ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

〈読書記録〉B面の歌を聞け vol.3

『B面の歌を聞け vol.3』(夜学舎, 2023年)を読んだ記録。

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5月の文学フリマ東京で太田明日香さんにお会いしたときにご恵贈いただいた。ご自身が主宰する出版レーベル「夜学舎」から刊行された『B面の歌を聞け』の最新号。

過去号もよかったが、今回は体裁から構成から各記事の隅々まで全部がめちゃくちゃ好きで、出かけるときにはA5ファイルに入れて持ち歩き、電車の中や公園のベンチで読み、3周ぐらいしてしまった。

映画『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』をまず思い出した。
"世界は徒歩で旅する人にその姿を見せるのだ"
そういえば観たのは去年の今頃だった。岩波ホール最後の上映作品。

遠くの別の土地に暮らす人たちの営みに、文章を通じて触れられるのもいい。同じテーマの元に、ちがう人からいろいろなものが出てくるのは楽しい。でもどういうものが出てくるのかは読むまでわからないから楽しい。きっと今しか書けないであろう、その人それぞれの「感じ」が紙面に収められていて、それもうれしい。テーマが「歩く、走る」なだけに、体に響いてくるような話が多い。

最近友達と、「コロナ禍の影響があとからきてつらい」と話したことも思い出した。
結果的に良い変化につながったものであっても、表面上は変わらず続いて見えることでも、深いところでは傷ついていることがある。負の影響が今出てくる。「もっと〇〇しておけばよかった」と自分を責めるような気持ちも出てくる。それに今苛まれている。苛まれていると言うことができなくてつらい。
「でもやっぱりそれだけの大きなことだったんだよね」と言い合った。

べつに事前に戻りたいわけではない。みんな同じだよと濁しあいたいわけでもない。大丈夫と言ってほしいわけでもない。いや、なんかそうじゃなくて……というモゴモゴとしか音にならない何かをずっと抱えている。そんな中でこの雑誌を読めたことはとてもよかった。

自分の足で歩いて綴る。それならできるのでは。

続いている刊行物っていい。発行者にとって無理のない発行ペースと、それでいてちゃんと刊行時期や内容の予告があって、楽しみにしている人がいて。たった32頁なのにこんなに満足できるってすごい。それを作るってすごい。

これもまた「場」。

現実の生の手応え。


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2023年6月中は送料無料とのこと。

yagakusha.hatenablog.com

 

おまけ。映画『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』鑑賞記録

hitotobi.hatenadiary.jp