ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

読書会のための読書(『サード・キッチン』読書会に向けて)

『サード・キッチン』という小説の読書会のために調べた本。
これも場づくり。準備の一環です。

レポートに本の紹介も含めると長くなってしまうので、別記事にしました。
読書会のレポートはこちら。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 白尾悠さん著書。
『サード・キッチン』(河出書房新社)『いまは、空しか見えない』(新潮社)

 

海外の高校&大学へ行こう!2020年度 アルク

アメリカの大学に留学するとき、どんなルートがあるのか、どのぐらいお金がかかるのか、そもそもアメリカの教育制度ってどうなっているのか、物語の背景を知りたくて。

アメリカ教育制度」という点では、"Most Likely To Succeed"を語る会でも役に立った。日本の教育を他国と比較して考えたいときにも役に立つ。英語圏アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドだけでも助かる。実は知らないことが多い。インターネットで探すこともできるけど情報が断片的。同じフォーマットの構成で、情報として網羅的に一冊にまとまっているムック本は、ありがたい。

 

 『ハーバード大学は「音楽」で人を育てるーーー21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』菅野恵理子/著(アルテスパブリッシング)

尚美の通う大学がリベラル・アーツ教育を行う大学という設定だったので、参考に読んだ。

音楽を学ぶことは、音楽家を目指す人だけが必要なのではなく、教養として音楽を学ぶことの意味、意義が展開される。「音楽を学ぶとは何か」「芸術に触れるとは何か」「芸術をとおして何を学べるのか」。

ここで注目したいのは、どのように「知識」を「知力」に変えていくかである。静から動への展開、といってもよいだろうか。時代を経て淘汰されてきた芸術作品からそのエッセンスを読み取り、生かしてこそ、はじめて知識が知力となる。(p.38)

わたしが拙著(共著)『きみがつくる きみがみつける  社会のトリセツ』で書ききれなかった部分を詳細なリサーチと考察に基づいて補強していただいているようでもある。

また、「学び」について考えるにあたっても、大学の音楽を取り入れるカリキュラムは興味深い。

たとえばいま自分の目の前で起こっていること、身のまわりで起こっていることに対して、自分がどう向き合うのか。そのヒントを授けてくれるのが知識であり、それを生かして対象とかかわっていくことが知力だとすれば、その展開のプロセスには「体験」が有意義である。(p.38)

 

 

 『大統領でたどるアメリカの歴史』明石和康/著(岩波書店/岩波ジュニア新書)

サードキッチンには、1997年〜1998年当時のアメリカで、学生や教員が政治に関する言論の場をひらくシーンもある。わたしは日本の歴史は元号で辿ると特徴を掴みやすいと考えているが、アメリカの場合は、年代もしくは大統領で語られやすいように感じていたので、こんな本も借りてみた。初代ジョージ・ワシントンから、第44代バラク・オバマまで、名前だけは知っているけれど詳しくは知らない大統領が並ぶ。

どういう流れの中で就任し、どのような政策がどのようにアメリカ社会に影響を与え、それがその後の歴史や現代にどのように影響を与えているかを考えながら読むと興味深い。たとえば「Black Lives Matter」や「黒人差別」をテーマに辿っていくのもおもしろい。

文学や映画作品などを観る時に参照すると、年代と大統領で引くと、当時の時代背景が理解できて、よい。

 

『ある晴れた夏の朝』小手鞠るい/著(偕成社

戦争、原爆、国籍、討論などのキーワードが出てきてすぐに思い出したのがこの本。

感想はこちらの記事に詳しく書いた。

 

 

『国籍の?(ハテナ)がわかる本─日本人ってだれのこと? 外国人ってだれのこと?』 木下理仁/著(太郎次郎社エディタス)

『サード・キッチン』 の中では、国籍や民族やルーツとアイデンティティにまつわるエピソードはかなり頻繁に出てくる。本書は、国籍とそれが含む実に多くのトピックを網羅しながらも、わかりやすく、驚くほどコンパクトにまとめられている。国籍と○○人、外国人にとっての日本国籍、日本人と国際結婚、在日韓国人在日朝鮮人と国籍、外国人の参政権難民認定など、「知らなかった......」が満載。

 

 

『デモいこ!---声をあげれば世界が変わる 街を歩けば社会が見える』TwitNoNukes/編(河出書房新社

デモの話は、『サード・キッチン』 ではたぶんほんの少ししか出てきていなかったと思うが(確かベトナム戦争のくだり)、「若者の政治参加が盛ん」という背景がある日本以外の国を理解したかったのと、『きみトリ』で、「デモに参加する方法もある」と書いておいて、デモのやり方を伝えていなかったなと出版してから気づいたので、ここで紹介しておきたい。

p.7〜p.12の松沢呉一さんによる「デモはたのしい」に非常に大事なことが書かれている。何度も読み返したい。絶版になっているが、中古や図書館でなんとか入手して読んでほしい。

 

〈超・多国籍学校〉は今日もにぎやか!――多文化共生って何だろう 菊池聡/著(岩波書店/岩波ジュニア新書)

このあたりになってくるとかなり『サード・キッチン』からは外れてしまうが、同じタイミングで図書館で借りたので紹介しておきたい。

わたしは以前から、外国籍や外国にルーツのある子どもが、日本社会で生きていく上での困難や共生の制度や知恵などについて関心を寄せてきた。以前、こちらの記事で紹介した本もそういった一冊。

社会から居場所を追われ、孤立した若い人が凄惨な事件に陥ったことが、悲しい記憶として忘れられない。我が子の学校にも外国籍や外国にルーツのある子はいるので、周りにいる大人として理解しておきたいということもあるし、場をつくるファシリテーターとしても持っておきたい知識や知恵がある。

本書で紹介されている、横浜市の飯田北いちょう小学校は、団地好きな人なら知っている、県営いちょう団地のある学区で、外国籍や外国にルーツを持つ子どもたちが多い。他の自治体の例は不勉強で知らないのだが、生じている事態に一つずつ対応し、制度をつくり、試行錯誤を重ねているうちに、日本でも先進的な取り組みになっていったのでは、というふうにわたしは読んだ。特に「異国で学ぶ子どもたちがどのように母語を保つのか、という課題への取り組み」が同校で重視されている点からそう感じる。

本書には、その他の視点として、日本人が多く渡っているブラジルやアメリカで、日本国籍、日本ルーツの子どもへの教育がどのようになっているのかの紹介もある。比較するとまだまだ発展途上な部分ばかりが目に付く。それでもまずは好事例を持つ現場の取り組みのシェアによって、自分の現場を照らされることから、一つずつ考えていくしかない。引き続き関心を持っていきたい分野。

 

あと2冊は、時間がなくて読みきれなかったもの。とても良さそうだったので、またいつかの機会に読みたい。

『他者を感じる社会学〜差別から考える』好井裕明/著(ちくまプリマー新書

『娘に語る人種差別』タハール・ベン・ジェルーン /著(青土社) 

 

 

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