ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

シブヤ大学×きみトリプロジェクトのコラボ授業をひらいて

先日、シブヤ大学さんときみトリプロジェクトのコラボ授業、「みつけよう!いまのわたしが踏み出せる一歩 ~きみトリプロジェクトから学ぶ、対話と場~」に講師として参加した。


▼授業詳細

www.shibuya-univ.net


▼きみトリからのレポート

note.com

 

きみトリプロジェクトは、わたしも共著者の一人である『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』の出版と普及のために立ち上げた活動で、来年3月までの予定で、この一年、集中して取り組んでいる。

本を通じてアイディアを届けることも一つ、そこからさらに、本を通じて対話の場をつくり、一人ひとりが自分の人生のために、だれかと共に生きる社会へ一歩を踏み出してもらいたいと意図している。

 

今回ご縁のあったシブヤ大学は、数年前に授業を受講したことがあるだけだったが、市民の学び場となるべく確固とした軸を持ち、活動を続けていらっしゃる様を常に目の端で追ってきた。一度、「本をテーマにした授業を作らないか?」とお話をいただいたこともあるが、いろんな事情で実現しなかった。それから4年、まさかこんな形で叶うと思っていなかったので、とてもうれしい。

 

この授業は、コーディネーターの槇さんが、ご自身の問題意識から企画してくださったのだが、「講師の先生に中身はお願いします」という形ではなく、同じく共著者のライチさんとわたしと3人で、何度もやり取りを重ねて、共につくっていけたことがうれしい。

槇さんは『きみトリ』のクラウドファンディングにサポートしてくださり、本も読み込んで読者として「良い」と感じてくださったのだが、そこからさらに「自分の関わっている現場で、自分の活動と掛け合わせて、新たな機会がつくれる。それがわたしにとっての一歩だ」と動いてくれた人。

きみトリプロジェクトは、まさにこのような現場を持って動く「人」、経験はないけれどやってみたい!と一歩踏み出してくれる「人」の働きかけで広がることを期待している。名も無き市民による活動も、このような縁がつながることで、展開していける。

 

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当日の講座は、「それぞれの想いから手の届く範囲の社会へとみなさんが一歩踏み出す」ことを目指して組み立てられ、槇さんがメインで進行しながら、ボランティアスタッフさんのきめ細かいサポートを受けながら、

・10代の感覚を掘り起こすシェア

・一歩踏み出した例を講師たちから聞く

・踏み出すときの「会話」や「場」をつくるレクチャー

・やってみたいことのシェア

と進んでいった。

 

わたしの感想としては、とにかく楽しかった。もっと皆さんとお話したかった。「人と何かをしたい」「こんな場・活動をつくりたい」と思っている人たちと一緒にいるのはやっぱりいい。幸せだ。参加者の方々の、シブヤ大学さんのつくる場への期待と意欲を感じる。

初めて会う人に聴いてもらえるのが、まずは第一歩になった方もいるかもしれない。いるといいな。

温かな関心をもって、共感して聴いてもらえる場で、まずは口にしてみる。それができる場が貴重。そのときはわからなくても、あとあと振り返ったときに、「思えばあれが」という一歩になっている。

 

実際、そのように小さくつくった場のことを紹介した。2014年〜2016年にひらいていたブッククラブ(読書会)。今思えば、「生きるためにつながる」切実で大事な一歩だった。

▼ブッククラブ白山夜

hakusan-yoru.jimdofree.com

 

授業の冒頭に、コーディネーターの槙さんからの、「目指す”べき”目標を追ったり、正しい答えを探すのではなく、自分にとってこれが大事を見つけられたら」という前提の共有が印象深い。いつでも立ち止まったり、振り返ったりして(またそれを自分に許可して)、「今の自分」を起点に見出したい。

 

そのときに、「10代の頃の自分が感じていたこと」のシェアのように、10代の自分に相談しにいくのもおすすめだ。感受性鋭い10代の頃の自分は、どういうことに関心や疑問を持っていたんだっけ?大人になった自分がそれに答えるとしたら?と問いかける。

これをテーマに友人と話してみるだけでも、大きな一歩。(会話のトリセツも参考に)

また、『きみトリ』を読むだけでも、10代の頃の感覚を思い出したという大人も多い。ぜひ手にとって、気になるテーマ一つだけでも拾い読みしてもらえたらと思う。

 

だれからも頼まれていない、ひたすらに自分たちの切実さからつくった本。

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』稲葉麻由美、高橋ライチ、舟之川聖子/著(2020年、 三恵社)

 

当日の様子を見ていると、たくさん話したい方にとっては、物足りないなかったかもしれないし、勇気を出してこの講座に来た方にとっては、前段があるからこそ話すハードルが下がったかもしれない、その両方を感じた。

いずれにしても「自分の中に話したいことがある」に気づいていただけたならうれしい。この場をきっかけとして、明確に言葉にならなくても、必ず何かは進んでいる。発見している。

そして「もっと話したかったのに!」は「自分の切実さ」なので、この衝動から「自分で場をつくってみる」「自分で旗を立ててみる」にもぜひ挑戦してみていただけたらと思う。そのときに、レクチャーでも使ったこんなイメージも活用してもらえたら。

 

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小グループの部屋では、
「所属している場はいろいろあるけれど、自分発で場をつくったことがない」
「こういうやり方でやってみているけれど、人を集めるのが難しい」
「仲間がほしい」
......など、いろんな段階のいろんな「切実さ」を聴かせてもらった。

まずはどなたにも、「今、口にしたからきっと叶いますよ!」と言いたい。

 

とはいえ、思っていたよりも、実現に向けて動いている方がいらっしゃるようだったので、ぜひこちらの連載記事を読んでいただけたらうれしい。

お寺の方向けのウェブサイトだが、どんな活動の人にも参考になるように書いている。また、感染症流行のため、「オンラインでやるとしたら」という発想の転換は必要だが、何かしらのヒントがあると思う。

 

寺子屋学:場づくりを成功させるための5つの鍵

terakoyagaku.net

 

個別のご相談もぜひご活用いただきたい。ヒアリングの上、具体的な提案、アドバイスもできる。わたし自身が場をつくる上で、「こんな相談ができる人がいたら!」と思ったことがきっかけになっている。相談に来られた方に寄り添いながら、納得のいく道を見つけられるよう、サポートしている。

▼サービスメニュー:場づくりコンサルティング

seikofunanokawa.com

 


普段の会話を対話的にするコツ(会話のトリセツ)

イベントや会の形にして、もっと会いたい人に会い、話したいことを話せる関係をつくる(場のトリセツ)

『きみトリ』を使ったこの流れのレクチャーが作れたのも、わたしにとって収穫だった。今後、他でもぜひ活用していただきたい。

note.com

 

 

(2021.6.19追記)

シブヤ大学さんからもレポートが出ました。簡潔&温かみのあるレポート。

www.shibuya-univ.net