ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

《レポート》9/6 『バグダッド・カフェ』でゆるっと話そう@シネマ・チュプキ・タバタ

シネマ・チュプキ・タバタで月に一度ひらいている「ゆるっと話そう」シリーズ第3回のレポートです。

 

「ゆるっと話そう」は、映画が終わってからの45分間の小さな場。

映画観て帰る前に、
観た人同士、場内でちょこっと話してこ!

という気軽な企画です。

 

第4回は『バグダッド・カフェ <ニュー・ディレクターズ・カット版>』

こんな感じでご案内を出しました。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

さすが名作!当日は、ほぼ満席近いお客さんの入りでした。

この中でどのぐらいの方が「ゆるっと」に残ってくださるかなぁとドキドキしていたら、なんと半分以上の方が参加してくださいました。ありがたい!

観終わったあとの気分で決めていただきたいのもあって、この時間は予約制にはしていないので、当日その時間になってみて、はじめて人数がわかるという感じなのです。

 

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今回は人数が多めだったので、ひとつの輪にはならず、その席に座ったままで、「この場に来たきっかけ」を一人ひと言ずつ発声していただきました。

そのあと、2人1組で感想を交わし合い、最後にその中で出た話をシェアしてもらいながら、「全体で話す」流れにしました。

 

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わたしのように「バグダッド・カフェが青春の一本である」という人がほとんどだったのだけれど、その中身は、

・わたしが今の仕事をするに至ったきっかけの映画

という方から、

・友人に「この青がいいのよ〜」と勧められて観てみたけれど、何回見ても途中で寝てしまった

・勧められたけれど、余計見たくなくなって、今になってようやく観られた。あのとき観ていたらよかった。

・当時付き合っていた男性が好きだった映画で、若かった自分を思い出す。

・途中で全盲になったので、目で観ていた頃と今とで印象がどう変わっているか知りたい。

...など、ほんとうに様々な背景できょうもお越しいただきました。

 

当時観ていなかった方も、一度はどこかでタイトルを聞いていたり、勧められて検討したりしているという時点で、もう「出会っていた」んだろうなぁと思います。

 

 

この映画は製作が1987年。まだベルリンの壁があった頃。

日本公開が1989年。完全版の公開が1994年。

公開当初から数えれば、30年も経っているんですね。
映画を観ていて、全然古さを感じないところがすごいのですが。

それはもう、一人ひとりの人生にさぞかしいろんなことが起こったでしょうねぇ...。

 

 

シネマ・チュプキ・タバタは日本で唯一のユニバーサル・シアター。

目の見えない方、耳の聴こえない方、小さいお子さん(とお子さんを育て中の方)、車椅子の方...みんなが一緒に映画を楽しめるようにとつくられた映画館です。

この日は視覚障害のある方が3名も参加してくださって、音声ガイドで映画を観ていての感覚や感想を皆さんとシェアできました。

ゆるっとをはじめて4回目ではじめての体験。
見えるー見えないの交換ってすごく楽しいです。

 

 

「わたしが今の仕事をするに至ったきっかけの映画」とおっしゃっていたチュプキ館長の平塚さん。

ご本人からその思いについてスピーチしていただきました。
このお話がとってもよかった...。聞けてよかったです。

 

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今観てみたら、登場人物それぞれの人生がより奥行きを持って見えてきた。
あの頃は見えていなかったもの、こと、思い...。

出てくる人たちはみんな事情がありそうで、それを説明しすぎないのがまたよくて、想像の余地がたくさんあるところがいい。

「どうしてなんだろう?」と想像するのも楽しい。

 

わたしは平塚さんとペアで感想を話したのですが、「一番気になった人物は誰?」と質問され、「サロモ」と答えました。30年前はまったく注目していなかった人物です。

ピアノへの情熱があって、でも何かの事情で子ども(赤ん坊)がいて、世話をしつつ練習。でも誰も聞いていなくて、むしろうるさがられているだけ...。でもそれがたった一人の一瞬の行動によって全然変わってしまう。

そのシーンの美しさが心に沁みました。共感も、すごくある。(変わったなー自分!)

 

「冒頭のシーンで少し音が映像が荒っぽくかったのが、主人公のジャスミンの登場によって、次第に変化していく様子が印象的だった」という感想にもハッとさせられました。

 

若い頃はもしかしたら、感受性は強かったかもしれないけれども、バランスに偏りがあったかも。今は、瑞々しい感受性と解釈的・論理的思考の両方を持ち、寄ったり、俯瞰したりしながら、自分の人生と紐付けながら、作品全体を楽しむことができている。

しかも耳で映画を見る方から、音から見えた情景を教えてもらえるなんて。また、こちらからもどんな造形なのかを見えているからこそ教えられるなんて。

 

ああ、歳を重ねるっていいものですねぇ。

 

 

▼家にあったパンフレット、懐かしくて持ってきました。

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今観られてよかった
観た人と話せてよかった

と、皆さん、いい顔でおかえりでした。

 

もしかしたらこれからも、その時々によって、違うものが見えてくるのかもしれない。

自分の中でずっと残り続ける映画には、そんな力があるように思います。

Calling Youを聴けば、きっとまたすぐにあの場所に戻れる。

 

これからも、感想を話る、表現の楽しさがつながっていきますように。  

ご参加くださった方、ご関心をお寄せくださった方、ありがとうございました!

 

 次回10月の「ゆるっと」は、決まり次第お知らせします。 

 

▼館長の平塚さん、スタッフの宮城さんと

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今回の感想は、友人のくみこさんとポッドキャスト(音声配信)でも話しています。

よろしければこちらも聴いてみてくださいませ!

note.mu

 

 

 

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アサゴハンヲ タベルコト!〜モモを精読する読書会

日曜の朝6時から、
今、『モモ』を精読する読書会
に参加しました。

 

以前参加したときの感想

http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2019/06/16/090138

http://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2019/08/25/205728

 

19章、20章を読んで最終回のはずが、19章が思ったよりみっちりとしていて終わらず、最終回は次回に延期されることになりました。ちょっとうれしい。

 

 

19章は、モモが灰色の男たちから追われながら、なんとかマイスター・ホラのいる〈どこにもない家〉にたどり着き、深い眠りから覚めたところからはじまります。
マイスター・ホラから、さらに深い時間の花の秘密を聴き、灰色の男たちから時間の花を取り戻せるのはひとつの方法、ひとりの人間(モモ)しかないことを伝えられ、覚悟を決める場面です。

 

今回もやはり印象に残るのは、カシオペイアの言葉。

サキノコトハ ワカリマス アトノコトハ ワカリマセン!
WEISS NUR VORHER, DENKE NICHT NACH

 

アサゴハンヲ タベルコト!
FRÜHSTÜCKEN!

 

包囲されていて、絶対絶命。
緊張しながら策を練っているときに、このユーモア!ありがとう、カシオペイア!!

 

しかも、「そのとたんに、テーブルの上にはもう食事のしたくがととのいました」「テーブルにはまたこのあいだのように、小さな金のカップと、そのほかいずれも金色にかがやく朝ごはんがならんでいました。湯気の立つチョコレートのポット、はちみつ、バター、パリパリに焼けたパンです。」

 

ああ、このシーン!一生忘れられなそう!

熱いチョコレートと、とけたバターに甘いはちみつをたらした、パリパリに焼けたパン......食べたい。 一気に元気回復するよ...。

思い出すだけでも、満たされる。

読書会はサイコマジックなのかー。

 

今度はマイスター・ホラも一緒に食べてくれて、しかも食欲旺盛だっていうところがよかった。よかった、という感想を交わせてよかった。

読書会に参加している人たちも一緒に読み進めて、一緒に冒険をしている仲間なんだなぁ。

 

 

わたしたちが生きている世界では、どうして理屈では説明できないような悪いことが起きたり、どうしてびっくりするような奇跡としか思えない素敵なことが起きたりするのか、ということを日々思ってばかりなのだけれど、この物語でモモと冒険する中で、さまざまな人たちと対話する中で、次第に解き明かされてくる感じがあります。

メタファーの、宝庫というか、厨子というか。

時間の花が咲いているTempel(お堂)そのもの。

 

 

19章もまた特別にその感じが強いです。

 

たとえば、

「人間というのは、ただの時間だけでできているのではなく、それ以上のものだ」

「時間に毒を入れる」

「人間の心からむしりとられた時間の花」

「花はその繊維組織のひとすじにいたるまで全力をふりしぼって、自分の持ち主の人間のところに帰ろうとする」

......

モモと一緒にわたしたちも「息をのんで聞き入って」います。

 

それらの印象深い箇所について、解釈を与えるために対話しているのではなく。

感じたことをただ手探りで出し合い、問いあい、応えあい、それぞれが必要なものをいただいてゆく感じになる。それが読書会だし、それができるから小さな奇跡が起きる。

 

 

それぞれに取り組んでいることがあり、タフな人生がある。

どんな大きさであれ、重さであれ、

 

おまえがいま考えているよりは、らくにできることもおおいと思うよ

Vieles wird leichter sein, als du jetzt glaubst.

 

 

いくつかの言葉を胸にまた1ヵ月過ごします。

マイスター・ホラから、毎日送られてくる時間の花を受け取りながら。

定時の鐘に、マイスター・ホラからの挨拶を聴きながら。

 

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日本絵画のハブ〜円山応挙から近代京都画壇へ展

東京藝大美術館で開催中の、「円山応挙から近代京都画壇へ」展に行ってきました。

okyokindai2019.exhibit.jp

 

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ここのところ、長いタイトルの書籍が多いらしいけど、展覧会もそうなんだろうか。

略して「応挙展」っていうと、応挙の作品だけのような印象もあって正確ではなく。
しかし応挙の存在があってこその流れだから。
そうすると「応挙から」展ってことになるのか......ぶつぶつ.......。

 

 

藝大美術館には、ここ何年か日本画について「教わって」きています。

特に印象深かったのが、

2015年ボストン美術館×東京藝術大学 ダブル・インパクト 明治ニッポンの美

2017年雪村-奇想の誕生-

この2つの展覧会の中で、あるいは展覧会を通して、「見方」や「おもしろみ」を提示してくれたから、わたしは日本画により強い関心を持つようになって、他の日本画や日本美術の展覧会もおもしろく鑑賞できるようになったと思います。

感謝、感謝です!

 

 

さらに今回の応挙展。

バラバラとしていた歴史の前後関係や、作品と作者や、人間関係がわたしの中でつながったのが最大の収穫。どの作品の作者が誰で、どの作者とどういう関係にあって、それは何時代のどのへんで、ルーツはどこにあって、前後どういう流れの中でそれがあって、同時代に何が起きていて、今の時代のどのようなルーツになっているか、、というようなことです。

 

わたしの中でとりわけ曖昧だった、江戸の日本絵画と、そこから明治、大正の日本絵画への流れもわかり、今まで観てきた展覧会の体験が、一つに繋がった感触もありました。

 

予習に使ったのは公式ホームページと、こちらの2冊。

 

 

芸術新潮のほうは情報量がわたしには多かったので、鑑賞後の復習や発展に使うことにしました。「日本画」の祖としての応挙、についてはこちらのほうが詳しいかも。

おすすめは、マンガでわかる「日本絵画」の見かた: 美術展がもっと愉しくなる! のほう。感情や関係をビジュアルで読み解きたいわたしにはぴったりの本です。マンガといっても、コマ割りされたページで物語っていくコミックのようなものではなく、イラスト解説みたいな感じです。絵柄の好き好きもあると思いますので、本屋さんで探してみてください。

 

音声ガイドを聴きながら展覧会を歩いていて、ファインアートと素朴画のどちらも兼ね備え、自分の時から新たな流れを作り出した応挙だったからこそ、わたしの理解の助けになってなってくれたのだということを思いました。

日本絵画のハブ的存在というのか。

 

これがもしかすると、狩野永徳長谷川等伯では少し時代が前で、尾形光琳や、伊藤若冲や、曾我蕭白では独自路線すぎて俯瞰できなかった。

のちの時代に明確な影響を与えた円山応挙だからこそ、というのはあると思います。

250年前の京都で生まれたムーブメント。
なるほど、時代や時間の感覚がよりくっきりとしてきました。

 

加えて素朴絵展や、大津絵との再会原田治展〜かわいいの発見、のライン......、日本の美とかわいいに散々ふれてきたところに...、応挙の子犬!!

やっぱりわたしたち、これなのね!!とうれしくなりました。

いろいろなものを自分の興味関心から集中して観ておくと、別のところでつながって、ひとつの体系が豊かに育っていくので、おもしろいのです。

 

上村松園のこの絵すてきでした。知っている人だと思ったら他の絵が切手になってました。切手収集しててよかった…♡
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他の感想をぱらぱらと。

 

応挙の功績に「写生」「新しい風景画」の発明があったと聞き、思い出したのが、2018年のプーシキン展。

風景画の説明の中でも、最初はやはり空想上の風景を描いていたのが、だんだんと実際の場所に足を運んで、見えるものを描くという流れがあったと教わりました。

日本画でもやはり似たような流れがあったことがおもしろい。

これは何か人々が移動をする習慣が出たということや、移動手段を持ったということと、何か関係があるんでしょうか。

ちょっと調べてみたくなりました。

 

 

日本における肖像画ってどういうはじまりで、どういう発展を見せて、今にあるのか、ということもふと思いました。風景画や人物画はあるけれど、肖像画に力を入れた展覧会ってあまりみたことがない。それとも、あまりおもしろくないんだろうか?

 

 

作品を観ていると必ずいらっしゃるのが、学芸員さん並みに詳しいプロ鑑賞者みたいな2人組。そういう方を見つけると、近くで聞き耳を立てていることが多いです。

今回勉強になったのが、「描かれている孔雀がどれもタイの孔雀」ということ。

孔雀というと頭に冠を載せている種を思い浮かべていましたが、それはインドの孔雀なんだそう。それは見てなかった...!!

▼頭の羽(トサカ?)がこんな感じなのがタイの孔雀。

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動物や植物や建築...ある分野に詳しい人と観に行くと、そういう視点から作品を観ているのでおもしろいのですよね。

やっぱり誰かと対話しながら観るのはこういうのが楽しいからなんだなぁ、ということをその2人に気づかせてもらいました。

 

 

近江八景って小さい頃はババくさいと思っていたのだけれど、日本画の題材でほんとうに多く目にするようになって、今更のように誇りというか、自分のルーツとつながる嬉しさを噛み締めています。琵琶湖を模した回遊式庭園に出会うときも、同じように感じる。大人になって、東京にきてよかったことの一つ。

 

 

応挙の遺作と言われる保津川図。左右の屏風を向かい合わせに置いて、真ん中に立つとまるで保津川の川下りをしている気分になる、と音声ガイドで話していて、わー、それは体験してみたい...と思った。実際にそういう展示になってたら、すごくよかっただろうなぁ...。

 

 

東京開催と京都開催でデザイン違い。無料のチラシにこんなに凝る国でもある...。

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今後の藝大美術館の催し、小さいものだけれど、これおもしろそうです。

聴く絵画・観る音楽 -リナイウォーリ祭壇画-(絵画のしくみ Vol.2)

 

 

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実物を観るということ〜小早川秋聲展

まったく詳しくはないのだけれど、ここ5年ぐらい小さい関心を細々と向けてきたのが、戦争画というジャンル。(戦争画とは

 

東京でまず一番出会いやすいのが、東京国立近代美術館の常設展。シーズンで入れ替えしつつも、フロアの1部屋を使って、様々な戦争画を展示してくれている。

以前、ここでボランティアガイドさんのツアーに参加したことも、戦争画に関心を持ったきっかけになっている。以前こんな記事も書いたけれど、ほんとうにガイドさんには感謝だ!

 

近美の過去の常設展の記事などを探していたら、こんなシーズンもあったようだ。

平和のために戦い続ける、という矛盾した状況の中で、「ブラックゴースト」の核を成すのが、実は人間自身の戦いへの欲望であることが次第に明かされます。

 というくだり、先月夢中になって見ていたNHKEテレ「100分de名著」のロジェ・カイヨワ「戦争論」でも言っていたことだ...と関心と関心とがつながったときの戦慄を覚える...。

 

 

とはいえ、近年の戦争画特集の展覧会はどれも逃していて、今回の小早川秋聲展でようやく関心があるという自覚を持っての、近美以外では、ほぼ初めての鑑賞となった。

www.kashima-arts.co.jp

 

bijutsutecho.com

 

直前にNHKEテレ(こればっかり!)の日曜美術館で特集をしてくれていたので、背景などよく理解して出かけていった。もちろん観たかったのは「國之盾」。そして代表作以外の作品たちから見えてくる画家の人生の物語。

 

 

 

しかしながら。

 

実物を目の前にすると、日曜美術館で語られていたことと、わたしの実感とはだいぶ違っていた。

 

 

まず感じたのは、死んだ人に見えない、ということだった。

どこからそう感じたかというと、体つき、肉付きがとてもよい。

解剖学にはまったく詳しくないのだけれども、でも、パッと見の印象では、これは直前まで三食しっかり肉も魚も食べて、鍛えて、無理な姿勢をとるような長時間の労働や作業に従事せずに生きていた人の身体つきのように見えた。

 

全身軍服で、軍靴にさらにゲートルも履いて、手も手袋をしているし、顔の部分は日章旗で覆われていて首元も見えない。

そのように一切の肌の露出はないのだけれども、がっしりとした体格には精悍さすらみなぎっている。

 

持ち物はどれもほぼおろしたてに見えるほど、傷んでいないし、汚れてもいない。

軍服、カバン、双眼鏡、日本刀、水筒、手袋。

唯一、軍靴のみ、歩いて履き込んだときにできるシワが出ていて、少し泥がついて乾いた跡のようなくすんだ感じもある。

戦地で亡くなったにしては、血痕などもなく、見た感じでは死因がわからない。

だからあまり死んでいるように見えない。

 

だからこそ、「死への悼みが感じられる」とも言えるけれども。

 

会場2階で流れていた映像や写真の感じからして、顔のあたり、特に鼻筋は、小早川自身に似ているようにも見える。

 

背景は一度桜の花びらが描いていたが、のちに黒く上描きされたという説が有力なよう。

たしかに黒の下に丸いつぶつぶした跡が見える。

 

顔の周りは仏の光背のように明るく光っている。

 

桜の跡と言われているものは、体からつぶつぶしたものが湧き出していて、全身が発光しているようにも見える。このあたりに体温を感じているのかもしれない。

そこに黒い死神の添い寝をしながら、魂を吸い取っているようにも見える。

 

刀の先だけが暗闇に溶けているが、あとは明るい中にある。

黒いのだが、真の闇ではない。

このあたりは、モニターや図録ではなかなか感じ取りにくい。

 

150.7cm*208.0cmというサイズ感も、やはり実物に会わないとわからない。

 

そうしていろいろな観察をした上で、あらためて2メートルほど離れて眺めてみると、

横たわっているものが、一体「何なのか」を考えざるを得なくなっていく。

この絵と対話していると、まるであれはわたしではないのか、という錯覚に陥る。

理由はうまく説明ができない。

わたしであるとすれば、なぜわたしはこのような姿で横たわっているのか?

 

 

戦争画という枠のあるジャンルなので、もちろん全部を自由に観るわけにはいかない。

戦意を削ぐから日本兵を描くのは禁じ手、と言われていた時代の依頼だったから、死んでいるように見えないように描いた可能性もある。従軍画家として戦地に赴いていたし、これほどの技術を持っているのだから、リアルを描けないわけがない。

 

そのように、この絵が生まれた経緯や、描かれた当時の情勢、状況、小早川の立場や信条なども併せて考えた上で、今自分の中に生まれるものを観ていたわけだが......、

 

それにしても、なんとも不思議な絵だ。

 

 

破れや表具の破損が、この絵が陸軍から受け取りを拒否されたこと、その後の運命なども想像させる。そこに水の筋のようなものが見える。これは濡れなのか描き足しなのか。

 

どの作品も展示ケースを通さず、自分の目と作品との間に遮るものなく、近い距離で鑑賞できたことがありがたかった。これは画廊だからこそできることか。

それにしても無料で40点もの作品が間近でみられるとは、なんとも贅沢であった。

 

「國之盾」以外の作品にも、筆致や色づかい、構図に小早川の美的感覚の鋭さや、繊細さが感じられた。日本画の中でも様々な技法に挑戦しており、旅を愛した人としても知られる小早川の好奇心旺盛な様子も、垣間見られた。

 

わたしのお気に入りは、「倣古図(浮世絵)」。夏、蚊帳の中で団扇を手に赤ん坊に乳を含ませながら、うたた寝してしまった女性を描いていて、これには思わず共感せずにはいられなかった。

 


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展覧会がよいのは、このように感じ取れることがたくさんあるからだ。

人間の観る力、聴く力、想像する力、体系立てる力は、数値以上の感覚の域も加えれば、非常に高い精度を持っている。

 

展覧会には、場を企画した人の軸がある。意図を持って編まれ選ばれ並べられ、解説がほどこされている。一度その物語に入ってみて、感じることは鑑賞者個別のものだ。

それにはやはり現実の空間と、場を守っている人と、他の鑑賞者との作用が要る。

 

まだまだ言葉が足りないが、「なぜ美術館で実物を観る必要があるのか」という問いにはどこかできちんと答えねばならないと思っており、その最初の石をここに置いてみた。 

 

 

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ハイジュエリーを鑑賞するとは

この秋楽しみにしている展覧会が、国立新美術館で開催される、「カルティエ、時の結晶」だ。会期:2019年10月2日〜12月16日

bijutsutecho.com

 

 

ハイブランドのハイジュエリー。その中でも超ウルトラスーパージュエリー。

わたしのような庶民にとって、そんなものを見て「今生ではとても手に入らないわ」と溜息だけつく以外に何をしに行くのか...と、以前は思っていた。

けれども、2015年に東京国立博物館で開催されたブルガリ展でその思い込みが覆された。

www.tnm.jp

 

人間はこんなものも作ってしまうのか!という衝撃に、ただただ鳥肌が立った。

寸分の隙もない緻密な計算と技。

そこにある哲学や思想、歴史や文化。

 

エジプト文明。ファラオの副葬品を見て、ああ、その時代の人ってこういうものを大切に、これを美しいと感じ、これをジュエリーに込めたのか...ということを感じるように、興味深く見てみたい。

 

人間が美と感じるものの、究極に際立った形...と観るのかもしれない。

「一部の人にだけ関係ある、あってもなくてもいい贅沢品」というよりは、人間が別の分野(飛行機とか建物とか楽器とか)で作っていることの、別の形を観るんじゃないか?

今回はカルエィエ展なので、ブルガリ展のときとはまた違うものを観るのかもしれないし...。地域や歴史が違うと現れも違うのではないか?

などなどの仮説。

 

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今までは、「これを観てきた」というレポートをこのブログに書くことが多かったのですが、今回は、行く前に「何を観たいか」を書き留めてみようと思いました。

そうすると、わたし自身の鑑賞の軸(なぜ足を運びたいか、何を観たいか、何が見えそうか)が立ってよいかなと思ったのと、だれかの興味関心のきっかけになったらいいかもなとチラッと思ったので。

 

でも、お墨付きというわけではないし、何を観るかは人それぞれなので、「あまりよくなかった!」とかなったらすいません。
あとは「いろいろあって、わたし行きたいって言ったけど行けなかった...」とかも起こりそうですが。

 

情報提供や口コミではなく、わたしは美術館や博物館に行く時に、何を基準に選んでいるのか、行くまでに何をしているのか、という自分の思索や行動をバラして行くことが、鑑賞対話の場づくりによい発見が起こるんじゃないかと思っているのです。

 

そうだ、そうだ。

それを思いついたときにやっていこうと思います。

 

 

 

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映画『桐島、部活辞めるってよ』を語る

仲間内でひらかれた、映画『桐島、部活辞めるってよ』を語る会に参加しました。

発起人は、この映画がめちゃくちゃ好きなアメリカ・シアトル在住民。

どんなに離れていてもインターネット会議システムがあるので、思いついたら語る会ができてしまう。いい時代!

 

アメリカとは時差の関係で、開催時間が合わせにくいのだけれど、日本時間午後1時、アメリカ前日の午後21時からひらいてくれました。ありがたいな!

 

「桐島〜大好きな人」から、「どこがいいのかよくわからないので好きな人の話聞いてみたい人」まで、さまざまな動機の5人が集まりました。

新しい視点や表現が尽きることなく湧いて出て、75分、大いに盛り上がりました。

 

 

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『桐島、部活辞めるってよ」は2012年8月公開の映画。

youtu.be

 

わたしが「桐島」を観たのはいつだったか、たぶん2014年か2015年ぐらい。
公開当時は「噂になってんなー」ぐらいの感じでした。
「○○、○○だってよ」というフレーズがやたら流行っていたような気がします。

DVDで観たときも、感想はしばらく持っておきたくて、誰かと積極的に感想を交わす行動は起こさなかったと記憶しています。

 

今予告観ると、うーん...なかなかしびれますねぇ...!

"日本映画史に残る圧巻のグランドフィナーレ"は嘘じゃない!!!と言えます。

ここからはちょっと内容に踏み込んでますので、未見の方はご注意ください。

 

 

観ていると、どうしても自分の高校時代はどうだっただろうか?ということと重なる。

 

わたしの高校時代は、ここに出てくる子たちの誰でもなかったなぁ。
いや、どれも少しずつわたしである、という気もする。
そういう点で、"全員、他人事(ヒトゴト)じゃない"はそうかも。

(あれ、今気づいたけど、映画のポスタービジュアルは"全員、桐島に振り回される"だったのが、DVDパッケージでは上記に変更になってる)

 

一番「わかる」感じはするのは、映画部の前田と武文。

イケてる人たちからは相手にされなくても、別に気にしない。
こちらも同じ「スクールカーストの上位」に行きたいわけでもない。

好きなものが明確にあり、同じレベルで話せる仲間がいて、それなりに楽しく毎日やっている。
大人しそうに見えるからって、別にいい人でも純朴でもない(誤解されやすい)。

「将来は映画監督目指してます!」とか「ありえない理想」をぶち上げてるわけでもない。

そういう前田が、カッコよくて勉強できてスポーツもできて彼女もいる宏樹と立場が逆転する。持てる者なのに、一つのことに傾ける情熱は持てない。親友だと思っていた桐島からも必要とされていないことに気づく宏樹。

その宏樹に対してカメラを向けて、「やっぱカッコいいね」というところの、対等感というか逆転感がたまらない。

 

そう、どこが一番よかったかと言えば、やはりここのクライマックス。

前田が宏樹に向かってカメラを構えた瞬間、世界がぐるんと回転する。それはもう見事に。


あそこで、もしかすると前田も、人にカメラを向けるということの本当の力(の片鱗)を知ったんじゃないかと思う。「そうだとすれば、あの日から監督を目指す可能性だってあるよね」なども話した。

 

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小説も読んでいる発起人の第一感想としては、「映画のほうは心の声や行動の理由など一切の説明がなく、音もクライマックスを除けばほぼ入らないので、観ている側に感情の操作がないところが好き」とのことで、そうそうそう!わたしもそうなの!と思った。

 

この映画のつくりの奇妙なところが、今までにない感じで、どうにもたまらなく、好き。

 

そして背景が全然わからないにも関わらず、一人ひとり、必ず「こういう奴いた!」と思い当たるような人たちが出てくる。

"あなたの記憶を刺激する青春エンターテインメント!"という予告に流れるテロップも、観る前はなんのことだかという感じなのだが、観た後は、「ああーまさに...」という気持ちになる。

 

「僕たちはこの世界で生きていかなければならないのだから」という劇中劇(ゾンビ映画)のセリフは、まだ高校生活の残りが1年数ヶ月ある中で、どのような身の処し方でゆくのかということでもあるし(もちろん道は学校の中だけにあるわけではない)、その先の一人ひとりの未来をも感じさせ、いろんな可能性に満ちているところが、青春である。(想像上の、かもしれないが)

 

 

▼わたしの好きなシーン(どこもわりと好きなんだけど)

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唯一、存在が一番不明だったかすみについては、「とにかく周囲と調和が取りたいがために行動する人。ゆえに自分があるようで全然ない人なのでは」という、その人個人の「わかる」感じから見立ててくれたおかげで、理解が進んだ。

 

参加メンバーの中には、この映画のクラスにいたんじゃないかと思うような遍歴の持ち主もいた。やはり場をしつらえて感想を話すことっておもしろすぎる。

そうでなければ多分一生知ることもなかったかもしれないエピソード。
いやー、すごい。人間おもしろい。

 

 

そうやって感想対話で一人ひとりが持っている「この人の感じ、わかる」を集めてみると、人物も物語も立体的になってきて、「そういう映画だったのか!」と合点がゆく感じも得られる。

でも、それでも、全部はわからない。

そういう「語りたくなる映画」になっているところが、秀逸。

 

おお、この「わかりそうで肝心なところは話しても話してもズレる感じ」...まるで、芥川龍之介の「藪の中」のようでもある。

 

 

「桐島、〜」が持っている独特の淡々とした感じ。

何かに似ているなーと思ったら、「滝を見に行く」だった。

7人のおばちゃんたちが滝を見に行く話で、好きな映画50本に間違いなく入る。

タイトルもそういえば似ている...。

 

 

 

映画で語るのって、やっぱり楽しいなぁ〜

鑑賞対話って、もちろん何が真ん中にきても楽しいんだけど、映画という表現形式だからこそ生まれる対話ってある。映画で語るのが一番!というのでもなく、オペラでも能でも本でも、それぞれに「ならでは」があることが魅力。

 

たった75分で、こんなに満足。場の力って素晴らしい。

 

 

 

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わたしの中の"図書館"をアップデート!

読み聞かせのための本を仕入れるのがすっかり遅くなってしまい、取り寄せてる日数もなくなったので、先日、久しぶりに中央図書館へ行ってきました。

そうしたら、アップデートされた。

 

そうそう、近頃「アップデート」がキーワードなのです。

「これはもう知っていて理解しているというラベルを自分でつけたけれど、あえてもう一度見に行ってみる、やってみる、調べてみると、最新は全然違っていた!」というAmazing!な体験が大事だと思っていて、あちことで言い回っている。

 

 

中央図書館というのは、だいたいその自治体、行政区で中心になっていて、一番力を入れている最先端の本館です。

 

我が自治体ではこんな感じ。

・貸出、返却、検索に加え、予約本受け取りまでセルフが基本になっている。

・図書館員さんは、それらのセルフ作業がスムーズにできるようにサポートしてくれたり、調査の相談(レファレンス)を受けたり、特集棚の企画実施、図書館発のイベントの企画運営、「図書館として区民に資する活動」に注力できるようになっているように見えた。

ヤングアダルトコーナー。棚の高さは目線までの低めのものを使っていて圧迫感なし。充実の棚構成。どれをうっかり手に取っても、その時期の人たちを何かしら満たしてくれるであろう本ばかり。

ヤングアダルトコーナーには中高生専用の勉強机がある。そして、「変な人に付きまとわれたり、困ったことがあったら図書館員へ知らせてね」の張り紙。隔離されてるわけでもなく、しかしちゃんと目配りがされている。

・視聴覚資料(DVDやCD)のラインナップは、前回来たときから格段に充実していて、趣味実用から芸術まで幅広く取り揃えられている。DVD2枚、CD3枚の貸し出し枚数制限の中で選ぶのが悩ましいほど。

・マルチメディアルームは、Windowsパソコンが2時間100円で使える。使い方がわからないときは係の人が教えてくれる。別途無料のパソコン教室もある。自宅で使うパソコンを購入する予算がない、IT機器をいきなり入れることが困難な人でも、就職や勉強や調べ物で必要であれば使えるようになっている。

・自分のデバイスを持ち込んで作業できる電源付き閲覧席もある。読書を楽しみたい他の利用者に迷惑にならない場所に設置されている。わたしはここでカンヅメ作業すれば捗りそう。。

・最近実施された図書館の利用者向けアンケートの回答が、館内に掲示されてた。年齢分布、関心、要望など、興味深い。

・郷土資料コーナーがまたおもしろい。こういう棚はどんな分野やテーマや項目で並んでいるのかを見れば、そこの土地の特色がひと目でわかる。

・郷土資料コーナーには小さな企画展示もある。最近息子が学校でもらってきた、「我がまちの歴史・文化」のテキストがおもしろかったので、タイムリーだった。

・図書館のある建物には、生涯学習男女共同参画の事業も入っているので、ここに来ると本を借りたり調べ物するだけでなく、学びの場にもアクセスできる。

 

...などなど、久しぶりに行って、ゆっくりと館内を見て回っていると、いろんなことが見えてきました。楽しい。

 

先日、映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を観たのもあって、図書館のことが気になっていたのを思い出しました。

ネットでいろいろレビューを漁っていると、中には、「日本の図書館は遅れている」とか、「ニューヨーク公共図書館に比べて足りていない」などの感想も見られて。

でも、現場に足を運んでよく観察してみたら、また違う感想になるんじゃないかなぁと思うのです。

自分の知識や経験が、過去のどこかで止まっていて、アップデートされてないってこともきっとある。嘆かわしい現状も確かにあるけれども、全然ダメではない。

 

議論のために、思考のために、生み出すために。

現状を見てアップデートしていくことから、まずはじめたい。

 


●おまけ●

「若きウェルテルの悩み」のWERTHERS=ヴェルター。この表記は最近アップデートされたんでしょうか?

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NT Liveデビュー!『リチャード2世』

MET Opera,  Royal Opera Houseとライブビューイングものを観てきましたが、最近になって英国ナショナル・シアターもライブビューイングをやっていることを知りました。日本では2014年に上映スタートしたそうです。

 

▼NTLive日本版ウェブサイト

www.ntlive.jp

 

▼いろんなライブビューイングの紹介記事

otocoto.jp

 

存在を知ったときには今シーズンがもう終わりかけで、残っているのは「リチャード2世」のみ。とはいえ、やはり最初はシェイクスピアを観たかったので、ちょうどよかった。


 

リチャード2世

www.youtube.com

原題:The Tragedy of King Richard the Second

上演劇場:アルメイダ劇場(ロンドン)

収録日:2019/1/15 尺:1時間48分(休憩なし)

作:ウィリアム・シェイクスピア

演出:ジョー・ヒル-ギビンズ

出演:サイモン・ラッセル・ビール、レオ・ビル ほか

作品概要:王権の簒奪をテーマにしたシェイクスピア劇。英国王リチャード二世の栄光と王座からの転落、そしてボリングブルック(ヘンリー4世)の台頭を描く。タイトルロールを担うのは、NTLive Japanには2014シーズンの『リア王』以来の登場となる名優サイモン・ラッセル・ビール。無理やり退位させられ、その後幽閉されたリチャードの長い独白などの見せ場をどう演じるか? 気鋭ジョー・ヒル-ギビンズの演出共々、お楽しみに。(NTライブHPより)


NT LIVE official website:

http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/productions/ntlout32-the-tragedy-of-king-richard-the-second

 

 

----感想をつらつらと----

  • とにかくものすごい心理劇、サイコスリラーだった。
  • 舞台美術からして閉塞的なつくりになっている。気分的には映画『CUBE』みたい。
  • 音がどれも不快で、突然鳴ったり、ずーっと鳴り続けたり、だんだん音が大きくなったり、焦燥、緊迫、危機的な感じ。
  • この演出と美術にはやられっぱなしで、1時間55分、ずっとドキドキしながら観ていた。えらいものを観に来てしまった!と思いながら。演劇はこういう身体感覚がどうなるかが観るまでわからないところがちょっと怖い。怖いと言えば、演劇に特有の表現で、「大声で叫ぶ」「怒鳴る」というものがあって、これが苦手な人はいるかもなぁと思う。鑑賞の対象にするときは気をつけたほうがよさそう。
  • リチャードは10歳で即位し、王以外の生き方を知らずに、外の世界を知らずに32歳で廃位させられ、33歳で死去。その間起こっていたのは、愚行、慢心、謀反、自己不信、未練、孤独、絶望、自己喪失。リチャードだけでなく全員が何かしら常に引き裂かれている。安寧からは程遠い。
  • リチャードがしきりと手を腰のあたりにすりつけたり、手の汗を拭くような仕草がメンタルが弱っている感じを出していてリアル。自分で「臆病の発作」と表現。
  • 権威や権力の虚しさを知らないはずはない。そういう時代、そういう立場で、覚悟はあるはず。しかし、いざ自分から奪われるとなると、所詮他人事としか見ていなかったことに気づく。この何者でもなくなる恐怖や凋落の恐怖に慄く感じは、観ている自分は王ではないけれども理解できるし、覚えのある感覚がずっと心臓に張り付いている。
  • 冒頭のインタビューで、スラップスティックコメディの要素もあると言っていたし、途中でスクリーンの中の劇場か、またはリアルの劇場かわからないけれども笑いが起きていて、びっくりした。「ここ笑うとこなの?!」という。やはり異なる文化圏のユーモアは難しい...。
  • 王笏(おうしゃく)という物、読み方を覚えた。
  • 独白シーンの科白が一つひとつ詩で、美しい。特にクライマックス。「私の魂を父とし、頭脳を母として思考を生み出す」のあたり、もう一度聴きたい。I waste time. Time waste me.とか。
  • 「幼子よ来たれと言うのに、神の国に入るのは難しい」というくだり、聖書の言葉の「矛盾」(受容と拒絶がいっぺんにある感じ)を指摘していて、「やっぱりそうだよね?!」と言いたくなった。わたしもこれはずっと思っていたのだ。
  • ボリングブルック役のレオ・ビルのインタビューで「道徳を越えたドラマ。善人と悪人を描いているわけではない。ヘンリー4世がリチャード2世よりいい王になるとは限らない」というインプットを経て、舞台を観ていて思ったのは、日本でもこういう話ずっとあるなぁということ。「平家物語」「忠臣蔵」「新撰組」、本能寺の変関ヶ原の合戦大坂夏の陣などなど、非常に好まれていると感じる。謀反と凋落、束の間の栄光。どちらが善人か悪人かというわけではない物語。なぜ観たくなるんだろう。原題は、The tragedy of King Richard the second どのような悲劇を観たいのか。
  • その世界しか知らないから、出るのが怖い。"落ちぶれる"のに耐えられない。肩書きをなくしてしまったら、何者でもなくなる。地位の喪失と共に他にも多くの喪失を経験する。それが恐ろしい。恐ろしいので未練がましくしがみつく。こういうことって、王でなくても、現代社会に生きる我々市民であっても、経験する感覚ではないか。地位や立場から凋落する恐怖と屈辱、喪失、自己嫌悪、罪悪感、自責...。
  • シェイクスピア劇でしか味わえない複雑な感情がある。遠い昔の遠い土地の物語なのに、疑似体験かと思うほど生々しい鑑賞によってしか、癒えないものが人の心、DNAに刻まれていそう。(前回リア王を観た時の感想→
  • 最後、血だらけ、泥だらけ、濡れ鼠でにっこりしながらカーテンコールに立つ俳優さんたちを見て、心底ホッとした。あーちゃんとこれはお話だった!
  • アルメイダ劇場は、325席。下北沢の本多劇場(386席)よりちょっと小さいぐらいかな。
  • シェイクスピア劇を観るのは、2017年の『リア王』以来。そのときの感想。投稿記事の最後に「"リチャード2世"が気になる」と書いているから、やはりずっと観たかったんだな。よいタイミングだった。

 

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はじめて観たNTライブは、他のMETやロイヤルに比べてカメラワークも構成もアッサリした、録画番組を映画館で観ているという感じはある。演劇という形式の性質や、劇場の制約などもありそう。でももちろん十分楽しめる。

NTライブの良いところは、
 ① 解説とインタビューが冒頭にあるので、見所を抑えられ、期待も高まる
 ② ロンドンまで行かなくても、本場の芝居が近くの映画館で観られる
 ③ 日本語字幕のおかげで、英語で観られる(味わえる)

 

 

来シーズンも楽しみ。

 

 

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ジブリ祭り

夏休みの中後半ぐらいから、息子が急に宮崎駿作品を観まくっていたので、たまに付き合って一緒に見ていた。

 

家にあるDVDは、
風の谷のナウシカ天空の城ラピュタとなりのトトロ魔女の宅急便もののけ姫千と千尋の神隠しハウルの動く城

 

これらを繰り返し観ていたが、飽きてきて、しまいには特典についていた多言語版まで観ていた。「千と千尋の神隠し」をフランス語で観るとか。


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フランスではこういう声優のこういう声があちらではイメージなのかな?(想像)とか、あの、日本独特(?)のあれはフランス語ではこう言うのか!とか、具体的には忘れてしまったけど、流れくるのを聴いていた。

解せない言語は左脳で処理しないので思考の負担にならず、物語としては知っているので、BGM的にかけておける、という発見があった。

 

魔女の宅急便」が、DVDディスクに傷がついて観られなくなっていたので、Blu-rayで買い直して、はじめて観るように観てみたら、よくよく知っているはずのこの物語も、今までこの映画から考えたことのなかったようなことに出くわした。自分で生業をつくることとその中で起こる葛藤に共感したり、キキとトンボの関係から「勝手にふるえてろ」を彷彿とさせたり、その間に経験したことがでてきたり。

 

観ているうちに、久石譲の音楽はやっぱりすごいなーと思い、右脳を活性化して希望ある未来を描きたいときに、流しながら作業をしたりしている。


友だちが「もののけ姫」のチェコフィルのCDを貸してくれたり。(めっちゃいいですこれ)


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海がきこえる』も借りて観てみた。感想はこちらに。

 

かぐや姫の物語』は、高畑勲展も行ったことだし、と思って観直してみたが、やはりエグい。人間の性質の見たくない際(きわ)のところにふれてくる。
それでも世界はただ美しくて、そこにあるだけ。
どう生きるも、そう命を使うも、人それぞれ。
息子は「帝が酷い。この映画もう二度と観たくない」とのこと。なるほど。

 

 

ジブリの後は「ハリー・ポッター」の過去作を最初から8作を数日かけて一気に観ていた。わたしは初めて観て、思ったより容赦なく深刻で怖いことにびっくりした。

「魔法の国!自分もこんなのやってみたい!わくわく!」みたいなイメージでずっといたけど、ほとんど1話のものだったのだな。

映画館でもお客さんがいっぱい入っていたけど、皆さんはどこに惹かれて観ていたんだろう、、と今更興味深い。当時の世相も関係ありそう。

 

実際に観てみて、思い込みが覆されるのってほんと楽しい!!

 

それと、

 

「暇を持て余す」ってやっぱりとても大事!!!

 

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読み聞かせ 5年生 秋

検索ウィンドウみたいなタイトルだけど、こうやって読む本探してみるときもあったので、どなたかの参考になれば。

 

今回の2冊はこちら。

f:id:hitotobi:20190912183252j:plain

 


もうすぐお彼岸なので、「ひがんばな」。

読んでみてびっくり。
えーひがんばなってそうなんだ...!ってなります。見る目変わること請け合い。
版元では絶版になってるようです。(Amazonで中古が出てる)
図書館にはきっとあると思うので、ぜひ探してみてください。

 

 

もう一冊は、「ヒギンスさんととけい」

時計を読むこと、時刻の感覚が多くの子どもたちに備わってきた頃かなぁと思い、ちょっと頭を使っておもしろみが感じられるようなものを選びました。
みんなで「えー、なんでなんで」って言ってるのを、ニンマリしながら読みました。

 

 

今回参考にしたのはこちらの本。副題「朝の15分のために」。
読み聞かせの時間が15分なので、ちょうどいいよ、とボランティア研修のときに教えてもらいました。
学年と15分で読める2冊が提案されています。
目安の時間が添えられているので、選びやすい。

 

 

今回は夏休み明けということもあって、子どもたちに会うのは久しぶりだったのですが、みんなが並んで立ったときに、背が高くなっていて、顔つきも大人にまた一歩近づいていて、圧倒されてしまいました。

2年生で初めて読み聞かせに入った頃は、あんなにちっちゃかったのに、こんな大きくなって、うれしいです。

 

本が好きな子もそうでない子も、きょうも朝の15分、楽しんでくれてたらいいなぁ。

次回は10月末。また1ヵ月ちょっと、のんびりと本を探していきます。

 

今後のイベント

▼2019年9月23日(月•祝) 秋分のコラージュの会
https://collageshubun2019.peatix.com/ (国分寺

▼2019年9月28日(土) あのころの《いじめ》と《わたし》に会いに行く読書会 満席
https://coubic.com/uminoie/979560

▼2019年10月1日(火) 爽やかな集中感 競技かるた体験会
https://coubic.com/uminoie/174356


 

鑑賞対話の場づくりコーディネーション・ファシリテーション

・<法人><団体>教育普及、広報宣伝などを担当されている方向け。
・映画、展覧会、書籍、舞台芸術など、鑑賞対話の場づくりのご依頼をお待ちしております。
・鑑賞者同士で話す場、専門家と非専門家が知を交換する場。お互いを尊重し、補完する対等性のある場。知の交流と学びの楽しさを集う人一人ひとりが感じる場です。
・企画・設計・ファシリテーション・集客サポート・レポートを担当します。
・参加者5名から100名程度まで。

お問い合わせはこちら


場づくりコンサルティング・個人セッション
・<個人><グループ>
・Zoom または 東京都内で対面
・30分¥5,400、60分 ¥10,800(税込)
・読書会、勉強会、体験ツアーなどのイベントや講座。
・好きなもの・ことを共有する・考える・創る機会づくり
・企画・設計・進行・宣伝のご相談のります。
・募集文の添削やフィードバック、ふりかえりの壁打ち相手にもどうぞ
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連載
『場づくりを成功させるための5つの鍵』(寺子屋学)https://terakoyagaku.net/group/bazukuri/

 

IROJITEN

以前、文房具と文房具屋さんが好きだという話を書きましたが、画材屋さんや画材売り場も大好きです。

 

先日、銀座の伊東屋で、前々からほしかったIROJITENの第3集を買いました。

第1集と第2集は中学生か高校生のときに買ったか、買ってもらったかしたと思います。

第3集が去年か一昨年かに出たのは知っていたのですが、そのときはあまり色鉛筆を使っていなかったので、贅沢な気がして、ほしい気持ちを一旦引っ込めました。

 

気づけば最近よく絵を描くし、色鉛筆もよく使うし、色数ももう少しほしくなってきました。こういう流れの中で手元に来るときっといいんだよね、と思い、満を持しての購入です。せっかくなのでネットではなく、店舗で買おうと思って、日比谷で打ち合わせのあと銀座へ。

 

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わぁ...美しい......。やっぱり美しいなぁ。にまにま。

10代の頃のときめきが思い出されます。
うれしかったんだよなぁ、最初に手元に来た時...。

箱入りなのもいいですね。辞典だからね。

 

1集と2集は箱がボロボロになってしまって、ゴムもびろびろになったので捨てて、今はペン立てに挿しています。こちらのほうがすぐ使えて便利。

 

 

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以前息子の美術教室で使わせてもらっていた「ヴァンゴッホ色鉛筆」も気になりましたが...。でもIROJITENで揃えたい気持ちが上回った。

 

水彩色鉛筆は、なぜか全部人からのもらいもので、たくさんあります。
中でも母からもらったこのFABER CASTELLのは色がすごくきれいで気に入っています。

どれか迷ったら、とりあえずこの12色があれば十分じゃないかな。


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付箋も買い足しました。大量に使うので。このカラーバリエーションは初めて見た!!

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筆記具、中でもボールペンやジェルインクペンはこれと決めているのがあるので、ストック用のレフィルをこれまた大量に購入しました。

同じメーカーの同じラインのものでも、色と細さによって書き心地が違うのは不思議です。自分の感覚なのか、そういうものなのか。

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文房具屋さんや画材屋さんに行くと、
色とりどりでわくわくするし、なにより、

「どんどん書きなさい!描きなさい!作りなさい!」

と励まされる感じがして、うれしくなる。

 

うん、作るよ!!

 

 

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暦の節目につくるコラージュの会とは

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暦の節目につくるコラージュの会

年に4回(春分夏至秋分冬至)の暦の節目にひらいている自主開催の場です。

ビジュアル素材を使った制作と鑑賞対話を通じて、自己対話を体験する場です。
今の自分の状態を知り、これからの未来をどう生きるかの指針を一人ひとりが見出します。

 

◆経緯
コラージュの会をひらくようになったのは2011年。東日本大震災の少しあとです。

鑑賞に耐える作品としての美を追求する、クラフトやグラフィックアートの文脈とは違う、個々人の感性を表現する手段としてのコラージュに魅了されました。

とりわけ、思考優位になりがちな人にとって、感性を解放するとてもよい手法だと感じ、また時間の節目にやると「ふりかえり」や「未来へのビジョン」を描きやすいため、年末や年始に1〜2回ひらくようになりました。

2018年からは、暦に合わせて3ヶ月に一度、定例でひらく場となりました。

 


◆内容

・自己対話のための収束系のコラージュです。アイディアをふくらませり、過程または完成作品によって他者とのコミュニケーションを図るための発散系のコラージュではありません。

・雑誌やチラシや写真をハサミで切ったり手でちぎって、台紙に糊で貼り付けていくコラージュです。紙の他にも、マスキングテープ、シール、リボンなどの素材を使うこともできます。自分の使いたい素材の持ち込みもOKです。「絵を描くのが苦手」や「センスに自信がない」人も、気軽に楽しめます。

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・参加動機を添えて自己紹介した後、ペアで1時間ほどのワークを行います。「今ここ」の自分を言語化する作業をして、気がかりを一旦置きます。ワークの内容は毎回少しずつ異なります。こうすることで

・制作時間は1時間半ほどです。「なんだか気になる」という直感を頼りに写真や絵や文字を集め、切り貼りします。非言語の感覚を大切に、無心で作業できるように、製作のコツアドバイスや時間の管理を主催者で丁寧に行います。集中力が高まっているため、参加者同士の会話はほとんどありません。

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・制作後に発表の時間をもちます。つくった本人から「ここが好き、この部分はこのような意図で貼った、作ってみての自分の印象」を語ってもらいます。その後、参加者からの感想や質問に応答しているうちに、何気なく貼っていたものにも意味を見出せたり、一つひとつ願いが込められていたことに気づきます。作品にあふれる自分らしさを愛おしく感じるひとときです。

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・ふりかえりをして終了です。今の自分の状態とこれから生きたい世界の様が、おぼろげながら形をとってきます。

 

◆開催概要
・会場:東京都内のカフェやイベントスペース(毎回異なります)

・定員:5名

・対象:概ね18歳以上。保育の必要なお子さんは信頼できる方に預け、単身での参加をお願いしています。

・所要時間:3時間半

・持ち物:
 -A4〜B4サイズのコラージュ作品を持ち帰るための袋
 -使いたい素材(写真、ポストカード、チケットの半券、チラシ、マスキングテープ、シールなど。こちらでも十分な量を用意しますが、ファッションやライフスタイルや趣味など好みがはっきりしたモチーフを使いたい場合は、持参をお願いしています)

 ※雑誌、ハサミ、のり、マスキングテープは用意しています。


◆参加動機一例

・人生の節目の気持ちの整理に
・自分の事業を見つめ直しに
・立ち止まって自分の中に何があるのか出してみたくて
・職場でやってみたいと言っている人がいて、アクティビティに取り入れたくて

 

◆感想一例
 ・やっぱりわたしはこうなんだ!これが好きでこれが大事なんだと確認できてよかった。
・こんなにまとまった時間で集中することが貴重だった。いつも細切れになるので。
・あるモチーフを選んだことが、自分にとってとても印象深かった。
・作ったコラージュが好きすぎてうれしい。
・この3年の指針ができた。

 

◆申し込み

https://hitotobi.peatix.com/
自主開催の公募イベントはこちらで告知します。
フォローするとメールでお知らせが届きます。

 

◆今後考えていること

・わたしの自主開催の会ですが、わたしが用意する会場で、毎回固定で開催するのではなく、「招いてくださる方」と「その方とご縁のある会場」でひらいていけたらと思います。
Informationにも書きましたが、1つのプログラムとして、コミュニティや団体向け、または、自治体や母親父親支援団体向けの出張開催を増やしていきたいです。


◆ガイドプロフィール


舟之川 聖子(ふなのかわ せいこ)
鑑賞対話ファシリテーター。場づくりコンサルタント
表現物を真ん中に、共有したい・伝えたい・遺したいものがある人と、一人ひとりが味わい尽くせる鑑賞対話の場をつくり、人々の生きる力を育むのが使命です。

コラージュの場を催して8年目。3ヵ月ごとにつくるコラージュのおかげで願うこと・叶うこと・出会うことが楽しくなりました。いつ終わるか、何が起こるかわからない命を寿ぐ、祈るような行為なのかなと最近は思います。
blog: http://hitotobi.hatenadiary.jp/
twitterhttps://twitter.com/seikofunanok
instagramhttps://www.instagram.com/seikofunanok/


 

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Information

◆コミュニティ・団体向けに出張開催いたします
ふりかえり、整理し、展望を描き、一人ひとりの内面の深い探求を通し、コミュニティ内の共感度を上げるワークショップです。一人で一枚作ることも全員で一枚作ることもできます。
講師料は、所要時間3時間半・定員6名・¥50,000〜を基準に、ご希望の目的や内容により調整します。詳しくはご相談ください。ひととびお問い合わせフォーム

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◆母になった女性に、集中と表現の時間を
産後の女性向けの支援の活動をしているNPOや行政などの団体向けに、出張開催いたします。
託児スペースとスタッフが準備できることが実施要件です。

詳しくはご相談ください。ひととびお問い合わせフォーム

 

約束のロミオとジュリエット〜ロイヤルオペラハウスのライブビューイング

こちらのブログでは何度もご紹介している、おなじみ英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマシーズン(長い...)。

ロイヤル・オペラ・ハウスの舞台が映画館で観られる、「ライブビューイング」と呼ばれている上映プログラムです。(日本は時差と字幕翻訳の関係で同時中継ではないので、正確には"ライブ"ではないのだけれど)

tohotowa.co.jp

 


このプログラムを使ってバレエの世界に橋をかけてくれた、バレエ好きの友人がいる。彼女が、「とにかく『ロミオとジュリエット』を観てほしいのよ!!!」と一年前から熱く語っていたので、今年の夏は「これを観ること=約束を果たす」ような気持ちでいた。

そこまでに素人でも楽しめるようにと、まずは「くるみ割り人形」、そして「白鳥の湖」と段階を追って紹介してくれた。

おまけで、コンテンポラリーの「Medusa Mixed」がある。(ちなみに、最前列で酔って一幕だけで退席した「ドン・キホーテ」もある。すごく残念。。)

 

観た回数で言うと、今年だけで5本目になるのか。

2019年は、バレエに親しんだ記念すべき年となった。うれしい。

 

 


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さて、恒例の、当日の感想をぱらぱら、どさどさ。

いろいろ内容に触れているので、未見の方は鑑賞後にぜひ。

 

・今回のプログラムは、世界126ヶ国、1,166館で上映されているとのこと。

・ロンドンのトラファルガー広場ではライブビューイングが行われているそう。ROHでも観てみたいけど、屋外で観るのも気持ちよさそう。どんな雰囲気なんだろう。

・26日間の公演の千秋楽と聞いてびっくりした。そんなに長い間公演期間があるのか!お能は基本的に1回きり。舞台芸術もいろいろだなと、唸らずにはいられない。

・マクミラン版が出たことはバレエにとって画期的なことだったのらしい。

・「ロミオとジュリエット」はよーくよく知っている物語だけれども、バレエで観るのははじめて。

・若い二人のカップルを、若い二人のダンサーが演じるというのが、とてもフレッシュでよかった。随所に若さが輝いている。

・上映の合間に挿入される解説やインタビューによって、関わる人たちがどれだけこの物語とステージを愛しているかが伝わってくる。まぁこれはどのライブビューイングを観ても思うのだけれど。清々しい。

・映画音楽の歴史について全然詳しくないけれども、プロコフィエフのこの作曲は、舞台芸術にはもちろん、映画音楽にも多大なる影響を与えたのではないか?という気がする。特に第二幕の冒頭の秘密の結婚式のシーンの曲は、とってもOST(Original Sound Track)。オペラでもバレエでも、音楽で物語を表現してきたことには変わらないのだけれど、より自然な感情の流れに沿った、動きと一体になった音楽である、という感じがする。

・「ロミオとジュリエットと言えば、初々しく情熱的な恋」なはずなのに、そういうところには全然心が動かなくて、わたしちょっと枯れすぎで大丈夫だろうか...と本気で心配になった。

ロミオとジュリエットは、家族や彼らを取り巻く「社会」から守られていたが、同時にスポイルされてもいた。しかし恋をきっかけに「NO」を言い、自分の人生を生きようと決意し、自分たちが起こしたことの責任を引き受けようとする。その短い期間の中で(舞台の上ではたった3時間程度の短い時間の中で)自立していく様子、それをバレエで表現していることに震えがきた。今回はそこに最も心うたれた。若さゆえか、なぜそうせっかちなのだ!と言いたくもなるけれど、この決断からの内面の変化はすごかった。

・第一幕は若い二人はぺらぺらして深みがない。ロミオは軽薄といってもいいぐらいだし、若さをほしいままにして、バカ騒ぎ。遊びで剣を抜いたりもして、ほぼチンピラ。無茶ばかりしている。(だからこそ次第に不穏になっていく展開の衝撃が強まる)

・西欧の剣はダイレクトに突き刺すものということがよくわかる。日本の刀での殺陣と全然違う。しかしこれが音楽にのって踊りとは思えないほど一体感のある殺陣になっていて、ここも鳥肌が立つ。(ものすごく練習なさったんだろうなー!)

・3人で踊るところは、ブロードウェイミュージカルへの流れも感じさせる。

・ジュリエットは、なんだかガチャガチャそわそわして落ち着かない少女。表情もあどけない。お人形をかわいがる幼さ。許嫁との関係も、お人形遊びの延長にある。(この感じ、源氏物語女三宮的な...)

・舞踏会のシーンでは、この時代、女性は丁重にエスコートされてはいるけれども、身分の自由はないのだよな。親から結婚相手も決められる。男たちからは恋愛の対象として扱いはしても、社会的地位は与えなかったのだよなぁ...。インタビュー中、「芸術作品に登場する最初のフェミニストだったんじゃないかしら?」というコメントがあったけれども、いやいやその前に源氏物語がありまっせ...なんならかぐや姫も...と心の中で思った。

・途中でアレッサンドラ・フェリがインタビューに登場する。ほんの数分のインタビューなのに、この存在感!!一流はそこにいるだけですごい。。

・第3幕は1秒も見逃せない。起きてしまった、起こしてしまった出来事に、それぞれに苦悩する二人。もう1幕のようにふざけてはいられないし、知らずには済まされない。「従順だった。よくわかっていなかった。でも今ならわかる」というセリフが聞こえてくるよう。

・家同士の引くに引けない対立が、想像もしていなかった悲劇を引き起こしていく。こういうことはまち同士、国同士、現代の世界にもあって、犠牲になるのはいつも前途有望な若者、立場の弱い女性や子どもである。その普遍も感じた。

 

 

 

わたしは今回これを観に行くにあたって、文楽の「曽根崎心中」を思い出した。

若い二人の死で終わるとわかっている美しい悲劇。
些細なことがきっかけとなって追い詰められていく。

今の時代から見れば、「えー、理不尽すぎる...だからってなんで死ななきゃいけないの?他に解決策があるんじゃないの?性急すぎない?」と言いたくなるような展開。

そして、クライマックスに向かっては、どちらの物語も、男性よりも女性のほうが先に覚悟を決めて、事態を動かしていっている。

夜暗い中で死に向かっていく二人(道行き)。

かき鳴らされる音楽に、狂気じみていく舞台。

特に「曽根崎心中」のほうは、徳兵衛がお初に手をかけようとするもなかなか覚悟が決まらないのを、お初自ら「早く刺せ」と促すあたりからが、鳥肌ものだ。

 

ロミオとジュリエット」は行き違いが元ではあるが、結果的にはタイミングのズレた心中のようなことになっている。

 

そういう物語とわかっていて、観に行く。

理不尽だ!!と叫びたくなるけれども、死の匂いが立ち込めてくると、ああ、やっぱりそこに行くんだよね...というモードになっていく。

 

洋の東西を問わず、みんなが観たい何かがそこにある。

ギリシャ悲劇の時代から連綿と続いてきて、現代に至るまで。

それはなんなんだろう?

 

悲劇を鑑賞することによって、思うようにならない人生、運命に抗えない孤独さを重ね、共に苦悩し、嘆き、魂を慰め、昇華させようとする作用があるということかな。

愚かで、醜くて、迂闊で、怠惰で、暴力的で、冷酷な人間の性質を、悲劇を通して味わう。悲しみに遭う立場への共感だけでなく、加害する側への共感もありそうだ。

実際今回の「ロミオとジュリエット」ではティボルトに思い入れてしまったし、「曽根崎心中」では、なぜか極悪非道の九平次の振る舞いに怒りを感じつつ、どんくさい徳兵衛をいじめたくなる自分の中の九平次性にも気づいてしまう。

人間はそのような生き物だということを思い出したり、分かち合ったりする装置が必要なのかもしれない。しかも、劇場という安全な中で。

 

*追記*---

とても大事なことを書くのを忘れていた!

鑑賞仲間と感想を出し合っていて、出た話。
「10代の頃のこういう危うさを超えて、よくみんな大人になってきたよなぁ」...

そ、それだーーーー!!

なぜわたしがウットリできないのかというと、そこの思春期の死と近接する危うさみたいなものがあるからだ。。
愛の歓びってある。でも、境界が溶けて二人で一つ(ニコイチ)がいい!と思っちゃうこと、運命の人、ロマンティック・ラブ...言い方はいろいろあるけど...それは危うさも孕んでいて。

多くの人が「思春期」という嵐を抜けてきていることを、思い出させるためにも、この悲劇はあるんではないかと思う。

だから、「ロミオとジュリエット」にしても、「曽根崎心中」にしても、やっぱり「そっち行っちゃダメー!!!!」で合ってるんじゃないか。

まだ生半可な感想で、これからどんどん変化していくかもしれないけれど、一旦これで置きたい。

---

 

 

いやはや、こんなに有名なお話で、よくよくわかっていると思っていたけれども、バレエという形式で出会い直してみて、こんなに自分の中からぞろぞろと感想が出てくると思わなかった。

 

橋をかけてもらえて、感謝!!!

バレエの有名な作品、もう少しおさえておきたいなという欲もわいてきた。

来シーズンは「眠れる森の美女」かなぁ。

トリプルビルの「ダンテ・プロジェクト」も気になっている。

 

 

 

以下は予習のために教えてもらった資料。

 

www.youtube.com

 

 

 

 ▼新国立劇場の「3分でわかる!」シリーズは、いつもお世話になっている。この場面でこの踊り、この音楽、というのをおさえておくだけでも、全然鑑賞体験が違うはず。

www.youtube.com

 


アレッサンドラ・フェリといえば「ロミオとジュリエット」なのよ!と言うのがこの動画だけでも十分わかる気がする。

www.youtube.com

 

▼バレエ用品のチャコットのレポート

www.chacott-jp.com

 

▼わからないバレエ用語を調べるのにとてもよい一冊。

今回は、「ロミオとジュリエット」「ドラマティック・バレエ」「ケネス・マクミラン」「決闘」などを調べました。

 

 

 

そうそう、予習をしていて思い出したのです。

1996年のディカプリオ&クレア・デインズの映画「ロミオ&ジュリエット」、わたしはイタリア旅行中にフィレンツェの映画館で観たのです。

もちろんイタリア語吹き替え。たぶんそれでだと思うけれど、内容をあまりよく覚えていない。

20年ぶりにちゃんと観るため、DVDを借りてみました。

 

歳を重ねていくにつれ、20年前、30年前とどんどん「長い」時間を扱うようになっている。

まったく、いつの間にそんなことになったんだろうと、心底驚く。


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丹精して実らせたフルーツの、一番美味しいところ〜第10回 学びのシェア会

隔月で集まって、発表と対話を通して学びを交換し合う、
ピア学習グループ「学びのシェア会」。
2018年1月にはじめて、1年8ヶ月。なんと10回目。

 

 

 

今回の発表3本。

1、教室で子どもを"支援する"ということ

2、踊るときの目

3、山伏修行リポート

 

体験が大きすぎて、タイトルだけで精一杯。

中身については書けないけれど、とても貴重な発表ばかり。

 

前に立って話すとはいっても、
説得するのでもなく、紹介するのでもなく、アピールするのでもない。

 

学びのシェア、体験のシェアというのはまるで、果汁いっぱいの色艶美しいフルーツ。

その人が自身の動機とある種の切実さから、現場に足を運んで、コツコツと絶え間ない実践の中で実らせたフルーツの、一番美味しいところを持ってきて、食べさせてくれる。

 

なんと贅沢なことよ。

 

 

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輪になって聴く、話す、感じる、考える…グーッと集中する3時間半を体験して。

一晩眠ってみて、不思議な感覚がわたしの中に着床している。

 

ふと滝に打たれているまりさんの姿が現れる。
霧の山道を二列で歩行する、無言で食事の行をし、闇の中を歩いている。

 

小学校の教室の後ろで、子どもたちを見ているつかささんが浮かぶ。
きのうはああだったけど、一晩寝てみたら、あれってこういうことだったのかもなー。
きょうはどうかなー、と教室へ向かう姿も。

 

踊る彩子さんが現れる。

これまでたくさんの「師」から教わってきたことで、彩子さんの身体に染み込んでいるそれを自然に立ち上げ、動かすというより、動いている。その一連が踊りになっている。

 

3人とも、今まで見たことがないような表情、佇まい。

その現場にいたはずはないのだけれども、立ち上がったそのビジョンに、

わたしの意識が心地よく重なっていく。

 

いつしか呼吸が落ち着き、深くなる。

考えすぎること、ハンドリングしようとする自分から手が緩んでいく。

 

やろうとしていることを、遠くのものと接続しようとする。

DOを大切にする。

怖れがある。でも進めなければ。

 

Which way?(どの道で)というとき、具体的につめていく場面。

最善かどうかはわからないけれど、何かを選ぶしかない。

 

仲間の学びがわたしを奮い立たせ、勇気を与え、力をくれる。

今回も、仲間に場に感謝...!

 

 


学びのシェア会のつくり

  • 運営メンバーは固定。非公開招待制
  • 発表者による発表15分と参加者との対話15分を3セットで3時間半
  • 会場は区民館など、ホワイトボードがあるところで個室
  • 会場費を人数割り
  • おやつ持ち寄りウェルカム
  • 各回定員10名(発表者3名含む)
  • 1ヶ月前にテーマと内容とプロフィールを募集
    f:id:hitotobi:20190620083619j:image

 

 

注意事項-------

※受講した講座の丸写しNG
※受講した講座の資料流用NG

としたうえで、
※シェアされる内容は、あくまでもその人個人の受け取ったものであり、伝えた側の意図とは違っていることを前提として受け取る
※シェアの内容を二次使用する場合は、原典(もとの講座や本など)にあたってからを推奨。
※少人数で気楽にやってOK(編集しきれてなくても、学びの最中のものでもよい)。発表者だけが主とならず、対話自体でさらに学びが深まることを意図する。

-----------------

やってみたいな、という方がいたら、ぜひ真似してやってみてください。

許可は要らないけど、やってみました!っていう感想は聞きたいです。

ぜひこちらまでお寄せください。

 

また学びのシェア会の立ち上げのアドバイスがほしい方は、わたしの場づくりコンサルティングでご相談にのります。下記案内をご覧ください ↓ ↓ ↓

 

 

 

今後のイベント
▼2019年9月7日(土) 『バグダッド・カフェ』でゆるっと話そう
http://chupki.jpn.org/archives/4691(田端)

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知る由もないだれかの心象風景〜映画「海がきこえる」感想

★初めて観る方の鑑賞行動に影響を与える可能性のあることが入っています★

 

7月に高畑勲展を観に行ったのと、夏休みになって暇を持て余した息子が、宮崎駿作品を片っ端から観まくっていたのとに影響されて、スタジオジブリの過去作の「海がきこえる」を観た。

 

望月智充監督、氷室冴子原作、1993年公開。

 

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海だしと思ってネッシー人形置いてみたけど、よく考えたらネス「湖」だった...。

 

 

感想としては...、とにかくとても不思議な作品だった。

 

1993年当時、わたしは高校3年生だったので、映画の中の登場人物たちとだいたい同じぐらいの年齢。

だから、「ああ、こういう物を使っていたな」とか、「こういう時代だったな」という自分自身の人生との重なりからの懐かしさも感じた。

夏目漱石の小説からの影響や、逆にこの作品のあとに作られた映画への影響も感じられた。(直近では新海誠作品)

画面は美しく、人物の動きや表情も繊細で生き生きとしている。

人間ってこういう「機嫌が悪いの?」「黙って何考えてんの?」みたいな表情...感情がわかりやすくない表情でいることが多いよな、と思う。そういう点で、わざとらしくなくて、リアル。

なにより夏の日差しや光と、それに映し出されるまちや学校の風景が美しい。

 

色が鮮やかで、なんとなく、わたせせいぞうの「ハートカクテル」を思い出す。

 

映画を観た今は8月なのもあって、現実とファンタジーがオーバーラップする感覚も楽しかった。

物語を運んでいく高知の言葉が耳に心地よい。

 

海がきこえる」というタイトルも、たった6文字でいろんな風景を想像させる。俳句のように美しい。

 

72分という中編も合っている。この尺である理由は、もともとTV番組として作られたからなのだが、「判型の違う小説の単行本」みたいでちょっと楽しい。
短編よりも長くて、長編よりも気軽に観られるっていい。

 

 

...なのであるが......、

 

どの登場人物の心情も行動も「ああ、そういうことってあるよね」と思えるようなものがあまりない。

「えーなんでそうなるんだろう」「え、そこでそれ言う?」「気になるのって、こっちじゃなくてそっち?」など、終始「????」がいっぱいになった状態で、美しい画面が進んでいく。(ちなみに音楽もとてもいい)

 

主人公の男性・杜崎拓のモノローグで物語は進んでいくのだが、感情表現があるようでなく、その行動に至った経緯や、彼をそのような行動に駆り立てるような必然性が見えて来ない。

彼が尊敬の念を抱いている親友の松野豊とも、好意を寄せる(とあとで気づく)武藤里伽子とも、不思議な熱量とコミュニケーションで付き合っている。

 

 

高校生や大学生という設定も、今の時代から見ると違和感があるような、ないようなところも不思議だ。当時はみんなあのように大人びていた気もするし、今の時代でもこういう高校生はいそうな気もする。

いずれにしても自由さがあって、閉塞感や悲壮感はない。そのあたりは時代の雰囲気なのかもしれない。いや、当時も閉塞感はあるところにはあったけど、描いていなかっただけなのか?でも高知でずっと生まれ育った高校生が、いきなり東京にきて、一人で自由行動して迷わないってすごいよね?いや、でもできる人はできるのか?

 

うーん...ぐるぐるぐる...。

と、鑑賞直後は、ただただきょとんとしていた。

 

それが、一夜明けてみてわかった。

 

わたしが過去に関係を結んだことのない、あるいは結ぼうとしてかすることもできなかった人の心象風景って、このようなものかもしれない!!

なんか話が通じないとか、不思議な人だなぁとか、一体どういうフィルターで世界を見ているんだろう、とわたしが思うような人が見ている世界ってこんなふうなのかもしれない。

心象風景だから、杜崎拓から見える武藤里伽子の像は、他者にとってはわかりやすく魅力的ではない。というより、「え、こういうこと言ったりしたりする人に惹かれる意味がようわからん」となる。そこに説明的な橋がかかっていないし、記号的な誘導もない。

にも関わらず、わからないなりにも、杜崎拓には謎の飄々とした魅力がある。自立していて、自分で決めていて、他者との境界が明確で、健やかな人なんだろうということはわかる。深く考えないところが、彼の良さなのかもしれない。(深く考えない人の心象風景とも言える)

 

里伽子の心情については、一部想像できるものはある。親の事情で生まれ育った東京から、いきなり言葉の違う高知に連れて来られて、クラスに馴染みたくない、こうするしかない、という転校生の孤独さとか、母親に反発して父親とのつながりを支えに日々を過ごしているが、実は父親のほうは「裏切って」いたという衝撃。

ああ、自分の人生にもあったかもなぁという感じはする。

しかしこの人の物言いは、杜崎フィルターがかかっているとはいえ、表面的にはひどい...。

 

知る由もないだれかの心象風景を見せてもらっていると考えると、合点がいった。

作品を通じて覗ける、想像できるって貴重なことだな、という気さえする。

 

 

......これを読んで観てみたくなる人がいるのかどうかわからないけど、興味がわきましたら、ぜひ。

全然違う感想を持つかもしれないですね。

それが鑑賞の楽しさ。

 

何を受け取るかは自由!

 

 

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