冊子。手放していくものへの深い愛に溢れています。
杉山さんは「おうちさよなら会」という、解体される家の歴史を記録に残す活動をされています。
https://www.ouchi-sayonara-kai.com/

わたしにも間もなく実家をしまうこと、親と別れることがやってくる。この避けられない人生の局面に対して準備をするような、疑似体験をするような気持ちで読みました。

出会ったのは京都のhoka booksという本屋さんで、それは前述の太田さんとお会いしたときに待ち合わせた本屋さんでした。そのときにこの本が気になって購入していたら、その後、東京に戻ってきて谷中のhagisoで展示があることを知り、すぐに足を運びました。そういうご縁のある本でもあります。

この本があるだけで交わされる話というのがとても大事なんじゃないかと思います。他にも必要としている方がいるはずだと思い、今回仕入れました。

 

こんなものも紹介します。

FIFTYS PROJECT "政治分野のジェンダー不平等、 私たちの世代で解消を"

作成のパンフレットとタブロイド紙を本棚に入れていました。2023年4月に行われた統一地方選挙に向けて、非常に切実で重要な声です。

誰に入れる? どう選ぶ? うちの地域のジェンダー格差の特徴は? それぞれの場所で一緒に考えたいなと思いました。

 

こうして棚を作ってみると、自分の仕事や作品は、他の人の仕事や作品との関わりの中で生み出されているということをしみじみ感じます。一歩踏み出すといろんな発見があります。

近隣にお住まいでないと、東京の方でもなかなか西日暮里を目指して行く用事はないかもしれませんが、山手線や千代田線に乗ったついでにフラリ途中下車してみてください。他の棚も個性的で楽しいですよ!

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西日暮里BOOK APARTMENT
水〜日 12:00-20:00
JR山手線 西日暮里駅 改札出て右へ10秒
西日暮里スクランブル1階
※クレジットカードほか電子決済OK

web https://scramblebdg.com/book-apartment/
instagram https://www.instagram.com/book_apartment_nnp/