ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

書道博物館 『中村不折の世界』展 鑑賞記録

書道博物館へ。

ずっと来てみたかったけれど、なかなかきっかけがつかめなかった館のひとつ。
うれしい。

 

台東区立書道博物館|中村不折コレクション 書の専門博物館

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今回の展示は、中村不折
この人のことはよく知らない。
でも、洋画家でもあった人。わたしは絵ならたくさん見てきているから、すんなり入れるのではないか?と思い訪ねました。

そして、着いてから、ここは中村不折自身の旧邸跡であり、彼が尽力して建てた博物館であることを知りました。


洋画家であり書家であり、本や新聞の挿絵、装丁もやるマルチな才能。

1901〜1905年にパリへ留学。アカデミー・ジュリアンでデッサンと油彩をガッツリ学んで、絵も描きながら、40歳を過ぎて書家デビュー。

森鷗外に、墓石の字は中村不折に、と託されたり、正岡子規と真向かいに引っ越したり、当世の名だたる文化人との親交も厚い。

先日の森鴎外記念館の展示鑑賞で、森鴎外を一人の人としてとらえた実感があったので、鷗外からの書簡なども味わい深く観た。(「森 林太郎」という署名とか!)

体験によって知ったこと同士がつながっていくこの瞬間が楽しい。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

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中村不折さんの書ですが、とにかくすごい!すごいんです!
2階までぶち抜きの縦に長い展示ケースがあって、そこに書が飾られているのですが、これがなんといってもすごい。おもしろいの。

新宿中村屋」の屋号の書の人といえば、「ああ!」となる方もいるのでは。

あんな感じのユニークな書です。

 

こちらの博物館、一点一点の見どころ解説も丁寧です。「書って難しい?」と思いがちだけど、解説を読みながら見ていくと、「このように鑑賞すればいいのか!」と、だんだんとおもしろさがわかってくる感じです。ありがたい。

井伊直弼の書も展示されていて、つい数日前に豪徳寺に行ってお墓にお参りしたばかりだったので、ご縁を感じました。

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パリのアカデミー・ジュリアンに留学中に絵の先生からもらった油彩習作や、ロダンの家に遊びに行ったときにもらったデッサンもいいです。
油彩画を壁掛けでなくて、展示ケースで上からみるのも新鮮。

1901-1905年のアカデミー・ジュリアン!もしかしてナビ派の人たちと同窓かな?と思ったら、かれらは少し前の1880年代でした。

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本館はこれまた物量が凄まじく、「漢字が書いてある古いものはなんでも収集!」というぐらいの勢い。石碑、仏像(仏像があっても見るのは字)、青銅器、銅剣、甲骨(象形文字が書いてあって占いに使ったあれです)、瓦、ブロック、判子、などなど。

書道博物館だけど、紙に書かれた「書」の展示は少ない、というところが意外なポイント。

とにかく字、字、字を見よ!となるので、博物館を出てからもしばらくお店の看板や、道路標識や、コンビニ商品のパッケージなとがやたらと目に飛び込んできました。

おもしろい現象です。


また、わたしたちが今、日常で普通に使っている漢字と同じものが、紀元前の遺物の中にある。そして、それは四大文明の一つ、中国文明。他の3つの文明の文字はもう使われていないのに、漢字だけは今も尚読める字なところ。

そう考えると、すごーい!

 

あ、あと気づいたこと。

本館の石碑と仏像が展示されている部屋に、「中国では石と金属は不滅の象徴だった」という解説があり、これで今までの謎が一気に氷解した感じがありました。

不滅......この絶対感よ!

「不老不死」なんかもそうだし、兵馬俑万里の長城の規模を見ていても、とにかく「圧倒的に」「凌駕する」「有無を言わせない」感じ。

これは日本にはあまりない精神性のように思いました。不老不死も願いとしてはあったけど、「そうだったらいいのにな〜(でもそうじゃないから儚くて切ない)」みたいな方向に行くのが日本かも?もちろんこれは勝手な想像ですが、自分なりに納得しました。

 

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会場に展示されていた読売新聞の記事にあった、

「文学、美術とは異なる芸術とみなされがちだが、詩書画一体が文人の境地だ」

の一文も、鑑賞の助けになりました。

そういうことだったのか、と納得して、館をあとにしました。

 

公式さんのキャラもじわじわきます。

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▼真向かいにある正岡子規の旧邸。子規庵。
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▼ねこさんたち。そういえば本館の入り口に「ネコが入るので開けっぱなしにしないで」というようなことが書いてあった。
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書道博物館の半券で、台東区内にある他4館のミュージアムの入場料が割引になります。どこも大変おすすめなので、ぜひ活用されたし。

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