先日、朗読のワークショップに出た。
朗読というか、朗読劇というか、演劇というか......なんだか不思議な時間だった。
演劇を学びはじめた友人がつないでくれた場で、先生は俳優であり演出家であり、とある演劇手法の講師の方。
たぶんふつうにレッスンを受けたらもっとお高いのだと思うけれど、はじめてのオンラインでの試みということで、たいへん気軽な価格で参加することができた。
わたしは演劇を観るのも好きだけど、演るのも好きだ。
小学生のときは人形劇クラブや演劇クラブに入って、全校生徒の前で発表したり、友達と台本を書いて、演じた音をカセットテープに録って楽しんでいた。
10年ぐらい前にふと思い立ってインプロのワークショップに出たらとても楽しくて、その後プレイバックシアターや、そこから派生したワークショップにあれこれ出ていたこともある。
考えてみれば、ポッドキャストも、演劇的な要素がある。
役や設定がある中で、創作していくことが楽しいのかもしれない。
演劇という形式でしか要求されない「勇気」みたいなものがある。
普段やっていないとちょっと怖いし恥ずかしいけれど、その勇気を持って超えていくと、事態が展開していく。そういう経験をたびたびしている。
今回わたしは、コロナ禍がもたらす膠着状態からの、精神の脱出を計りたくて参加した。
他の参加者さんの演劇経験は様々で、プロとして舞台に立っている方もいれば、ほとんど経験がない方まで。
ウォーミングアップにたっぷり時間をかけて、身体の動かし方、表情の作り方、人物の造形の仕方、頭にあるイメージを身体に表出させるやり方など、先生が小さくステップをつけてくれるので、少しずつ演劇の世界に入っていける。
「やってみてどうか」「みていてどうか」の感想のやり取りをしながら進んでいくのも楽しい。
当日のメインは、「星の王子様」のXIIのパート。星の王子様が呑み助の住んでいる星に行って、少しやり取りをするところ。単行本にしても1ページちょっとぐらいの短い部分。
特定のセリフを口に出してみて、表情や意図を考えてみる。
「このシーンや言葉をわたしはこんなふうに解釈をした」と持ち寄り、見せ合い、刺激を与え合うやりとりは、とても読書会っぽい。
わたしは、呑み助の役をやらせてもらった。
この経験がまたちょっと今までにない感じだった。
星の王子様の関わりによって自分の中の呑み助に変化が起きる感じ。
また、わたしが造形して演じる呑み助を、鑑賞者がさらに豊かに造形してくれる感じ。
受け取ったものを言葉にして伝えてくれたときに、わたしの中の呑み助が喜んだり、感謝したりしている。
「こんなにダメな自分だけれど、チャーミングな部分をちゃんとわかってくれている人もいることがうれしい」という気持ちが自然にわいてきた。
これは驚いた。
また、ここにいない他者へも触手が伸びていくような感覚があった。
なぜ酒を飲むのか、なにを忘れたいのか、なにがはずかしいのか。
思考と想像を深めていくうちに、自分が日常で相入れないと思っている人たちへの、共感や理解したいという気持ちが湧いてくる。
お酒を飲むことに限らない、その人にしかわからない、抱えている何かへアクセスしようとする試み。想像の範囲だから安全だし、自由。
でもなりきってみると、自分のままでは行けなかったところまでたどり着ける。発見がある。
関わる他者も演劇の中だから安全。
演劇すごい!
他の参加者の方々の何気ないコメントに、ハッとさせられることばかりだった。
今起こっていることについて話しているのだけれど、普遍性も帯びていて、今日常で取り組んでいることがチラチラと刺激された。
終わってみて、思ったのは3つ。
・普段、演劇としてはやっていないけれど、別のことで積んできたものをフル活用したという感じがある。爽快感。
・優劣の評価がない場、応援や挑戦を共有できる安心な場での表現は、自分でも思わぬものが出る。思わぬものを出すことが歓迎される。
・未経験のことでも、ステップを踏めば、できていく。人間の可能性は大きい。
今後も、よきタイミングに演劇に触れていたい。
場をひらく側としても、「演劇」という選択肢を常に持っておきたい。
よい体験をありがとうございました!
▼前に書いた記事。これもたぶん演劇。
▼演劇について話した回。
▼今回教わった先生。