国立映画アーカイブで『第七官界彷徨 〜尾崎翠を探して』鑑賞。
まとまらない感想をバラバラと。
・ずっと観たかった作品。本は、高校生の頃に雑誌『オリーブ』で紹介されていて読んだ。あの頃『オリーブ』は本や映画や音楽など、文芸世界への架け橋になってくれていたのだ。
・浜野佐知監督とヘアメイクの小林照子さんもいらしていて、同じ空間で鑑賞するという僥倖。 時を越えて、スクリーンで、多くの観客(95%ぐらい埋まってた)と自分の原点の映画を共に観る……どんな心境でいらっしゃるんだろう。緊張してお声かけられず。
・上映前に監督から、「悲劇の人生として語られることが多いが、私はこれだけの女性が老いて虚しく亡くなっていったわけがないと思った」とおっしゃっていて。私も、尾崎翠は悲劇で幻の女流作家なんかじゃない!と思ってました。うれしい。「白石さんが翠を演じたことで、現代に蘇ったかのようだった」とおっしゃっていて、観て納得。
・女性、作家、表現、老い、愛、死。書くことをしなくなった翠の日常にも、一人の時間や、孤独や、彼女独特の世界への目の向け方があったことを感じられた。自分も老いについて少しずつ考えている今の時期なのでとても響く。そして人生のごく早い段階で書いた物語表現が、やはり彼女の真髄なのだとも思った。また読みたくなった。
・『滝を見に行く』を思い出す。
・ライブハウスと、翠の日常と、第七官界彷徨の3つの世界を行ったり来たりするのが、リズムができてくると段々心地よくなってくる。
・「この作品を映画にしたい。邪魔が入ってもなんとか闘ってものにしたい」そういう意欲があったんだ!
・町子役の柳愛里さん、良い。 赤い縮毛、可愛い。
・クレジットに「クィアなみなさん」を見つけて衝撃。1998年の時点で既にクィアという言葉があったことに驚き。公開当時観ていたとしても、きっとなんのことかわからなかっただろうな。
・とにかく没入した。ボーッとしながら帰った。ホームの端を歩かないように気をつけつつ。 映画自体、きっとすごいエネルギーで作られていたのだろうなぁとも思うし、ああ、そうか!第七官界を体験してたってことか!とも思う。映画を観ているときにいるところが第七官界なのかもしれない。人と人とがわかりあえない現実世界からの解放、それに浸っている時間のことだとしたら納得。
映画評
今日は小説家・尾崎翠の誕生日(1896年)。意識の流れや生理の不安定感をユーモラスに表出しました。僅か数年の作家活動の後、執筆を断ち切った尾崎は、近年評価が高まっています。林芙美子をして「一度読めば恋よりも憶い出が苦しい」と評せしめた主著。
— 岩波書店 (@Iwanamishoten) 2021年12月20日
『第七官界彷徨』☞ https://t.co/CIfJf6ciBJ pic.twitter.com/tHVka2Jo8w
浜野監督の2019年公開の作品、『雪子さんの足音』も観たい。
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共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年)