ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

〈出展情報〉2023/10/28(土) 1箱本の市@稲荷湯長屋(東京都北区)

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「ひととび書籍部」で出展します!

1箱本の市@稲荷湯長屋

日時:2023年10月28日(土)12時〜18時
入場料:無料(銭湯での入浴は有料)
会場:稲荷湯長屋
東京都北区滝野川6丁目27−17
都営三田線西巣鴨駅都電荒川線新庚申塚駅からそれぞれ徒歩10分
※稲荷湯長屋は一般社団法人「せんとうとまち」が再生した、滝野川稲荷湯隣接の地域コミュニティスペースです https://sento-to-machi.org/nagaya/  Instagram @inariyu.nagaya

 

入居している棚貸し書店、西日暮里BOOK APARTMENTのメンバーが主催する一箱古本市です。ぜひ遊びにきてくださいね! お風呂に入っていくのもよしです。


〈出展情報〉2023/10/9 千石ブックメルカード(東京都文京区)

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「ひととび書籍部」で出展します!


千石ブックメルカード2023

日時:2023年10月9日(月・祝)11〜16時
会場:千石近辺の童心社福音館書店、コドモカフェ オトナバー TUMMY、巣鴨大鳥神社ほか9箇所にて。

ひととび書籍部はG会場:ユニークスキッズ前 駐車場(文京区千石4-39-10)

https://sengokubookmercado.nohon.info/

今年は「絵本」がテーマ。おすすめ絵本も並べます。
関連イベントやスタンプラリーもあり、賑やかなイベントになりそうです。

遊びにきてください〜

〈出展情報〉2023/10/7 吉祥寺ZINE FEST

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「ひととび書籍部」で出展します!

吉祥寺ZINEフェスティバル #zineフェス東京

日時:2023年10月7日(土)12〜17時
会場:武蔵野公会堂(吉祥寺駅徒歩3分)※屋内
https://www.musashino.or.jp/koukaido/1002153.html
入場料:100円 現金払い

note.com

 

こちらのフェスは初めての参加です。80〜90ブースぐらいの賑やかなイベントです。ZINE界隈では有名な方もいらっしゃるし、今回初めて参加の方も多いです。
遊びにきてくださいね!

 

販売するものラインナップ

・ZINE『「頭髪検査」廃止に立ち上がったいち保護者から見えた学校と社会のこと』
・作品集『観ること』
・ZINE『積読本をひらく読書会のレシピ』(日本語版・英語版)
・共著『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』
・『Stempel und Poesie(切手と詩)』

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hitotobilab.thebase.in

〈読書記録〉『インフルエンサーのママを告発します』

インフルエンサーのママを告発します』
ジェ・ソンウン/作、チャ・サンミ/絵、渡辺奈緒子/訳(晶文社, 2023年)
https://www.shobunsha.co.jp/?p=7641

タイトルと表紙の絵を見ればわかる。女の子が主人公で、ママがインフルエンサー。子どもが嫌がっているのに、SNSに写真をUPして「いいね」をもらうことに驚喜している。そんなママをとうとう「告発」する……。わりあいシンプルなあらすじなのだけど「告発」を決意するまでがこの本のほとんどを占めている。「嫌だ」という気持ちを相手との関係の中で伝えてもどうにもならない時期がずっと続く。これがけっこう辛い。

この本でなければ、よくネット広告で見たくないのに出てくるエグい漫画みたいになりそう。それがかわいらしい挿画と誠実な同級生の存在、インフルエンサーになる以前のママのエピソードで回避されている。ファッションのインフルエンサーという設定だが、実際に描かれている服がそれほどファッショナブルではないところもよかった。それでも親の搾取ぶりにはちょっと怖くなるところはあって、映画『ヴィオレッタ』を思い出したりした。たぶんそっちに転がるかどうかは紙一重ということなのだろう。ママの強い承認欲求は行き場をなくして別のところに向かうのだろうか。パパも一応いるが影が薄くて、夫婦関係や社会規範としてのジェンダー問題などいろいろと想像させる。

「嫌だ」という気持ちを家族の檻の外に出すことができたことによって、変わっていく主人公。信頼できる友達からもらった新しい視点、新しい言葉によって視野が広がる。奪われていた自分の感情が言葉となって出てくる。ここがとてもいい。

カバー袖にも書いてあったが、「SNSに勝手にだれかの写真をのせることはなぜいけないのか?」は、写真を撮ること、オンラインに載せることが当たり前になってきたからこそ、あらためて我が身をふりかえらないといけないことだと思う。特に大人になってからSNSという道具を手に入れて喜んで便利に使ってきた40代以上の人にとっては(わたしのことだ)、そろそろ冷静にならなくてはいけないときなのかも。どちらかというと生まれたときからスマホSNSもあるZ世代のほうが冷静に見ているのではないか。

〈読書記録〉『祖母の手帖』

祖母の手帖 ミレーナ・アグス(著/文),他 - 新潮社

祖母の手帖(原題:Mal di pietre)
ミレーナ・アグス/著, 中嶋浩郎/訳(新潮社, 2012年)絶版

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「イタリア文学」で「家族」がテーマの持ち寄り読書会で他の方が紹介されていた本。

「どういう本と言っていいのかも、自分がどこに惹かれたのかもうまく説明できないけれど、とにかく不思議な話」と言っていたのが気になった。新潮社クレストブックスは良い翻訳本を出していて好きなシリーズだし、144ページと短い。図書館で借りてパッと読んでみた。

なるほど確かに説明しづらい。説明しようとすると物語の核心に触れてしまいそうな危うさもある。登場人物の名前は示されておらず、終始「祖母、祖父、パパ、ママ、娘、息子、妻、夫」などの属柄で語られるので、誰にとっての誰なのか、話者は誰なのか、時間軸も場所も軽々と飛んでいくので、今いつの時代の話をしているのか、振り回され続ける。事実と妄想が混ざり合うような混沌とした世界。それでも全くわからないというわけではないし、辛抱強く付き合っていくと構造が見えてくるような気がするので、それを頼りに進む。そもそも人の記憶や主観ってこんなふうに曖昧かもしれないなとも思う。

祖母の物語は第二次世界大戦の戦中から戦後の時期を描いていることもあって、さまざまな差別や格差が見えてくる。当時は一つの評価が下されていたことも、現代にスライドさせてみるとまた違ったものになるのかもしれないと想像させる。サルデーニャも含むイタリアの近現代史を知っていれば、もっと理解が深いかもしれない。これはまた学びたいトピック。

この本を読んでみようと思った理由は、舞台がサルデーニャだったこともある。わたしは20歳の頃、大学生だったときにサルデーニャを友達と数日間旅行したことがある。カリアリ、オルゴーゾロ、ヌオーロ、チビタベッキアなどの地名は懐かしく、当時触れた自然環境や村々の様子などを思い浮かべながら読んだ。イタリア本土もそれほど多くの都市を巡ったわけではないので、島に渡っても「サルデーニャらしさ」というものは明確にはわからなかったが、バスで移動していたこともあって、想像していたよりもずっと大きい島であることと、地域ごとの特色があることは肌で感じた。それから、「イタリア」と聞くといつもわたしの中ではサルデーニャが思い起こされ、"決してひとくくりにはできない"という感覚が立ち上がるのは、大切な財産だと思っている。若いときにこのような旅ができたのは幸運だった。

著者はジェノバで生まれたが、両親がサルデーニャ出身とのこと。このルーツから強い影響を受けているようだ。

訳者は、同じ新潮社クレストブックスでジュンパ・ラヒリの『べつの言葉で』『わたしのいるところ』を翻訳している中嶋浩郎さん。最新刊『思い出すこと』がちょうど昨日(2023/8/23)に発売になったところ。読むのが楽しみ。

2016年にフランス、ベルギー資本で映画化もされていたらしい。日本のタイトルは『愛を綴る女』でパッとしない。概要を見るところ「官能」が全面に押し出されている宣伝になっていて(中身もそうかもしれない)非常に残念。この小説の複雑な魅力が台無し。

映画『古の王子と3つの花』鑑賞記録

ミシェル・オスロ監督のアニメーション映画『古の王子と3つの花』を観た記録。映画の日にヒューマントラストシネマ有楽町にて。

child-film.com

 

まずはひたすらきれいだった。あれだけ徹底的な美に浸り続けると、余韻がいつまでも続く。頭の中にオスロ監督映画の小部屋ができるみたいな感じ。いつでも入室してあの感じを楽しめる。

 

アズールとアスマール』または『ディリリとパリの時間旅行』に現れていたような、現代的なテーマ、特に人権について考えるようなテーマは今作ではあまり感じられなかった。それも新作という感じがしてよかった。

メッセージとしては、「人生にいろいろ理不尽なことはあるけれど、知恵を働かせ、ユーモアと想像力を発揮して、機転を効かせて苦難を乗り切り、美しい音楽と食を楽しみ、愛する人と生きることを幸せにしていこうよ」という明るいもので、ピュアな願いをぎゅうっと映画に込めたという感じ。

なにも考えず、ただ物語を楽しむひととき。そういえば最近そういう体験が少なかったなぁと思う。映画を見るにしても深く考えざるを得ない作品が多かったから。もちろんそういう映画も好きなのだけど、ただただきれいなものやおいしいものにうっとりするってこんなに気持ちがいいものなんだと思い出したというか。

小さい頃に大人からおとぎ話を読み聞かせしてもらったときの、辻褄の合わなさや飛躍にあれこれケチつけたりせず、そういう物語としてまるっと楽しんで、細部は自分で補完して勝手に想像して隅々まで楽しむような、ああいう時間も思い出したり。

お姫様に恋する王子様(異性愛)、美男美女、醜い心の人は見た目も醜いなどのおとぎ話の型自体に大きな再解釈はないけれど、なんとなく感じ取ったのは、王子様が今のZ世代っぽいというところ。正直な自分の気持ちを言葉にする、親など年長の男性との関係性を問い直す、暴力ではない形で解決する、男女の対等な関係性など。

 

映像の美しさはこれまで通り、またはそれ以上なのだけど、人物の演技や人間の声の演技もより繊細になっていた気がする。フランス語の音としての美しさもうっとりを構成する大事な要素(なんかずるい)。

エジプトのファラオの物語では、博物館や美術館で見ていた古代の遺跡や美術品に表された人物や神様が生き生きと動いていたのが楽しかった。再現ドラマでもないし、CGアニメでもない、あの「博物館にある」平面のまま動いているのがいい。

あとは揚げ菓子(フランス語でBeignet:ベニエ)やバラのゼリーが美味しそうだったなぁ! 食べたい!

 

夜のとばりの物語』ふうの設えで、語り部が3つの物語へ誘ってくれる。

感想を一通り並べてみた後に、実はこの人の素敵さににも気づく。聴衆からたくさん投げ込まれるリクエストにすべて応じて(本当に組み込まれている!)、でも無理に1つの物語にはまとめず、3つに分ける。なぜなら「そっちのほうがおもしろいから」! 

ね! と目配せするようなチャーミングさ。こういうところがオスロ監督映画の魅力。

 

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www.neol.jp

「わだつみのこえ記念館」訪問記を寄稿しました

カロクリサイクル(by NOOK)のnoteに「わだつみのこえ記念館」の訪問記を寄稿しました。

note.com

 

後日談で父との話を書きましたが、さらに後日談。父から『きけ わだつみのこえ』の本が送られてきました。

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同日午前は、東京大空襲・戦災資料センターを訪問しました。こちらは櫻井絵里さんの訪問記。

note.com

櫻井さんとは2023年3月のNOOK主催の展示〈カロクリサイクル 記録から表現をつくる〉でもご一緒しました。

www.artscouncil-tokyo.jp

頭髪検査廃止ZINEを国会図書館に納本しました

舟之川聖子著『「頭髪検査」廃止に立ち上がったいち保護者から見えた学校と社会のこと』を国会図書館に納本しました。


納本制度

納本制度」とは、図書等の出版物をその国の責任ある公的機関に納入することを発行者等に義務づける制度のことです。わが国では、国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)により、国内で発行されたすべての出版物を、国立国会図書館に納入することが義務づけられています。

納本された出版物は、現在と未来の読者のために、国民共有の文化的資産として永く保存され、日本国民の知的活動の記録として後世に継承されます。(国会図書館HPより)
https://www.ndl.go.jp/jp/collect/deposit/deposit.html

自費出版本においてはこの限りではないのですが、今そして数年後、数十年後を生きる人たちの調査研究に役立てていただきたいと思い、納本しました。

※所蔵登録に反映されるまでしばらく時間がかかります

 

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▼ZINEの詳細はこちらをご覧ください

hitotobi.hatenadiary.jp

〈増刷しました〉ZINE『「頭髪検査」廃止に立ち上がったいち保護者から見えた学校と社会のこと』

増刷しました。
当初は限定部数で刷るということに思いを込めようと考えていました。でも残部僅少となった今もこの本の持つエネルギーはまだ高い。わたしもまだまだ届けたい欲がある。いけるところまでいってみます。怖さもありますが。でも表現とはそういうことなんだろうと思います。
これまでに買って読んでくださった方々の存在が励みになっています。ありがとうございます。
書店等店舗への卸もしています。取引条件はスクロールして一番下をご覧ください。

 

ZINE『「頭髪検査」廃止に立ち上がったいち保護者から見えた学校と社会のこと』
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中学生の子を持つ筆者は、たった一人で、学校を相手に不適切な"指導"の廃止を求め立ち上がった。4ヶ月かけて廃止に持ち込んだが、手放しでは喜べなかった。学校現場で理不尽な指導や校則がなくならない、本当の理由を知ったから……。

こんなのおかしい! 変える!  声を上げる人を全力で応援するZINE


[目次]

はじめに

1章「頭髪検査」廃止行動から見えたこと
 あらすじ
 タイムライン
 要望書
 わたしについて
 一人で動いた理由
 いわゆる「内申書に響く」
 要望書のまとめ方
 「頭髪検査」の問題点
 「校則」の問題点
 想定問答集
 校則にはさわれない
 「頭髪検査」を支持する人
 怒っていい

2章 「頭髪検査」から見えた学校と社会のこと
 子ども観がおかしい
 学校の物語
 校則を欲する構造
 権力を警戒する
 保護者にできること
 当事者でなくなったときに

おわりに
参考資料

 

2023年5月20日刊行(2023年7月18日第二刷)
文・イラスト|舟之川聖子
組版|布留川真紀(ぐるり舎)
体裁|A5判, 56頁, 中綴じ
価格|¥1,300+税

商品案内ページ
https://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2023/04/29/105530

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▼お求めはこちらから▼
ネットストア
https://hitotobilab.thebase.in/

西日暮里BOOK APARTMENT 【 ひととび書籍部 】
https://scramblebdg.com/book-apartment/

他書店での取り扱いはこちらのページをご覧ください。


▼書店卸、承ります▼
買い切り/7掛/3部以上/送料当方負担/振込手数料書店負担
お問い合わせ seiko.funanokawa★gmail.com

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2023年6月23日(金)12:00〜6月25日(日)23:59
クーポンコード: base200shops

※ご注意※
・1会計ごとの割引額最大1,000円
・おひとり様1回限り有効
・送料を除く注文金額が税込1,000円以上
Apple Payおよびショップコインでは利用不可
・配布予定枚数を超えた場合、利用期限前に終了する可能性あり

割引額はBASEが負担するキャンペーンなので、気兼ねなくお買い物してください🙂

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〈出展情報〉2023/7/8-10 ふふふのZINE(新潟市)

7月8日(土)〜10日(月)に新潟市で開催される『ふふふのZINE』に作品集『観ること』で出展します。新潟の方がどんなふうに『観ること』を見てくださるのか、楽しみにしています。(残念ながら、現地には参りませんが〜出品されているほかのZINEも気になります〜)

■日時
2023年7月8日(土)-10日(月)11時-16時

■会場
美容室SUMMIT 2階フリースペース(新潟市西区内野町429-2)
※舟之川は現地にはおりません


■公式ウェブサイト

fufufunozine.themedia.jp

 

■出品するのはこちら--> 作品集『観ること』舟之川聖子

hitotobi.hatenadiary.jp

 

*追記 2023.7.10 ふふふのZINEでこんなふうにご紹介してくださってます

www.instagram.com

一点一点、そのZINEに合った展示方法を考えてくださっています。

www.instagram.com

頭髪検査廃止ZINE、西日暮里BOOK APARTMENTに入荷しています

5月20日に刊行したZINE『「頭髪検査」廃止に立ち上がったいち保護者から見えた学校と社会のこと』は、西日暮里BOOK APARTMENT内【ひととび書籍部】でもお求めいただけます。

奥にある本も販売していますので、取り出して自由にご覧ください。

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西日暮里BOOK APARTMENT
https://scramblebdg.com/book-apartment/
https://www.instagram.com/book_apartment_nnp/
水〜日 12:00-20:00
JR山手線 西日暮里駅 改札出て右へ10秒
西日暮里スクランブル1階
※クレジットカードほか電子決済OK

 

hitotobi.hatenadiary.jp

〈出店情報〉2023/6/25 たまがわBOOKフリマ

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6月25日(日)『たまがわBOOKフリマ』に[ひととび書籍部]が参加します。本仲間のまやさんと二人での出店です。

書棚からお譲りしたい本、仕入れてきたおすすめ本を並べます。
テーマは、小説、エッセイ、アート、暮らし、歴史など。
本を通じていろんな方とお話しするのを楽しみにしています。

■日時
6月24日(土)
6月25日(日)★ひととび書籍部は日曜のみ出店
11:00~17:00

■会場
玉川高島屋S・C 西館1F アレーナホール

■アクセス
東急田園都市線東急大井町線二子玉川駅」下車 西口徒歩2分

■公式ウェブサイト

www.takashimaya.co.jp

〈読書記録〉B面の歌を聞け vol.3

『B面の歌を聞け vol.3』(夜学舎, 2023年)を読んだ記録。

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5月の文学フリマ東京で太田明日香さんにお会いしたときにご恵贈いただいた。ご自身が主宰する出版レーベル「夜学舎」から刊行された『B面の歌を聞け』の最新号。

過去号もよかったが、今回は体裁から構成から各記事の隅々まで全部がめちゃくちゃ好きで、出かけるときにはA5ファイルに入れて持ち歩き、電車の中や公園のベンチで読み、3周ぐらいしてしまった。

映画『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』をまず思い出した。
"世界は徒歩で旅する人にその姿を見せるのだ"
そういえば観たのは去年の今頃だった。岩波ホール最後の上映作品。

遠くの別の土地に暮らす人たちの営みに、文章を通じて触れられるのもいい。同じテーマの元に、ちがう人からいろいろなものが出てくるのは楽しい。でもどういうものが出てくるのかは読むまでわからないから楽しい。きっと今しか書けないであろう、その人それぞれの「感じ」が紙面に収められていて、それもうれしい。テーマが「歩く、走る」なだけに、体に響いてくるような話が多い。

最近友達と、「コロナ禍の影響があとからきてつらい」と話したことも思い出した。
結果的に良い変化につながったものであっても、表面上は変わらず続いて見えることでも、深いところでは傷ついていることがある。負の影響が今出てくる。「もっと〇〇しておけばよかった」と自分を責めるような気持ちも出てくる。それに今苛まれている。苛まれていると言うことができなくてつらい。
「でもやっぱりそれだけの大きなことだったんだよね」と言い合った。

べつに事前に戻りたいわけではない。みんな同じだよと濁しあいたいわけでもない。大丈夫と言ってほしいわけでもない。いや、なんかそうじゃなくて……というモゴモゴとしか音にならない何かをずっと抱えている。そんな中でこの雑誌を読めたことはとてもよかった。

自分の足で歩いて綴る。それならできるのでは。

続いている刊行物っていい。発行者にとって無理のない発行ペースと、それでいてちゃんと刊行時期や内容の予告があって、楽しみにしている人がいて。たった32頁なのにこんなに満足できるってすごい。それを作るってすごい。

これもまた「場」。

現実の生の手応え。


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2023年6月中は送料無料とのこと。

yagakusha.hatenablog.com

 

おまけ。映画『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』鑑賞記録

hitotobi.hatenadiary.jp

 

仕入れた本を売る

西日暮里BOOK APARTMENTで本棚を借りて、自分の著作と選書した本を販売しています。
https://scramblebdg.com/book-apartment/

ここを始めた理由はいくつかあります。

イベントに出店して販売もしているのですが、常設の場所がほしいということ、町とつながっているという現実の手応えを持つこと、同じ場所を共有する人とほどよい交流をすること。それから、自分の仕事の一環である「作品選び」、つまり選書をしたい。その結果に対して、通りすがりの方々からどんな反応を得られるのか見てみたいという気持ちもあります。

現実にある場所だけど、わたしは不在というところも気に入っています。たまにお店番ができるのもよい。場のルールとしては、してもいいし、しなくてもいいので、この自由度がありがたいです。

 

せっかくなので、この機会にやってみたかったことをいろいろ試してみます。

その一つが本の仕入れです。個人なのでリスク軽めで、できる範囲で、ご縁のある作家さんの著作からはじめています。

自分が本を出版し、卸した経験から、やっぱり売り場が増えるのは作り手にとって非常に重要なことだと思います。31cm四方の小さい棚ですが、厳選されているというところで、何か価値が出るのではと思っています。出版文化、読書文化の継続という点において、本業として営まれている本屋さんとはまた違う役割が果たせるのではないかとも思ってます。

 

現在扱っているのは3点。

太田明日香『言葉の地層』(夜学舎, 2022年)

この本はわたし自身、出るのをとても楽しみにしていた本。太田さんに『仕事人脈』という雑誌でインタビューをしていただいたご縁で、この経験を本にして出版したいうお話をちらりとうかがっていました。

太田さんがパートナーに帯同して渡ったカナダでの2年間の記録。英語ができない移民の主婦として、居場所をつくるためにもがいた日々。『愛と家事』(創元社)の続編にあたる随筆です。『愛と家事』もとても驚いたというか、ありがたい読書体験でした。

yagakusha.hatenablog.com

 

人は言葉とともに生きていきます。 その厚みは人生とともに変わりゆきます。 これから私はどんな言葉の地層を積み上げ、どんな声を生み出すのでしょうか。 (本文173ページより)

自分の手で居場所をつくっていくの、あの緊張や喜びや手応え。少しずつ自信がついてくる、あの感じ。 自分の中に複数の"言葉"や文化の行き来が起こってくる、あの感じ。 今、自分の足元はどんなだっけとふりかえりたくなります。

表紙が繊細な紙なので、薄いビニールカバーをつけて販売しています。

 

続いて2冊目。

田巻秀敏『貨物船で太平洋を渡る』(2021年)

田巻さんは、2023年2月の文学フリマ広島でわたしの斜め前のブースで出店されていました。クローズぎりぎりに試し読み台でサンプルを読んで、あ、これは買わなくっちゃと思い、もう片付けが終盤の頃に、すみません、なんとか一冊だけお願いしますと無理を言って購入させていただきました。

じっくり読んでみたらやっぱりとてもよかったので、本棚を借りるときにこれも紹介したいと思い、ご本人にご連絡して仕入れをしました。

note.com

詩情あふれる写真と文体が、読み手を遠くの洋上に誘います。表紙も裏表紙も美しいのです。サンプルもありますのでぜひお手にとってご覧ください。

 

そして3冊目。

杉山由香『おうちさよなら日記』(2021年)

建築家の杉山さんが、実家にさよならとお母さんにさよならを記録した冊子。手放していくものへの深い愛に溢れています。
杉山さんは「おうちさよなら会」という、解体される家の歴史を記録に残す活動をされています。
https://www.ouchi-sayonara-kai.com/

わたしにも間もなく実家をしまうこと、親と別れることがやってくる。この避けられない人生の局面に対して準備をするような、疑似体験をするような気持ちで読みました。

出会ったのは京都のhoka booksという本屋さんで、それは前述の太田さんとお会いしたときに待ち合わせた本屋さんでした。そのときにこの本が気になって購入していたら、その後、東京に戻ってきて谷中のhagisoで展示があることを知り、すぐに足を運びました。そういうご縁のある本でもあります。

この本があるだけで交わされる話というのがとても大事なんじゃないかと思います。他にも必要としている方がいるはずだと思い、今回仕入れました。

 

こんなものも紹介します。

FIFTYS PROJECT "政治分野のジェンダー不平等、 私たちの世代で解消を"

作成のパンフレットとタブロイド紙を本棚に入れていました。2023年4月に行われた統一地方選挙に向けて、非常に切実で重要な声です。

誰に入れる? どう選ぶ? うちの地域のジェンダー格差の特徴は? それぞれの場所で一緒に考えたいなと思いました。

 

こうして棚を作ってみると、自分の仕事や作品は、他の人の仕事や作品との関わりの中で生み出されているということをしみじみ感じます。一歩踏み出すといろんな発見があります。

近隣にお住まいでないと、東京の方でもなかなか西日暮里を目指して行く用事はないかもしれませんが、山手線や千代田線に乗ったついでにフラリ途中下車してみてください。他の棚も個性的で楽しいですよ!

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西日暮里BOOK APARTMENT
水〜日 12:00-20:00
JR山手線 西日暮里駅 改札出て右へ10秒
西日暮里スクランブル1階
※クレジットカードほか電子決済OK

web https://scramblebdg.com/book-apartment/
instagram https://www.instagram.com/book_apartment_nnp/