ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

〈レポート〉2/16 オンラインでゆるっと話そう『ウルフウォーカー』w/シネマ・チュプキ・タバタ

2/16夜、シネマ・チュプキ・タバタさんと、感想シェアの場〈ゆるっと話そう〉をオンラインにてひらきました。

 

第19回 ゆるっと話そう: 『ウルフウォーカー』

アイルランドの町、キルケニーに伝わる伝説を元にしたアニメーション映画です。

2020年製作、アイルランドルクセンブルク合作

child-film.com


 

こんなご案内を出しました。

 
ふたつの異なる世界に住む少女たちの友情、自然と人間との共生、男性権威主義からの解放、自己統合と葛藤など、多様なテーマを含み、見応えがあります。
 
アクション映画のようなスピード感と躍動感にあふれ、手描きアニメーションの可能性を広げる美しい作画と共に、身体全体で楽しめる映画でもあります。
観る者の野生を目覚めさせて生きる力を与える物語は、混乱の時代にもたらされた新たな伝説とも言えそうです。
 
独特の作画にちょっと怖さを感じるかもしれません。でも、子どもの頃は自由に行き来していた「あちら側の世界」ってこんなふうだった気もします。分かりやすい可愛らしさではなく、あえてこの手法をとった制作者の意図を感じてみるのもおもしろいでしょう。
 
さて、観終わって、どんな感想を持たれたでしょうか。
上に挙げたのは、ほんの一部の見方でしかありません。観た人の数だけ注目ポイントがあります。ぜひそれをシェアしに来てください。
 
ご参加お待ちしております。
 

 

当日は満席での開催

今回も9名満席となりました。ありがとうございます。

東京、埼玉の他、石川や兵庫からもご参加がありました。(オンラインの良さ!)

・はじめての参加だけれど、皆さんの感想が聴けるのが楽しみで

・この映画が好きすぎて、数えきれないほど観ている。ツイッターで感想を探していたら、話せる場があると知って申し込んだ

・前回のゆるっと話そうがよくて、ゆるっと話そうで話したいからこの映画を観た

・昨年末に観た瞬間、一気に個人的2020年のトップ映画に躍り出た映画なので、感想を話せるのがうれしい

など、今回も様々な皆さまがご参加くださいました。

 

進め方

・メインルームで「呼ばれたいお名前」と「何県から参加」か一言ずつ紹介していただき、チェックイン。

・ゆるっと話そうで言うところの「感想」について説明、登場人物の一覧資料を共有。

ブレイクアウトルームに分かれて、少人数で感想シェア。

・その後、メインルームに戻って、「こんな話が出たよ」「この話おもしろかった」のシェアをしてもらい、「まだ話し足りないところ」を時間ギリギリまで語って

・ふりかえり「今日参加してどうだった」を話していただき、終了

という流れでした。

 

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こんな感想が出ました

お話ししたことの一部をご紹介します。

観たきっかけ

・映画の話の合う後輩から、「絶対観た方がいい!」と猛烈に勧められて観た。前知識ゼロで、トレイラーも見ずに行ったが、結果すごくよかった。

・チュプキに他の映画を観に行ったときに、前の回が『ウルフウォーカー』で、出てくるお客さんたちが皆、ニコニコしていて、熱量を感じたのが気になって、観てみようと思った。

 

印象
・すごいものを観てしまった!こんなアニメーションがあるのか!
アイルランドの映画を初めて見たが、ストーリーも表現も、すべてが新鮮。
・少女二人の友情だけでなく、社会派的な要素もある
・「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)」も自然と人間をテーマにした映画だったが、中身は全く違うと感じた。『ウルフウォーカー』を全子どもに観てほしい。
・子どもにしっかり届く映画。
・人に勧めづらいもどかしさがある。チラシの絵になると魅力が落ちる気がして。でも動き出すとすごいので、とにかく観てほしい。

表現
・まち:直線/四角/平面/固い/暗い/書き込み、森:曲線/丸/立体と奥行き/柔らかい/明るい/ラフの対比が強かったのが、物語が進行し、躍動感と共に、次第に混ざっていく様がすごかった。
・まちの人の動きはカクカクしていて、森の狼や動物はなめらか。
・シークエンス(ストーリー上のまとまり)ごとの色彩の表現の創意工夫!
・「動物好きは絶対観ろ!」というおすすめがきっかけで観に行ったが、ほんとうに動きがよかった。ロビンが狼になってメーヴと夜の森を駆けるシーンでは、涙が出た。
・森のシーンでは、3Dで一旦作ったものをプリントアウトして、それを手描きでまた起こしたと聞いた。手がかかっている!
・ロビン、人間のときにはできたことが、狼になるとできない、あの強い悔しさが同じモチーフを使って描かれているところが秀逸。
 
人物
・悪い人がいない映画。護国卿にしても残酷だし、こんな人が近くにいたら嫌だけど、信念があってやっているところは理解できる。
・父、最後の展開にちょっとびっくり。節操がないというか、優しくて人間的なのか。
・父、ちょっとは娘の言葉に耳を傾けたらどうなの?とひっぱたきたくなった!
・父、妻をなんらかの理由で亡くし寂しくて、娘まで失いたくないあまり、娘のためにとしたことが結果的に彼女を束縛してしまう。彼にとっても「自由とは何か」ということがテーマだったのでは。
・父と娘、母と娘の対比。束縛する父と、物言わぬ母。
・ロビン、マントのフードをかぶっているときは狼を狩るハンター、白いベールのときは父に従う娘、そのどちらでもなくなったときが最高にカッコよくて大好き!
 
ストーリー
・中盤からラストどうなるのか、ずっとハラハラしていた。どうなってもおかしくない
・もう少し時代が前なら、狼が悪者に描かれていて、観ているほうも「絶対狼にはなりたくない」と思ったのでは。時代が変わってきた感じ。
・噛まれて動物になる、それを忌避するという発想は、吸血鬼やゾンビを彷彿とさせる
 
チュプキで観る
・匂いが目で見えるシーン、狼になってじゃれ合うシーン、城壁から出てくるシーンなど音声ガイドで工夫している(チュプキでは、視覚障害の方のために全ての映画に音声ガイドをつけて上映している。詳しくはシアターの特徴をご覧ください。)
・音の迫力がすごい。
・モニターで観ていたときより、チュプキの劇場で観ると、いろんな音が聞こえるので楽しい
・森を走るときの、葉っぱを踏んで走る軽やかさがすごくよかった
・前半の「狼が全面的に悪!」という描き方のくだりでは、音声ガイドも怖い感じ
 
ケルト三部作
・『ウルフウォーカー』は、『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』 に続く、ケルト三部作と言われている。どちらもとても良い。
・『ウルフウォーカー』のルーツが感じられる。

Amazonプライムには吹替版、字幕版の両方があります(2021.2.16現在)
 

 

時代背景

・父娘はどうしてイギリスからアイルランドに渡ったのか?

・コミックには、護国卿のモデルは清教徒ピューリタン)革命を起こし、スコットランドを征服したクロムウェル(あるいはそのもの?)と描かれている。

・この映画は1650年の話だが、その後「1786年に最後のオオカミが殺された」と史実にある。それを踏まえてこの映画のエンディングを観ると切ない気持ちにもなる。

 

みなさんのふりかえり(参加しての感想、言い残したこと)

・みなさんが話すのを聞いていて、もしかしたらフランスの人が『もののけ姫』について感想を交わすような感じなのかな、と想像した。自分からは少し遠い文化の作品に、自分とのつながりを見つけて、あそこが好き、ここが好きと言い合っているのかもしれない。

・話したいことが山ほどある!でも最後にこれだけ。狼になったメーヴの動作や仕草がめちゃくちゃかわいい!

・最初に観たときは、ロビンもメーヴもかわいくないと思ったけれど、動いたのを観た瞬間にかわいい!と思った!

・二度目に観るといろんなことに気づいた。前作二作も観て、また観たい!

・今回はじめてこういう感想を話せる場があるのを知った。気になる作品があったらまた参加したい。

・周りで映画の感想をこんなふうに話せる人がいないので、場があってうれしい。また参加したい。

 

ファシリテーターのふりかえり

今回はとにかくこの映画が大好きでたまらない!という方の熱が場を温め、最初こそ遠慮がちだった方々も、次第に発言が重なり、つながり、最後まで話題が尽きませんでした。

今回は一つの話題を深めることはできなかったものの、「語りたい!」熱や、どんどんと着眼点が移っていった様から、この映画の多様な見方を知ることができたり、引力の大きさを体感できた時間でした。映画もすごいが皆さんもすごい。

シネマ・チュプキ・タバタという映画館について知っていただけたことや、 音声ガイド付きで映画を楽しむ方々がいると知っていただけたことも、とてもよかったです。「こういう映画館がもっと増えたらいいのに!」という声もありました。ぜひ広がりますように。

喜びとありがたさもありました。これは場に対する感謝ですね。一つの作品を観て、この映画のここが好き、あそこが好きと感想を交わし合い、愛でる場の豊かさ。幸せですね。

ゆるっと話そうは、60分という短い時間で、まずは「感想を話すのって楽しい!」を気軽に体験していただきたい、というコンセプトでひらいています。もっと話したかったのに〜!と思われる方も多いと思うのですが、話し足りない!ぐらいを目指しています。

全然話し足りなかった方は、ぜひご自身の周りでも、映画を観て語り合う、「ゆるっと話そう」の文化ができていくといいですね。(ご自分でもひらいてみたい!という方はぜひご相談ください

ご参加くださった皆さま、ご関心をお寄せくださった方、チュプキさん、ありがとうございました。

 

シネマ・チュプキ・タバタさんでは4月にアンコール上映も予定されています。近くなりましたら、ぜひスケジュールチェックしてみてください。

chupki.jpn.org

 

次回のゆるっと話そうも計画中。チュプキさんのWebFacebookTwitterでお知らせしていきますので、ぜひフォローしてくださいね。

 

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参考資料

★動画

『ウルフウォーカー』公開記念 東京アニメアワードフェスティバル2021プレイベント細田守監督 × トム・ムーア/ロス・スチュアート監督スペシャル対談

youtu.be

 

★映画製作上の参考作品

公式パンフレットの情報より

 

シリル・ペドロサ(Cyril Pedrosa)

 
 
 
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エミリー・ヒューズEmily Hughes

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★書籍

アートブック。コンセプト段階から『ウルフウォーカー』の世界に浸れる。


ファシリテーターおすすめの3冊。狼の伝説そのものについては載っていませんが、ケルト神話ケルトとは何か、アイルランドキリスト教、日本の神話との比較など、背景を学ぶことができます。

 

 

▼ゆるっと話そうは、どんな場?

hitotobi.hatenadiary.jp

 

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