ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

映画『金の糸』@岩波ホール 鑑賞記録

岩波ホールで映画『金の糸』を観た記録。

moviola.jp


3月11日の午後を家で一人で仕事をしながら過ごしたくなくて、映画を観に行った。毎年この日はトラウマ反応が出てひどく落ち込んだり、感情が揺れたりして不安定になる。東京で経験した私ですらこのようなのだから、被害の大きかった人たち、人生がすっかり変わってしまった人たち(環境としても、内面としても)の中には強い反応に苦しむこともあるのではと想像する。

 

映画はそのような人生の不運や理不尽も飲み込んだ、長い時を扱う物語だった。

人の一生を四季に例えるなら、これは冬。しかも晩冬。人生を何十年という単位でカウントする人たちにとってのリアルな物語。春や夏を生きる若い人たちにはたぶんちょっと想像がつかないであろう。私も10年前だったら、半分ぐらい寝てしまったかもなと思う。静かで、繊細で、思索に満ちた映画。とても岩波ホールらしい、良質な小品。


老い、死、別れ
喪失、記憶、救済、秘密、病、孤独
母、父、娘、息子、孫、
女性
世代、遺産、栄光、愛、夢
重荷、刷新
音楽、歌、詩、言葉、文学
共産主義、民主主義
民族、文化、
金継ぎ、モザイク、パッチワーク、曼荼羅

先をゆく人からの贈り物、手紙。

 

歌が二人をつなぐ「あの若い日々」を象徴するものになっているところは、同じく冷戦時代にも触れていた映画『コールド・ウォー』も思い出す。

旧ソ連時代の高官だったミランダが印象に残った。


この映画が撮られたのは2019年。

物語に没入しながらも、ウクライナでもこのような街並みが破壊されているだろうかとつい考えてしまう。
傷を癒やしている途上に、今また新たな傷が作られる。前時代の悪夢が繰り返しやってくる。

本当に、心から、一刻も早い終戦を願う。

 


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91歳とは思えない、溌剌とした監督の姿。作品。これもまた森美術館で観た《アナザー・エナジー展》を彷彿とさせる。ハリウッドの男性映画監督とは全く異なるフィールドで、テーマで手段で、アナザーエナジーを発揮して作られた作品、とも受け取った。


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7月に閉館する岩波ホール。あと上映待機しているのは2本。どちらも観に来るつもりだが、もしかして最後になる可能性もあると思い、たくさん写真を撮った。
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共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年