ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

映画『ライファーズ ー終身刑を超えて』鑑賞記録

映画『ライファーズ終身刑を超えて』を観た。

chupki.jpn.org

 
2/11に『トークバック 沈黙を破る女たち』でゆるっと話そうという場をひらくにあたり、同じ監督の前作も観ておこうと思ったからだ。
 
「観ておこう」というとエラそうだ。
いや、ずっと観たかった映画だった。
見逃していた、観る機会がなかった、観る勇気がなかったのといろいろあって、ようやく巡ってきた機会、というのが正しい。
 
1月下旬から公開されて話題の『プリズン・サークル』の坂上香監督の劇場長編映画の第1作目が、この『ライファーズ』。
 
アメリカ、カリフォルニア州で、終身刑の受刑者を映したドキュメンタリー作品だ。
刑務所、終身刑、受刑者、犯罪、刑罰など、日常生活の中で身近でない人のほうが多いのではないかと想像する。
でも、だからこそ、観てほしい。
 
 
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感受性の鋭敏さは人それぞれではあるけれども
少なくとも苦手なものの多いわたしでも、なんの不安もなく最後まで観ることができた。
怒鳴り声や叫び声や金切り声、身体的・精神的暴力、手持ちカメラの揺れ、不安を煽るような音楽は、一切なかった。
それぞれの、過去を語るシーンなどはあったけれども、生々しすぎて耐えられないということはない。
 

むしろ、そこにあったのは、

真摯な言葉の重なり、ごく当たり前の痛みと悲しみの感情、温もり、愛、希望。

 

劇場からの帰り道は、あたたかさと、やるせなさが交互にやってきた。

人間性、尊厳の回復、生き直しは可能だという希望。

それと同時に、目眩がするような暴力の連鎖の根深さ。

自分の人生経験に深く食い込み、あちら側とこちら側に分けられない、行き来するような感覚もある。

「じゃあこういう場合はどうなるの?」
「もしわたしが加害者や加害者家族や、被害者や被害者遺族なら?」

という問いも次々に生まれる。

 

映画の中で印象的なのは、皆、真摯で誠実な言葉を重ねていた。
受刑者、更生プログラムを実施する人、家族、被害者、被害者遺族。

本当のことを話す、ジャッジせずに受け止める、

ということがこの映画の中には貫かれている。

 

そのおかげで、今まで理解が困難だった
加害者とは何か、
更生とは何か、
なぜ公判で罪の意識を感じたり、遺族に謝罪の気持ちが生まれる様が見られないのか、

ということの手がかりを見つけたような気がする。

 

まるであの人たちはわたしのもうひとつの姿なのではないかと思った。
それから、わたしは本当のことを話しているだろうか、と自問した。
 
『プリズン・サークル』を観た友人が、同じようなことを言っていた。
この映画が気になっている方は、ぜひ友人の感想を読んでみてほしい。
わたしもトークバックで対話の会をしたら、『プリズン・サークル』も観に行く予定だ。
 
ライファーズ』と『プリズン・サークル』を並べることで、共通と相違を見出し、さらなる対話が広がる。
もちろんそこに『トークバック』も含めたい。 

この三部作の問いかけを、大切に受け止め、わたし自身の言葉で真摯に語りたい、とあらためて思った。 

  

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サブタイトルの「終身刑を超えて

どういう意味なのかな?とずっと思っていた。

英語のタイトルは、LIFERS -Reaching for life beyond the walls

映画を観たあとに覚えたこの手触りとこのタイトルとの関係を、まだうまく言葉にすることはできない。

ただ、どちらのタイトルも、その言葉の襞の奥にあるものを表していて秀逸、ということは確か。 

 

「自分の中に平和を築けないと苦しみが終わらない」

 

 

あとから確認したこと。

終身刑とは、アメリカ合衆国カリフォルニア州における終身刑とは。

終身刑とは、刑事上の有罪判決 に基づく処罰であり、国家に対し人を生涯、つまり死ぬ まで刑務所に収容する権限を与える刑罰を意味する。(終身刑:政策提言特定非営利活動法人 監獄人権センター)

・仮釈放のない終身刑、仮釈放のある終身刑が存在する。
・仮釈放の制度のある終身刑であっても、却下され続ければ、実質「受刑者が獄死するまで収容し続ける」ことになる。

・日本における無期懲役も、終身刑に含まれる。

・リンク先の文書によれば、アメリカにおける終身刑の受刑者の数は他国と桁が違う。アメリカは厳罰化の傾向にあり、終身刑受刑者の人数は年々増加している。

・死刑制度の代替として採用している国や自治体もある。

 

アメリカにおける終身刑は、

州の刑事法は、州憲法に基づき、州ごとに制定されており、地方色が強い。(Wikipedia

ライファーズ』本編では、(おそらく2002年当時の)カリフォルニア州では、受刑者が500万人おり、そのうち10%の50万人が終身刑の受刑者とのことだった。

カリフォルニア州では、死刑制度が存置されていたが、2019年3月に一時停止が決定された。(米国:カリフォルニア州知事 死刑執行を一時停止 : アムネスティ日本 AMNESTY )しかし、連邦レベルでは、16年ぶりに死刑執行が決定されている。(https://www.bbc.com/japanese/49123965

政府、政権の動向により、刻々と変化していく。こちらの論文も参考になる。

 

知識がなくても映画を観ることはできるが、
疑問がわいたら、このあたりのトピックも辿ると、
より理解と学びが深まることと思う。

 

 

 

シネマ・チュプキ・タバタでの上映は2020年2月14日まで。

ぜひ観て、そしてあなたの周りに対話を起こしてほしい。

そうすることであなたの周りにサンクチュアリが生まれる。

chupki.jpn.org

 

 

2月11日(火/祝) 19:05-『トークバック』でゆるっと話そう
 
 

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