ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

シネマ・チュプキ・タバタで音声ガイド上映を体験してみた

東京は北区・田端にある小さな映画館、

CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)で、
音声ガイド上映を体験してきた!の話です。

 

chupki.jpn.org

リンク先はあえてトップページではなく、映画館の特徴のページ。

 

ここは、目の不自由な人も、耳の不自由な人も、車椅子の方も、親子連れも、どんな人も一緒に映画を楽しめる、日本一小さくて、日本一やさしいユニバーサルシアターを目指し、2016年9月にオープンした映画館。

新作旧作取り混ぜて、選りすぐりの映画がかかっています。

 

実はわたし、恥ずかしながら、遅ればせながら、オープンしてから3年近く経って、ようやく今回訪問しました。

「沈没家族」がチュプキで上映期間中に1回、対話イベントをやらせてもらうことになり、その下見と打ち合わせが最初の訪問のきっかけをくれました。

 

わたしは「沈没家族」はもちろん好きな作品なのですが、「沈没家族」鑑賞対話ファシリテーターとして、様々な作品で鑑賞対話の場をひらいてゆきたい。

そういう仕事をしていくには、配給会社と組むこともあるだろうし、映画館と組むこともあるのではないだろうか。

と思い、いろいろな可能性に当たってみているところです。もちろん映画に限らず、というのもあるし。

 

ま、それは置いておいて。

 

 

本日の本題、バリアフリー上映の話。

 

シネマ・チュプキ・タバタでかかっている映画はすべて、日本語の映画でも日本語の字幕がつきます。

そして、目で映画が観られない(主に耳で映画を観る)人のために、音声ガイドがついています。

その機能を入れた状態でリリースされている映画もあれば、チュプキさんの二階のオフィスで、専門の担当者さんたちが音声ガイドをつける作業をする映画もあるそうです。

河瀬直美監督の「光」という作品の主人公の女性が、音声ガイドの仕事をしているそうなので、観てみたいです。

音声ガイドがどのようなものか、TV放送でも聞くことができます。
ちょうど台本のト書きのような、情景描写や人物の動きの説明が、元の放送の音源の間に挿入されてきます。より詳しくはこちらのページをどうぞ。

 

せっかくなので、現在上映中の「こどもしょくどう」で字幕付き上映を体験し、その後、「沈没家族」で字幕&音声ガイド付き上映を体験してみました。

ついでに言うと、前日にAmazon Primeで「万引き家族」を観てきたので、2日のうちにこの3本を観ちゃうってことが、うーん、なんか濃ゆかったです。(感想対話したい...)

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まずは字幕上映「こどもしょくどう」。
最初は少し違和感があったものの、すぐに慣れて、会話以外の音も文字で説明されるおもしろさを感じていました。
フィクションなので、ただ聞こえてくるわけではなく、演出として音を入れている。 
作っている音を入れている。それを説明する。
「虫の声」「電車が走る音」とか。ああ、それが効果なのだな、とわかる。
胸がちりちりする話なので、文字でも「なんにもしてくれなかったじゃない」など見ると、さらに感情が揺さぶられるような気がする。
 
よりたくさん生まれる感情やエネルギーが大きくなるような印象。
 
 
 
次に、字幕上映と音声ガイドで「沈没家族」。
 
画像はシネマ・チュプキ・タバタのHPからお借りしました。
左が音声ガイドのコントローラー。全席に設置されています。左右個別にボリュームが変えられる。(右は抱っこスピーカー。音を振動で感じるんだそう。これも次回試してみたい)

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音声ガイドは、とにかくおもしろい体験でした。
ひと言で言うなら、「感覚が研ぎ澄まされた!」
 
●音に対する感度が上がって、いつもよりたくさんの音が自分の中に流れ込んでくる。
 
●漫然と視界に入っているだけだったものが、音声で説明、描写されたことによって、急にピン留めされたように注意と関心が向く。そうすると次第に「よく見ようとする」ことが起きる。自然と視点や視角が増えるような感じ。
これは美術作品を鑑賞する会や、本を精読する読書会のときに起こっていることと同じ。指摘されて印象が強くなる。
 
●「ジム・モリソンのトートバッグ」とか「ジミヘンのTシャツ」とか、大事な見所をちゃんと拾っている。逆に、ええっそこ拾うんだ!という箇所も。
 
●ガイドの表現もユニーク。「いびつなおうち」「個性豊かな保育人たち」「だらしないモヒカン」など。
 
 ●自分の認識の間違いに気づいた。山くんの書き初めはずっと「中年」だと思っていたけれど、「申年」だったんだ!とか。「沈没家族」は10回も観たのに...!
 
●とても整えられた文章を美しく安定した声で読んでくださるので、読み聞かせを聞いているときのような心地よさもある。
 
●フッと聞こえてくる言葉が、画面での展開と相まって、非常に詩的だったりもしてハッとなる。
 
●本来は間合いで、味わったり咀嚼している、その隙間に、音声ガイドが入ってくるので、いつもの鑑賞より疲れる感じはあります。
もちろん疲れたらイヤホンを抜いてしまってもよかったのだけど、おもしろかったので、つい最後まで聞いてしまいました。
 
 
 
それから...ここはまだうまく表現できないのだけれど、「感覚と表現形式の掛け合わせのおもしろさ」みたいなものも感じました。
 
たとえば、似た感覚として、「テープ起こし」。
音声を聞きながら、どういう表記にしていくかを作業者が感じ取りながら、表していく。漢字なのか、カタカナ、ひらがな、ローマ字なのか。「まぁまぁ...」と表すのか、「まーまー」なのか。
また、音声で言葉を聞いているときと、テキストに起こされた文章を読んだときには、受け取っているものが違う感じとか。
 
あるいは、小説を実写化するとか、映画のノベライズとか、実写のアニメ版とか、映画のミュージカル舞台版とか、同じ作品の表現形式を少しズラすようなイメージもあります。
 
 
 
人間の感覚のそれぞれの役割はいつもすごくおもしろいと思っているのだけれど、またひらかれた感じです。
 
感度が上がる。うん。
 
 
これは、見える人も体験するとおもしろいと思う!
そして見えない人、主に音声ガイドで映画を観ている人と鑑賞体験を交換すると楽しそうです!
 

 

翻訳字幕も職人芸だと思っていましたが、この音声ガイドをつくる作業もまた非常にクリエイティブで興味深いです。
河瀬直美の「光」観てみたい。でもかなり切なそうだよね...。
 
 
 
 
 

 

ほんとうにお店、カフェのようなチュプキの外観。青いシェードが爽やか。

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本日のメニュー。

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すてき。毎回描いてらっしゃるんだなぁ。

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静かな商店街の一角。

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お向かいのお茶屋さんの抹茶ソフトクリームが美味しい。食べかけ画像ですみません!

名物は「むせ抹茶アイス」らしい。むせかえるほどの抹茶がかかっているそうです。。

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東京に20年以上住んでいますが、そういえば田端駅に降り立って、外に出たことがなかったので新鮮でした。新幹線(?)の高架と車両基地しか見えたなかったから。その向こうはどうなっているんだろうと不思議でした。

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空が広くて、夕焼けが美しかったです。

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すてきな映画館です。気になった方、ぜひ行ってみてくださいね!

そして音声ガイドもぜひ試してみて!!

 

シネマ・チュプキ・タバタ

JR山手線「田端駅」北口から徒歩5分
〒114-0013 北区東田端2-8-4 
TEL&FAX 03-6240-8480

HP: http://chupki.jpn.org/