映画『ハッパGoGo 大統領極秘指令』(2017年、ウルグアイ)
いやはや、最高!!何も考えずに笑える!!
久しぶりではないですか、こういうの。
近頃、今までの笑いは誰かを傷つけたり損なったりするものの上に成り立っていたんだなと気づいて、おいそれと笑えなくなっていたから。
物語の発端は、2013年のホセ・ムヒカ大統領下での大麻(マリファナ)合法化。
合法化の最大の目的は、栽培・流通を国の管理下で行うことによって闇市場での価格を爆下げし、密売組織を弱体化させること。先進国としては2018年にカナダのトルドー首相が始めて大麻の合法化に踏み切ったが、その理由もやはり犯罪組織の資金源を断つことだった。
物語の詳しい背景は上の記事と公式サイトのAboutがわかりやすいので、ぜひお読みいただきたいが、「この映画自体は元大統領まで巻き込む壮大なフィクション。けれど大麻事情に関する部分はノンフィクション」というところだけ抑えていればOK。楽しく観られる。
「どこからがほんとでどこからがつくりもの?」とごちゃまぜになっているあたりがおもしろい。ムヒカが大統領だったのも本当だし、あの家に住んでいるのも本当。ムヒカとオバマの会談映像も本物。たぶんアメリカでの市民の反応や大麻市場もあのような感じなのだろう。
そういうギリギリのところを攻めながら、基本的にはずーーーっと健康的なコメディ。ほんとうにずっと笑っている。国家レベルの機密プロジェクトと言いながら、グズグズしていて、でも謎にやり手で飽きない。
ムヒカの映画を観たり、絵本を読んで、「ああ、ムヒカってこういう清貧な賢人なのか、素晴らしいな」と思っていた方には、「めちゃノリいいおっちゃんやん!!懐広い!!」と驚くはず。ムヒカが愛される理由がまた分かった気がする。
日本じゃちょっと考えられない。こんなの企画した段階で、たくさんの権力による圧力や検閲がかかるだろう。天皇や首相や公的機関をネタにして(捏造して)アメリカとの関係を描いて、しかも大麻......まったく想像できない。そもそも「自国を笑う」とか、「官僚的性質を批判する」とかできなそう。
だから余計に「ここまでやってもゆるされるのか〜」という逸脱ぶりが観ていて爽快なんだろう。羨ましささえある。いいな、ウルグアイ。
これまで映画には出てこなかったムヒカの家の納屋も観られるので、ムヒカファン必見かも。
▼ムヒカ関連のドキュメンタリー
▼日本人にとっての麻
▼ジャズとドラッグ、よく耳にするドラッグと歴史の中の位置付け。
▼公式サイトのこぼれ話。医療大麻の話、知りたかった!
▼読んでみたい本
「危ないものだからとりあえず近寄らない」とだけ認識していて、「それが一体なんなのか」ということはけっこう知らない。そういうことって多いなぁ。
※当然のことながら、この映画も、この感想も大麻使用を積極的に推奨するものではありません。
(追記)
原題:MISION NO OFICIAL
英題:GET THE WEED
邦題:ハッパGoGo 大統領極秘指令
ぶっちぎりで邦題がオモロイ!!!
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稲葉麻由美、高橋ライチ、舟之川聖子/著(三恵社, 2020年)