ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

展示『世界のブックデザイン 2019-20』展 鑑賞記録

毎年開催されている、印刷博物館の『世界のブックデザイン』展に行ってきた。

www.printing-museum.org

 

印刷博物館は、有楽町線江戸川橋駅徒歩8分・トッパン小石川ビル内。

当たり前のように身近にある本。その造作とこれだけ集中して対話できる機会もなかなかない。しかも、展示されているのはどれもほんとうに"美しい本"ばかり。
 
デザインを通して世界の動きや、ボーダーを超えつつも、滲み出てくるローカルを感じる時間。

実物との対面だからこそ感じ取れることの多さに、毎回驚かされます。
 
触れるのがこの展覧会の良さの一つ。でも、今年は感染症対策で無理?と思ったら、いろんな工夫をしてくださったらみたい。ありがとうございます。

 

 

 

 

今回の展示で、わたしが注目したのはこんなこと。

審査員はどこを見て評価しているのか?
"美しい"本とは何か?

本を観察し、手袋をして触り、添えられた評を読んでみた中で気になったキーワードをいくつか挙げてみる。重複するものもあり、カテゴリ分けに難もありそうだが、とりあえず。

  • 見た目の創意工夫:サイズ、書体、紙質、判型、色彩、余白、段組、小口、天、カバー、光沢
  • 読書の想定:判型、開き具合、手触り、視点、集中、座り方
  • デザイン、印刷技術:タイトルデザイン、レイアウト、写真や挿絵のバランス、テキストと図版、精巧さ、分野と内容とデザインのマッチング、呼応、効果
  • 印象、性質、個性:魅了、巧みな、既知に富む、趣向、控えめ、謙虚さ、革新的、統制、エレガンス、連想、インパクト、再現性、揺さぶられる、鮮やかさ、潤沢、余韻、コントラスト、興味をかきたてる、コンセプチュアル、馴染み、問いかけ、違和感、親しみやすさ、人間らしさ、クリエイティブ、活力、逸脱、センス、理論的、膨大さ、重厚さ、詳しさ、意味、体系的、独自のシステム、浮かび上がる、息を飲む、一風変わった、一目惚れ、楽しさ

 

物としての本の姿だけではなく、人間とのコミュニケーションをつなぐ物として、どんな性質を持つのかも評価している、ということなのかなと理解した。

細部の美しさと全体として構成されたときの美しさと、そのつながりの意図。

 

評の独特の言い回しも、観察するとおもしろい。

  • これは献身的で思慮深いデザイナーの仕事である。
  • デザインは美学を優先に、技術と慎重さでそれが遵守されている。
  • デザイナーはこの本の精神、この瞬間の精神を吸い込み、すべてのページに吹き込んだかのよう。
  • 奔放な記憶のエピソード性を醸し出す詩的な雰囲気

 

国別に並べられたり、国名が記されていることで、それぞれの国へのイメージが覆されていくような、また新たなイメージが付加されていくような感覚がある。

あ、これは、わたしが切手を見ているときと同じ感覚だ!

 

 

もっとじっくり読んでみたいと思った本は三冊。

Die Bibel – Über Frauen by Paulina Mohr

聖書。ただし、女性に関する概念を含む文章のみが印刷され、他のテキストは消されている。可視化されたのは、抽出された"女性"のあまりにも貧弱な数量......。

 

 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 

A post shared by paulina mohr (@_paulinamohr)

www.instagram.com

 

Children by Olivier Suter

世界的に有名な人物の子どもの頃のポートレイトが並ぶ。パッと見てめくった次のページに名前が書いてある。最初はクイズのように当てるのを楽しんでいたが、次第に、この子たちが大きくなって成したこと、運命を知る後世の人間としては、だんだんと複雑な気持ちになっていく。

自分の中にある子どもという存在への歪んだ幻想も見え隠れする。

※触れる展示作品

 

CHILDREN by Olivier Suterja.twelve-books.com

 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 

A post shared by Antenne Books (@antennebooks)

www.instagram.com

 

 

American Origami by Andres Gonzales

アメリカで起こったいくつかの学内銃乱射事件。残された人々、物、まちを追った6年間の記録。写真とインタビュー。圧倒的な喪失と痛み、永遠に止まった時と、移りゆく世界。ただただ圧倒される。ドキュメンタリーフィルムとはまた違う辿り方。

※触れる展示作品

post-books.shop


動画紹介 Andres Gonzalez - American Origami on Vimeo

 

 

f:id:hitotobi:20210217225200j:plain

 

布手袋をして本を触る経験は初めてで、ジュエリーや美術品を扱っているようで、至福でもあった。

2021年4月18日までと会期は長めなので、よきタイミングでぜひ訪ねていただきたい。

 

__________________________________

鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。

seikofunanokawa.com

 

初の著書(共著)発売中!