レポートが大変遅くなりましたが...5月10日、金曜日の夜、
映画『沈没家族劇場版』の参加型対話イベントの第2回を開催しました!
会場は、前回と同じくポレポレ東中野1Fのカフェ、Space&Cafe ポレポレ坐
全面貸切です!
準備が全部終わって、お客さんが入るまでの、しんとしたこの時間がわたしはとても好きです。
今回は映画を観ていない方もOKとしているので、ウォークインは映画のトレイラーを流していました。
この日の登壇者。左から、
加納穂子さん。監督の母。八丈島から到着したばかり。
加納土さん。この映画の監督。
高橋ライチさん。映画では「しのぶさん」。沈没家族の住人。
開始前に既にビールが入ってゴキゲン^^
時間になって続々とお客さんが入り、なんと、第1回と同じく40人超もの方が来てくださいました!
金曜日とはいえ、平日夜。
レイトショー上映前の時間帯という微妙な設定にもかかわらず、当日駆け込みの方もいらっしゃり、大盛況でした。この時点でもう胸いっぱい。
映画公式や関係者などのFacebook、twitter、ポレポレ坐のHP、友人からの紹介、たまたま通りがかって(この映画が気になっていたので)など、ルートも様々。
当日のファシリ進行表。
まずはこの場のファシリテーター(わたし)の自己紹介をし、今日の場のねらい、進め方、対話のルールなどについて説明。
特に、「ひみつはまもる」「後日もちださない」については、
タイトルが、『語らずにはいられない!沈没家族と"わたしの家族"』だったのですが、自分の家族について語りたいけれど、少し躊躇することもあるかもしれない。そのときに、ああ、口にしなきゃよかった!ということがないようにしたいと思いました。
この日こういう場のしつらえの中だからこそ出てくる気持ちや語りを大切にし合いたい、という意図です。
また、観ていない方もいるので、「これは観てないとわからないかも」という部分についてはおもしろさがそがれない程度に補足説明したり、観ていない方も「それは何ですか?」と遠慮なく質問してほしい、ということもお願いしました。
ここでなんと、まだ映画を観ていない方も1/4ほどもいらっしゃることが判明!
この語る場に出てから観る予定、観るか決めるつもり、の方だったようです。
これはすごい!この場が画期的だということの証!うれしい!
写真撮影の許可もいただきました。
皆さんにこにこしてうなずきながら聞いてくださるのがありがたく、わたしも次第に緊張がほぐれてきます。
場は最初の5分が肝。そこに当日の全体の6割の力をかける、と師の一人から教わりました。
飛行機の離陸に似て、この時間で「よし!」という感じがあれば、あとはスッと飛んでいく。この日もよい感触を得て、ひらけました。
さっそく参加者同士、1テーブル3人でこちらをテーマに対話をしました。
もう観た人は、「沈没家族、どうだった?」
まだ観ていない人は「なんで興味もった?どんなイメージ?」
まずはA5の紙に今パッと出たキーワードやフレーズ、言葉で出ない人は絵を描いてもらって、それを元に1人1分で紹介。その後12分ほどテーブルの3人でフリートークをしてもらいました。こうすると、きょう、今、この場で、自分がどんな関心から座っているのかが相手にもわかるし自分にもわかります。飛び石のまずは最初の石を置きます。
一度映画を観た方はやはり、"あの"穂子さんを見たい!会いたい!という動機が大きいかなと思われますが、他にも、"家族ってなんだろう"と日頃から考えている方や、共同保育やシェアハウスという暮らしに関心のある方、とにかく衝撃だった、うらやましい、なぜか気になるから...といったような関心があるように見えました。
話しづらそうな人はいないかなと見回っていましたが、最初に一人ずつの話す時間を取っていたのと、合間で「声が聞こえない人がいたらお話を振ってあげてください」などお願いしたり、3人という話しやすい人数で組んでいたからか、どのテーブルもいろいろな話が盛り上がっていました。
それはそれはもう大変なにぎやかさ!!この景色がやっぱりうれしい。
話してみてどう?
終わってから、「どんな話をしたのか、話していて印象に残ったことがあればシェアしてほしいです」と7, 8テーブルぐらいの方にマイクを回すと、これまた1テーブルごとに、1人ひとりに異なる、彩り豊かな景色を話してくださって、「そんな関心から?」「へえ、そんなふうに見たのか」「あれを見てそれを受け取るのか!」など、話を聞いていてまた話したくなるような衝動がわいてきます。
40数人中ごく一部の方の声だったけれども、こんな方がきょうここに来ていて、声を聞かなかった他の方にもさぞかし多種多様なエピソードをお持ちなんだろうなぁとも思わされました。
3人では少ない、でも全テーブルだと時間が足りないし、聞き手(お客さん)が受け取る容量オーバーで聞き続けられないだろう、というところで、7,8人ほどで「こんなものかな」と止めました。もっと聞きたかったけど!
実は沈没のメンバーも数人紛れていたりして、ちょっとしたサプライズ感もあったようです。
そのような流れを受けて、次は、真ん中の椅子に登壇者の穂子さん、土さん、ライチさんの3名に座っていただいて、
今のみんなの話を聞いていてどう思う?
をテーマに語っていただきました。「こんな話やこんな話が出ましたが、今それについて感じること考えることは?」と振ってからわたしはその対話には入らず、外側からお客さんと一緒に聞きました。
最後にマイクを向けた方が「自分は一人の時間が大事なので、沈没ハウスに暮らすのは難しいのだけれども、そのあたりのプライバシーについてはどうだったんだろう」という感想を話してくださったのを、穂子さんが受けて、「わたしも一人の時間必要ですよ」と話しがはじまりました。
その後話題が展開していき、こんな話をしました。
ちなみにこれは、誰がどのタイミングで何を書いてもよい付箋。
人の話を聞いていると書き留めたくなる人種(!)が一定数いるのです。わたしもその一人。書いて出すと安心する。そしてそれがテーブルの上に置かれていると、他の人たちの理解や整理の助けになったり、「自分とは違うポイントを拾う」=多様な視点に気づくきっかけになります。
次は、「観客」の時間。真ん中の椅子にお客さんの中から3名の方に出てきていただき、わたしがファシリテートしながら、
今の登壇者3名の話を聞いてどう思った?
を話しました。先ほどはわたしが個別にマイクを向けて感想を聞き、全体へシェアする形にしましたが、今度は観客同士が4人で話しているところを全員に「鑑賞」してもらいます。これがわたしのつくる対話の場の肝。(理由はまた書きたい)
こんなふうに、「観客」と「映画の人」のそれぞれの対話と鑑賞の時間をつくっています。なんのために、だれと、何をするかを関わる人たちと設計していくのが場づくり、ファシリテーターの仕事です。
ここの写真が手元になかったので、どなたかが書いてくださった付箋を貼ります。
ここまで場で語ってきたこと、3名の対話を鑑賞した経験、そこから出てきた自分の物語が語られました。
深まる対話、ひらかれる自己。
ノリとは全く異なる、この流れでなければ出てこなかった、ほんものの言葉。
ここで席替え1回目。
せっかく来たからには、できるだけ多様な背景と関心を持つ人と交流して、自分にはない視点を持ち帰ってもらいたいのです。
さらに、分かれて対話していた【観客】と【登壇者】の垣根を外して3名もテーブルに入ってもらい、
今のを聞いてどう思った?
を話していただきました。
盛り上がるテーブル。付箋ももりもり。
10分ほど話していただいたところで、
席替え2回目
話は尽きない!でも終わりの時間が来てしまいます。この直後のレイトショーを観る方のために、この日はどうしても時間は守らなくては!ということで、クロージングへ。
きょうのひと言!
を1人1枚書いていただきました。
皆さんの受け取ったものの、凝縮された表現!!
お客さんが書いてくれた一枚をライチさんが指名して、それに書かれている言葉について聞かせていただきました。穂子さんへの質問で、「八丈島に移った理由」について。これもまた、ここでしか聴くことができない話。
場にいて個人的にずっと感じてきた、「ドキュメンタリーがずっと続いている!」がここで場で共有されたような感覚がしました。
映画「沈没家族」は土さんがカメラを通して写し、物語として編集し、人生のごく一部を切り取ったものだとわかっているけれども、あのドキュメンタリーを観た自分が感じた存在感は確かにあった。
その存在感を生身の体で生きている人がいて、あの物語の続きを、語られていなかったことを山ほど持ってきょうも生きている人がいる。
それが今目の前にいる、というダイナミズム。
最後の最後にこのような時間が訪れた。
場が連れて行ってくれる美しい場所に、皆さんで一緒にたどり着いたような感触をわたしは得ました。
最後に監督から挨拶があり、皆さんで記念撮影をしました。
ご参加くださった様、ご関心・ご声援をお寄せくださった皆様、
ありがとうございました!!!!
観てなくても語りたい!
語ってからこのあと観るのがより楽しみになった!
もう一回観たくなった!
などの声が聞かれ、鑑賞対話の場の可能性を感じました。
あふれる思いのアンケートはこちらに掲載しています。
わたしのところには、
「ず〜っとみんなの話を聴いてたかったし、わたしもず〜っと話してたかったなと思いながら帰りました」
という感想が届いて、ああ楽しんでいただけたんだな、よかったなぁと、あたたかい気持ちになりました。
付箋の山から見つけたこんな言葉も、映画の力、場の力。
観て語る、対等性と個別性、多様性を大切にして語る。
それが実現できているのはこの映画と、産み育んできた方々のおかげだなぁとも思います。
穂子さん、始めてくださって、
ライチさん、作ってくださって、
土さん、撮ってくださって、
配給の大澤さん、宣伝の加瀬さん、ポレポレ東中野さん、届けてくださって、
カフェポレポレさん、場所を守ってくださって、
ありがとうございました。
映画はポレポレ東中野でもロングラン上映が決定!仙台、大阪を皮切りに、全国上映がはじまりました。ぜひお運びください。
上映劇場一覧(公式HP)
それから、
これまでこの映画を観に劇場に足を運んだり、この映画について、言葉にして表現してくださったお一人お一人に、ありがとうございました。
わたしはこれからも映画はもちろん、さまざまな作品・表現に対話をセットし、作り手、届け手、受け取り手のあいだをつなぐ場をつくっていきます。
(そのお仕事の話はこちらに書きました。ご興味ある方は読んでくださいませ!)
どちらかでまたお目にかかれますように。
*おまけ*
穂子さんが八丈島で育てているとーとーめ(鶏)の卵。
大きさを比べるために名刺を置いてみたが、このボリューム感はやはり写真では伝わらなかった...。いろんなサイズがあるのも鶏が産んで、人が届けてくれた感じがする。
"トウモロコシを資料に加えていない"から黄身がレモン色になる...知らなかった。美味しかったです。
"とーとーめも人も、それぞれの営みをそれぞれまっとうに送り、命をのっとられずに生きることを望みます"、というところが穂子さんらしい。