ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

映画『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』を観た感想

一連の、糸のようなものを辿ってきて、前回はクリムト展まで。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

そして、その続きのような形で、映画『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』を観てきました。

 

*鑑賞行動に影響を与える内容が含まれています。ところどころネガティブな印象を受ける箇所もあるかもしれません。未見の方はご注意ください*

 

▼公式サイト

klimt.ayapro.ne.jp

 

 

美術手帖の記事

bijutsutecho.com

 

原題は、

KLIMT & SCHIELE
EROS AND PSYCHE

 

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日が経って記憶が薄れつつありますが、せっかく観たあとに友だちを話をしたこともあるし、とめどない記録として残しておこうと思います。

 

▼劇場について

久しぶりのシネスイッチ銀座で。どこから観ても、観やすくて好きな劇場です。
ネット予約ができない映画館もだんだんと珍しくなってきたけれども、シニア層にはわかりやすく利用しやすいのかもしれないな、と思う平日昼間の上映。

 

▼うーん...というところ

・まず思ったのが、NHKの「海外ドキュメンタリー」という番組の枠内で観ている、TVのドキュメンタリー番組みたいだったなぁということでした。それがいいとか悪いとかじゃないのだけれど、映画館でかかっていることの不思議さというのか。

・事前に紹介記事など読んで知っていたんだけれど、なんとなく、「映画館で観るべき映画ってこういう感じ」というバイアスが自分の中にあったんだろうか?

 

・大量の情報が間髪入れずに出されてくるのを、一生懸命体系化しようとするのだけれども追いつかず、間合いがほしかったなぁという感覚。

クリムトとシーレがどのような人物だったのか、彼らを巡る人間関係も詳しく解説していきます。今残っている印象としては、作った人は、クリムトよりもシーレを描きたかったのかな?という感じ。しかもけっこう振り切った偏り加減で、シーレの激情ぶりとか、エキセントリックさを、大げさな効果音で表現していく感じに、思わず笑っちゃったところも。

・クラシックの名曲が随所に散りばめられているので、それを鑑賞する映画ですというレビューを読んでそれも楽しみにしていたのだけれど、わりとぶつ切りにされていくので、勿体無かった。

・「吹き替え」であるという点もTVっぽいなぁと思ったのは、「こう見せたい、こんな絵に見えてほしい」という明確な意図の表れのようにも思えて、違和感。

・でもあの情報量を字幕で出されたら、ちょっと追いつかなかったかもしれないから、吹き替えというのは妥当な選択という気もする。

 

 

▼観てよかったところ

・分離派は芸術の一ムーブメントとはいえ、一人でも一つでも言い表せない、極めて多層的で多面的で複合的な面をもっていることが、情報の渦に翻弄されてみて体感できた。

・「ものがほしい、結婚したい、子をのこしたいと人々が思わなくなった時代」と冒頭のナレーション。今なぜクリムト、シーレなのかを語るとき、やはり今の時代との関連や比較が軸にある。男性と女性の関係性が激しい変化を遂げたということが、何回も起こってきたけれど、ウーマンリブMeTooに続く今のムーブメントは、あの時代にもすでに起こっていたし、予見されてもいた、ということなんだろうか。

・ウィーンに行ったことがなかったので、芸術を中心にしたルートを案内してもらった感じで楽しかった。分離派会館はもう少し写してほしかったなー。現地にめちゃくちゃ行ってみたくなりました。美術史美術館、レオポルド美術館、シェーンブルン宮殿、MAK応用美術館、ウィーン工房、マリオネット劇場...。

・日本で生まれ育っていると、第二次世界大戦のほう強く、大きな存在としてあるのだけれど、第一次世界大戦のほうだってものすごい影響を与えていた、ということを、うウィーン分離派とその周辺の展覧会を立て続けに観てきて、ようやく理解してきた。

・どの時代も前時代のイミテーションは欺瞞だといって、壊すような動き、ほんものさを求める芸術家たちの活動がある

ウィーン・モダン展クリムト展を巡ってきてのこの映画で、また新たな面が加わってよかった。(ああ、そういう面もあるのだなー、あるかもなーという感じで)

 

 

▼その他、映画の中で印象的だった箇所。とりあえずメモ。

 ・ユディトについて。女が男を殺すのが衝撃的だった。それまで女は殺される側として描かれてはいたが、殺す側としてはいなかった。ましてそこに官能的な喜びを持つなど。

 ・若い男性が自分のセクシャリティと折り合いとつけようとしている。そこに、男女ともにシーレに惹かれる理由があるのでは?

・女性にセクシャリティがあることを恐れている

 ・ブルジョワダブルスタンダードを暴いた。この構図はいつの時代も普遍的におもしろい。

 ・分離派は現在の展覧会の原型をつくった

 ・芸術家のアイディアを工房が実現。日常が総合芸術になる。(フランス人間国宝、メートル・ダールの展覧会を思い出した)

・シーレは男性の解放?クリムトは女性の解放?家族制度からの解放?

・1930年に30%の女性が経済的に自立していた(ここは確認要だが興味深い数値)

 

 

▼おわりに

考えてみれば、たったの100年前の話。

このムーブメント、人々を、ここいくつかの展覧会等を経て、非常に近くに感じられるものになったこと。

そして、自分なりに十分に関わったと思えるこの感触をもって、今後の鑑賞や知識体系のあらたな核ができたことが、今回の収穫でした。

 

 

 

そして、、一旦終わるのかな、と思いきや、

先日観てきたロイヤル・オペラ・シネマでは、クリムトの絵にインスパイアされて...と振付師の方がおっしゃっていて、ああ、やはり今の時代が求めているのだなぁ。。

 

まだまだ当分、クリムトが熱そうです。

 

 

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