ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

《レポート》2/11 トークバックでゆるっと話そう@シネマ・チュプキ・タバタ

建国記念の日で祝日の夜。
シネマ・チュプキ・タバタで「ゆるっと話そう」をひらきました。

お知らせページ>http://chupki.jpn.org/archives/5288

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今回の映画は、『トークバック 沈黙を破る女たち』

舞台はサンフランシスコ。元受刑者とHIV/AID陽性者が、自分たちの人生を芝居にした。暴力にさらされ、"どん底"を生き抜いてきた女たちの現実とファンタジー。舞台で、日常でトークバック(声をあげ、呼応)する女たち。

彼女たちの演劇は芸術か、治療か、それとも革命か?

芝居を通して自分に向き合い、社会に挑戦する8人の女たちに光をあてた、群像ドキュメンタリー。(公式チラシより)

 

この日の上映は満席。

ゆるっと話そうは予約不要で人数制限もないのですが、これはさすがにいつもの2階では入りきらないかも?せっかく来てくださったのに、隣の人と近すぎてぎゅうぎゅうになって不快な思いをさせてしまうのは申し訳ない。

...ということで、スタッフの宮城さんと相談して、同じ商店街のななめ向かいのインド料理屋さんでひらくことに。

お客様にもワンドリンクかかりますが...ということをお伝えしてのご案内となりました。

 

やはりこの映画、語らずにはいられないのですね。

映画の中から、「立ち上がれ!声を上げろ!」と煽られているもんね!^^

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どんな場も必ずなんらかのsensitivityを持っているのですが、この日は特にてんこ盛りだったので、より具体的にグランドルールの共有をしました。

 

・私を主語に話してほしい。
トークバック』という映画の性質が、呼応を求めているから。
でもこの映画で対話するなら、分析的で客観的な関わりよりも「わたし/あなたの中から何が立ち上がっているか?」を交わせるといいなと思っている。

・みんな何かしらのマイノリティであることを胸に置いて。

映画に関連することだけでも、HIV / AIDS陽性者、アルコール依存症者、薬物依存症者、シングルマザー、DV・虐待サバイバー、元受刑者、被害者遺族・加害者遺族...などさまざまある。この中にもいるかもしれない、ということを可能な限り思って発言をお願いしたい。


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みなさん、あたたかく頷いてくださって、ここでかなりホッとしました。

そして、この映画の大きな軸のひとつである、HIV / AIDSについての基礎知識を共有しました。

映画に出てきた、「コーヒーカップを使わせなくなった」「妊娠したい」「HIV=死ではない」だけでも、ちょっとあやふや、知らない、わからないがある人がいるかもしれない。わたしのためにも、みんなのためにも、そこを確認して場を慣らして、また安心してもらってから、ほんとうにみんなでもっと行きたいところを目指そうと思ったのです。

 

参考にした資料(一部)

北海道大学病院HIV診療支援センター HIVの基礎知識

国立病院機構九州医療センター HIV / AIDS Q&A

国立感染症研究所 AIDSとは

国立感染症研究所 HIV / AIDS

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その後ペアで感想を交換。

同じ場所で、同じ映画を観たという経験をしているけれど、はじめましての人同士が安心して自分の感覚を表現するには、できるだけ小さい単位からはじめるのがよいのです。

わたしもペアの方に話を聴いてもらい、話を聴きました。

聴いていたら思わず涙してしまいました。

語りがとても美しかったので。

 

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自分の気持ちを一旦言葉にできて、少し落ち着けた方から、

話を聴いていて・話をして思ったこと、

話し足りなかったこと、

みなさんに聴いてもらいたい宣言

などを手を挙げて(任意で)、話してもらいました。

映画冒頭に灯った、「沈黙」という言葉の意味について。

今ある自分の仲間との関係について。

子どもとの関係について教育について。

演劇という手法について。

対話について。

自分自身のとの向き合い方について...など、映画に登場した人物や、自分の人生を行き来した、様々な感想が聞かれました。

今まさにわいている感情、

映画の何から自分の何が喚起されたか、

映画との出会いが自分の人生にとってどのような体験だったか、

ここからのわたしはどのように生きたいか。

 

一人ひとりが個別のものを受け取って、それを自分の言葉で語って、みんなで大事にできたことが、とてもよかったです。

 

わたしもぼろぼろ泣いてしまったので、びっくりした方もいるかもしれないですね。

わたしは最近、こういう場で涙が出てもぜんぜん気にならなくなりました。

それはファシリテーターが場の中でもっとも正直であることが大切だと思っているから。

場のモデルでありたい、みんなに正直に自分らしくいてもらいたいから。

だから、「こうなってもいいんですよ、大丈夫ですよ、安心ですよ、それが自然だもの」ということを自分全部を使って表現しています。

 

急遽、参加してくださった坂上監督からは(そう!来てくださったんですよ!!!)、HIV/AIDSに関する基礎的な知識の補足や映画に出てきた彼女たちのその後などをシェアしていただきました。

それぞれの人生を歩んでいることが知れて、ほんとうにうれしかった。

おめでとう!幸あれ!という気持ち。

 

それと同時に、映画に写っているあの人たちは、どんどん変化していっているんだ、ということも思いました。

ドキュメンタリーは、まだ生きている人を、撮影者のある態度やある意図でもって編集して、残してしまう行為。

それを観る鑑賞者の中では止まったままになっていたり、鑑賞者の中のイメージや解釈で勝手に想像を膨らまして展開していく。

でもその人自身の人生は目まぐるしく変化していく。

ドキュメンタリーを見るときの作法というかわきまえが必要になるということを、あらためて思いました。

 

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どんな場だったのか。受け手、届け手、作り手それぞれの風景。

 

受け手(参加してくださった方)の感想記事

note.com

 

届け手(チュプキのスタッフさん)のレポート。

www.facebook.com

 

作り手(坂上香監督)のコメント。

 

 

この日この時間、場に集った人の人生が、ふっと交錯した時間。

こういう非日常が、日常の中に据える。

非日常から日常をふりかえる。

入るときは少し緊張もあるけれど、出てきて日常に戻るときには、自分の内からほかほかと温もりを感じるような、根拠なく心強いような、世界とのつながりを感じられるような.......。

そういう鑑賞対話の場をこれからもつくっていけたらと思います。

 

ありがとうございました。

 

 

 

こちらもぜひおすすめしたい、”トークバック”製作ノート。

撮影までの経緯、撮影中のこぼれ話、もはや他人とは思えない彼女たちのその後や監督の思いをたっぷりと聴かせてもらえます。

この濃密さ!このボリューム!

まるでもう一本追加で映画を観たかのような読後感です。

wan.or.jp

 

 

当日ご紹介した書籍。 この映画から派生することの、ごく一部。

   

 

関連書籍がありすぎて、載せきれないですね。まだまだあります。

こうしてみると、わたし自身、関心から関心をつなげ、いろんな旅をしてきたんだな、と思います。

坂上香さんの「アミティ」の本が絶版なのはとても残念ですね。図書館でも読めるけれど、再版してほしいなぁ。

 

 

おまけ。 

映画についてのわたしの感想。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

 

”人は自分の中に作り上げた「牢獄」からいかに自由になれるか”

 

 

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