ひととび〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

本『タゴール・ソングス』読書記録

佐々木美佳著『タゴール・ソングス』を読んだ記録。

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映画『タゴール・ソングス』は、公開されてかなり早いうちに観た。

2020年の6月、ちょうど今頃だ。

梅雨独特の気温はそこまで高くないが湿気があって、ベタベタと空気が肌にまとわりつく気候が続く。やたらとインドやベトナムの料理が食べたくなる。この時期が終われば、それはそれで半端なく暑い夏が待っているので、どっちがいいかと言われるとよくわからん……そういう時期。

さらに2020年の6月といえば、感染症が世界的に拡がっていた頃。

あのときに『タゴール・ソングス』を観てまず思ったのは、「遠くに行けた」という気持ちだった。行きたくても行けない、移動が心理的に制限されている中で、遠くの全然違う言語、音楽、食べ物、人々の営みに触れられたのはうれしかった。

自分の触れる世界がとても小さくなってしまったように感じていたけれど、そうだった、世界は広いのだった、と思い出せた。ありがたい映画だった。

 

この本は監督の佐々木美佳さんが、取材のために訪れたインドとバングラデシュにまたがるベンガルの土地と、人と、タゴールの詩について綴った文学作品だ。

映画本編に出てきたタゴールソングの詩も載っている。というか、もともとこの本はタゴールの詩を紹介するという企画だったらしい。それが転がって今の形になっているけれど、タゴールの詩で貫かれていることで、散文詩のような文学の趣になっているのか。

贅沢なことに詩、詩はすべて佐々木さんが原文から翻訳したとのこと。大変な作業だったかもしれないけれど、言語を学ぶ者にとってこれ以上ない喜びでもある。うらやましい。

 

映画を観ながらも、きっとこの前後にはいろんな経緯ややり取りやハプニングがあったんだろうなと想像していたので、これが読めてうれしい。

映画では構成上、編集上、あるいは観客や被写体への影響を考えて落とさざるを得ない小さなエピソードや、監督の主観的な手触りのことも綴られている。

映画の中で「この人にもきっといろいろあるんだろうな」と思っていたことを思い出して、2年越しに、ああ、そういうことだったのかと納得する感じがある。答え合わせのような単純なことではなくて。そして今は皆さんどうしてはんのかな〜とも思う。佐々木さんが愛おしく思うあの人たちを私も作品を通じて近くに感じている。

 

読めば読むほど気になるのは、佐々木さんの努力や度胸のことだ。おそらく生来のものだと思うけれど、大学の学部で4年学んだとはいえ、ここまでの語学力を身に着けられることがすごいし、どうやって異国でここまでの思いきった行動に出られるのかも、それがどうがんばってもできない私には、ただただ憧れしかない。

 

タゴール・ソングス』佐々木美佳(三輪舎, 2022年)

 

映画『タゴール・ソングス』

tagore-songs.com

 

タゴール・ソングがYoutube動画付きで流れてくるbot。映画で出てきた歌に会えるとうれしい。

twitter.com

 

たとえばこんな。

 

youtu.be

 

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最近観た『メイド・イン・バングラデシュ』の登場人物たちも、タゴールソングを聞いたり歌ったりしながら生きてきたのかな。

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