私は我が道を楽しみながら生きて来た。これを道楽と言う。道楽者のアナクロニズム、私はそれ以外に時代を映す術を知らない。
会期が来週までだったことに気づいてあわてて杉本博司展へ行ってきた。
千葉市美術館
杉本博司
趣味と芸術-味占郷/今昔三部作
http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2015/1028/1028.html
杉本博司は、一風変わった茶室の人としてしか認識がなかったのが、いつかの現代美術の展覧会で海の写真に出会って、目が覚めるような衝撃を受けたのだった。
今昔三部作の海景。自分のいつか見た海とそのときの心境を思い出しながら観た。記憶の底に深く潜っていく感じが気持ちいい。
劇場。人や音楽で溢れている劇場が、誰もいない、なんの音もしない不思議。積み重ねられた時間、集う人のドラマ…。この光景はわたしにとっては慣れ親しんだもので、とてもあたたかい。
一畳分のスペースに掛軸とオブジェが置かれた空間コラージュもよかった。同時代の、あるいは時代や地域を超えての偶然の交わりの妙。考えてみれば美術館という場自体がそういう仕掛けをもっているのだなと気づいたり。
引いて引いて引いた上での、徹底的に高められた美の緊張感が好きだ。そういうものと相対していると、心がしぃんとなって、ノイズが消える。耳で捉えられない音を聴く。明暗を感じる。
杉本作品の前で座禅会をやったらすごくいいんじゃないだろうか。
いつもは友人と行って感想を話し合うのだけど、この展覧会は一人で行って正解だった。