ひととび〜人と美の表現活動研究室

他者の表現にふれることから、自分の中にある美の感覚にもふれてみる、自分の美を表現してみる。みんなで探究する鑑賞の場づくりを通して考えることなど。

映画『寝ても覚めても』鑑賞記録

2021年9月15日、映画『寝ても覚めても』鑑賞。

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2日前に『ドライブ・マイ・カー』を観て、あまりにも衝撃を受けて、やっぱり今これも見とかな!と思って、駆け込んだ。

当時のメモを頼りに感想を記録。


いやーすごかった、これも。
お能で観たいと思った。物狂い、修羅物。
魅入られる、破滅に巻き込まれる。

踏みとどまれるかどうかをずっと試されていて、結局当人たちは踏み止まれない。
当人たちにしかわからない理由で、踏み外していく。

ホラーかよ!と突っ込みたくなる場面も多々。

いやはや、あの二人、どう生きていくんだろう。

これは終わりのない呪い? それとも壮大なラブストーリー? よくある出来事?

いやーようこんなん撮るわ!

ハラハラ、ヒリヒリ、ずっと緊張しながら観ていたので、終わったときに、はああああと思わず息をついた。

怖い。人間怖い。けど、この感じ知ってる。よく知ってる。
人を裏切りながら、傷つけながら生きている自分を指さされている感覚。

『ドライブ〜』もだけど、「あなただってそうでしょう? "ある"んでしょう?」と登場人物が「こちらを向いて」言ってくるようなシーンが多々あって、その度にギョッとする。


・『ドライブ〜』へ連なる系譜がてんこ盛りなので、勝手に関連づけていくのもおもしろい。チェーホフの『三人姉妹』が出てくるけれど、『ドライブ〜』ほどの食い込みはなし。でも演劇と映画の行き来や融合はやはり濱口世界になくてはならないもののよう。

・NTLiveで観た『シラノ・ド・ベルジュラック』のテーマにも通じる。人は人の何を愛していると言えるのか、何に惹かれているのか、それは恋愛なのか、それとも執着や依存なのか。どこからがヤバくてどこまでがセーフなのか。

・冒頭の大阪・中之島国立西洋美術館での牛腸茂雄の「SELF AND OTHERS」展で、いきなりここで私は心をわしづかみにされた。とても好きな写真家なのに、なぜかいつも逃してしまい、行けないでいた展覧会。この映画で行けるとは! このチョイス。私は監督と同世代なので、感覚的に近いものを感じた。(恐れ多くも)

・車道で笑いながらキスする二人は、デヴィッド・クローネンバーグの『クラッシュ』を彷彿とさせる。

・一瞬の波にさらわれる。抗えない力が、コツコツと築き上げてきた信頼関係をいとも簡単に、決定的に破壊する。「病みたいなもの」というのか。予防とか対処とか支援とか教育とか政治とか......そういう現実的で具体的な手段のことで外側構造を支えつつも、スピリチュアリティに接続して作用する芸能や芸術、宗教などの存在もまた、人間にとって不可欠なのかもしれない、と思ったりした。こういう作品もそういうものの一つ。

・朝子の東京の友達の鈴木マヤ役の山下リオさんは、『あのこは貴族』にも出演されてましたね。美紀の地元の友達の平田里英役で。「友達」の役が上手すぎる!

東日本大震災にまつわるシーンが挿入されていて、劇場内が揺れたり、大波が映るところがあるので、トラウマ体験がある方には、見る時少し注意されたほうがいいと思います。

シネマ・チュプキ・タバタの5周年記念月で、スタッフさんの一推し映画を上映するラインナップにこの映画が入ってました。サイトに掲載されていたコメントを転載させていただきます。

【スタッフコメント】

原作&監督が好きで、夏にコートを着てエキストラ参加もした思い出の作品。 映画を語る会に緊張しながら初参加して、 どうしても納得できないシーンについて初対面の人たちに打ち明けたりもした。 (そのとき隣に座ってた人ともうじき結婚します) 人を傷つけた、傷つけられたことがあると思っている人 つまりみんなに観てほしい (暗) 

エキストラ参加しただけでこんなことが起こるんだから、主演の二人に起こったこともまぁ、あり得るよなと思ったりもして......。

 

『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』チェーホフ(光文社)

 

 

原作『寝ても覚めても柴崎友香河出書房新社

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 2020年12月著書(共著)を出版しました。

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社