ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

絵を鑑賞することと言葉の処理の話

美術展に行って、キャプションや解説を読んでいるときに、なんだか頭に入ってこないのだけれど、併記してある英語を読むとスッと入ってくるということが、わたしはよくあります。
 
これは和訳がいまいちという可能性もあるだろうけど、別の可能性として、絵を観るときと英語を読んだり話したりするときは、脳の同じ部位を使っているからなのかもしれません。もしかしたら。(あ、日本語より英語が得意とかでは全くないです!)
 
 
わたしは展覧会に行くときはだいたいオーディオガイドを聞いていますが、観ることと聴くことを同時にやるのは、習慣にしていても、実はけっこう難しなぁと最近ようやく気づきました。ガイドの内容自体はすごく楽しいし好きなんだけれど、観るか聴くかのどちらかにしか、わたしは集中できないようです。これはもしかすると、ガイドから聴こえてくるものを、音楽を聴くときにつかっている脳の部位でとらえているからなのかもしれません。
 
結局、集中しきれていなくて聴きなおしたり、ちゃんと観れていなかったような気がして、最初からガイドなしでもう一度観て歩いたりしています。だからすごく時間がかかるわけですが...。さらにスケッチなどもしているので、体験はもっと深まり、一つの展覧会から受け取るものが多くなってきて、まぁなんというか、うれしいかぎりです。うれしい悲鳴です、とも言えるかな。何周も遊べるから。
 
 
そういえば、以前ポッドキャストでも話したことがありますが、「外国語の音声を聴きながら日本語の字幕を読む」って当たり前にやっているけれど、よく考えてみたらおもしろいことしてるんですよね。ほんと器用だなぁと思う。
そう考えると、観ながら聴く力(?)というのは習慣や訓練でアップしたりするものなんだろうか。「読む」を「観る」に近づけているあの絶妙なバランス感覚で、「観る」と「聴く」を近づけるというような?
 
...とここまで書いていて気づきましたが、人と話しながら絵を見てまわっているときって、よく観ることもできるし、聴くこともできるんですよね。これは人がいてくれて、「双方向性」があるおかげで、両方が実現しているんだと思う。
 

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最近、英語の自主学習を励まし合うオンライングループに入って、他の人の学習に刺激を受けたり参考にしたりしながら、毎日なんらか英語の音声や文章に触れてみています。そんな流れもあって、先日フィリップス・コレクション展に行ったときに読んだダンカン・フィリップスの言葉を原文で味わいたくて、メモしてきたのを見たり、読み上げたりしています。
  
Art offers two great gifts of emotion -the emotion of recognition and the emotion of escape. Both emotions take us out of the boundaries of self...
At my period of crisis I was prompted to create something which express my awareness to life's returning joy and my potential escape into the land of artists' dreams. I would created a collection of pictures -laying every block in its place with a vision of the whole exactly as the artist builds his monument or his decoration.

Pictures send us back to life and to other arts with the ability to see beauty all about us as we go on our accustomed ways. Such quickening of perception is surely worth cultivating. 
 
I have devoted myself to the lifelong task of interpreting the painters to the public and gradually doing my bit to train the public to see beautifully with a sublimated observation detached from self-interest and sufficient unto itself. 
 
-Duncan Philips, the founder of The Philips Collection
 
展覧会ってほんと今あるものだけで十分に楽しめるし、鑑賞の幅を広げたり深めたりする方法はたくさんある。そのひとつを世の中に提示してみつつ、他の人の楽しみ方も交換したり味わう場ができたなら、催す人にとっても受け取る人にとっても幸せな、副産物がぽこぽこと生じることだろうなぁ、というようなことを考えています。