ひととび〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

本『二十歳のころ〈1〉1937‐1958―立花ゼミ「調べて書く」共同製作』

立花隆著『二十歳のころ』。2巻。〈1〉1937‐1958 〈2〉1960‐2001

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2021年4月の死去の報せを見て、一番影響を受けた著作は何かと考えたら、やはりこれだった。

きっかけは、2007年頃に通っていた文章演習の講座で強くおすすめされたから。2冊とも買って読んだ。

印象に残っているのは、気になる人に話を聴きに行くとか、下手でもとにかく書いてみるとか、世代を超えて接点をもつというところ。インタビューというものを意識した最初の経験かもしれない。

当時、私は今のような仕事を思いついてすらいなかったので、インタビューも自分からものすごく遠い場所にあった。ライターとか作家とかメディアとか、そういう特別な仕事の人がやるもので、自分はそれを読むだけの側だと思っていた。

今の自分なら、個人史を聞き取るおもしろさとか、世代が移り変わっていくことをインタビューを通して実感できるとか、またいろんなインスピレーションが湧きそうだ。もしかしたらムラ社会ではこういうふうに年長者の話を聞きながら自立していったのかもしれない、なども。

 

「若い人」の助けになることなら大人は喜んで協力したいという気持ちがある、ということもこの本で最初に知ったかも。この頃はまだ子どももいなかったから、「若い人」も遠い存在だった。私自身、20歳前後で大人と交流した記憶があまりなくて、ピンときていなかった。

この本を読んだときの私は、もういい大人だったにもかかわらず、むしろまだこちらが「話聞かせてください」と言える立場ぐらいに思ってたかもしれない。ひぃ〜。大人になるのが本当に遅かったな。

その後、何度か学生さんのゼミ発表やレポートのために協力する機会があり、こういうことかとわかったけれど。

もちろんお願いの仕方はとても重要。

たまたま昨日ツイッターを見ていたら、「『インタビューしてレポート提出が大学の推薦入試の条件になっているので、お時間ください』って依頼が来て、いや、うちの大学受けるのでもないのに、なんで協力せなあかんねん。その大学が受け皿用意しろや」という投稿を見かけた。ああーこういうのは……あかんよね。

 

若いうちだよと思うのは、年齢が重なっていって「大人」になっちゃうと、お願いしづらくなる。

それぞれに自分の仕事を持つようになるし、他人のために時間を使うことに対して、シビアにならざるを得ない面も出てくる。

私も以前、「読書会を自分でも主催したいので、いろいろお尋ねしたい」というご連絡を知らない人からもらったときに、「そういうアドバイスはお仕事でやっていますので、有料になりますが」とお返事したら、「いや、経験から学んだことを教えてほしいだけです」と言われて、いやあ……それが仕事なんだけどなと思ったことがあった。これが中学生や高校生なら喜んで話を聞いたり、知っていることをシェアしたと思う。

もちろんそれ以外にも友情から提供することもあるし、何かすごく困っている人がいれば手助けすることもあるし、仕事だから絶対お金もらわないとやらない、というわけではないけれども。

たとえば、同じ話を聴きに行くといっても、和田靜香さんが国会議員に話を聞きに行ったこの取り組みは、対話から学び合う共同制作。これはよかった。

 

『二十歳のころ』に影響を受けている大学の先生は、今もたぶん多いと思う。

そしてなぜここに本のことを書いたかというと、手放しちゃった後悔が深いからなんだよな。ざくざく片付けることは良いことだと思って、当時大量に本や雑誌やパンフレットを手放していたけれど、必要なときになくて「やっちまった」と思うことがしばしばある。

とはいえ、今読んだら読んだで、「家父長制社会」「男社会」「女性蔑視社会」など当時は気づいていなかった実相にぶち当たるかもしれない、それでダメージ食らうかもしれないので、いきなり買い直すのは怖い。

まずは図書館でパラパラめくってみようかな……。

 

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立花隆といえば、この本も影響を受けた。
『宇宙からの帰還』(1983年)

高校時代に友達が貸してくれて読んだ。この頃はまだスーパーヒーロー幻想が幅をきかせてる時代だった。社会的な成功者や偉人の外側だけが見られていて、内面に何が起こっているのかなどを描く物語が少なかった気がする。それも「男社会」の構造だったのかな。

感想は「宇宙飛行士もまた人間だったのだ」というごく当たり前のものだったけれど、いや、それこそが若い日の重要な体験だったと今は思う。

〈新版〉になって何か補稿があるのかな。

 

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共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年