映画をきっかけに、台湾の歴史や、言語、現在の社会などに興味を持ち、細く長く調べている。調べた記録をここにつけておく。
●教科書図書館
江東区住吉にある日本の教科書、海外の教科書を所蔵している図書館。開架式で閲覧できる。コピーも可。
ここで、日本統治時代の台湾人用の国語(日本語)の教科書や、原住民族用の教科書(分けられているということは差別的な扱い)、満洲時代の国語の教科書などを見た。台湾は、日本が初めて植民地にした「他国」であり、日本語を「他国の人」に教えた最初の国になった。(いやしかし、日本の国内の先住民、アイヌについてはどうだったんだろう?)
入ってすぐの面陳書架に、『詳説 台湾の歴史 台湾高校歴史教科書』が陳列してあった。現役の高校生が学んでいる歴史教科書の和訳だ。こんな本があったのかー!と驚いた。後日地元の図書館で探すと、新刊書として、所蔵されていた。すごい。
↓この本
●『詳説 台湾の歴史 台湾高校歴史教科書』(雄山閣)
日本の統治は台湾でどのように受け止められ、学校教育で子どもたちに教えられているのかがわかる。この教科書では、日本の誰がどのように統治したのか、詳しく解説されている。日本の高校の歴史の教科書では、台湾のことは一行か二行ぐらいしか触れられておらず、このあまりの非対称性に驚く。意外にも戦時体制下の軍事動員については紙面としては驚くほど少ない。「慰安婦」に関する記載もごくわずかで、表現は曖昧だ。(他にも教科書は発行されているのかもしれないし、これだけを持って断定することはできないが)台湾の原住民についても詳しいし、中華民国統治下の台湾や、中国とアメリカと台湾という、常に微妙な関係の中を生きている台湾の姿も見えてくる。教科書という形式だからこそ掴めることがある。
● 『郵便が語る台湾の日本時代50年史』玉木淳一(日本郵趣出版)
今年の初めに出たばかりの本。まさにタイトル通り、台湾の日本統治の50年を郵便を証人に語らせながら、歴史上の出来事の経緯や前後関係、見落とされがちな史実を拾い、丁寧に紐解いている本。わたしの関心事である台湾と郵便のどちらも専門的に研究している人がいると思わなかった。カラー図版が充実していて見応えがある。郵便という切り口があることで、リアリティを増している。
なぜ小説家の乃南アサさんが台湾の本を?と思ったが、台湾に取材に行ったことがきっかけで関心をもたれたそう。歴史を専門に研究している人とはまた違う小説家ならではの描写に、ぐいぐいと引き込まれていく。
一番の収穫は、「第13章 こうふくの先にあるもの 1945-1947」。日本が敗戦し、引き揚げることになった時期に起こっていたことが詳しく書かれている。ちょうど侯孝賢の『悲情城市』で描かれていたところだ。
なぜ日本円がヤミで出回っているのか、理由がわかった。引揚者が持ち帰れる財産には制限がかけられていたのだ。だから、森鷗外の長男・於菟(おと)も、鷗外の遺品を持ち帰ることが許されていなかった。そのことが書いてある。
これで、鷗外記念館から持って帰った宿題の答えがわかった!
乃南アサさんの著書。こちらは2020年刊。読みたい。
これからも、行く先々で出会っていくだろう。
疑問を書留ながら、「そうだったのか!」を重ねながら、知っていきたい。学びたい。