ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

展示『国宝 鳥獣戯画のすべて』展 観賞記録

6月上旬、東京国立博物館鳥獣戯画展に行ってきた記録。

chojugiga2020.exhibit.jp

 

▼メモいろいろ

・「鳥獣戯画 甲乙丙丁」を英語で言うと、"Frolicking Animals Volume 1, 2, 3, 4"になるらしい。 

・いつも思うけれど、平安時代(12世紀)の紙がこれだけきれいに残っているのがすごい。

・これ間違えられないよね?一気に描いたのかな?と思ってみたら、「ホワイト」使ってた!実物を見たからこその発見。

・巻ごとの特徴を展示物や解説でくりかえしくりかえし体験したので、ようやく身体に入った感じ。今後「鳥獣戯画」と聞いたらパッと特徴が説明できるぐらいになっている!そのくらい丁寧な解説だったし、じっくり観ていくと、確かに個性が巻ごとに全然違うのだ。まとめて見られたからこそわかったこと。

・作者は誰かはわからないが、素人が戯れに描いたわけではなく、確かな腕を持つ人が描いたもの、ということはきっちりと記憶に刻まれた。

・丙巻に出てくる「首引き」という遊び、「何それ?」と思っていたのだけれど、「親の時代は首引きって普通の遊びだった」というツイートを見かけてから来たので、平安や鎌倉の頃からの遊びを昭和の子も普通にやっていたのがすごい!と思った。なかなか凄い遊びだ。狂言で「首引き」という曲もあるらしい。(首引き:輪にしたひもを向き合って座った二人の首に掛け、互いに引っ張り合って引き寄せられたほうを負けとする遊び/デジタル大辞泉

・絵巻の世界に入って遊ぶのは楽しい。絵巻を発明したのがすごい。閉じた冊子の前に絵巻という表現があったのがおもしろいな、もっと知りたいなと思っていたら、こんな本を見つけた。これいいです。「どう見たら(楽しんだら)いいかわからん」という人にもぴったり。

・日本のゆるかわ絵、そぼく絵の世界、やっぱりいい。特に丁巻のゆるさ、たまらない。

・動物を擬人化して描いた美術作品、世界ではどんなものがあるんだろう?お話では「ラ・フォンテーヌ寓話」とかかな? と思って調べたら、ブーテ・ド・モンベル挿絵の本が出てきた!これは見てみたい!

高山寺にまつわる人として、明恵上人のことも取り上げられていたのがよかった。

夢日記をつけていた方として有名。

河合隼雄明恵 夢を生きる』(講談社, 1995年)

『別冊NHK100分de名著 集中講義 河合隼雄: こころの深層を探る』(NHK出版, 2021年)で『明恵 夢を生きる』の解説があるので、ちょうどよいかも!

 

 

 

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ほんとうは去年の夏、2020年7月14日〜8月30日に開催予定だった企画展なのだ。

感染症流行の影響で延期となってしまった。

こんな本を買って楽しみにしていたので、わたしもとても残念だった。

鳥獣戯画なぞり書き』(リンケージワークス, 2020年)

 

東京藝大では、美術のなんの学科だったか忘れたが、入学するとまずは鳥獣戯画の模写をする授業があると聞いた。そのくらい優れたお手本でもあるということか。

わたしがなぞり書きをしていたのも、何かのいい練習になっていたのかも?!

 

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たまたまこの日に観にきていたから、今日マチ子さんの#StayHome シリーズで見かけてうれしかった。

 

そうだ、東京国立博物館は、森鷗外のゆかりの地でもあったのでした。

ちょうどこの池のあるあたりに、帝国博物館総長室があったそうです。

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この方の書き込みすごい!そうか、あの出品目録の最後のページは、こんなふうに使うんだったのですね!

 

映画『カタブイ』鑑賞記録

7月上旬、映画『カタブイ 沖縄に生きる』を観た記録。

 

youtu.be

 

▼公式HP

https://kukuruvision.com/katabui/

 

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▲写真はパンフレット。シナリオが採録されているので、いろんなお話が何度でも「聴ける」。ありがたし。

 

▼印象に残る箇所、その他の感想

琉球舞踊の方のインタビューが興味深かった。「基本的に琉球の芸能は癒やしだと思います」とのくだり。「あ、これは能だ!」と思った。能には敗者や亡者、弱者を悼む面がある。琉球舞踊のゆっくりとした舞や唄、三線は瞑想的で眠くなる。

・「でも何度も見ていると、見所があり、山場があり、流れがあるから、楽しんでくれれば」というあたりも本当に能!

・社会のルールのゆるさ(てーげー)や、死者の弔い方、先祖の祀り方は、台湾映画で見聞きしたり、台湾在住の方の発信で見ていたものが近い。ウチカビ(あの世の貨幣)は台湾の「金紙」と同じだ。http://www.kansaiartbeat.com/kablog/entries.ja/2016/08/taiwan_vol1.html

風土としては、ヤマトより、台湾のほうがずっと近いんだろうなぁ。

・「今日、基地は島の1/5を占める。何キロも続く鉄条網

島を分断する」

・高江のヘリパッド建設地周辺、反対派の年配者の演説。「私は今年で八十四歳になりました。十歳の時に沖縄戦鉄血勤皇隊として駆り出され命だけは助かりました......(後略)」

・「1879年日本に併合。日本の言語と文化が押し付けられた」

・「国のプロパガンダが招いた悲劇。Suicide Criff での集団自決。

・「なぜ支配されながら、抵抗できるのか?」

・「attachment, secondary city」「彫刻でしか抵抗できない。テロは許されない、彫刻は正統な理由だ、表現だ」話している間も頭上を飛ぶ軍用機。

・「自分たちが今生きてるんだから、命のお祝いをしましょう」

介護施設でも踊りがある。立てない人は手だけでカチャーシー、口笛、太鼓。共通の身体に刻み込まれた踊りや歌やリズムの文化があるのはすごい。流行歌とは違って、土地に由来する音、音楽。

・「人の死は特別なものじゃない」「だから思う存分接する」

・「(琉球空手では)むやみに手を出さない。人に道を譲る。気持ちを述べる気持ちと我慢する気持ちが養われる」空手のルーツが琉球にあったとは知らなかった!14世紀の沖縄で秘術として行われていたものが、20世紀になって本土に伝わった説があるそう。

・「基本になるのは祖先崇拝。その感謝の祭を古い時代からずーっと続けている。一つの仏教や神道ということではなくて。特に沖縄は道教儒教も入っている。いろんな宗教が混ざり合って現在の信仰もある」

遠いご祖先ウヤファーフジ

mainichi.jp

 

・お盆の夜のエイサー。数日前にりゅうちぇるのこのツイートを見ていたから、ああこの感じなのかな、と想像しながら見た。

・家族の絆。それが苦しいこともある。それが互助になることもある。

・基地はきょうもあるし、事件はきょうも起こるかもしれない。政治的な問題は遅々として進まない。だけど、沖縄は、それだけではない。一人ひとりの人生があって、人と人との間では友情もあるし、音楽や芸術で出会える。ほんの数十年の何かに覆されることのない歴史があって、それらは変化していくかもしれないけれど、継ごうとする人がいる限り続いていく。そして、そういう人たちのかけがえのない生の営みがあるからこそ、決して暴力で損なわれてはならないのだと思う。

 

映画を観ると、てぃんさぐぬ花」を何度も聞きたくなる。ポスタービジュアルにも出ている糸満盛彬さんが好きだった歌。

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親や先祖を敬う精神性がリアルに生きている歌。

てぃんさぐぬ花 歌詞の意味 沖縄民謡

 

▼てぃんさぐぬ花

youtu.be

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▼監督インタビュー記事(2017年2月)

沖縄を見つめたスイス人監督の作品、「カタブイ KATABUI ~沖縄に生きる〜」

www.swissinfo.ch

 

▼ダニエル・ロペスさんの出演作品があった!
『ココロ、オドル』岸本司監督(2019年, 日本)

https://www.kokoro-odoru.okinawa/

映画『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』鑑賞記録

6月10日、映画『返還交渉人』を観てきた。シネマ・チュプキ・タバタでの沖縄特集の最後の作品。

 

youtu.be

 

公式HP

www.henkan-movie.com

 
参考記事

www.asahi.com

 

映画の原案。

『僕は沖縄を取り戻したい 異色の外交官・千葉一夫』宮川 徹志/著(岩波書店, 2017年)

 

今回の『返還交渉人』は、もともとはBSドラマとして制作され、2017年に放映された作品。しかし、BSだと観られる人が限られてしまう。どうにかこれを多くの人に見てもらうには?と監督が井浦さんに相談したところ、ミニシアターでかけるのはどうか?となり、90分の尺に10分足して劇場版として2018年に公開されたという経緯があるそうです。

ドキュメンタリーや劇映画とはまた違う、「ドラマ」という形で沖縄について知ることができて、よかった。そもそも、なぜ沖縄は占領されたのか、なぜパワーバランスが不均衡な形で返還されたのか、争点はなんだったのか。人にフォーカスすることで、物語にすることでクリアに見えてくる。

 

 

※以下は内容に深く触れていますので、未見の方はご注意ください。

 

●印象的な箇所、思い出したことなど

・千葉さんが通信士官として配属されていた海軍大和田通信所。軍の通信所が内地のこんな身近にあったこと。
参考:海軍大和田通信隊跡地散策(新座市清瀬市東久留米市https://senseki-kikou.net/?p=13904

・「アメリカに対等にものが言えるようになる。当たり前でしょ?」「日本がいち独立国家として、アメリカと対等に渡り合う」
2021年現在、なってない......!

・「理想を求めずして、何の外交の意味がありましょうや」

・「国民をあざむけば、必ず将来に禍根を残す」

・1998年に沖縄に卒業旅行に行ったとき、母から「パスポートは要らないの?」と聞かれ、衝撃だった。本土の人間の意識なんてそういうものなのか?母が特殊なのか?

・水源を取り込んで基地をつくったから、水をアメリカから買う羽目になっていた。

・「ベトナムアメリカが始めた戦争だ。こっちの知ったこっちゃない」

・「踊り、歌うのは、なんとか生き残って命があることを、酒や歌で生きていることを確かめたいから」踊りの輪の中に飛び込んでいく千葉。

・「台湾にいた。当時彼とは同じ"日本人"。(戦争が終わって)彼は今、台湾人。私は国籍不明」

・「"We may be a small island, but we are not small people." 本土の人たちは我々を小さな人間だと思っている。小さな人間でいてほしいんです」 これはあらゆる差別や偏見への言葉では。

・千葉さんを見ていると、『なぜ君は総理大臣になれないのか』や『新聞記者』を観ているようだった。大きな組織の中で理想を持って動きつづける人の葛藤や苦しみ。左遷されたりもしたけれど、千葉さんが潰されず、健やかで老年まで過ごされたことはほんとうによかった。

・千葉さんが沖縄で首席に会う時は、必ず背景に飛行機音が入っている。これは現代沖縄を描いたドキュメンタリー映画『カタブイ』にも出てきたので、「つくりもの」ではなく、ほんとうにこうだったんだろうと想像する。

・基地の中に先祖の墓がある人たちは、フェンスの外で清明祭(しーみーさい)など供養せざるを得ない。これは後年、この時期だけの立ち入りが許可されたそう。

・監督は爆撃機の音にこだわったそうですが、わたしは飛行音や爆撃音がどうしても怖いので、「親子鑑賞室」で観ました。そういう選択もありだと思います。自分を大事に。 

・それにしても、戦中も戦後も、決める現場にいるのは男性ばかり。女性がいない。千葉さんの妻の恵子さんは、夫のサポート。あ、外務省で働く女性がいる!と思ったら、お茶くみ......。

 

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▼井浦さん、柳川さんの舞台挨拶

 

井浦新大杉漣との共演の思い出を語る 映画『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』単独インタビュー 

youtu.be

 

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映画『幸福 しあわせ』鑑賞記録

映画『幸せ しあわせ』をネット配信で観た。

 

youtu.be

 

アニエス・ヴァルダ長編3作目。 

あらすじ>https://eiga.com/movie/45049/

 

※ 内容に深く触れています。未見の方はご注意ください。

 

『幸福しあわせ』というタイトルとは裏腹の内容......。どのへんから不穏な感じが出てくるんだろう?と思いながら見始める。冒頭からやけに牧歌的な音楽が、映像とのバランスがやや崩れるギリギリのボリュームで入ってくる。なんだか怖い。

 

1965年のベルリン映画祭で銀熊賞と監督賞を受賞した作品だが、道義的に問題があるとされて、フランスでは上映に制限がかかったらしい。が、うーん、わたしは不倫が道義的にどうかというよりも、夫のフランソワが怖い。あーなんか気持ち悪いな、この人。残酷なのにピュアに見えて、見目麗しくて、騙される。

こういうわかりづらい形の暴力って起こってるんじゃないかな、家庭内で。

 

電報の紙で詩のようなラブレターを書いて不倫相手に渡す場面なんか、うええええ〜となる。平安時代は、即興で和歌つくるのが上手いとモテた、みたいな話を思い出す。そしてまた、「俳優のように」顔立ちの整った俳優同士が演じているので画になるのだ。観ているこっちも、ついうっとりしてしまう。展開しているのはえげつない行動や振る舞いなのに、画面がスタイリッシュ。

 

心情にそぐわない形で例の牧歌的音楽が入ってくるので、心地よくはない。

くるかくるかと観ていると、突然に不穏なカットが入る。

「わたしとどっちがいい女?」と聞くテレーズ。

「お前だよ」と即答するフランソワ。しかしその後にカメラが写すのは、フランソワが開けた食器棚の扉に貼られたピンナップ、グラビアの切り抜きだ。ベタベタと貼られている。シールがおもしろくてそのへんのタンスに貼りまくるような感じで。それらは、明らかに男性に向けたエロティックな肢体を強調するようなもの。

それがフランソワの自室にあるならまだしも、狭い狭い四人暮らしの家の、人が二人同時に立っていられないくらい狭いキッチン兼洗面所にあるのだ。

一瞬なので、「あれ、なんか気持ち悪いもん見たな。なんだったんだろ……」と思っていると、次のシーンは職場の木工所が写る。そしてまたここでも、食器棚があり、その扉にはグラビアが貼られているのだ!うわ、さっきのは見間違いやたまたまや些細なことではなくて、この人は筋金入りの何かだ!とわかるようになっている。

 

ピンナップ以外にも怖いシーンがときどき入る。

親戚の家での集まりの中で、楽しげにフランソワに話しかけるルイーズに、

「ピエロを抱きすぎだ、歩かなくなるぞ」

テレーズは答えず、ピエロを下ろす。

ペンキ仕事を終えて、テレーズが仕立て中のドレスに素手で触るのを咎められて、

「細かいこと言うなよ」

笑顔で去るテレーズ。(いや、言うだろ!商品だぞ)

 

愛しているの理由が、「きみは上手いから」「テレーズは植物みたいで、きみ(エミリ)は動物だ」。

そして、「楽しい理由、僕は嘘がつけないから」と実に楽しそうに告白する。

「あなたが幸せならそれでいい」とテレーズ。

「いいんだね!やったぁ」。

どういう悪夢を見ているんだろう、これは。

サイコパスと、サイコパスに取り込まれてしまった人?

映画『ビッグ・アイズ』を観たときの感じに似ている。

 

 

ジェンダーという観点から見ても異様だ。

情熱的な恋人も、結婚して子の親になってくれと言われたら、広い一人暮らしの家も手放して、子二人を学校あるいは幼稚園(Ecole Communaleと壁にはある)に迎えにいく。子どもたちを食べさせ、寝かしつけ、アイロンをかけ、森に行くといけば薪を組み上げて面倒をみて。

たぶん以前のような郵便局で同僚から切手を見せてもらったり、いろんな客と話したりはできていないだろう。働き続けているかもしれないが、時間は短くならざるを得ない。

自分が生んだのではない子を愛して育てなくてはならない。今後、エミリとフランソワの間に子ができたらどうなるんだろう。

 

けれども、フランソワは何も変わらない。

妻を亡くしてさえ、兄夫婦が面倒を見ると言ったりする。理由も述べられない。当たり前のように「(彼以外の)誰が面倒をみるか」という話をしている。「あなたは仕事があるから」とさえ言われない。森へ行けば子どもの面倒をエミリに見させて、「ぼくはちょっと一人で歩いてくるよ」と言えてしまったりする。

 

なんだこの世界!!

かつては、こんな世界だった?

いや、今もこんな世界?

 

この映画は、一見すると、モノガミー(一夫一婦制の婚姻)から外れる「不倫をしていて平気な夫」「それを許している(風の)女」を描いた問題作のようだ。しかし、埋め込まれているのは、ヴァルダによる冷静な観察のリポートだ。

 

挿入される看板をトリミングした単語「信念」「信頼」や、ダンスのシーン(木を真ん中に左右にカメラがパンしていろんな組み合わせのダンスを映し出す)や、テレーズが亡くなった理由(おそらくエミリには知らされていない)を、観客であるわたしたちは知っている。

 

また、配役の情報を見ると、フランソワ、エミリ、子どものジズーとピエロは、姓が同じなのだ。もしや家族で出演して、この役を演じている? こんな縁起悪そうな映画によく出ましたね……。

 

いやはや、観終わってからもすごい。

夫婦という複雑な関係と、閉じられた中に潜む狂気。それを強化する社会の規範や通念。そんなものを見た気がする。

 

ヴァルダの先見性、映像作家としての才能......。

これが1965年。凄すぎる。

 

シモーヌVOL.4』がアニエス・ヴァルダ特集だったのを機に、刊行記念イベントを視聴したり、リバイバル上映を観に行ったりしているところ。

 

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マレーシア・イスラーム美術館精選 特別企画 「イスラーム王朝とムスリムの世界」@東京国立博物館 鑑賞記録

 わたしがイスラームに出会ったのは、中学生の頃。

INAX出版から出ていたタイルの本だった。この青に衝撃を受けたので、明確に覚えている。

イスラームのタイルー聖なる青』(INAX出版, 1992年) 

 

 高校のときに、友達が貸してくれたこの本も忘れがたい。

イスラーム文化−その根柢にあるもの』井筒俊彦/著(岩波書店, 1991年)

 

20年前、東京で暮らすようになって、初めてモスクに足を踏み入れた。

tokyocamii.org

 

それからも少しずつ少しずつ、いろんな形で、イスラームへの関心は途切れず続いている。

あ、そうだ。このシリーズもすごくいいのでおすすめ。4冊ぐらい出ていたと思います。

イスラームのおしえ』(イスラームってなに?)後藤絵美/著(かもがわ出版, 2017年)

 

まぁ、イスラームとか、ムスリムといっても、切り口は星の数ほどありますね。

身近な人から関心を持つ場合もあるし、こうして美術から入ることもあるし。

  

ということで、やっと本題。

 

昨日、東京国立博物館で開催中の「イスラーム王朝とムスリムの世界」展に行ってきた。

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マレーシアと言えば、一昨年から追いかけているヤスミン・アフマド映画を思い出す。マレーシアのマレー人(主にムスリム)と華人やインド系タミル人との共生について描かれた物語が多い。

マレーシア・イスラーム美術館の全面協力を得ることで、特定の国家や地域によらない、世界規模のイスラーム美術の展示が実現しました。

とのことで、非常に横断的な展示内容になっているのが特徴。東洋館の地階フロアの4/5ぐらいのスペース。そういえばこういう編集の仕方をされた展示って見たことがなかったかもしれない。今まで見たものは、一時代にフォーカスされていたり、別の主軸があってそこに対するイスラームの影響のような形の展示が多かったかな。

 

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思い出したのはこちらの展覧会での記憶。これ行って、じっくり見ておいてよかった。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

こちらの本もおすすめです。陶磁器やクルアーン写本のことも載っています。図版満載で見ているだけでうっとりしますし、それぞれのテーマの概要を知るにもいい。

『ペンブックス30 アラブは、美しい』 ペン編集部/編(CCCメディアハウス, 2020年)

フリット胎土

12世紀頃には、ガラスの原料となる石英と粘土、釉薬の粉を混ぜた人口胎土が開発され、比較的薄くて白い陶器がアラブ地域全域でつくられるようになる。(p.69)

ラスター彩

独自に開発された陶器技法に、ラスター彩がある。ラスターとは英語で「輝き」を意味し、表面の彩描部分が金・銀・同色に輝くこの技法は、もとはガラス装飾のために開発されたという。

中国の焼き物への憧れや、キリスト教とは違う、イスラームならではの信仰と結びついた美の捉え方などにも触れていて、興味深いです。

 

映画『陶王子 2万年の旅』これのおかげで、展示が楽しかった。

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やっぱりいいですね、東洋館!久しぶりに来ると、展示内容もすこーしずつ違っているので、いつも新鮮です。イヤホン持っていって好きな音楽を聴きながら観るのが好き。非日常空間に飛べます。

 

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年間パスポートが切れていたので、友の会に入りました。これでまたしょっちゅう、フラッと行ける。日時予約は必要だけど、総合展だけならけっこうパッと予約できるので。企画展のチケットが3枚ついていて、売店での割引などもあるので、企画展を毎回チェックする人はぜったい友の会がいいと思う!

その日に申し込めます。事前にネットで無料の日時予約しておいて、当日窓口で入会したらすぐ有効です。(トーハク推してます)

東京国立博物館 - 東博について 会員制度、寄附・寄贈 会員制度

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※追記(2021.8.1)

王朝の特徴や変遷、エリアについては、行ったことがない土地だからなのもあり、パネル解説がなかなか頭に入ってこない。
世界史の資料集をめくってみたりもするけれど、これもいまいちで。何かよい書籍があれば、

こういうの↓ が頭に入らないやつですね。テストのために暗記したいわけじゃない。自分なりに流れを掴んで、自分が理解できるように体系立てたい。

kou.benesse.co.jp

 

こういうのを観たらよいのかもしれない?少しずつ観てみます。

youtube.com

 

こちらも参考になりそう。

「世界史B授業実践例:イスラーム世界の変容をどう教えるか」(PDF資料)

https://www.teikokushoin.co.jp/journals/history_world/pdf/201401g/08_hswhbl_2014_01g_p12_14.pdf

 

 

特別展「植物 地球を支える仲間たち」@国立科学博物館

国立科学博物館で、特別展『植物 地球を支える仲間たち」を見てきた。

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ショクダイオオコンニャク、最近どこかで開花の報せを見たなと思い出した。京都府立植物園だ。栽培をはじめて30年で初めての開花とのこと。貴重。

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我が家の植物。ラブリー!

 

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帰ってきたときは、「楽しかったねー!」と思っていたのだが、次第に「何かが違う」という感じがしてきた。

 

ふと思い出したのは、この光景。

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これらの写真をパッと見て、どこか田舎の風景なのかなと思うだろうか。

実は、ここは東京湾の最終処分場だ。一昨年の夏、子と見学に行ったときにこの写真を撮った。

植物の下にあるのは、燃やせないゴミ、燃やした後に残った灰が、固めて置かれていく。その上にビニールシートがかけられ、さらに土が載っている。そこに植物が植えられたか、どこからかタネが飛んできたのか、土に混ざって上陸しているのか、繁茂している。

 

3枚目の棒のようなものは、ゴミから出たガスを放出ための煙突だ。

もう海の上に埋め立てていくしかもう方法がない。

人間が資源を使って使って、作って作って作りまくったあとの姿がこれだ。

 

植物があれば、虫がくる。セミがわんわん鳴いていた。鳥の声もする。

ちょっと目眩がするような光景だった。

 

原発被害を受けて、立ち入り禁止区域に指定されていた頃の町や村のことも思い出す。

植物が茂り、虫が育ち、鳥がやってくる。

かれらは「地球を支える仲間たち」で、人間であるわたしはたぶんここに含まれていない。人間が汚した後を、「仲間たち」が浄化している。

風の谷のナウシカ』の世界だろうか。

 

植物展をきっかけに思い出した。

 

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※追記(2021.8.2)

展示の中でよくわからなかったこと2つについて。

●胎生種子とは?

マングローブの展示のところで出てきた。「胎生」って、胎生と卵生の胎生?パネル解説を見てもいまいち飲み込めず、帰ってから調べた。

・一般の植物の種子は、樹から落ちたり飛んでいたりして、土などの上で種から芽が出て育っていく。

マングローブの場合は、樹に生った果実の中で種が発芽して、樹から栄養をもらいながらある程度の大きさまで育ってから、離脱して増える。人間みたい!ということで、胎生種子と呼んでいるらしい。ただし、水辺の泥にうまく着地して、さらに育つものは少ないそう。

・どうして胎生種子という道を選んだのか?と考えてみた。マングローブは水のあるところだから、そのまま種が落ちたのでは、全部流れて行ってしまう。だから少しでも生存の可能性が高くなる状態まで待ってから「産む」ということにしたのかな。人間の場合は、産まれてからもかなり無防備だけれど。

マングローブの繁殖 | マングローブワールド | 東京海上日動火災保険

マングローブの特性 | 黒潮の森 マングローブパーク

 

●共通祖先(LUCA:Last Universal Common Ancestor)

あらゆる生物の祖先にあたるもの。「生命の樹」の一番根っこにあるもの。あるとしたら、細菌のような原核生物のこと(かもしれない)で、これと特定できるものではない、概念として使われることもある?と一旦理解してみた。ちょっと違うかも?一旦考えたので、また別のところで出会ったときに、もっとわかるかも。

極限環境生命科学研究室キーワード

進化の歴史|科学バー

 

科学って厳密に定義したり、用語を使わないと不正確になっちゃうから、どうしても説明が難しくなっちゃうんだな。口語的な「ざっくり」で言えることと、テキストにしたときの正しさと。

そういったことを踏まえて、これからの展示を見てみようと思う。

舞踏「イスラエル・ガルバン|春の祭典」@愛知県芸術劇場 鑑賞記録

近頃、まとまったブログを書く気力がなく、方々にメモしたものを寄せ集めただけになっているが、それでもなんとか記録をとっておこうと思う。

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名古屋芸術劇場でイスラエル・ガルバンの「春の祭典」を観た。

danceconcert.jp

 

 

イスラエル・ガルバンって誰?という方に。わたしも知らなかったので、これを読んで予習した。

balletchannel.jp

 

直前まで諦めていたのだが、 神奈川公演を観に行った友人の話を聞いていたら、どうしても興味が出てきてしまった。

あれ?名古屋公演に行けばいいんじゃないか?と気づいて、衝動でチケットを取ってしまった。「行くならぜひ予習して」とパンフレットを郵送して読ませてくれたりもして、ほんと観劇仲間ってありがたい。

 

 

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思い浮かんだ言葉。 

慎重、逸脱、流れ、確認、反復、心の赴くままに、突然に、おもしろがって、衝動的に、運命的に、確信、挑戦、発見、固執、選択、離脱、安定、複雑、不調和、和而不同、独立、自由。

 

 

祝祭、叶ったことのお祝いは大事だなと思う。

とはいえ、「自分で自分を祝う」というシンプルなことさえも難しいときもある。

そんなときは、他の人間の表現や、作品の力を借りるといいんだと、この公演で思った。

 

ちなみに今回の名古屋行きでは、著書を出してくださっている出版社の担当さんにお会いできたり、書店営業でびっくりするような偶然があった。

note.com

 

一つの公演がつくり出す磁場ってつくづくすごい。

 

 

natalie.mu

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映画『沖縄 うりずんの雨 改訂版』鑑賞記録

『沖縄 うりずんの雨 改訂版』鑑賞。

2015年製作、ジャン・ユンカーマン監督

okinawa-urizun.com

 

1945年4月1日、アメリカ軍が沖縄本島に上陸。6月23日(現在の慰霊の日)まで12週間に及んだ沖縄地上戦では4人に一人の住民が亡くなりました。本作は、当時同じ戦場で向き合った元米兵、元日本兵、そして沖縄住民に取材を重ね、米国立公文書館所蔵の米軍による記録映像を交えて、沖縄戦の実情に迫ります。また、戦後のアメリカ占領期から今日に至るまで、米軍基地をめぐる負担を日米双方から押し付けられてきた、沖縄の差別と抑圧の歴史を描き、現在の辺野古への基地移設問題に繋がる、沖縄の人たちの深い失望と怒りの根を浮かび上がらせます。(映画HPより)

 

シネマ・チュプキ・タバタさんとの映画感想シェアの場〈 『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』でゆるっと話そう〉の準備のために鑑賞。場のためには、やはり沖縄の通史を知っておく必要に駆られた。

1853年のペリーの那覇来航から、2014年、2015年までを、18名の人々の語りとフィルム、そして監督のナレーションとでクロノロジカルに歩む2時間半。

沖縄とアメリ
沖縄と大和
黒人と白人
女性と男性
子どもと大人
南部と北部

たくさんの差別と格差、暴力と悲しみに触れ続けることの痛みは強いし、感情は揺さぶられ続ける。観終わった後はなかなか立ち上がれなかった。

それでもやはり、今観ておいてよかった。

体験した人たちはどんどん亡くなっていく。記録し、記憶し、遺していかねばと思う。関わりのある人や作品からはできるだけ聴いておきたい。この映画からもすでに6年......。

わたしたちは、どのような出来事の連続の上に、今生きているのか。
今このときも続いていることをどう受け止めるのか。

自分のこれからの選択一つひとつに関わる話だ。
他者とのかかわり、社会とのかかわり、世界とのかかわり。

これは映画でなければ描けないし届けられないものだ。その映画でも、権力によって描けなかった部分があると知った。

まだ十分に言葉にならないが、観る機会が得られたことと、観ることを選択してくれた自分に感謝したい。


一昨年、ドキュメンタリー映画太陽の塔』を観たときに、「ああ、だからこの国は……」と、長年の謎が、音を立てて崩れ落ちるような感覚があった。もしかしたらこの映画も、そんな力を持っているのではないか、と期待した。やはりそうだった。

なぜ拒めないのか、抗えないのか、終われないのか。
なぜ命を、生きることを選択できないのか。
この国が根源的に抱える宿痾を見た思い。

見ようとすることで、準備ができ、受け取れるものが起こり、またこの世界を一つ知る。世界とつながりを深める。

わたしよりずっと若い人たちが真剣に学んでいることを、どうして大人であるわたしが無視できようか。

あの人たちが、わたしを引っ張っていってくれている。

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▼映画を観ながらとったメモ、30枚超。チュプキさんの親子鑑賞室には台があるので落ち着いて書けるのです。

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ジャン・ユンカーマン監督のトーク(シネマ・チュプキ・タバタにて。ツイートを展開してどうぞ)

 

 

▼2015年のTV出演時。「モンスターではない」と監督。つまり、「何が(誰が)そうささせたか(させるか)」ということなんだろう、と。人間にまつわることのすべては。

youtu.be

 

 

 

沖縄の戦中戦後の性暴力犯罪と、旧日本軍が起こした「慰安婦」の問題をもっと知りたくて、このあとwam(女たちの戦争と平和資料館) に行きました。

 

「愛するために学びなさい」

映画『陶王子 2万年の旅』鑑賞記録

 

6月に観た映画の記録。 

映画『陶王子 2万年の旅』

asia-documentary.kir.jp

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人間の歴史でもあり、地球との関わりの歴史でもある。

まったくバラバラに存在していた事物、事象が、この映画によってつながれていく。パズルのピースが次第に全体像を成していくような謎解きドラマでもある。

旅に連れて行ってもらった。

 

陶王子をナビゲーターに据えるという発明がすごい。のんさんの声もぴったり。

一点、効果音の過剰さが気になった。もう少し控えめでもよいかなと思ったけれど、これが今の時代のドキュメンタリーの流行りなのかもしれない。

 

観た直後は、「人間は新しくつくりたい生き物である」その衝動や好奇心に共感し、愛おしく感じたし、たくましさを頼もしく眺めていたけれど、今ふりかえってみると、こういう行動が、環境を破壊したり、弱い立場の人を踏みつけてまでつくっていこうとするという面もあり、手放しで喜べないなとも思う。

東京オリンピックもそうだし、一昨に見学した生ゴミの飼料化再生工場や、最終埋め立て処分場での経験を思い出す。気候変動もそうだ。人間がつくったことで起こしてきた数々の損失。

いや、自分だってそうだ。つくりたいからつくるし、人にも環境にも負荷をかけてつくっている。

 

パンフレットにある監督の言葉にハッとなる。

ナショナリズムに陥るな!」ーーそれが5年前にこの企画をスタートさせたときからのスタッフの合言葉だった。

陥り......がち!どちらが "本当の"ルーツだとか、どちらが優れているとか。ルーツや環境が影響を与えるものは大きい。そこから生まれるものを期待されてつくる。しかし「だから日本偉い」のではなくて、容易に陥るな......。

難しいけれど、2万年も歴史のあることで、いくつもの土地で偶発的に起こったり、交わる中で起こったことは、どちらがどちらの「おかげ」なのかは意味を成さなくなる。

長い時間の尺でひとつの物事をとらえ、その体感を持って日常をまなざすことで、陥る手前でブレーキがかかることはいくらもある。

とはいえ、「つくる」動力に嫉妬や競争心もあるのは否めない。その中で、できるだけ犠牲や負荷を少なく技術革新するって可能なのかな、ともぼんやり思う。

 

遠くに行きたくても行けないときに、時間や場所を軽々と超えて見せてくれる作品でもあった。そうか、そう考えると、ここ1年半の間に起こって混乱も、長い歴史のカウントできないほど短い出来事なのだろうか。

そう思うにはまだ時間がかかりそうだけれども。

 

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チュプキさんでの舞台挨拶の記録。ツイッターからスレッド全体を展開してどうぞ。

  

この本のことも思い出した。
『一万年の旅路 ネイティヴ・アメリカンの口承史』(翔泳社, 1998年)

口承でのみ伝わってきた部族の歴史が本になるというだけでもすごいが、その中身があまりにも想像を超えていて、衝撃を受けた記憶がある。自分の命もまた、このような継がれてきた命の先にあるという不思議。

 

 

『陶王子』が好きな人は、映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』もたぶん好きだと思う。おすすめ。

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展示「MOTコレクション展(Journals 日々、記す/ マーク・マンダース 保管と展示)」@東京都現代美術館 鑑賞記録

いつもは企画展に行くことが多い、清澄白河東京都現代美術館

今回はコレクション展を目当てに行ってきた。

 

MOTコレクション
Journals 日々、記す 
特別展示:マーク・マンダース 保管と展示
2021年7月17日(土)- 2021年10月17日(日)

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-210717/


1階の展示Journals 日々、記す」では、現在進行形で起こっている地球規模の感染症や災害、オリンピックをテーマにした作品や、日々の記録をテーマにした作品から見えてくる人間の営みや社会のありようを受け取る。

常設されている作品も、テーマの違いにより、訪れるときの自分の状況や状態により、異なる対話が生まれる。

オノ・ヨーコ作品は、今回ここに置かれている。日時計と祈り。

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3階ではマーク・マンダースのインスタレーション「保管と展示」の展示。

6月まで開催していた「マーク・マンダース ーマーク・マンダースの不在」がコロナ感染症対策で開催短縮となったことから、「作家・所蔵者をはじめ各所のご協力により、作品返却までの間、同展の出品作品の一部を当館所蔵作品を軸とした全く異なる構成でお見せする特別展示が実現することとなりました。」とのこと。

レイアウトは作家のディレクションによるもの。

 

これだけの内容を500円のコレクション展料金で見られるのは、すごいので、強くおすすめしたい。静かな心持ちになりに一人で行ってもよいし、作品を観た体験を語り合うのもよい。わたしは友人と一緒に行ったのがとてもよかった。しかし今の時期は、駅からの歩きはとても暑いので、熱中症対策をしてお出かけください。

 

 

 

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気合の入ったフライヤーとパンフレット。これは図録と言っていい。毎回豪華だけれど、今回はさらに。

 

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▼インタビュー動画

"憧れは大切です。しかし強すぎてもいけない。"
If you really want to make something really great, it doesn't work. So you really have to be very nonchalant and very...You have this longing. This longing is very important not also too much. It's something in-between. In a way it's kind of magic trick. You also have to trick your own mind. Otherwise you cannot make things, I think.

 

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▼つられて出てきた動画。TOKYO ART BOOK FAIR / VIRTUAL ART BOOK FAIR

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展示『旅立ちの美術 "Departure" 』展 @静嘉堂文庫美術館 鑑賞記録

丸の内に移転前の静嘉堂文庫美術館、最後の展覧会へ。

わたしは今回が初めての訪問。

二子玉川まで来るのも久しぶり。

 

静嘉堂文庫美術館
http://www.seikado.or.jp/

 

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展示『イサム・ノグチ 発見の道』 @東京都美術館 鑑賞記録

東京と美術館で開催中のイサム・ノグチ展に行った記録。 

 

isamunoguchi.exhibit.jp

 

 

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作品リストの見取り図。AKARIの島がつぶつぶしている。

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地球から切り出された彫刻。

地球を感じる、地球とのつながりを感じる彫刻。

 

 

香川県牟礼町でノグチと仕事をしてきた和泉さんのインタビュー。

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本(台湾の歴史関連)読書記録

映画をきっかけに、台湾の歴史や、言語、現在の社会などに興味を持ち、細く長く調べている。調べた記録をここにつけておく。

 

●教科書図書館

江東区住吉にある日本の教科書、海外の教科書を所蔵している図書館。開架式で閲覧できる。コピーも可。

教科書図書館 – 公益財団法人教科書研究センター

ここで、日本統治時代の台湾人用の国語(日本語)の教科書や、原住民族用の教科書(分けられているということは差別的な扱い)、満洲時代の国語の教科書などを見た。台湾は、日本が初めて植民地にした「他国」であり、日本語を「他国の人」に教えた最初の国になった。(いやしかし、日本の国内の先住民、アイヌについてはどうだったんだろう?)

 

入ってすぐの面陳書架に、『詳説 台湾の歴史 台湾高校歴史教科書』が陳列してあった。現役の高校生が学んでいる歴史教科書の和訳だ。こんな本があったのかー!と驚いた。後日地元の図書館で探すと、新刊書として、所蔵されていた。すごい。

↓この本

 

●『詳説 台湾の歴史 台湾高校歴史教科書』(雄山閣

 日本の統治は台湾でどのように受け止められ、学校教育で子どもたちに教えられているのかがわかる。この教科書では、日本の誰がどのように統治したのか、詳しく解説されている。日本の高校の歴史の教科書では、台湾のことは一行か二行ぐらいしか触れられておらず、このあまりの非対称性に驚く。意外にも戦時体制下の軍事動員については紙面としては驚くほど少ない。「慰安婦」に関する記載もごくわずかで、表現は曖昧だ。(他にも教科書は発行されているのかもしれないし、これだけを持って断定することはできないが)台湾の原住民についても詳しいし、中華民国統治下の台湾や、中国とアメリカと台湾という、常に微妙な関係の中を生きている台湾の姿も見えてくる。教科書という形式だからこそ掴めることがある。

 


● 『郵便が語る台湾の日本時代50年史』玉木淳一(日本郵趣出版)

今年の初めに出たばかりの本。まさにタイトル通り、台湾の日本統治の50年を郵便を証人に語らせながら、歴史上の出来事の経緯や前後関係、見落とされがちな史実を拾い、丁寧に紐解いている本。わたしの関心事である台湾と郵便のどちらも専門的に研究している人がいると思わなかった。カラー図版が充実していて見応えがある。郵便という切り口があることで、リアリティを増している。 

 

 

●『ビジュアル年表 台湾統治五十年』乃南アサ講談社

なぜ小説家の乃南アサさんが台湾の本を?と思ったが、台湾に取材に行ったことがきっかけで関心をもたれたそう。歴史を専門に研究している人とはまた違う小説家ならではの描写に、ぐいぐいと引き込まれていく。

 

一番の収穫は、「第13章 こうふくの先にあるもの 1945-1947」。日本が敗戦し、引き揚げることになった時期に起こっていたことが詳しく書かれている。ちょうど侯孝賢の『悲情城市』で描かれていたところだ。

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なぜ日本円がヤミで出回っているのか、理由がわかった。引揚者が持ち帰れる財産には制限がかけられていたのだ。だから、森鷗外の長男・於菟(おと)も、鷗外の遺品を持ち帰ることが許されていなかった。そのことが書いてある。

これで、鷗外記念館から持って帰った宿題の答えがわかった!

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乃南アサさんの著書。こちらは2020年刊。読みたい。

 

これからも、行く先々で出会っていくだろう。

疑問を書留ながら、「そうだったのか!」を重ねながら、知っていきたい。学びたい。

展示「MOMATコレクション特別篇」@東京国立近代美術館 鑑賞記録

久しぶりに東京国立近代美術館の夜間開館に行ってきた。

MOMAT コレクション | 東京国立近代美術館

 

外の明るさは鑑賞にはほとんど関係ないのに、やはり夜、日が暮れてから美術館に行くのはいい。特別な感じがする。

 

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今回のおめあてはこちら。横山大観の「生々流転」。

 

 

川端龍子記念館の企画展で観た「逆・生々流転」。龍子から大観へのオマージュ。オマージュなのに「逆」とは、これはいかに。反骨精神か?

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龍子と大観の関係を知りたいなぁと思っていたら、山種美術館川合玉堂展で謎が明らかになる。

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 一つ前の企画展「院展時代の川端龍子」で二人の関係がもっとよくわかった。

https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/exhibition/%e4%bb%a4%e5%92%8c3%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e3%81%ae%e5%b1%95%e7%a4%ba

 

これは「元ネタ」、大観の「生々流転」も観ねばと思っていたところ、素晴らしいタイミングで今回の公開となった。ありがとうございます。

龍子の側に立って見ていると、大観は頑固親父に見えるけれど、やっぱりこれはすごかった。この長さで作品をつくろうと思うところが、まず凄い。

 

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常設展やコレクション展の愉しみは小学生のときからたぶん知っていた。

「いつ行ってもいてくれるあの作品」「展示替えでまた会えたあの作品」ていいよね。

他所の美術館の企画展や回顧展でまた会ったり。「あ、あなたここに来ていたの?」とか。作品と仲良くなれる。

 


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