ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

本『幽霊塔』『乱歩打明け話』読書記録

江戸川乱歩の2冊、読んだ記録。

 

 
 
 
 
 
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『乱歩打明け話』江戸川乱歩河出書房新社


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乱歩による、乱歩および平井太郎の生涯と作品を緻密に自己分析した随筆集。

日経新聞掲載の『私の履歴書』ほか、様々な媒体に書かれた短文を年代順に並べてあり、時間の流れと乱歩の遍歴が通観できる。

文庫版・江戸川乱歩コレクションというタイトルで計6冊出ているうちの1冊。いずれも絶版になっている。こんなにおもしろいのに残念だ。

 

大正から昭和(戦中、戦後)にかけての時代の様子が非常によくわかる。当時の人の職業観や風俗という点でも貴重な記録に思える。

事実を綿密に積み重ねる中で自分の性質や感情を滲ませて、人生観をテンポよく挟んでいく。ダメぶりをチャーミングに演出しているが嫌味がない。乱歩の遍歴自体が物語になりそう。

私は普段はそれほど自伝を好んでは読まないのだけれど、これは面白くてスイスイ読んでしまった。一昨年から乱歩の旧邸を見学したり、関係者から話を聞いたり、作品を読み返したりしているからもあったと思う。

 

しかしそれにしても、人は自分で自分の人生をこんなに客観的に、かつその時代を知らない人にも面白く描けるものなのだと驚く。やはり上手い人なんだろうと思う。難しい言葉を使わず、難しい言い回しをせず、とにかく読者を飽きさせずに最後まで読ませる文章を書く。大衆小説を書く人が身につけてきたスタイルなのだろう。

 

自分のルーツへの強い興味関心、
母親から黒岩涙香の探偵小説を読み聞かせしてもらったこと、
自分の内側に部屋を作ってそこで孤独のうちにたくさんの創作をしていたこと、
今もその延長にあること、
活字から夢幻世界を立ち上げることの面白さ、
活版印刷を自分でもやってみたこと、
雑誌を出したみたこと、
涙香の『幽霊塔』に出会ったときのこと、
女の子への初恋、
男の子への恋(タイトルにもなっている「乱歩打明け話」)、
活弁士になってみたいと一瞬思ったこと、
作家になるまでに二十種近い職業に就き、
池袋に定住するまで40回の引越しを経験したこと、
執筆活動の裏話、
ネーミングの由来や事情、
探偵小説やミステリー界のこと、
作家として売れるということ(出版社との関係、世間から見た自分)、
営んでいた下宿屋「緑館」のエピソード、
放浪癖、
洋服を誂えるようになった経緯、
池袋三丁目の家(一般公開している)の改修・増築と日々の暮らし、
戦争と社会の変化、
出版休止・出版界の空気と当時の心境(「隠栖を決意す」)、
隣組への参加をきっかけに人嫌いが変化したこと、
子・隆太郎の出征と復員、
福島への疎開
立教大学の話……。

 

特におもしろかったところ。

・活字に対する偏愛を描いた「活字と僕とー年少の読者に贈る」(p.67)

ここで思いがけず川端龍子が出てくる。龍子のファンの私としてはうれしい。

「結局いちばん熱愛出来たのは『日本少年』であった。その頃は挿絵の大部分が川端龍子氏の筆であって、その魅力も大きかったが(後略)」

・孤独の時間が必要だったというくだりに大変、共感する。

「私には少年時代から思索癖というようなものがあって、独りぼっちでボンヤリと考えている時間が必要だった。食事や眠りと同じように必要だった(p.149)

・戦時中の心境についての記述にはハッとするものがある。良い悪いのジャッジではなく。ただ、重い。昭和31年12月の記事。

「戦争をしている国の一員として、負けてもらいたくないと考えるの本能のようなもので、負ければ結局自分自身も不幸になるのだから、戦争をはじめた以上は、とやかく文句を云って傍観しているべきではない。舟が沈もうとしているとき、全員がそれを防ぐために働いているのに、一人だけ腕組みをして甲板に突っ立っていたら、おかしなものである。やっぱり分に応じて働くべきだと思った」(p.251「町会と翼壮」)

「国が亡びるかどうかというときに、たとえ戦争そのものには反対でも、これを押しとめる力がない以上は、やはり戦争に協力するのが国民の義務だと、今でも考えているからである」

・戦後、東京に戻ったときのエピソード。またしても一人ひとり違う立場や関心から戦後を見た思い。

「町を歩いて見ると、焼け野原の中に、おびただしい露店をひろげていて、古本屋もあり、アメリカ兵の読み捨てたポケット本なども並んでいた。驚いたことには、アメリカ兵が塹壕の中で読んでいた前線文庫の大部分が探偵小説なのである。長いあいだ西洋の探偵小説に飢えていた私は、それに飛びついて行った。そして、手に入るかぎりのものを集めて、読み耽った。こういう占領政策のもとでは、探偵小説が最も早く復活することは間違いないと思った。私の予想は的中して、翌二十一年の春頃から、探偵雑誌がぞくぞくと生まれて来た。」(p.267「疎開、敗戦、探偵小説の復興」)

 

▼タイムリーな記事

news.yahoo.co.jp

 

上記本文にあるガーディアン紙の評価ってこれのことだろうか。

www.theguardian.com

 

 

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