ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

ひらきました!METライブビューイング「魔笛」を観てあーだこーだ語る会

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12月の話ですが(とにかく近頃レポートが遅い...) METライブビューイング魔笛」 を観てあーだこーだ語る会をひらきました。場として募集するのは、「椿姫」以来。その間に「薔薇の騎士」を観て、もうすっかりMETライブビューイングのファン。

METライブビューイングって何なの?何がそんなにいいの?という話は、ポッドキャスト「ことほぎラジオ」第11話でも話しましたので、ご興味ある方はぜひ聞いてみてください。

 

こんな告知を出しました>>

peatix.com

 

映画館で解説・字幕付きでモーツァルトのオペラ「魔笛」を観て、そのあとみんなで近くのカフェでごはんを食べながらわいわいじっくり感想を話しあう、という会です。

 

今回も参加する皆さんに予習をお願いしました。

予習するしないの好みはあると思うのですが、この会でおすすめしているのは、事前にあらすじを頭に入れつつ、3分程度のアリア6本を複数回観て(聴いて)から当日を迎えることです。どんな場面でどんな音楽が流れるかを耳に入れておくことが、特にオペラにあまり馴染みのない方にとっては鑑賞の助けになりますし、より深くたくさんのものを受け取ることができるのではないかと思うからです。

例えて言うなら、一度通った道は、道順がわかっているから足が自然に運べて、周りの景色を楽しむ余裕が出てくる、という感じでしょうか。

 

共催のゆかこさんが、今回もまた素晴らしい予習サイトを作ってくれて、わたしはこれを元にYoutubeでいろんな音源を漁りながらみっちりと予習していきました。>>

aktennotiz.jugem.jp

 

どんな場、どんな感想が出たかについては、ゆかこさんのこれまた素晴らしすぎるレポートがありますので、ぜひぜひお読みいただきたいです!

aktennotiz.jugem.jp

 

わたしの感想としてはまず、寒く体調を崩しやすい時期にもかかわらず、全員が元気に来てくださったことがまずよかったです。これは本当によかった。

そして、シルク・ドゥ・ソレイユ感あふれる舞台衣装や演出が現代的でよかった。演出家が「ライオンキング」のJ・テイモアということで、「魔笛」のファンタジックでマジカルな世界を非常によく表現していたと思います。

十数年前にドイツで買ったMichael Sowaの"Prinz Tamino"をついに原文で理解できた!うれしかった!ということもありますた。オペラで見て筋や展開が理解できているので、挿画を楽しみながらじっくりと読むことができました。音読していても楽しかったです。

美術作品で「魔笛」が題材になっているものに出会うことがたびたびあり、一度でも観てどんなオペラなのかわかっていれば、きっとより意味が理解できるし作品を味わうことができるだろうに、と思っていたので、今回METで出会えたのはよかったです。今後のいろいろな鑑賞体験によい影響がありそうです。

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そういえば今回はドイツ語版ということで、以前少しドイツ語を勉強したことがあるわたしとしては、わかるところがある!とか、そうそう、ドイツ語独特のこのグルーヴ!などが感じられうれしかったです。歌だけではなく、セリフのような箇所もたくさんあるところが、前回の「椿姫」や「薔薇の騎士」と違うところでした。

 

 

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有名なアリアやシーンは多数あったのですが、やはり印象的だったのは夜の女王のアリア。3時間半も観ていたのに、自分の中に残っている旋律はたった4分弱の「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」しかなかったのには驚愕しました。歌手の演技力も素晴らしかった。尋常ならざる音域と不穏な歌詞にもかかわらず、不思議な明るさと開放に満ちている。怒りの炎の美しさ。そもそも怒りだけなのだろうか。元は美しく可憐な女性が般若となるほどに突き落とされた深い悲しみ?彼女のどんな物語があったのだろうか、などと想像させて、歌以外にも彼女の存在はひときわ目立っていました。(なぜかメイクが「エンドレス・ポエトリー」のステラに酷似しているのも、2017年の思い出として個人的によかった!)

 

和訳では「魔笛」なのですが、原語では"Die Zauberflöte"、英語では"The Magic Flute"、つまり「魔法の笛」というファンタジーだということ。わたしがどうもシューベルト「魔王」と混同していたらしく、得体の知れないものにひたひたと襲われる怖さをイメージしていたのですが、全然違う作品として書き換えられてよかったです。

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「パパパの二重奏」でグリコのパナップのCMを思い出したという方がいらっしゃいました。あーそうそう、あったあった、ありましたね!1988年のCMです。

youtu.be

 

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オペラ自体もそうだし、このMETライブビューイングという形式が、観客が参加できる余地をたくさん作り出していてくれています。今シーズンも魅力的なラインナップが控えていますので、ぜひ足を運んでみてください。オペラのイメージが変わることでしょう!

METライブビューイング公式HP>> http://www.shochiku.co.jp/met/