ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

漫画『夜明けの図書館』

「大津絵が好き!」という話をnoteで音声配信したら、

note.com

 

友人が「この漫画に大津絵のことが載ってるよ!」と教えてくれた。

 

 『夜明けの図書館』

 

なんと、図書館司書さんを主人公にした、レファレンスに光を当てた漫画という。

これはなんとしたこと...!

わたしにとって図書館は、ひと言では語れない、いや、一晩かかっても語りつくせない対象。

しかも、人と本をつなげる知の泉、貴い専門職である司書さんが主役の漫画とは...!!

 

これは紹介してもらえてほんとうによかった。

そして大津絵よ、つなげてくれてありがとう。ますます好きになっちゃったよ。

 

 

レファレンスとは、

利用者の"知りたい"を調査・お手伝いする仕事で
図書館において重要な業務なのです

たとえば昔読んだ本をもう一度読みたい(タイトルは忘れてしまったけど)

あるテーマについて詳しく知りたい など(人口推移についてのデータを)

珍問・奇問から難問まで
万(よろず)答えを求められるのです

(本文より)

 

端末を使った検索方法なら、小学生でもできる。

それがヒットしなかったときに、問いかけて引き出して、思い当たる引き出しをどれだけたくさん持って、ネットワークを駆使して、知りたいことに近づいていけるかに、専門職の手腕が発揮される。

その専門性を一話ごとに異なる角度から迫りつつ、いち図書館司書の成長を追いつつ、物語として楽しめる。

レファレンス以外にも、図書館のバックヤードがどんな人員配置になっていて、何が行われているのかを丁寧にわかりやすく、物語の途上として違和感なく覗かせてくれている。

絵柄は、派手でなく地味でなく、うまく言えないけれど、野の花を部屋に生けたときのようにスッと馴染んでくる感じ。

 

 

「こんなすごいこと、しょっちゅう起こるわけないじゃん」と思う人もいるかもしれない。

でも、わたしが公立図書館でアルバイトをしていた半年の間でも、いろいろ見聞きしたし、それに、日頃から人の集う現場を営んでいると、信じられないようなドラマが実際に起こっている。

だから同じぐらい、あるいはそれ以上の物語はあるだろうなぁと、わたしなりにリアリティを持って読んだ。

作家さんの取材がとても丁寧なのだろう。

 

紹介してもらった大津絵が出てくるのは、コミック4巻の第15話。

どういう流れで登場するのかと思ったら、縦軸には嘱託職員の立場や扱いへの思いがあり、横軸に大津絵の探索があるお話で、この絡ませ方がなんともよかった。

 

特に印象深いのが、コミック3巻の第11話・病気を抱えた人と図書館の本。

病気を抱え

すがるような思いで

図書館を訪れる人について

深く考えたことがなかった

(中略)

消えていく不明本も

もしかしたら

潜在的なニーズで

利用者のSOSかもしれない

(本文より)

 

わたし自身、類似の経験をしている。

11年前、産後の心身の不調を救ってくれたのが、まさに図書館で、産前に借りたことのある一冊の本だった。

「たしかあのとき借りたあの本に書いてあったはず...」と、藁をもすがる思いで、出産前に借りた本のキーワードを拾って、どうにか検索をかけて、求める場にたどり着くことができた。あのときは決死の思いだった。

あの図書館の、あの棚に、あの本がなければ、今のわたしはいなかったかもしれない。

この経験はたぶん一生忘れられない。

 

図書館は、単に情報の倉庫として存在しているのではない。

この物質としての本が棚に並んでいる、背表紙が視界に入ってくる状態そのものが、まずは人を慰める。

「あなたの抱えている疑問や好奇心や悩みは、この厚みの中にヒントや答えがあります。同じテーマで考えている/いた人間が他にもいるのですよ」...と力強く承認してくれている。

図書館においては、貸し出す・返すという作業の他に発生する、
・探しているものがない、
・もっといろんな切り口・いろんな形式・いろんな時代・いろんな地域の資料が読みたい、
・そもそも何の本が読みたいかわからない、

というモヤモヤこそが宝だ。

 

知りたいとは、生きる意欲そのものだから。

 

生きようとする人。

それに応える本。

つなげる司書。

 

他にも、郷土史を記録する意味、子どもの利用者との向き合い、居場所や交流の場、異文化・多文化共生、学習障害など、今日的なトピックもさりげなく盛り込んで、いっそう図書館の存在意義を伝えてくれている。

 

2020年3月現在、6巻が出ている。

発刊は1〜2年に1冊と、とてもゆっくりだが、こちらもゆっくりとした気持ちで待ちたい本だ。

 

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レファレンスつながりで、おまけ。

わたしが大好きなツイッターアカウント 国立国会図書館レファ協をご紹介したい。

twitter.com

 

レファレンス協同データベースは、国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築している、調べ物のためのデータベースです。


目的:

レファレンス協同データベース事業は、公共図書館大学図書館学校図書館専門図書館等におけるレファレンス事例、調べ方マニュアル、特別コレクション及び参加館プロファイルに係るデータを蓄積し、並びにデータをインターネットを通じて提供することにより、図書館等におけるレファレンスサービス及び一般利用者の調査研究活動を支援することを目的とする事業です。(レファ協HPより)

 

ツイートを見てみると、全国のさまざまな図書館に寄せられた、利用者からのさまざまな調査依頼と回答の実例が流れている。

 

いちユーザーとしては、「こんな質問をする人がいるのか、マニアックすぎる!」とうれしくなってしまうし、「確かにこれは知りたい、知れたらおもしろそう」と思うものもある。

それに対する回答に、「こういう回答をしたのか、よくそこまで調べたなぁ」とレファレンススキルに驚嘆したり、「なるほど、こういう観点で調べ方をすればいいのか」と自分が調査するときの参考にもなる。

 

フォローしておくと、ときどき流れてくるツイートに心が和む。おすすめ。

 

 

もいっこおまけ。去年観た映画の感想。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

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鑑賞対話ファシリテーター、場づくりコンサルタント、感想パフォーマー
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