漫画『乙嫁語り』の原画展を観た記録。
ところざわサクラタウンは、"あの" 角川武蔵野ミュージアムの隣にある。
近づいたらめっちゃ岩だった。。
肝心の展示。すごい物量だった。来ていた人もそれに応えるように、じっくりじっくり観ておられて、それもよかった。少女漫画とか少年漫画とか、そういうくくりなく、ファンもいろんな人がいるみたいだった。そこもこの漫画の魅力だと思う。
森薫さんの前世は中央アジアのあたりにあったのではないかというぐらい、緻密で正確性が追求されていて、何より情熱がある。別の文化圏に対する途方もなく深い思い入れを持っている人は、単に好きというだけでなくて、やっぱり前世レベルで何かあるのではと思ってしまう。
絵の美麗さはさることながら、それを支える技術、信念あるお仕事ぶりも見どころだった。
本物に触れると自分の輪郭が一瞬ぼやけたあと、ゆっくり時間をかけて現れてくるような感覚がある。
しかし私がもし漫画家だったら、めっちゃ奮起するか、漫画家辞めたくなるかどっちかだと思った……。
嫁とか、結婚とか、男女とか、世継ぎとか、今持ち出すとかなりざわざわするテーマだけれども(話題にしないと変わっていかないので、ざわざわ歓迎)、このお話に関してはそういうことで胸がちりっとするようなことがない。
どうしてなのかと一緒に行った友達と話していた。
たぶん、一つには、そのイエ制度とか、恋愛至上主義とか、十分にわかった上で作者が描いているからではないかということ。それからもう一つは、中央アジアの文化への愛と敬意が深いからではないかということ。
たとえばわたし自身のことでいえば、数ヶ月前に90歳近い女性のライフヒストリーの聞き取りをした。家族の話、結婚の話など聴いていると、それはもう、イエ制度の只中にいて、人生がそれで左右されている。
今のわたしが個人的にはまっぴらだと思うけれど、でも目の前の人が生きてきた経験を聴くときは、敬意以外の何も湧いてこない。その人はその時代のその文化風習の中で生きてきて、喜んだり、悲しんだり、戸惑ったりしながらも、その人の人生を生きてきたということがよくわかるから。
なんだかそういうことに近いものを、『乙嫁語り』の世界には感じる。
地に足ついた、人々の暮らしの描写。
でもそれだけじゃなくて、やっぱり漫画としての「かわいい」や「ときめき」もいっぱいあって。「世界ふしぎ発見!」的な、遠い異国への好奇心もたっぷり味わえて。だから好きなんだな。
やはり漫画の原画展はよい。『ちはやふる』のときにも書いた気がするけれど、漫画の原画は、手の作業の想像がつきやすいということ、作画における工夫や苦労、画材の使い方の解説、仕事への態度などたくさん受け取れるから楽しい。
あとは、やはりサイズが大きいからいい。あのコミック雑誌のサイズで一番美しく見えるように描かれているから、そのサイズで原画を見るのはよいのだ。オリジナルに会う感じ。
入場プレゼントのネームの複製。ポストカード2点はショップで。会期最後のほうだったから、いろいろ売り切れだった。
クリアファイル。これうれしい。クリアファイルコレクションに追加!
森さんの落書き帳。これは眼福。
『SCRIBBLES 2』森薫/著(KADOKAWA, 2022年)
本屋さんの中の展示スペースもよかった。文化の橋渡しをされているんだなぁ。漫画ってすごい。
\『#大乙嫁展』開催記念企画!/
— 大乙嫁語り展【公式】 (@daiotoyome_ten) 2022年3月13日
ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの在京大使館より、それぞれの国の民芸品をお借りし3/21まで #ダヴィンチストア にて展示します。
「#乙嫁語り」作中の雰囲気さながらの衣装や民芸品等をお楽しみください。#森薫 pic.twitter.com/VtUaiY5Y2X
いろんな言語でも出版されていた。イタリア語、ポーランド語、ほしい。。
#ところざわサクラタウン #ジャパンパビリオン にて「#大乙嫁展」が開催中!#ダヴィンチストア ではイベント公式グッズなどを販売中!
— ところざわサクラタウン (@sakuratownjp) 2022年3月12日
複製原画や世界各国で販売されている翻訳版コミック( #森薫 先生の私物!)、中央アジア各国の写真パネルも展示しております。#乙嫁語り https://t.co/6sLPgDNbqD pic.twitter.com/DhPQq9zKkQ
2018年に読んだNY Timesの記事。
おお、乙嫁語りの世界?と思って読みはじめたら、そうであり、そうでなく。世代を超えて受け継がれていく文化、民族の誇り。
* 追記 2022.5.30 *
10巻から先、やっと読めた。大乙嫁語り展で垣間見た作画技術、工程、仕事ぶり、お人柄なども思い出しながら。
あらためて、舞台が19世紀の中央アジアであることを認識。ロシア帝国が南下政策をとって拡大を図っていることなども記載されているし、実際にロシア兵に襲われるくだりもある。この歴史背景が今後物語にどんなふうに影響を与えてくるのだろうか。時期柄、気になる。
「高校世界史B:5分でわかる!ロシアがこだわった南下政策とは?」https://www.try-it.jp/chapters-11824/lessons-11825/
スミスが研究者として記録の重要性を話すちょっとしたやり取りなどにも目が留まる。「記録は同時代の人でないとできない」「いつか役に立つ」
毎回いいなーと思うのが、この読者アンケートはがき。漫画本でこんなのあんまり見たことない。送りたくなっちゃいますよね。送っちゃうと手元になくなっちゃうのが残念だけど。質問もよい。
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