ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

水族館とミュージアム〜沼津港深海水族館 鑑賞記録

競技かるたの静岡大会に出場したついでに、水族館に寄ってきた。
遠征はあまりしないポリシーなのだけど、静岡の中でも沼津市は比較的東京に近く、日帰りが可能だったので、行ってみた。

あっという間に初戦で敗退して、午前中には沼津駅に戻ってきたので、見学時間はたっぷりとれた。

 

www.numazu-deepsea.com

 

 

 

ここは、深海魚、古代魚好きのわたしとしては、気になっていた水族館。

 

駿河湾に面した沼津港からすぐのところにあって、磯の香りがする。魚市場の建物も見える。

あたりは干物のお店や新鮮な魚を出す飲食店などが立ち並ぶ、活気のある区画。

このすぐ近くに2,500mの深さの湾が広がっているのかと思うと、わくわくした。

 

展示解説によれば、「世界には400-500の水族館があって、そのうちの1/4〜1/5が日本にある」そうだ。

そうなの?まずそれにびっくり。

しかも、深海生物に特化した水族館は世界でも珍しい存在という。

なぜなら、深海生物の飼育は難しいから。

生態がまだ解明されていないものが多いので、何を食べているのか、どんな環境が適切なのか、常に試行錯誤だそう。

 

また、継続的に展示するのが難しいという理由もある。死んでしまったら、ということですね。

希少な深海魚なので、たいていの水族館はすぐ補充できるような状況にない。

 

その点、この水族館は地の利がある。

深海で捕獲してから館まで運搬する時間があまりかからないので、デリケートな深海生物へのストレスが少なくて済む。

とはいえ、ラブカやミツクリザメなど、深海のサメを飼育するのは非常に難しいとのこと。

そりゃそうだよな...それに、そこまで生き物に無理させなくても、という気もする...。

 

どうやって深海魚を補充しているかというと、駿河湾で100年前から行われている底引き網漁の漁期(9月〜5月)に、水族館スタッフが一緒に乗船させてもらって、漁で獲れたものから展示用に持ち帰っているらしい。へえ〜

 

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目玉展示の-20℃で冷凍中のシーラカンスには、さぞ人が群がっているのだろうと思ったら、意外とガラガラ。

混んでたのは浅い海のカラフルな魚のコーナーだった。あれ??

 

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わたしはもう、3億5,000万年前からほぼ変わらないこの姿で命を継いできたものが目の前にいるー!!!と写真を撮りまくっていた。

思っていたよりもだいぶ大きい。166cm。大きいもので200cm、100kgぐらいになるらしい。

なぜか薄っぺらいものを想像していたけれど、ぶっとくてガッチリしていて強そう。

 

 

泳いでいるシーラカンス、カッコいい〜 

 

 

...と興奮しつつも、どうも物足りない。

なんだか展示もバラバラとしている。

順路に沿って見ているのに、流れが自分の中で立ちあがってこない。

 


もう少し学術的な要素はない??
アミューズメント性や趣味性が高い観光施設の方向性??
そういえばここって研究機関、ではない?
売店に関連書籍さえも売ってない??

 

...と思って、運営者を確認したら、地元の水産会社だった。

町おこしの目的で2011年に設立、とのこと。

 

なるほど。


なるほどー。

 

なるほどーー。

 

脱力感を覚えたのは、

わたしの中で、地元である滋賀県立琵琶湖博物館での学びのよい体験があって、「水辺のミュージアムならあのくらいの信頼のおける体系と濃度の中に行けるんだよね!」という期待が大きすぎた、

ということがあったと思う。

 

そうか、あそこは公設の博物館で、研究機関でもあったから。

だからだったのか。

 

 

存在の目的が全く異なるのか。

 

  

 

もちろん研究機関ではないから軽薄とかダメとか、決してそういうことを言いたいわけではない。

飼育員の方々もその分野の専門家としてお仕事されているだろうし、来館者の中にも大きな学びを得ている人もたくさんいるだろう。

 

ただ、アミューズメント施設では、

  • もっと知りたくなったときに、「その先」がない、意図されていない。
  • 質問したいときに聞ける人・体制が用意されていない。
  • 消費的で見世物的な展示になる

 

わたしの物足りなさの出元がわかった気がして、スッキリした。

 

ただ、これは単にわたしの好みの問題を言っているのではない。

じゃあアミューズメント系の水族館に行かなければいいではないか、
行きたい人だけ行けばいいじゃないか、という話ではなくて。

 

そもそも、 アーカイブ、学術研究、展開する知的体験のデザインのない施設にも「ミュージアム」と名がつくのは、どうなんだろうか?という疑問。

これは、日本だけの特殊状況なんだろうか。

だから日本の水族館の数が多いのだろうか。

水族館とはどのような使命をもったミュージアムなのか。

公設ミュージアム、私設ミュージアムそれぞれの役割とは何か。

 

そして、

ミュージアムとは。

icom.museum

 

日本語訳はこちらに。(真ん中より下の方にあります)

https://bijutsutecho.com/magazine/insight/21339

 

 

一旦、このあたりまで考えた。

 

冷凍のシーラカンスを見られたことよりも、こっちのほうがよっぽど大きな収穫だった。

考えるきっかけを与えてもらった。

引き続き追っていく。

 

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ちなみにシーラカンスの展示は、アクアマリンふくしまにもあるらしい。

シーラカンスの世界|展示ガイド|アクアマリンふくしま

 

そもそも、この貴重で珍しいシーラカンスを、捕獲して持って帰っていい...というのが。えっいいんだ?だれとどういう取り決めで?という気がするし。

日本国内だけで7体も標本があるって...。購入した?誰から?......もしかして、世界中で学術調査と言いつつ、けっこうな量が捕獲されていたのでは?

今はIUCNのレッドリストに載っているけれども。
今はワシントン条約でも規制されているけれども。

その前は?

 

うーん...。