2021年9月11日、シネマ・チュプキ・タバタさんと、映画の感想シェアの会〈ゆるっと話そう〉を開催しました。(ゆるっと話そうとは>こちら)
第23回 ゆるっと話そう: 『プリズン・サークル』
当日の参加者
2020年1月に公開されてから1年半以上経っていますが、何度もアンコール上映があったり、各地で自主上映会がひらかれていたりと、人気が継続している(あるいはますます高まっている)作品です。
参加者の中には2回、3回と観た方も何人かおられました。その度に新たな発見を得て「感想が変わっていく」とのことでした。今回はブレイディみかこさんの近著『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』で紹介されていたことがきっかけでこの映画を観たという方も数人おられました。まだ観ていない方も「ご本人がよければOK」として対話に加わっていただきました。
また、「この映画から一体どういう対話が生まれてくるのか、そこに興味があって」と参加を決めたという動機もうかがいました。対話の可能性についての、その方の強い期待が感じられました。
「子どもの頃に(大人になる前に)手を打っておかなければいけないのではという強い危機感を覚えた」
「税金がそのような使い方をされるのは当然だと思う」
ここまでの対話を経て出てきた皆さんの言葉は、確かな当事者性を帯びていました。この映画を観ること、観た体験について語ることは、なんらかの当事者性を得ることにつながるのかもしれません。
ファシリテーターとして対話をふりかえって
・この映画を語ることの切実さを皆さんそれぞれお持ちのように感じられました。それは、昨年6月に開いたときよりも強くあったと思います。
・一つの輪(サークル)の中で発言が起こり、前の方の感想を受けてつながっていく中で、揺らぎながら場で受け止めていく時間でした。
ひと言では表しづらい大きな体験を語らずにはいられない、自分についても語りたくなる。こうしたことを大切に受けとめあえるようなコミュニケーションの文化があちこちにつくられることが、今とても必要とされているように私は感じています。
・この場はあえて1時間と設定しているので、一つひとつの発言について深く聴いていくことはできなかったのですが、言葉の奥にある思いや経験のことを想像しながら、一人ひとりの人生を感じていました。安心して言いっぱなしにすることと、深掘りしていくことのバランスが、今回は特に難しかったです。
・途中で場に出された質問に対して、「あなたはどう考えますか?」と質問をお返しできなかったこと、「皆さんからの回答について今どんな感じがしますか?」と真意に迫る問いかけをして、場で共有できなかったことが、私としては非常に悔いの残るところです。安心して質問できる場となっていてよかったという思いもありますが、場に与えた影響も大きい内容だったので、ぜひともうかがいたいところでした。
終わってから何日も経っていますが、そのことについて責めたり恥じたりして断罪したい自分と、あのときはそれが精一杯だったんだと言い訳したい自分とで、「2つの椅子」に交互に座るような体験をしています。「とっさに発言できなかった自分とその理由」を受け入れて、これからの人生や次の場に生かしていく他はないな、と今は思っています。
・TCのように専門家に付き添ってもらいながら深く潜っていくような体験も、課題の大きさによっては必要だと思いますが、「ほどよい他人」との関わりの中で知らないうちに救済されていることもきっとたくさんあると思います。それはもしかしたらわざわざ「与える」「提供する」ようなことではなく、ただ「自分に対して正直でいる」だけでも可能なのかもしれません。また、「正しさからではなく、あなたとわたしの関係において何が良いか」ということも考えます。対話未満の小さな営みにも目を向けていきたいです。
感染症流行中ということで、今回もオンラインでの開催となりました。「オンラインだったので安心して参加できた」というお声をいただいたり、普段はお会いするのが難しい方ともお話できるのが貴重ではありますが、またリアルでみなさんと顔を合わせてお話できることも願っています。
ご参加くださった皆様、チュプキさん、場を共につくってくださり、ありがとうございました!
※2021/9/23〜9/28まで延長上映決定とのことです。詳しくはこちら。
▼皆さんからご紹介いただいた参考書籍です。
・『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』ブレイディみかこ/著(文藝春秋, 2021年)
・『ライファーズ 罪に向きあう』坂上香/著(みすず書房, 2012年)
・『あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所絵本と詩の教室』寮美千子/著(西日本出版社, 2018年)
・『反省させると犯罪者になります』岡本茂樹/著(新潮社, 2013年)
▼もう一歩踏み込んで知りたい人のために
『こころの科学』(2016年7月号) 通巻 188号
特別企画:犯罪の心理
劇中に登場されていた支援員で研究者の毛利真弓さん、研究者の藤岡淳子さんの寄稿があります。
https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/7135.html
▼坂上香監督の過去作もぜひご覧いただきたいです。『プリズン・サークル』もそうですが、とても多くのインスピレーションを受ける映画です。
『Lifers ライファーズ 終身刑を超えて』
https://chupki.jpn.org/
『トークバック 沈黙を破る女たち』
https://chupki.jpn.org/
『#プリズン・サークル』
— Cinema Chupki(チュプキ) (@cinemachupki) 2021年9月19日
昨日9/19 #坂上香 監督による上映後ティーチインを開催しました!#山形国際ドキュメンタリー映画祭 で「できましたよ〜!」とお声を掛けていただいてから、アンコール二乗くらい上映させていただいる本作。
貴重なお時間をありがとうがとうございました🤲@prison_circle pic.twitter.com/lBQm0WPKXu
出所した出演者の感想は「これレベル1っすよ。予告編じゃないっすか〜」
— Cinema Chupki(チュプキ) (@cinemachupki) 2021年9月19日
2年間の取材でもカメラを入れられたのはほんの一部
中のことを知る機会は少なすぎる
多くの人が知らないからこそ、簡単に悪と言えるのでは
出所者や刑務所と関わる度、自分がどれだけ知らないのかを知る。#プリズン・サークル pic.twitter.com/JVFgGHeatD
本作を世に出してもTCが広まらない現状へのもどかしい思いが7,8割
— Cinema Chupki(チュプキ) (@cinemachupki) 2021年9月19日
ただ『#プリズン・サークル』は色々な人が新しい考えを得て、自分たちで広めてくださっている
漫画になったり、直木賞候補の『#スモールワールズ』の一章は本作を元にしてくださった
色々と刺激を与えている、広がっていることが希望。 pic.twitter.com/TmXAjmGPBF
『#プリズン・サークル』ではただ刑務所の人の映画とは思はない。内と外は無くたまたま「こっち」にいるだけ
— Cinema Chupki(チュプキ) (@cinemachupki) 2021年9月19日
生い立ちに共感する人、理解できないという人様々だが、軍隊的な刑務所の中でさえTCが成り立っていた事実を撮った
社会もTC的なもので変えられる pic.twitter.com/DUMlsM6G3X
ほんの些細な一歩、ちょっとした勇気。ここで意見を言おう。しんどそうな人がいたら声をかけよう。そんな小さなTC的なもので社会を変えていく。
— Cinema Chupki(チュプキ) (@cinemachupki) 2021年9月19日
マジョリティではないかもしれないが、変える力はある。
映画で感じたことを自分のそばの人に自分の言葉で伝えてほしい。#プリズン・サークル pic.twitter.com/ix9U3d3vcG
#プリズン・サークル 現在終映日まで満席。キャンセル待ち予約のみの受付です。
— Cinema Chupki(チュプキ) (@cinemachupki) 2021年9月19日
観て語りたくなる、伝えたくなる、傍観者ではいられなくなる。
各地で上映会が開かれ、当館でも上映し続けていきます。社会に人が繋がる芽を撒き続けてる本作の映画体験そのものがTCなのだと実感したトークでした🙇♂️ pic.twitter.com/fnO2IuwKhi
▼坂上監督インタビュー記事
http://cineref.com/report/2020/02/prison-circle.html
▼感情の取扱について
『気持ちの本』森田ゆり/作(童話館出版, 2003年)
生きる冒険地図・こころのメンテ・知恵と工夫集(子ども情報ステーション by ぷるすあるは )
▼アニメーションの若見ありささんのウェブサイト
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