ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

10年の美術館とわたしの軌跡〜『画家が見たこども展』@三菱一号館美術館 鑑賞記録

三菱一号館美術館で開催中の『画家が見たこども展』に行ってきました。 

mimt.jp

 

三菱一号館美術館のサポーター鑑賞日を利用しました。

https://mimt.jp/mss/

サポーターというのは、いわゆる年間パスポート。何回鑑賞しても定額なのと、いろいろ特典があります。

今回のサポーター鑑賞日は、一展覧会につき一回、設けられている限定公開日。

展示内容や見られるものが変わるわけではなく、休館日にゆったり観られますよ、という感じのもの。うれしいのは、この日のみオーディオガイドが無料になる特典。

わたしは仕事柄、「へーこういう人が年パス買ってきてるんだね」と来ている人も気になってチラチラ見ていますが、年パスを買うぐらいなので、鑑賞態度もとても熱心で、じっくり観ている方が、普段よりも多い印象があります。

サポーター限定だからといって、会場が空いているわけではなく、むしろ、「意外と来てるんだな!」という感じ。

熱心な人がほどほどにいて、とても観やすい。

 

・一号館美術館の展示は3/4は行ってるという方、
・職場が近い、
・美術館初心者だから、一館に決めて馴染んでいきたい。
という方に、サポーター制度、おすすめしたいです。

 


f:id:hitotobi:20200218090833j:image

 

今回は、こどもをテーマにした展覧会。

しかしそれ以上に意味合いとして大きく感じられたのは、三菱一号館美術館の開館10周年記念という節目だということでした。

これまで同館が力を入れて収集し、「発見」し企画し紹介してきた美術のムーブメントや感性を、あらためてふりかえり、一号館の推し画家たちの作品をさらにボリュームをもたせて並べ、一号館らしい祝福の形にした!!

という感じがありました。

 

わたしも、三菱一号館美術館にはだいぶ育ててきてもらっているので、そのことを思い出していました。

 

その歩み。

 

▼2014年『冷たい炎の画家 ヴァロットン展』

初めてナビ派というグループについて知りました。また、このときはじめて「友だちと観に行く」のではなく、「展覧会で鑑賞対話の場をひらく」ことを試みました。わたしにとっては記念碑的で忘れがたい展覧会。

その予習のために行った荻窪の六次元の「ヴァロットンナイト」というイベントもよかった。青い日記帳・Takさんがゲストで。展覧会が好きで真剣に楽しく語れる人がこんなにもいるんだ!みんな感想をしゃべりたいんだ!と知って勇気が出ました。

seikof.blog.jp

 

▼2017年「オルセーのナビ派展」

観ることや展覧会が好きな人の、素朴で主観的な感想を不特定多数の人が聴くことを意識しながら表現してみたい、という衝動にかられ、音声配信にチャレンジしました。

doremium.seesaa.net

 

▼2018年『ピエール・ボナール展』

こちらは国立新美術館での開催。ナビ派の一員だけじゃないボナールの生涯の画業にぐーっと迫った展覧会。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

▼2019年『フィリップス・コレクション展』

こちらも三菱一号館美術館展。いい展覧会でした。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

▼2019年『印象派からその先へ展-吉野石膏コレクション』

三菱一号館美術館での展示。今度は感想を動画配信してみました。

一発撮りで無編集に挑戦しました。だいぶ話すことに慣れてきたし、間違っていたり未熟でも、自分だけの探究を大切にする姿勢みたいなものを持って、やってみました。

また、特に強い関心がなかったものから、発見する。何を見ても何らか感想を語れる自分の発見もありました。

note.com

 

あと、子どもというテーマで思い出すのは、2006年に上野の国際子ども図書館で開催された「もじゃもじゃペーター」の展覧会と、その講演会のこと。

この講演会ではじめて、「実は子どもというのは以前はいなかった。子どもは作られた、または発見されたのです」という話を聴いて、「へーーーー!」と思ったことを今でも覚えています。

もじゃもじゃペーターとドイツの子どもの本|過去の展示会|展示会情報|展示会・イベント|国立国会図書館国際子ども図書館

 

自分の関心にしたがって足を運んだことや創ったことは、どれも確かに糧になっているなぁとしみじみ思います。

また、鑑賞の筋力というのは積み重ねで、質、ある程度の量、頻度、熟成の時間が必要なことも思います。どの道に行くのもそうだと思いますが。

ただ、他の分野で、芸術に限らず、このルートを通って筋力をつけている人は、橋がかかりやすいことも事実です。端から見たら、どんな関連があるのかわからないという分野でも、感受性や解像度が高い方は、受け取れるものが多いです。

だから自分に関係ない領域と思わず、何も受け取れなかったらどうしようと思わず、わたしと一緒に橋を渡ってみてほしいなぁ、と常々思います。

 

......脱線したけれど、 

まぁそんないろいろな経緯をひっさげての、この日の鑑賞でした。

 

 

展覧会の感想メモ

・1. モーリス・ブーテ・ド・モンヴェルからはじまる!この方は庭園美術館フランス絵本の世界展で知った方。いきなりどん!っとほほえましく、美しい子どもの絵ではじまるの、すごくよかった。

・4. ウジェーヌ・カリエールという画家の、「画家の家族の肖像」がとても不思議な絵なので、注意して見てほしい。どの角度や距離から見ても、絵の中の人たち全員と目が合うのですよ!!!近くだと淡い感じがするけれど、少し離れて、場所を変えていちいち目を合わせながら観ると、すごい迫力があります。

これ、ほんとうにただの肖像画なのかな?

・7.8.ゴーガンの水彩によるモノタイプ。すごい、モダン。色きれい。モノタイプとは版画技法の一つ。ゴーガンの厚みをまた感じる。

・23. ヴュイヤールの「赤いスカーフの子ども」はまるで写真家ソール・ライターの作品!というより、ヴュイヤールが先で、ライターが影響を受けたんだけど、鑑賞者の立場で言えば、「まるでライター」という感覚になるのがおもしろい。(ソール・ライター展 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_saulleiter/

・42. モーリス・ドニの「雌鶏と少女」は国立西洋美術館の所蔵なので、常設で会える。友だちに別のイベントでまた会う、みたいな感覚。うれしい。

 

・ボナールやドニ、ヴュイヤールの知らない作品にもたくさん会える。多作の人たちだな!とあらためて。

・多幸感の流れの中に時々潜り込んでくるヴァロットンやミュラーの不穏さが、ちょっと笑ってしまうぐらいの展示。学芸員さんの狙いについて聴いてみたい。

・80. ヴァロットンの海水浴を楽しむ家族を描いた作品。珍しく平和なのかな?と思いきや、やっぱりちょっと不穏。さすがヴァロットン。当時、健康増進の目的で海水浴がブームになり、鉄道網の発達もあってヴルジョワの間で人気のレジャーだったらしい。郊外でのピクニックや、海外のリゾートに行くなどが流行ったのも、この頃。

・アリスティード・マイヨールなど、新しい画家との出会いもうれしい。一点とても好きな絵があったので、小さいキャンバスを買ってしまった。『山羊飼いの娘』。ほんものの色の鮮やかさはそれはもう例えようもないほど。いつも見ていたくなった。

画家を目指していたけれど、自分の方向性がつかめず悩んでいたときに、ゴーガンのやり方で描いてみたら道がひらけて、その後40代で彫刻家に転身したという転機の頃の作品もよかった。影響を与え、与え合い、悩み、同じ時代を生きた人たち。


f:id:hitotobi:20200218093844j:image

 

 ・58. ボナールの、そのへんにあった紙にサッと描きつけたようなラフさと勢い。やさしさ、慈しみ、親愛、子を含めた家族のいる風景。ボナール展のときは、彼の人生の困難さにも光が当てられていたので、こちらの多幸感いっぱいのほうをみるとちょっとホッとする。こういう時間もあったんだなぁというか。

・構図や写真や色、浮世絵など他文化からも新しいものを採り入れながらも、モチーフは盛り場のような刺激的なものではなく、自分の家族や自宅や庭の日常の風景というささやかさが、ちょっと不思議ではある。

ナビ派としての活動は1888年からの約2年だけ。そこからゆるやかに交流しながらも、それぞれの画業を重ねていく。こういうことって、あるよね。わたしもあったな。ぎゅっと集中して一緒に活動した期間があるからこその、それぞれの今を、たまに会う人と交換している。

・102. ボナールが撮ったヴュイヤールとボナールの甥の写真がほほえましい。家族ぐるみの付き合いだったのだな。

・103.ドニの子どもたちほんとかわいい。写真はモノクロだから、色をつけてもっと生き生き表現したい!と思ったかもしれない。(妄想)

・108. ボナールの大装飾画、圧巻。映画の予告編みたいな、さまざまなシーン、さまざまな角度のカットが繋がれて一枚の絵になっている。別の時間、別の場所、別の人たちが一堂に会するような。シャガールを思わせる。

・全体的にいつもより絵が下のほうにかけられている感じがして、背の低いわたしでもみやすかった。

・「18世紀以前、子どもは未熟な大人とされていた」

それに関連する資料が何点か、資料コーナーに展示されていて、どれも読んでみたいものばかり。

こどもの歴史
絵でよむ子どもの社会史

<子ども>の誕生
子どもとカップルの美術史
こども服の歴史

この資料コーナーは、地味だけど、過去に日本や海外でひらかれた展覧会の図録なども閲覧できて、すごく貴重です。椅子が置いてあるので座って、ゆっくり読むことができます。

 

ナビ派って何?という方にはこちらもおすすめ。

 

 


f:id:hitotobi:20200218090853j:image

f:id:hitotobi:20200218090906j:image

f:id:hitotobi:20200218090927j:image

 

 

www.instagram.com

 

www.instagram.com

 

いやー、いい展覧会でした。

いい気分になること間違いなしなので、どなたでも楽しめます。

3月30日は、月に一度のトークフリーデーなので、気の合うだれかと感想を話しながら観たら楽しいですよ。

 

ぜひ!


f:id:hitotobi:20200218102316j:image

 

 

 

noteでも話す、書く表現をしています。

note.com

 

イベントのお知らせ

hitotobi.hatenadiary.jp

 

お仕事のご依頼はこちらへ。

鑑賞対話ファシリテーション、場づくりコンサルティング、感想パフォーマンス

seikofunanokawa.com