ひととび〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

【書籍紹介】ジェンダー表現に迷ったらこの3冊

ジェンダー表現に迷ったらとにかくこの3冊です!

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『お客様が集まる!士業のための文章術』小田順子著(2013, 株式会社翔泳社)

付録「士業として使わないほうがよい言葉の言い換え集」の「4.差別語・不快語」が、「じゃあどう言い換えればいいんだろう?」「この言葉なんか違和感がある。他に言い方があるのでは?」と思ったときにすぐ引ける、言い換え例一覧になっています。

1.性別、2.身分・職業・職種、3.心身の状態・病気、4.子ども・学校、5.人種・民族・地域、6.俗語・隠語・不快語に分類されていて、調べ物はだいたいどれかの項目で見つかります。載っていない言葉は、自分なりの用例を書き足していってもいいと思います。

「なぜいけないのか?」という根本理解も大切ですが、それがどうしてもわからないというときは、とりあえず「型」から入るのもありだと思います。一覧を眺めているだけで、どういう軸で言い換えられているのかに気づくかもしれません。「これは不適切か、そうでないか」をチェックするという行為そのものが重要ですし、その日々の積み重ねから見につくこと、学ぶことは多いと思います。

このリストが2013年にすでに作られていたことに驚きます。ようやく時代が追いついたという感じでしょうか。(こちらの記事でもお勧めしました)

 

『記者ハンドブック 第14版: 新聞用字用語集』(一般社団法人共同通信社, 2022年)

用事用語集の項の「ジェンダー平等への配慮」(p.478〜p.480)用語数としては『士業のための文章術』と比べると少ないが、用語と言い換え例と共に、なぜその用語を使ってはいけないのか、言い換える必要があるのかの説明が端的にまとまっています。

「用語だけでなく、文脈でも注意が必要」という但し書きや、そもそも1956年の発行から、綿々と版を重ねてきたハンドブックに明記されたことが重要です。今はジェンダーの課題は避けて通れないということです。時代は変わっています。

新聞記事の大原則に基づいていますが、「社会前半の文章表記にも役立つように」との意図で編まれ、出版されているハンドブックです。書き手としても、校正や校閲の作業をするときにも、参考になります。

www.hanmoto.com

 

『失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック』新聞労連ジェンダー表現ガイドブック編集チーム著(小学館, 2022年)

新聞記者やフリーランスのジャーナリストなど、メディア業界の中から立ち上がってきた動きでできた本。

用語の言い換え案の提示もありますが、上に挙げた2冊のような端的なものではありません。表面的なこと、テクニック的なことに留まらない、図象・表象における問題点(そもそも表象という観点)、ジェンダーの視点が必要な理由、無意識のうちに差別や偏見に加担してしまう構造を解き明かしてくれる本です。

読み進めていると、自分でも無意識に使っていたり、むしろ積極的に使っていた言葉や表現があり、胃が痛くもなってきます。その表現を使った理由が自分ではよくわかっているからです。でもあらためて、ここから始めていかなくては、とも思います。

※追記: 被害経験のある方は、表現例を見ることよってフラッシュバックが起きる可能性があります。ご自身の状況や体調を確認して読んでください。

 

以上、3冊ご紹介しました。

ジェンダー表現に自覚的になることは、文章を書くライター、人前で話す士業、広告制作の仕事をしている人だけでなく、日常のあらゆるコミュニケーションで言葉を使う人、つまり社会で生きるすべての人に関わることです。

SNSなどで誰もが発信者になる時代です。さらに、学校の学級通信やPTA便り、役所や企業の広報、宣伝など、普段から私たちは「ニュース」に触れています。それらは家庭や職場、地域などでの日常的な会話を通じてできあがった表現や慣習も反映されます。(『失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック』より)

仕事や活動の中で自信を持って伝えられるように、よい人間関係が築けるように、誰もが知っておきたいことです。

また、不適切な表現を見聞きしたときに、「それはおかしい」と主張し、改善を申し入れるのに使える言葉や根拠が、これらの本にはたくさん載っています。

自分の身を守る術としても、ぜひこの3冊を頼りにしてみてください。

 

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共著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社, 2020年