日比谷図書文化館で開催の小村雪岱展に行ってきた。
「複製芸術家 小村雪岱」 | 青い日記帳 他、先に観た方々の声をSNS越しに見ていると、とても満足度高い様子。同時期に開催していた三井記念美術館の小村雪岱スタイル展と迷ったけれど、会期が先に終了するこちらを先に鑑賞することにした。
チラシや作品目録がもう豪華なんですが......!
美しい。白と黒が。フォントが、レイアウトが。
「ああ、今回の展示ってこういう美をシェアしてくださるんだな」という期待がぐわっと高まる。
わたしがここに来るまでに小村雪岱とは二度「会って」いる。
1回目は金沢の鏡花記念館。鏡花本という美しい装幀で出版されていたことを知った。
2回目は世田谷文学館の原田治「かわいい」の発見 展。金沢を訪れた後だったので、鏡花本『日本橋』が展示されていたことをよく覚えている。
展覧会で購入したエッセイ集にも小村雪岱に関する項が4つも収められている。これは個人的なエッセイというよりも、美術評論です。雪岱への愛が深い。原田さんの文章自体も美しいし、装幀もよい。函入りだけど堅苦しくなくて、赤青鉛筆みたいな、シャツみたいな気軽さ。贈り物にもいい。
本当に小村雪岱に惚れ込んでらっしゃったのだなぁとわかるお仕事が、共著で出版された小村雪岱の本。『ぼくの美術ノート』に載っている評論も収められている。これだけ網羅し、充実している雪岱に関する本は他にないのではないか。
この本についてのご本人のブログ。
さて、展覧会のほう。すべて写真OKとのことで、夢中で撮りまくってしまった。
どうしてこんなに撮っていたんだっけ。たしか図録が売り切れていたのだったかな。
・「挿絵は画家が片手間でする仕事」 と言われた時代に、挿絵家としての情熱と誇りを持って数多くの作品を生み出した人。画家、装幀家、図案家、舞台美術家としても多才ぶりを発揮。「鏡花本の人」のイメージが上書きされて、広がった。小村雪岱の愛好家が多いのも納得。
・その仕事ぶりをコレクションした監修者の真田幸治氏の推しぶり。新聞の切り抜きも同じ型、同じ体裁できれいに貼り付けられ、補完状態もよい。
真田氏の本。これはいいだろうなぁ......!とりあえず見てみたい。
・こんな細い線、一体どんな筆で描いているんだろう?版画ではなく、絵というところに驚く。
・美麗な本たち。見返しまでびっちりと美しい絵で満たされている。前の見返しと後ろの見返しで対になっていたりするのも美しい。元はもっと鮮やかだっただろう。人々のどよめきが聞こえそう。
・大きい判型の雑誌は、レイアウトも工夫を凝らしてあって、物語にニュアンスと躍動感を与えている。絵本のように楽しめる。
・余白の美しさ
・広重を彷彿とさせる雨の表現
・下絵は、例えて言うなら絵コンテ。そこから線を決めて描いてあるのがセル画。空間の使い方やカメラ位置があって、映像の人なんじゃないかと思う。これはやはり画家の仕事とは少し違う。
大量の紙ものと美麗な挿画に包まれるひととき。とても満たされた。これから小村雪岱と聞いたら、この日観たものが即時に立ち上がるんだなぁと思うと、うれしい。
ワンフロアで、一見それほど時間をかけずに観られそうにも思ったけれど、一点一点の世界に引き込まれて、あっという間に時間が経っていた。
次の関心は橋口五葉。一時期は重宝されていたけれど、時代が変わってお声がかからなくなってしまったの?ちょっと切ない感じ?(勝手に想像)。鷗外記念館に行ったときも橋口五葉の名が出ていた。気にしていたら、近々またどこかで会えそう。
きのう漱石山房記念館に行った。津田青楓展を観たくて。で、装幀の担当を橋口五葉から津田青楓に変えたということがわかって。きょうも、鏡花が橋口五葉から小村雪岱に変えたとあって。橋口さんて。。にわかにこの人が気になってきた。
— 舟之川聖子|Seiko Funanokawa (@seikofunanok) 2021年2月25日
おまけ。原田治展に行ったときに友人と録ったポッドキャスト。小村雪岱のことは何も話していないけれど、原田さんの美意識のことなど話したのでご紹介。
日比谷公園はまだ枯れ木も多かった。他の場所では梅が見頃。
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