なんとなく映画のブログが続きます。
映画ばかり観てるわけじゃないんだけどね。
こうやって書いたり話しているのは、ごく一部です。
たぶん多くの人がそうであるように、いろいろなことをやって生きています。
さて、公開を楽しみにしていた映画、ディリリ。
原題は、Dilili à Paris
予告を観て。
まずもう、美しさに感嘆!
骨太なテーマが根底にありそう。
芸術を愛する人たちに、アニメーションの発展を尊ぶ人たちに、優しい世界を願う人たち
わたしは友だちにDVDを借りた「夜のとばりの物語」が大好き。
音楽は、「ベティ・ブルー」「イングリッシュ・ペイシェント」「たかが世界の終わり」のガブリエル・ヤレド。
どれも観たけれども、ガブリエル・ヤレドと言えば、ミニシアターブームを生きていた人たちにはもう忘れ難いあのビジュアル...「ベティ・ブルー」でしょう!
...などなどの期待モリモリで、恵比寿ガーデンシネマに行ってきました。
その映画の雰囲気が合うところで観るのもいいですよね。
そしてまたそれが選べちゃうって特殊環境の東京...。
直後の感想は、よかった!やっぱり劇場で観てよかった!
色の美しさに目が喜ぶ。
ディリリの声やエマの歌声、ガブリエル・ヤレドの音楽に耳が喜ぶ。
思想を美しく繊細に伝える映画だなぁと深く感じられたのは、映画館の環境の良さがあればこそ。
さて、ここからは映画の内容に詳しく触れますので、未見の方はご注意を。
メモを元に、回想しながらの感想をバラバラと。
・オープニングから美しいのだけれど、「あ、ディリリだ!」と思ったら、実はそれは公園(リュクサンブール公園かな?)の中にしつらえられた、先住民のカナック族の「コーナー」。見世物になっているところに、ギョッとする...ところからはじまる。それは期間限定の博覧会で、ディリリは業務のようなものとして演じているらしい。ちょっとえげつない。おさるのジョージがかわいいからって、黄色い帽子のおじさんがジャングルから連れてきちゃったのを知ったときの気持ちに近い。
・ディリリが出てきて、「肌の色が濃い、明るい」の話になる。
ディリリの友人になるオレルは「君は人と違うから皆を惹きつけるんだ」と。そこでもうこの映画の姿勢を示してくれる。ありがとう。
・「これはかわいい縄跳びの達人」とディリリを誘拐しようとする「男性支配団」の一味。オレルが間一髪で戻ってくるのだけれど、「あっという間で一言も口を挟めなかった」と言うところがリアル。そう、悪者は一言も口を挟めないようにまくしたてる。そういう人には注意したほうがいい、と映画を通して伝えているようにも感じた。
・マリー・キュリーが出てきて、ちょっと思い出してしまった。NHK Eテレの「フランケンシュタインの誘惑」(刺激があるので苦手な人は見ないでね)。。でもこの映画のエーヴとイレーヌは幸せそうでよかった。もちろん、真実は一つではない。
・有名人が次々に登場。知ってる人が出てくるとうれしい。「洗濯船」ってこんなところだったのかも、と具体的なビジュアルを観ると、想像がまた膨らむ。
・町外れの風車小屋に行く途中で出会う男。「パリにもこういう地区がある」とオレル。こういうというのは、貧困や女性や子どもへの暴力が当たり前にあるところ。ここには色がない。
「まずは彼のようにならないことだ」このオレルのセリフがずっと引っかかっていて、帰り道につらつら考えた。この男は、「男性支配団」のメンバーではなかったけれども、近い人生を生きている。「彼のようにならない」というのはつまり、「気づける状況、環境にあれば、美しいほう、愛のあるほうを選択する人生を歩め。勇気を持って。」というメッセージなのかなと思った。オレルの元のセリフだけ聞くと、自己責任っぽくて厳しく聞こえるのだけれど。
他の人はここ、どう解釈しただろうか?
・「平気よ」というディリリに、エマの「心の傷は積み重なっていくのよ」と言葉をかけたところが印象的だった。そう、「こんなのなんでもない」と思っていても、実は傷は積み重なっている。
・「夫の名前で小説を書いた、もう二度とやらない」。これ、きっとよくあることだったんだろうなぁ。あるいは男性の名前で発表することとか。
・「わたしもたくさん描きたいわ」とディリリ。「描け、手を止めるな」とロートレック。わたしも心の中で頷く。
・ディリリが映画の中でたくさんの人に会って、会うたびに「お会いできてうれしいです」と言うので、音楽として覚えちゃった!Je suis très heureux de vous connaître. フランス語と一瞬心通った感じ。
・「男の支配団」は鼻輪をしている?ディリリには鼻輪が見える?なにか見分ける方法がある、ということを言っているのかもしれない。
・「男の支配団」の合言葉が、「美しいパリ、腐ったパリ」。先日観た「リチャード二世」の中でも、一旦イングランドを「上げて落とす」言い回しがあった。何かそういう文化があるのか。
・四つ足のくだりはほんとうに辛くて、他のシーンが美しくて愛に満ちていなければとても観られないところだった。見た目も怖いしセリフも怖い。教育する側が女性であるところが怖い。「生き残れないよ」という呪い。
・助けられたディリリ。「恥ずかしくて死にそう」に対して、オレルの「そんなふうに思わないで」がまず救い。被害に遭った人に、周りの人が何ができるのかを見せている。
・「少女たちとわたしたちの文明を救わないと」...そう、これは文明の危機。大げさでもなんでもなくて。
・フランス人とニューカレドニア人との混血のディリリ。「両方でいたいの、ほっといてほしい」...どちらなのかを迫らないでほしいし、どちらからも疎外されるのをやめてほしい。たくさんの人の気持ちの代弁。
・「命の危険があろうが、服装は大切よ」というエマ、大好き!作業着のディリリがめちゃくちゃかわいい。
・少女たちを救出するところで、一人ひとりに素敵な名前をつけて呼ぶエマ、大好き!!もしかしたらこういうのもSisterhoodなのかもしれない。
・家族のところに帰っていく少女たちを寂しそうに見ているディリリに、「一人じゃないわ」と「抱擁」するエマ、オレル、ルブフ。これもまた家族。血縁ではない家族。「まだはじまったばかり」。
・思い出されるのは、美しい空の色ばかり。
怖かったけれど、とてもとても美しいものを見て、
ああ、美の感覚を失っちゃいけない、とあらためて思った。
美しさと共に思い出す、あの怖さのことも。
地下で暗躍しているもの、まちの外れで見聞きしたものも。
それも、よくよく知っているものだから。
ついでの話。
昔のパリにタイムトリップして、有名人がいっぱいでてくるみたいな映画、たしかあったなーと思い出したのが、
これも見逃していた一本。
冒頭の4分近く、ただただパリのまちの美しさを映している時間からはじまる。
うっとりしたところで出てきたのは、かわいいディリリと違って、めんどくさくて非社交的な冴えない男。しかも出てくる人みんな失礼で笑えてくる。
でもだんだんと、この映画が伝えてくることって、骨太だなと思えてきた。
いつの時代も人々を魅了するパリを舞台に、人生が変わっていく。決意していく。
美しく、楽しく、美味しく。
「今の時代を、自分らしく、好きな人と一緒にいて、納得して生きよう」
無理やり共通項を見出そうとすれば、そういうメッセージかも。
ヘミングウェイの言葉にも、思いがけず励まされてしまった!
未見の方はこちらもぜひ。
町山智浩さんも絶賛してますねぇ。
今後のイベント
▼2019年9月28日(土) あのころの《いじめ》と《わたし》に会いに行く読書会 満席
https://coubic.com/uminoie/979560▼2019年10月1日(火) 爽やかな集中感 競技かるた体験会
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