5月21日、新緑の候。青梅まで行く予定があり、近くにどこか寄れるところはないかなと探していたら、グーグルマップに玉堂美術館が現れた。
そういえば、去年、山種美術館で川合玉堂展を見たときに「晩年は青梅で過ごした」とあったなと思い出した。美術館があるらしいことと、行ってみたいけれどちょっと遠いからまたいつか機会があればなと思っていたことが……ここでつながる!(楽しい)
そのときの鑑賞記録。
山種美術館の没後60周年記念展の図録。たぶんまだ同館で販売していると思う。
コンパクトでよくまとまっている。今回のように、どこかで川合玉堂の作品に出会ったときに真っ先に参照する一冊として手元にあるとよい。おすすめ。
実際に来てみると、疎開がきっかけではあったが、その後もここで画業に集中したいと思った気持ちがよくわかる。
天井が高く広々とした室内には、10代の頃の練習帖から、晩年の作品、愛用の画材まで幅広く展示されている。
風景の中に働く人びとの姿も写されているのが玉堂らしさではないかと思う。人間讃歌であったり、人間を通じてあらためて知る自然の美しさや厳しさだったり。
虎の絵は山種美術館の川合玉堂展でも印象深かった。出征する男性たちやその家族に頼まれて描いたもの。あるいは面識のない人にも贈ったとか。
「虎は千里走って千里帰る」という言い伝えから。
無事の帰還を願う思いと、そうさせられる時代の流れを思う。玉堂の虎は人気があったという。
写生は日課だったとか。
何を観ていたのか、何に興味を持っていたのか、どう捉えていたのかが感じ取れるよう。
アトリエの再現。絶筆となった未完成作の複製。
窓に緑が写り込む。この時期だけの色と光。
美術館があることが、その土地を訪れるきっかけになるというのは、いいな。小さな旅もいい。
ちょうど滋賀で山元春挙展を観たところだったのもよかった。
玉堂が担当した《悠紀地方風俗屏風》、このときの悠紀は滋賀県。主基は福岡県。
でも主基のほうを生まれも育ちも滋賀県である山元春挙が担当するってちょっと不思議ではある。
それともあえての人選だったのかな。玉堂のも当然素晴らしいんやろうけど。
川合玉堂といえば、横山大観と川端龍子の仲を取り持った人として個人的にアツい。ミュージアムを巡ったり、本などで調べていると、人間関係が次々につながっていくのが楽しい。自分だけの人物相関図が出来上がっていく。
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共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年)