ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

「台北ストーリー」でエドワード・ヤンにまた会えた

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まさか観られる日が来るとは!

エドワード・ヤンホウ・シャオシェンの青春のすべてが凝縮されていて眩い。夢のように過ぎた時代。戒厳令下の台湾総督府前のシーンの奇跡。すべてのカットが、セリフが、詩的で音楽的で美しい。日本が字幕文化でよかった。

急速な成長を遂げる都市。若者たちは多くの可能性に満ちている一方で、前世代の価値観からの離脱症状に苦しんでいる。きらめくネオンサインの下には、置きざりにされた過去が同時並行で生きており、そこから目を背けることはできない。

未来を見つめているはずなのにどこにも行けない虚しさ。確固たるあてもなく連呼されるアメリカという地名。ここにはないどこかへ衝動的に脱出を試みたところで、欲しいものは何一つ手に入らない。何がほしかったんだろう。それでも、どうにも有難いことに、人生は続き、時代は移る......。

 

エドワード・ヤンの映画は、「恐怖分子」から「ヤンヤン夏の思い出」まで全て観た。観た劇場のある関西のまちの記憶とも相まっている。学生時代の友人の顔も浮かぶ。だから今回観たときも、好奇とも理解とも共感とも違う、懐かしい夜の水に身を浸すような感覚があった。

エドワード・ヤンは10年前に亡くなった。かつての盟友ホウ・シャオシェンの監修により、この4Kデジタル修復版が作られて上映され、「牯嶺街少年殺人事件」のリバイバル上映が好評を博し、DVD化もされていて、なんというか今もう、「我が永遠のエドワード・ヤン」みたいな気持ちでいっぱいである。

 

それにしても主人公の君らタバコ吸いすぎや。