ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

〈お知らせ〉2021 春分のコラージュの会、オンラインでひらきます

年に4回、暦の節目につくるコラージュの会をひらいています

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

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雑誌やチラシや写真を切って、台紙に貼り付けていく、
だれでも気軽に楽しめるコラージュです。


今回は春分の日にひらきます
太陽が真東から上がって真西へ沈み、昼と夜の時間がほぼ同じくらいになる日。
最近夕方になると「日が長くなったな」と感じることが多くなりました。
長かった冬が終わり、春へと向かいはじめる日です。
占星術では、春分が一年のはじまり。

別れと出会いの春、新しいことをはじめたくなる春、憂鬱な花粉症の春、いろいろな思いを持ちながら、
さて、ここからどんな未来を描きましょうか。


コラージュで形にしていきましょう
頭の中でもわもわしている好きなこと、したいこと、ほしいもの、行きたい場所。
あらゆる制限をとっぱらい、直感を頼りに写真や絵や文字を切り貼りしているうちに、
今の自分の状態とこれから生きたい世界の様が、おぼろげながら形をとってきます。

無心で集中する心地よい時間です。

制作のあとは鑑賞会
他の参加者さんからの感想や質問があることで、理由もわからず貼っていたパーツにも、自分が大切な願いを込めていたことに気づきます。


前回・冬至の会の様子
https://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2021/01/31/123747

会が終わる頃には、作品にあふれる自分らしさを愛おしく感じることでしょう。
「今のわたしに必要かもしれない!」という気がしたら、どうぞご自身の直感を信じておいでください。
わたしは心を込めて皆さんをガイドします。

ご参加お待ちしております。


▼日時
2021/3/20(土) 13:00-16:00(開場 12:50)
▼会場
オンライン会議システムZOOM(お申し込みの方にお知らせします)

続きはPeatixのサイトへ。

ptix.at

 

お申し込みお待ちしております。

 

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雑誌やチラシや写真を切って、台紙に貼り付けていく、
だれでも気軽に楽しめるコラージュです。
オンラインでの"出張"ファシリテーション承ります。

お問い合わせはこちらへ。

 

2020年12月 著書(共著)を出版しました。

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社

 

 

展示『奇想の国の麗人たち~絵で見る日本のあやしい話~』@弥生美術館 鑑賞記録

2020年の暮れ、文京区根津にある弥生美術館で、「奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~」展を観てきました。

bijutsutecho.com

 

youtu.be

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スルーしていた展覧会だったのだけれど(ごめんなさい)、加藤美紀さんが出品されていると聞き、これは行かなくてはと駆けつけました。この頃は、「感染症の影響でまたいつ美術館が閉じられるかわからない、観られるうちに観ないと!」という気持ちが強かったです。
 

加藤美紀さん。友人の紹介で、11月に銀座の個展にうかがったところだった。

加藤さんの世界は、「美麗」のひと言。ため息しかない。

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展覧会もとても興味深かった。

日本の昔話や伝説などの主題を絵画、挿画、着物、屏風などさまざまな形式で表現された展示。

古代から現代まで、いろんな時代の作品や物語が詰まっていて、ひととき、異次元に飛んだような不思議な時間を過ごした。

そうだった、そうだった、こういう日本独自の妖しの世界。異界。精霊、亡霊、生き霊、幽霊、魂、神、妖、妖怪......、ちょっと怖いけど見ちゃう、惹かれちゃう。

以下わたしの備忘として。

・「狐の嫁入り」「鳥や狐が人間に化けて嫁になる」という日本の昔話によくあるモチーフやパターンは、学問的には「異類婚姻譚」とカテゴライズされる。西洋の異類婚姻譚は、「人間が魔法で動物にされるが、その後魔法が解けて人間になり、結婚して幸せになる」というパターンが多いそう。この違いが気になる。

河合隼雄さんの『昔話と日本人の心』を読むと詳しいことがわかりそう。 


・昔話と伝説の違い。「昔々あるところに」で始まることが多く、年代、地域、固有名詞が不明なのが「物語」。それらがある程度特定できているのが「伝説」。

 

・「男性同性愛にまつわる話が古典文学の一角を占めているといっても過言ではない」「特に中世から近代初期にかけて」 へええ。確かに宗教で禁じられている地域では発展しない文化だ。井原西鶴の『男色大鑑(なんしょくおおかがみ)』(これ、国語の副教材『国語便覧』には出て来なそう......)。

この記事おもしろかった ボーイズラブが地味な古典を救った? 井原西鶴の奇書「男色大鑑」をBLとして読む|好書好日


八百万の神への信仰で価値観が多様化?ゆえに同性愛蔑視せず?とわたしのメモに書いてあるのは、展示のキャプションにそう書いてあったのか、わたしが妄想したのか。でもいずれにしても性に関して、明治維新以前はかなり「おおらか」だった、ということか。(それゆえの侵害もあり、おそらく両面)

・「異性装で神がかり的な力を持つ」「男女の両性具有で常人を超えるパワーを発揮する」と捉えていたのも興味深い。文学、演劇、舞踏などに出てくる。年末に観たフランソワ・シェニョー&ニノ・レノの舞踏『不確かなロマンス〜もう一人のオーランドー』などまさにそれを感じた。(「本当に力がある」かどうかは別として、そう特別に感じさせる、そう見せる舞台)

・人魚が↓こういうイメージなのは、江戸後期かららしい。それまでは人面魚、異形の物だった。

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・小袖に物語を描くのはトーハクのkimono展でも見た気がするけれど、ユニーク。衣服に物語。人間っておもしろいことをする。

・現代の作家として、最先端に加藤さんの作品がフィーチャーされていて、この流れで観るとめちゃくちゃよい。

www.instagram.com

 

道成寺をモチーフにした作品は、生で見ると迫力です。他にも道成寺安珍清姫)をモチーフにした作品は数多くあって、展開もする。(上田秋成の『雨月物語』から溝口健二の映画『雨月物語』への発展など)古典からのインスピレーションはやはり無限。人の数だけ生まれる。

 ・画家で気になったのは、橘小夢という方。はじめて知ったけど、鳥肌が立つような感覚。エロティックで、性と死にギリギリ近接するような。ジョルジュ・バルビエも彷彿とさせる。(もしやバルビエ〜橘小夢→魔夜峰央?!)乱歩の挿絵なども描いていたとか。やはりね。

弥生美術館との関係も深いらしい。https://www.museum.or.jp/report/624
こちらの記事もよかった。幻の画家「橘小夢」の原画が恵比寿にあった

 

 

怪奇幻想とは荒唐無稽な妄想ではなく、混迷を深める時期、表層的には理解し難いもの、深層に触れようとすることから生まれる表現なのだと思う。

今のような時代にこそ必要。しかも展覧会や読書は、安全に近づける方法として良い。

陽の当たらないところで脈々と息づいているもの、わたしの中でとぐろを巻いている奴に「肉を喰わしたった!」というような充実を覚えた展示だった。行けてよかった。

 

弥生美術館では展示に関連して、インスタグラムでこんな番組も配信してくださっていた。アーカイブで観られます。

大人のためのちょっとあぶない日本昔話 

1. 魚女房 
https://www.instagram.com/tv/CIKqFFFgpbh/?utm_source=ig_web_copy_link

2. 鬼が笑う
https://www.instagram.com/tv/CIurc3yj9Pd/?utm_source=ig_web_copy_link

3. 魂が入れ替わる話
https://www.instagram.com/tv/CJ2yEEhjJV_/?utm_source=ig_web_copy_link

4. ギャラリートーク
https://www.instagram.com/tv/CKa26SIjwEl/?utm_source=ig_web_copy_link

 

 

図録は美術館の他、ネットでも購入できる。

ものすごく脱線するけれど、たまたま今読んでいるコミック『ふしぎの国のバード』の世界とも通じるものがある。(明治11年頃の、西洋化しはじめたのは都市の一部だけで、日本のほとんどの場所は、日本政府でさえ把握していない土地。医療もまだ行き渡っておらず、迷信や呪いが力を持っていた時代。)

イザベラ・バード日本紀行』のコミカライズ。

20年ぐらい前に宮本常一の『イザベラ・バードの日本奥地紀行を読む』を読んでおもしろかったので、コミックになって感激している。

 

 

併設の竹久夢二美術館では、「夢二が愛した日本 ― 桜さく国のボヘミアン ―」を開催していた。時間がなくて駆け足だったけれど、次回来るときはもっとじっくり観てみたい。洋行時のスケッチや、風景画にハッとするものがあったので。

これまでは、「華奢な女の人が好きで、恋多き人で、洒脱でちょっと駄目なところがモテるタイプの人で、可愛い図案も描いていた人」ぐらいのざっくりとしたイメージだった。人として、作品として、あまり向き合ってきたことがなかったかも。

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予習すべく、こちらを購入。

次回(今まさにやっているところか)の展覧会もとても良さそう。

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久しぶりの弥生美術館は、2018年の一条ゆかり展以来。東大の裏の閑静な住宅街にある。湯島で降りて、不忍池旧岩崎邸庭園横山大観記念館→弥生美術館と巡ってきてもすてきですよ。

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もうすぐこちらも始まります。

東京国立近代美術館 あやしい絵展

ayashiie2021.jp

 

 

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映画『もち』鑑賞記録 

『もち』という不思議な映画を観た。

mochi-movie.com

 

実在する人々が自分自身を演じ、実在の関係性があり、その人たちが実際に体験したエピソードが盛り込まれている。

かといって再現映像ではない。新たな登場人物や新たな設定が加わり、かれらに経験のないエピソードの脚本がある。だから、ドラマ作品ではある。

61分と、これまた劇場上映作品としては、あまり見かけない尺。


前情報を得ていたこともあったからか、観ている間、この「どちらでもなさ」に揺さぶられ続けた。

変な感覚。戸惑う。どう観たらいいのかわからない。「これは演技なのか素なのか?」「演じ手はどんな心境なのか」などにいちいち気が取られていた。

今ふりかえると、自分が頭でっかちでつまらない人間のように思えるし、逆にそれも仕方がないことのような気もする。

(この辺りの「一体どうやって撮っているのか?」という疑問は、後日こちらのレクチャーで解かれることになる)

 

 

また、この物語に没入するよりも、目の前で展開される物語が刺激になって、自分の過去の記憶と紐づいていく感覚が、終始わたしを占めていた。

わたしが子どもの頃、父方の祖父母の家では、正月に必ず餅をついた。

丸餅、角餅、餡入りよもぎ餅の3種類は必ずつくる。丸餅に丸めたり、餡をつめて丸めるのは子どもたちの仕事。 

餅をつくのは父や祖父で、母や祖母が返す役割。

それを見ながら、自分も大人になったら、餅を返す役になるのだと思っていた。

タイミングを誤ると杵で手を打たれそうで怖いけれど、大人になる頃にはそんなことも難なくこなすようになるに違いないと。

でもそのような日は来なかった。わたしはあの頃の両親よりも歳を重ねたけれど、餅をつくことはなかった。祖父母はわたしが20歳になる前に亡くなり、人の住まなくなった家には、杵と臼が取り残された。

祖父母の看取りや葬儀のことなどが思い出された。

そんな記憶と共に感情がドバーッとあふれてきた。

 

大好きな人の声や手、ずっとここにあると思っていたこと。

大切なのに、いつか思い出せなくなる日が来るのだろうかーーー

この言葉が交わされるシーンはよかった。

何事もずっとは続かない。丁寧に守ってきた土地の文化も、暮らしも、人のつながりも、記憶も、いつか無くなる。

 

肉親との何気ない会話が、そのときの情景が、一生忘れられない記憶に変わることがある。

でも逆に復興されるものもある。その象徴が、本寺地区に伝わる「鶏舞」。
あの人たちに感じるのは、ひたすらに希望。

忘れる、覚えている、留める。
それらを抱えながら生きているわたしたちが映される。

 

▼脚本・監督の小松真弓さんのインタビュー

brutus.jp

 

▼舞台挨拶

岩手県・一関シネプラザ 公開記念舞台挨拶レポート

7月4日 初日舞台挨拶 小松真弓監督×及川卓也プロデューサー レポート  

 

 

実は、2021年1月の〈ゆるっと話そう〉は、この『もち』か『ムヒカ 』かで迷っていた。

1月だし、正月だし、もちはいいんじゃないか。

今年はわたしもコロナ禍ゆえに実家に帰省できないから、郷里を思い起こす『もち』で話したい気持ちもあった。そういう人は多いのでは、という見立てをした。

自分の故郷や家族、喪ったものの話、自分のルーツの話を聴きあい、思いを分かち合う、温かくよい場になるだろう。どの土地にルーツを持つ人にとっても何か語れることはある。

懐かしい思いを語るうちに、「自分にとっての地域や遺していきたい文化」の話にも展開しそう。

たくさんの喪失を経験した2020年だったから、それを丁寧に悼む時間にもなりそう。
映画が撮り方が実験的なので、そこもたくさん語れそう......などなど、いろいろと魅力は尽きなかった。
 

しかし、この作品は「言葉にしたい」「誰かと分かち合いたい」という欲求が湧くよりは、自分の中で温かく持ち帰りたいタイプの映画に感じた。

また、社会や世界が揺れている今は、『ムヒカ』を見て語ることのほうが人々から求められているようにも感じた。根拠はないが、感覚として。

 

苦渋の決断で、『ムヒカ』に決めた。

でも『もち』でも語ってみたかったという気持ちもある。
またそんな機会があれば。

 

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※蛇足、次の展開。

たまたま視聴していた講義の中で、こんな話題が出てきた。
『もち』とつながる話のように感じた。

山本博之准教授「メディアとコミュニティ―東南アジアから考える」第1回

京都大学人社未来形発信ユニット

オンライン公開講義シリーズ「立ち止まって、考える」

災害では人々の記憶の拠所も失われる。災害で馴染んだ風景がすっかり変わってしまったことで、自分が一体誰でどこにいるのかわからなくなったという感覚に襲われた人もいた。風景には、個人の印象や価値観が折り込まれている。個人が社会が風景に意味を紐付けしたものを"文化空間"と呼ぶことができる。災害では人命や財産だけではなく、個人が文化空間も被害を受ける。

文化空間は目に見えるように表現するのが難しい。どのように表現して、どのように共有するのかが難しい。しかし試みはある。被災地で意味の紐付けがされているものを観て、その意味を感じてみるという方法。何か見えているものをその場に置くことで、なんらかのメッセージを伝えようとする。花を置く、石を重ねておいてみる、手書きで張り紙をしたり、有り合わせのものを使う。場合によっては、自分が身体を動かして、自分が何かを行動し、それを人に観てもらう、表現することでも伝えられる。目に見えない文化空間を可視化する。

もしかしたら本人たちはあまり深い意味はなくやっていないとしても、ただその場にあるものを動かしただけなのかもしれない。でもそうであったとしても、それをきっかけとして、文化空間を読み解く糸口になるのではないか。紐付けられているものを見つけ、そこにどんなメッセージが込められているのか考え、その解釈をもとに、できればその地域の人たちと意見を交換していくことで、文化空間を可視化することにつながるのでは。

(※筆者が音声から粗く起こした状態。逐次文字起こしではない)

youtu.be

 

 

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レクチャー『村上浩康の「ドキュメンタリーは創意工夫に満ちている」』参加記録

昨年末、ポレポレ坐でひらかれた、ドキュメンタリー映画監督の村上浩康さんのレクチャーに参加した。

pole2za.com

 

このツイートを見て、すぐに申し込んだ。これ、まさにわたしが知りたかったこと!

 

ドキュメンタリー映画を観ていて、「こんな奇跡的なシーンやカットは一体どうやって撮っているんだろう?」と思うことがよくある。どんな編集をしているのか。

劇映画の作り方はだいたい知っている(と思う)が、ドキュメンタリーについての知識が乏しい。ドキュメンタリーにも演出があると聞いたが、それは具体的にはどういうものなのか、ずっと知りたかった。

そこに特化してレクチャーしてもらえる、しかも現役監督から直接聴ける機会は貴重だ。

「作りを知る」ということは、「鑑賞の視点を養う」ということでもあるから、今回聴くことは、わたしの仕事上、とても重要な学びになることは間違いない、と確信していた。

 

 

わたしは、村上監督作品を2020年公開の『東京干潟』『蟹の惑星』で知った。

higata.tokyo

 

そのときの感想。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

村上監督は映像の作法や体系を誰かから習ったわけではない。映画をひたすら観て、独自の実践力で表現し、創意工夫を繰り返すことを続けてこられたのだそうだ。

 

当日のレクチャーで印象に残ったこと。

※わたしの学びや考察は▶︎で記した。

 

Robert Flahertyロバート・フラハティドキュメンタリー映画の父と呼ばれた映画監督。『極北のナヌーク』(1922年)を投影しながらの解説。

・この画を撮るためには、そこで何が起こりそうか、ある程度予測する必要がある。その予測のために、取材が重要になる。それがどの程度の頻度で起こるのか、パターンがあるのか、変化するとしたらいつ、特徴的なことを確認しておく。(▶︎撮りたい映像が予め自分でわかっている。頭に描ける。そこから逆算して何をすればいいか考える。)

・対象が再度その動作、行為、言動を起こすように、誘導することもある。では「演出」とは「ヤラセ」なのか?その違いは?

・やっているのは、自分の感じた驚きを観客に伝えるための創意工夫。自分の見た現実を自分のフィルターを通して表現する、作品にする。(▶︎ただ現実を写しても、背景や前提が共有できなければ、観客を飽きさせずに最後まで連れていくのは難しい。特に商業映画を撮っているなら余計に大切になる、ということか。そのままをただ見せることも、できなくはないが、そうすると「観られる人」「読み解ける人」が限られてしまう。)

 

▼村上監督作品『東京干潟』を投影しながらの解説。対象とのコミュニケーションについて。

・環境、登場人物、話、生活、人生......などの要素を工夫しながら順に見せていく。人は一気には受け取れない。(▶︎人間の脳の処理能力、知覚能力、心理などを踏まえて、何をどの順で観せていくか、聞かせていくかを考える。像を結びやすくするということか。人に教える、講座を設計するなどにも活かせる話)

・人間が意識しているものは、シーンが重なると次第に忘れる。ただし潜在意識は引きずっているので、事前に少し入れておいて、あとで再度別の形で登場させると印象がつきやすい。

・問い方が大事。その話が出るように"誘導"する。同じ話を何度も聴く。基本人の話というのは再現性がないが、長く撮っていると同じことが起こりやすくなる。どう現実に働きかけるか。「もう一回話してくれませんか」と言って聴き始めるが、帰結点は決める。また、聴きたい質問の2つ手前から聴き始める。(▶︎インタビューにも通じる。敬意は忘れず。伝えたいからこそだが、やりすぎない。コントロールにならない。)

・長い期間撮って関係ができていると、対象が演技をしてくれることがある。期待に沿おうと振舞うようになる、撮られていることを意識するようになる。逆に、人はカメラを意識しないようにする振る舞いも起こる。あたかも撮られてなどいないように。撮る側と撮られる側の心理がある(e.g. 『ニューヨーク公共図書館』by F.ワイズマン監督)

・「いつもと違う」という設えをすると、現実が動くことがある。(▶︎逆に言えば、現実を動かしたいときは「いつもと違う」設えをする。これは他のことにも生かせそう)

 

▼村上監督作品『蟹の惑星』を投影して、ドキュメンタリーの音についての解説。

・その場の音でないものをつけることもある。実際にはそのタイミングでは聞こえないが、効果を高めるために、映画の説明として意図的に。短い時間でぎゅっと体験してもらうために。(▶︎これも"嘘"ではない。ひとえに"自分の感じた驚きを観客に伝えるための創意工夫"と理解できる)

・自分にしかわからないこだわりや秘密を作品に仕掛けておく。誰からも理解されなくてもよく、ただ自己満足のためにやっておくと、「ご批判」があったときにも耐えられる。(▶︎これすごく分かる......。書くこと、作ることの中で、今まで無意識にやっていたけれど、今後は意図的に入れてみようと思った)

・何かに使いたい素材は置いておく。いつか使えるかもしれないから、あきらめない。同時に制作している他の作品と融通しあうこともできる。

・映像と音は独立した表現物として、拮抗させながら一つのものにするのがおもしろい。

 

▼その他。

・環境に負荷をかけないように撮る。

・実は何十匹もの蟹の映像を編集して、一匹のように見せている。同じ条件下で撮る必要があったので、3年を要した。

・現実が浅薄な意図を軽々と超える瞬間があり、そこに圧倒される。

 

わたしが個人的に質問したいこと。(まだ聞けてません)

・村上監督の聴き方が非常に印象的。寄り添う、補う、反復、温かい関心。こんなふうに聴いてもらえるなら、誰でも話してしまうのではないか。これもドキュメンタリーの技術?この聴き方はどこで学ばれたり、鍛錬されたのか?

・話を聴く時に、帰結点は決めるとのこと。帰結点はズラすこともある?手放すこともある?どこに到達するかわからないけれどひたすらついていくときもある?

・どのように関係をつくっていっているのか(ラポールの形成)。撮っていないところでは、ご自分の話もするのか?

・カメラが入ることで、その場にいる人たちの関係性が変わる可能性は高い。人の人生に介入するのは怖くないですか?そういうこともハラを括ってやってらっしゃるんですか?

 

参加しての感想。

村上監督のレクチャーがおもしろすぎて、メモを取りまくっていたらインクが切れた。やはりペンは予備で2、3本入れておいたほうがいい(これも学び)。

ポレポレ東中野の小原さんが冒頭の挨拶で、「参加した人が自分の仕事や活動の創意工夫へのインスピレーションになったらうれしい」というようなことをおっしゃっていた。

聴きながらわたしが思い浮かべていたのは、やはり自分の仕事のことだった。

インタビューやコンサルテーションやファシリテーション

これらはどれも事前に準備して想定する。
身体を運んで、関連事項を調べて、資料に当たって、コミュニケーションして、タイムラインを引いて......どれだけ準備したかで当日の場が決まるから、準備が本当に大切。

実際の場で、用意していた素材やアイディアを使うこともあれば、使わないこともある。その場で思いついて採り入れることもある。

そのときの取捨選択の判断が、関わる相手をできるだけ損ねないような訓練を別途していて(たとえば競技かるたや家事や書き物)、種々準備はするのだけれど、一番の手応えは、現実が想定を遥かに超えてきたとき。これはちょっと言葉にはできない喜び。

Amazing!な瞬間。うわ、キタコレ!と驚いて、わくわくして、圧倒されている。
コントロールが利かないことが怖くて嬉しい。でもこれが起こるには「想定」が大事。

それを村上監督は「創意工夫」と呼んでおられたのではないか。
意図して置く。置き続ける。
真剣に、真摯に取り組み続ける先に起こるご褒美みたいなとき、現象、運命の反転。

能「小鍛冶」にも通じる。やるだけやって、葛藤もしつくして、あとは神様(大いなるもの)に委ねる。意図や想定(三条宗近で言えば、相槌がいて、それが人間である)を超える覚悟ができていれば、準備ができていれば、神様は願いを叶え、相槌を務めてくれる。それは想定を遥かに超えた出来事だし、出来上がった刀剣も想定を超えている。自分が作ったけれど、それだけではないものができる。

映画の持つ深遠さや重厚さ、懐の深さに「ドキュメンタリー映画の創意工夫」という切り口で、束の間、触れさせてもらえたという満足感がある。

この世界の秘密や奥深さを他の人間を通じて教えてもらう、橋を架けてもらうのは、やはりこの上ない喜びである。

また、ドキュメンタリーと劇映画の違いや境界はあるにはあるが、厳密ではないのかもしれないという感触も得た。ワンカットでカメラ回しっぱなしで、俳優に特に演出もつけずに撮る劇映画だってあるわけだ。

いずれにしても、表現を作品としたいなら、鑑賞者がいて完成するものだから、「伝えたいこと」と「受け取ること」の出会うところについて考えるのがやはり大切で、演出も(編集と言ってもいい)当然必要になる。

「素材から演出をかける」のか、「素材自体に意図はなく、集めてから演出をかけていくのか」の違いということなのだろうか。

近頃、脱稿した著書(共著)のことも思い出す。

語り手は「わたしは(一人称)」なのだけど、「わたし」を時系列に、ままに記録したものではないし、伝わるように手直した部分も多い。

だからこれも創作。とはいえ嘘ではない。

でも生(raw)だと誰も食べられないし、調理がたまたま今回はこうだっただけで、また設えや顔ぶれが変われば違う表現になる。

 

先日『もち』という映画を観て、ドキュメンタリーのような劇映画を観て、どうしてこんな映画が撮れるのか不思議だったのだが、今回のレクチャーを聴いて合点がいった。

 

今後、他のドキュメンタリー作品を鑑賞するときに、今回得た学びを使いたい。
具体的に想像力を働かせることができ、これまでよりもさらに奥行きと深みを持って、作品のメッセージを受け取れるはずだ。

 

村上監督、ポレポレ東中野さん、すばらしい機会をありがとうございました!

 

 

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展示『世界のブックデザイン 2019-20』展 鑑賞記録

毎年開催されている、印刷博物館の『世界のブックデザイン』展に行ってきた。

www.printing-museum.org

 

印刷博物館は、有楽町線江戸川橋駅徒歩8分・トッパン小石川ビル内。

当たり前のように身近にある本。その造作とこれだけ集中して対話できる機会もなかなかない。しかも、展示されているのはどれもほんとうに"美しい本"ばかり。
 
デザインを通して世界の動きや、ボーダーを超えつつも、滲み出てくるローカルを感じる時間。

実物との対面だからこそ感じ取れることの多さに、毎回驚かされます。
 
触れるのがこの展覧会の良さの一つ。でも、今年は感染症対策で無理?と思ったら、いろんな工夫をしてくださったらみたい。ありがとうございます。

 

 

 

 

今回の展示で、わたしが注目したのはこんなこと。

審査員はどこを見て評価しているのか?
"美しい"本とは何か?

本を観察し、手袋をして触り、添えられた評を読んでみた中で気になったキーワードをいくつか挙げてみる。重複するものもあり、カテゴリ分けに難もありそうだが、とりあえず。

  • 見た目の創意工夫:サイズ、書体、紙質、判型、色彩、余白、段組、小口、天、カバー、光沢
  • 読書の想定:判型、開き具合、手触り、視点、集中、座り方
  • デザイン、印刷技術:タイトルデザイン、レイアウト、写真や挿絵のバランス、テキストと図版、精巧さ、分野と内容とデザインのマッチング、呼応、効果
  • 印象、性質、個性:魅了、巧みな、既知に富む、趣向、控えめ、謙虚さ、革新的、統制、エレガンス、連想、インパクト、再現性、揺さぶられる、鮮やかさ、潤沢、余韻、コントラスト、興味をかきたてる、コンセプチュアル、馴染み、問いかけ、違和感、親しみやすさ、人間らしさ、クリエイティブ、活力、逸脱、センス、理論的、膨大さ、重厚さ、詳しさ、意味、体系的、独自のシステム、浮かび上がる、息を飲む、一風変わった、一目惚れ、楽しさ

 

物としての本の姿だけではなく、人間とのコミュニケーションをつなぐ物として、どんな性質を持つのかも評価している、ということなのかなと理解した。

細部の美しさと全体として構成されたときの美しさと、そのつながりの意図。

 

評の独特の言い回しも、観察するとおもしろい。

  • これは献身的で思慮深いデザイナーの仕事である。
  • デザインは美学を優先に、技術と慎重さでそれが遵守されている。
  • デザイナーはこの本の精神、この瞬間の精神を吸い込み、すべてのページに吹き込んだかのよう。
  • 奔放な記憶のエピソード性を醸し出す詩的な雰囲気

 

国別に並べられたり、国名が記されていることで、それぞれの国へのイメージが覆されていくような、また新たなイメージが付加されていくような感覚がある。

あ、これは、わたしが切手を見ているときと同じ感覚だ!

 

 

もっとじっくり読んでみたいと思った本は三冊。

Die Bibel – Über Frauen by Paulina Mohr

聖書。ただし、女性に関する概念を含む文章のみが印刷され、他のテキストは消されている。可視化されたのは、抽出された"女性"のあまりにも貧弱な数量......。

 

 
 
 
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Children by Olivier Suter

世界的に有名な人物の子どもの頃のポートレイトが並ぶ。パッと見てめくった次のページに名前が書いてある。最初はクイズのように当てるのを楽しんでいたが、次第に、この子たちが大きくなって成したこと、運命を知る後世の人間としては、だんだんと複雑な気持ちになっていく。

自分の中にある子どもという存在への歪んだ幻想も見え隠れする。

※触れる展示作品

 

CHILDREN by Olivier Suterja.twelve-books.com

 
 
 
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American Origami by Andres Gonzales

アメリカで起こったいくつかの学内銃乱射事件。残された人々、物、まちを追った6年間の記録。写真とインタビュー。圧倒的な喪失と痛み、永遠に止まった時と、移りゆく世界。ただただ圧倒される。ドキュメンタリーフィルムとはまた違う辿り方。

※触れる展示作品

post-books.shop


動画紹介 Andres Gonzalez - American Origami on Vimeo

 

 

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布手袋をして本を触る経験は初めてで、ジュエリーや美術品を扱っているようで、至福でもあった。

2021年4月18日までと会期は長めなので、よきタイミングでぜひ訪ねていただきたい。

 

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NTライブ『フリーバッグ』鑑賞記録

NTLiveのアンコール上映『フリーバッグ』が今年の劇場初め。

 

もともと舞台が大きな話題になって、そこからアマゾンでドラマ化され、シーズン2まで放映された。今回のNTライブで映っている公演はそのドラマ化も終わってからの、凱旋公演のようなもの。

 


前日までにアマゾンプライムでドラマ版を一気に観て、あれこれ記事やレビューも漁って楽しみにしていた。ドラマがとにかくすごく良かった。「女の話」のイメージが強いけれど、「男の話」でもあって。すごく「今」なお話。

そのドラマの基になった舞台版はどんなだろう?基本は1stシーズンのプロットに沿っているけれど、ドラマにはない登場人物もいるらしい。

わくわくしながら、劇場へ向かった。

 

f:id:hitotobi:20210217214157j:plain

 

観終わって、もーう、めちゃくちゃよかった!

フィービー・ウォーラー=ブリッジの才能に乾杯!

ドラマを観ていなくても楽しめる。観たあとドラマを観てもすごく楽しめる。

 

フリーバッグは、可哀想、逞しい、嗤ってもいい奴、いやそのどれでもない。

名前も出てこない、でも、ただその人として生きて、語っている姿。

好き!大好き!

表面的な説明(性に奔放、下品でクズ等々)ではちょっと収まらない奥深さがある。

「これってわたしの話じゃない?」と思う人がいるの、わかる。

 

彼女は自分がどう観られているか知ってる。

いつも少し行き過ぎるだけ。

期待には応えられないだけ。

頭の中のことを口に出しちゃうとか、空気が読めないとか、"親切"すぎるとか。

それで怒られたり、距離を置かれたり、軽く扱われたり。

でも悪気は1ミリもない。

なにより、自分に嘘をつかない人。

清々しい。チャーミング!

 

欲望されることで自分の価値を確認するのは、深く傷ついているから。

口に出さないだけで、多かれ少なかれ、誰にでもそんな面があるんじゃないの?

 

フリーバッグの周りの人も、みんなどこかヤバい。
一見完璧に見える人も、そう大して変わらない。

みんなろくでもなくて愛おしい人間(わたしもまた)。

近くにいたら勘弁してよってなることもあるかも?

でもこうやって演劇を通すと、理解も共感もできるし、謎の慈愛も湧く。

 

そんな話を、一緒に行った友達2人とあーだこーだとしまくった。

何かを観て話題が尽きないのって、ほんと幸せ。

 

これからも、わたしの内なるフリーバッグと仲良くしたい。

 

 

この記事がおもしろかった。

doors.nikkei.com

 

舞台の公演スタイルについて。勉強になる。どちらも連続ツイート。

 

 

 

www.cinra.net

 

次作が楽しみ。 

 

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NTライブ『シラノ・ド・ベルジュラック』鑑賞記録

2020年の鑑賞納めは、12月30日、NTライブの『シラノ・ド・ベルジュラック』。

 
いやはや、いやはや、、観てよかったよ。

気にはなっていたのだけれど、他の鑑賞を優先させてきて、これはもういいかな〜と諦めてかけてた頃に、たまたま桜庭一樹さんのこのツイートを観てしまった。

こんなのを読んじゃったら、「やっぱりこれ観なあかんかも」となるでしょう!

友達を誘って最終上映日に駆け込み。

f:id:hitotobi:20210217201812j:plain

 

恋とか愛とかってなんだっけ?と知りたくて観に行ったのですが、もっと深くて、価値観がぐるぐると反転し続けるような時間。

アイデンティティジェンダーセクシャリティ、民族、障害......。

偏見、差別、コンプレックスをぐりぐりと刺激してくる。

ルッキズムを止められない自分とか。

外見と知性と社会的立場、関係あるの?ないの?

それとこれとを分けるものは?わたしはこちら側?あちら側?分けられるの?

ボーダーを簡単に崩していく。


力強く、セクシーで、美しくて、儚い。残酷で優しい。


名セリフも多い。

性別は流動的(fluidity)。
わたしはその才能を伸ばす手伝い(facilitate)をしているだけ。
韻は伝統的なお菓子。みんなが喜ぶから。
月で飲む朝のコーヒーは美味しい。
Extreme is my dream.

 

幻のように展開していく舞台。

あんな狭いステージでやってるのに壮大。演出がカッコいい。

 

結局は、「人は自分自身で作り上げた牢獄からいかに自由になれるのか」ということがテーマなのかな。

 

ああ、もう一回観たい!アンコール上映に期待!


 
シラノはジェラール・ドパリュデュー主演の映画で止まっていたけど、この作品でまた動き出した。

新しい時代のためのシラノが作られた!ブラボー!

 

シラノつながりでこの映画も観たい。『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』

cyranoniaitai.com

 

 

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展示「日本で出会う禹那英(ウ・ナヨン)の韓服物語」 @駐日韓国大使館 韓国文化院 鑑賞記録

駐日韓国大使館 韓国文化院で開催中の『韓国イラストレーター 紹介展 日本で出会う禹那英の韓服物語』に行ってきた。

https://www.koreanculture.jp/info_news_view.php?number=6552

 

f:id:hitotobi:20210217205652j:plain

 

韓国文化院とは、韓国文化の総合窓口の役割を担う、韓国の在外政府機関。四ツ谷四丁目にある。

www.koreanculture.jp

他国の類似の機関として、

イギリス: ブリティッシュ・カウンシル
イタリア: イタリア文化会館
ドイツ: ゲーテ・インスティチュート
フランス: アンスティチュ・フランセ

などがある。

 

何も前知識はなかったが、いつかどこかで見たこの展覧会のポスタービジュアルに惹かれたのと、イラストレーションの最前線や制作過程なども見られる期待があり、行ってみた。

 

 

展示会の紹介動画。

youtu.be

 

この展示会のメッセージは3つ。

1. 韓国のイラストレーター、黒曜石こと禹那英さんを紹介する

2. イラストレーターという職業について、あらためて光を当てる

3. 禹那英さんがイラストレーションに採り入れた韓服(Hanbok)を紹介する

  

禹那英さんは、韓服というモチーフやデジタルドローイングを通じて、伝統と革新、西洋と東洋を超える試みをしている。

会場に流れているインタビュー映像。
イラストレーターは、好きや上手さだけではやれない職業」と語る。


必要な資質として、

・クライアントとのコミュニケーション能力
・デジタル作業能力
・表現を追究し考え続けるタフさ

を挙げる。

わたしの周りのイラストレーターさんを思い浮かべても、確かに、と思う。

 

「日常の中で自分なりの新しい視覚でものを見る。特別に見える瞬間があれば、それをとらえ、表現することが大事」

これはどの職業にも通じる話だろう。

www.instagram.com

 

 

韓服の展示も少し。

色とラインが美しい。その民族に一番似合う服。

韓服とは:https://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/AKR/AK_JPN_4_3.jsp

www.instagram.com

 

 

韓服その美しさをイラストにしてさらに拡張し、濃縮して表現し、インターネットを通じて、もっと遠くとつながろうとしている。

作品はミュシャの絵画のような装飾性も魅力。


禹那英さんのイラストをたっぷり味わいながら、韓服についての知識も深められる本。民族衣装好きな方にはたまらないし、これがあれば韓流ドラマ(歴史物)を観るのがもっと楽しくなりそう。

 

www.instagram.com

www.instagram.com

 

韓国文化院の4階にあるサランバンと庭園。ビルの中にこんなものがあるとは!

サランバンとは:駐日韓国文化院 Korean Cultural Center

www.instagram.com

 

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普段はこのような小さな展示の情報まで入ってくることは珍しいので、たまたま出会えてラッキーだった。

 

 

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映画『マロナの幻想的な物語り』鑑賞記録

2020年の年末、息子と映画『マロナの幻想的な物語り』を観てきた。

シネマ・チュプキ・タバタさんにて。

(タイトルの綴り、いろいろ間違えそうだナ......。投稿する前にチェックしたら、やっぱり間違えてた)

maronas.info

 

帰り道はずっと感想話しながら。すごかった。すごい体験だった。
チュプキさんの音もやっぱりすごい。包まれる。ドカドカくる。


ただただ美しい画面が途切れることなく展開していく。

あらゆる重力、あらゆる常識や限界から解き放たれる造形。

身体感覚が変わる。

手描きアニメーションの世界は無限大、とこの少し前に観た『ウルフウォーカー』でも思ったけれど、2020年の最後にまたすごい表現を観てしまった。

 

物語の運びにも圧倒された。

犬の一生を辿りながら、出会ってきた人間の哀しみや苦しみに触れていく。
人間たちがどの人もあまり幸せそうでない、病んでいるように見える。
でも幸せか不幸せか、他人がそう単純に割り切れない。
すごく複雑な存在。
ああ、こういうことってあるよねと、いちいち思う。大人になるにつれて、歳を重ねるにつれて、直面していくあれこれ。既視感を覚えて苦しいところもある。そういうあれこれも、全て包んでいく映像の魔法に救われる。

犬はただ見つめる。
時に、「これは犬の務め」とばかりに介入する。

 

犬としているってこういう感じなのか。
犬になる、犬として生きる擬似体験をしているみたい。体温と鼻の湿り気。

"犬は人間の友だち"と聞くけれど、ほんとうにそうなんだ〜と思うような映画。
(いや、この映画も人間が作ったんですけどね)

 

観終わったら盲導犬がいたのに気づいた。映画が観られるなんてすごい。訓練されているんだなぁ。外に出ればまた散歩中の犬がおり、「ああ、この犬にもあの犬にもいろんな人生が…...!」など考えてしまった。

のんさんの吹き替えも、マロナのキャラクターにぴったりでした。クールで少し距離感があるけれど、体温や湿度は感じられてるような。

 

今、犬や猫と一緒に暮らしている人や、かつて一緒に暮らしていた人たちは、どんなふうにご覧になったでしょうね。聞いてみたいな。

わたしは中学校の校門の前で拾ってから、6年間一緒に暮らしていた黒猫のことを思い出していました。

 

 

English Versionのトレイラー。

youtu.be

 

音声ガイドの台本作成がむつかしいと聞いていた作品。

予告を観て、確かにこの映像を一体どう表現するのか?!と楽しみになった。
イヤホン持参で行ったら......、いやーこの描写すごい!そうか、表現がどれだけ抽象的であれ、目に映るものを描くんだ!ディスクライバーさんすごい!
尺におさめるナレーターさんもすごい。

 

監督のアンカ・ダミアンさんへのインタビュー

"わたしにとって幸せとは、一人の芸術家としての幸せは、表現法を見つけることです。人々にとって重要なものや、人生にとって大切なビジョンを伝えるためです"

"作品を通して伝えたいことは、人生は愛のレッスンで、わたしたちは誰かに残せるものがあること。それは心です。わたしにとってはかけがえのないものです"

youtu.be

 

右の本は、マロナのキャラクターデザインを担当しているブレヒトエヴァンスが、ルイ・ヴィトンのtravel bookという本のシリーズのために描き下ろした作品集。

チュプキさんで展示されていて、拝むことができました。すごく、すごくすてき。

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jp.louisvuitton.com

 

パンフレットも美しく、グッズのクリアファイルもかわいい。B5サイズが珍しい。

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予告でも流れる、「犬は決まったことが好き、人はもっといいものを欲しがる」のフレーズがとても印象深いのだけれど、ドキュメンタリー映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』も思い出す。

もっともっとと欲しがるけれど、幸せは小さなもの。

すぐ足下に、すぐ鼻先にあるもの。

 

 

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〈レポート〉2/16 オンラインでゆるっと話そう『ウルフウォーカー』w/シネマ・チュプキ・タバタ

2/16夜、シネマ・チュプキ・タバタさんと、感想シェアの場〈ゆるっと話そう〉をオンラインにてひらきました。

 

第19回 ゆるっと話そう: 『ウルフウォーカー』

アイルランドの町、キルケニーに伝わる伝説を元にしたアニメーション映画です。

2020年製作、アイルランドルクセンブルク合作

child-film.com


 

こんなご案内を出しました。

 
ふたつの異なる世界に住む少女たちの友情、自然と人間との共生、男性権威主義からの解放、自己統合と葛藤など、多様なテーマを含み、見応えがあります。
 
アクション映画のようなスピード感と躍動感にあふれ、手描きアニメーションの可能性を広げる美しい作画と共に、身体全体で楽しめる映画でもあります。
観る者の野生を目覚めさせて生きる力を与える物語は、混乱の時代にもたらされた新たな伝説とも言えそうです。
 
独特の作画にちょっと怖さを感じるかもしれません。でも、子どもの頃は自由に行き来していた「あちら側の世界」ってこんなふうだった気もします。分かりやすい可愛らしさではなく、あえてこの手法をとった制作者の意図を感じてみるのもおもしろいでしょう。
 
さて、観終わって、どんな感想を持たれたでしょうか。
上に挙げたのは、ほんの一部の見方でしかありません。観た人の数だけ注目ポイントがあります。ぜひそれをシェアしに来てください。
 
ご参加お待ちしております。
 

 

当日は満席での開催

今回も9名満席となりました。ありがとうございます。

東京、埼玉の他、石川や兵庫からもご参加がありました。(オンラインの良さ!)

・はじめての参加だけれど、皆さんの感想が聴けるのが楽しみで

・この映画が好きすぎて、数えきれないほど観ている。ツイッターで感想を探していたら、話せる場があると知って申し込んだ

・前回のゆるっと話そうがよくて、ゆるっと話そうで話したいからこの映画を観た

・昨年末に観た瞬間、一気に個人的2020年のトップ映画に躍り出た映画なので、感想を話せるのがうれしい

など、今回も様々な皆さまがご参加くださいました。

 

進め方

・メインルームで「呼ばれたいお名前」と「何県から参加」か一言ずつ紹介していただき、チェックイン。

・ゆるっと話そうで言うところの「感想」について説明、登場人物の一覧資料を共有。

ブレイクアウトルームに分かれて、少人数で感想シェア。

・その後、メインルームに戻って、「こんな話が出たよ」「この話おもしろかった」のシェアをしてもらい、「まだ話し足りないところ」を時間ギリギリまで語って

・ふりかえり「今日参加してどうだった」を話していただき、終了

という流れでした。

 

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こんな感想が出ました

お話ししたことの一部をご紹介します。

観たきっかけ

・映画の話の合う後輩から、「絶対観た方がいい!」と猛烈に勧められて観た。前知識ゼロで、トレイラーも見ずに行ったが、結果すごくよかった。

・チュプキに他の映画を観に行ったときに、前の回が『ウルフウォーカー』で、出てくるお客さんたちが皆、ニコニコしていて、熱量を感じたのが気になって、観てみようと思った。

 

印象
・すごいものを観てしまった!こんなアニメーションがあるのか!
アイルランドの映画を初めて見たが、ストーリーも表現も、すべてが新鮮。
・少女二人の友情だけでなく、社会派的な要素もある
・「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)」も自然と人間をテーマにした映画だったが、中身は全く違うと感じた。『ウルフウォーカー』を全子どもに観てほしい。
・子どもにしっかり届く映画。
・人に勧めづらいもどかしさがある。チラシの絵になると魅力が落ちる気がして。でも動き出すとすごいので、とにかく観てほしい。

表現
・まち:直線/四角/平面/固い/暗い/書き込み、森:曲線/丸/立体と奥行き/柔らかい/明るい/ラフの対比が強かったのが、物語が進行し、躍動感と共に、次第に混ざっていく様がすごかった。
・まちの人の動きはカクカクしていて、森の狼や動物はなめらか。
・シークエンス(ストーリー上のまとまり)ごとの色彩の表現の創意工夫!
・「動物好きは絶対観ろ!」というおすすめがきっかけで観に行ったが、ほんとうに動きがよかった。ロビンが狼になってメーヴと夜の森を駆けるシーンでは、涙が出た。
・森のシーンでは、3Dで一旦作ったものをプリントアウトして、それを手描きでまた起こしたと聞いた。手がかかっている!
・ロビン、人間のときにはできたことが、狼になるとできない、あの強い悔しさが同じモチーフを使って描かれているところが秀逸。
 
人物
・悪い人がいない映画。護国卿にしても残酷だし、こんな人が近くにいたら嫌だけど、信念があってやっているところは理解できる。
・父、最後の展開にちょっとびっくり。節操がないというか、優しくて人間的なのか。
・父、ちょっとは娘の言葉に耳を傾けたらどうなの?とひっぱたきたくなった!
・父、妻をなんらかの理由で亡くし寂しくて、娘まで失いたくないあまり、娘のためにとしたことが結果的に彼女を束縛してしまう。彼にとっても「自由とは何か」ということがテーマだったのでは。
・父と娘、母と娘の対比。束縛する父と、物言わぬ母。
・ロビン、マントのフードをかぶっているときは狼を狩るハンター、白いベールのときは父に従う娘、そのどちらでもなくなったときが最高にカッコよくて大好き!
 
ストーリー
・中盤からラストどうなるのか、ずっとハラハラしていた。どうなってもおかしくない
・もう少し時代が前なら、狼が悪者に描かれていて、観ているほうも「絶対狼にはなりたくない」と思ったのでは。時代が変わってきた感じ。
・噛まれて動物になる、それを忌避するという発想は、吸血鬼やゾンビを彷彿とさせる
 
チュプキで観る
・匂いが目で見えるシーン、狼になってじゃれ合うシーン、城壁から出てくるシーンなど音声ガイドで工夫している(チュプキでは、視覚障害の方のために全ての映画に音声ガイドをつけて上映している。詳しくはシアターの特徴をご覧ください。)
・音の迫力がすごい。
・モニターで観ていたときより、チュプキの劇場で観ると、いろんな音が聞こえるので楽しい
・森を走るときの、葉っぱを踏んで走る軽やかさがすごくよかった
・前半の「狼が全面的に悪!」という描き方のくだりでは、音声ガイドも怖い感じ
 
ケルト三部作
・『ウルフウォーカー』は、『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』 に続く、ケルト三部作と言われている。どちらもとても良い。
・『ウルフウォーカー』のルーツが感じられる。

Amazonプライムには吹替版、字幕版の両方があります(2021.2.16現在)
 

 

時代背景

・父娘はどうしてイギリスからアイルランドに渡ったのか?

・コミックには、護国卿のモデルは清教徒ピューリタン)革命を起こし、スコットランドを征服したクロムウェル(あるいはそのもの?)と描かれている。

・この映画は1650年の話だが、その後「1786年に最後のオオカミが殺された」と史実にある。それを踏まえてこの映画のエンディングを観ると切ない気持ちにもなる。

 

みなさんのふりかえり(参加しての感想、言い残したこと)

・みなさんが話すのを聞いていて、もしかしたらフランスの人が『もののけ姫』について感想を交わすような感じなのかな、と想像した。自分からは少し遠い文化の作品に、自分とのつながりを見つけて、あそこが好き、ここが好きと言い合っているのかもしれない。

・話したいことが山ほどある!でも最後にこれだけ。狼になったメーヴの動作や仕草がめちゃくちゃかわいい!

・最初に観たときは、ロビンもメーヴもかわいくないと思ったけれど、動いたのを観た瞬間にかわいい!と思った!

・二度目に観るといろんなことに気づいた。前作二作も観て、また観たい!

・今回はじめてこういう感想を話せる場があるのを知った。気になる作品があったらまた参加したい。

・周りで映画の感想をこんなふうに話せる人がいないので、場があってうれしい。また参加したい。

 

ファシリテーターのふりかえり

今回はとにかくこの映画が大好きでたまらない!という方の熱が場を温め、最初こそ遠慮がちだった方々も、次第に発言が重なり、つながり、最後まで話題が尽きませんでした。

今回は一つの話題を深めることはできなかったものの、「語りたい!」熱や、どんどんと着眼点が移っていった様から、この映画の多様な見方を知ることができたり、引力の大きさを体感できた時間でした。映画もすごいが皆さんもすごい。

シネマ・チュプキ・タバタという映画館について知っていただけたことや、 音声ガイド付きで映画を楽しむ方々がいると知っていただけたことも、とてもよかったです。「こういう映画館がもっと増えたらいいのに!」という声もありました。ぜひ広がりますように。

喜びとありがたさもありました。これは場に対する感謝ですね。一つの作品を観て、この映画のここが好き、あそこが好きと感想を交わし合い、愛でる場の豊かさ。幸せですね。

ゆるっと話そうは、60分という短い時間で、まずは「感想を話すのって楽しい!」を気軽に体験していただきたい、というコンセプトでひらいています。もっと話したかったのに〜!と思われる方も多いと思うのですが、話し足りない!ぐらいを目指しています。

全然話し足りなかった方は、ぜひご自身の周りでも、映画を観て語り合う、「ゆるっと話そう」の文化ができていくといいですね。(ご自分でもひらいてみたい!という方はぜひご相談ください

ご参加くださった皆さま、ご関心をお寄せくださった方、チュプキさん、ありがとうございました。

 

シネマ・チュプキ・タバタさんでは4月にアンコール上映も予定されています。近くなりましたら、ぜひスケジュールチェックしてみてください。

chupki.jpn.org

 

次回のゆるっと話そうも計画中。チュプキさんのWebFacebookTwitterでお知らせしていきますので、ぜひフォローしてくださいね。

 

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参考資料

★動画

『ウルフウォーカー』公開記念 東京アニメアワードフェスティバル2021プレイベント細田守監督 × トム・ムーア/ロス・スチュアート監督スペシャル対談

youtu.be

 

★映画製作上の参考作品

公式パンフレットの情報より

 

シリル・ペドロサ(Cyril Pedrosa)

 
 
 
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www.instagram.com

 

エミリー・ヒューズEmily Hughes

https://blog.picturebookmakers.com/post/137152829936/emily-hughes

blog.picturebookmakers.com

www.instagram.com

 

★書籍

アートブック。コンセプト段階から『ウルフウォーカー』の世界に浸れる。


ファシリテーターおすすめの4冊。狼の伝説そのものについては載っていませんが、ケルト神話ケルトとは何か、アイルランドキリスト教、日本の神話との比較など、背景を学ぶことができます。また、『中世の生活』は『ウルフウォーカー』の世界観を理解する手がかりになります。

  

 

▼ゆるっと話そうは、どんな場?

hitotobi.hatenadiary.jp

 

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台東区100人カイギにゲスト出演しました

2020年2月5日(金) 20:00-22:00【台東区100人カイギ】
こちらのイベントでお話させていただきます。
ライフワークのこと、きみトリ本のこと、今年やりたいことなど話す予定です。1人10分の短いプレゼンが5人続くこの場のつくりもちょっとおもしろいと思います。ご興味ありましたらぜひ。オンラインです。
 
とお知らせしていたこちらのイベント。
主催者レポートはこちら
 
 
「100人カイギ」の発起人の方がおられ、型があり、地域を起点に場をつくりたいという方のコミュニティとネットワークが全国にある。
そのような活動があることを今回初めて知りました。
 
32名のご参加者があったそうです。複数の100人カイギに出入りしている方もおられて、「へええ、そういう世界があったんだ〜」と興味深く拝見していました。
 
わたし以外の登壇者の顔ぶれは、俳優、看護師、業務改革コンサルタント、納豆インフルエンサーと、一人ひとりまったく違っておもしろい。ごちゃ混ぜ感が楽しい。
5人が話しますが、プレゼン時間は10分と短く、合間でネットワーキングタイムもあって、登壇者や他の参加者さんとも交流できるので、参加されるかたも飽きないだろうなぁと思います。
 
登壇者に対しては、「単に自分が何の仕事をしているかだけではなく、"なぜそれをしているのか"という思いの部分を大切に発表してください」と事務局からディレクションがありました。
 
わたしは、こんなお話をさせていただきました。
 
・わたしと台東区の関わり、わたしの思う良さ
・わたしの仕事(鑑賞対話ファシリテーター、場づくりコンサルタント
・鑑賞対話ファシリテーターとは?
・なぜこの仕事をしている?
・伝えたいことを本の形にした『きみトリ』
・本を出すに至った土台〈学びのシェア会〉とは
・「学び」にまつわる問題意識から、次のプロジェクトへ
 
概ね、お伝えできたと思いますが、もう少しコンパクトにしたかったな、とふりかえっています。自分の中から、このタイミングで出せなかったものがありました。
 
人前で話すのに一回ずつ慣れて、「流れ」「つながり」を意識して話していきたいです。「流暢に」「巧く」ではなく。
聴いた人が受け取りやすく、像を結びやすい順番、量でお話できたら。
 
それも今回機会をいただいたから自覚したことであり。やはり場数だなぁと思います。
というわけで、ぜひイベントに呼んでくださいませ。
お仕事のお問い合わせはこちらへお願いします。
 
 
参加された方から、〈学びのシェア会〉に参加したい、という声があったのですが、現在は定期開催しておりません。
こちらにガイドがありますので、仲間を集めてぜひやってみてくださいね。

note.com

 

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』は絶賛発売中です。電子書籍もあります。全国の書店でも取扱あります。棚にない場合は書店にご注文ください。独立系書店さんにも置いていただいています。一覧はこちら

 

 
 

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〈お知らせ〉2/7(日)教育の当たり前を問い直そう!映画”Most Likely To Succeed” を語る会

2021年は「これ」をやっていこうとふと降りてきた。
教育。
わたしの人生において避けられないテーマ。
 
2018年12月から2年かかって本をつくったことで、方向が明確になってきました。
スタートがこちらの場です。  

 

教育の当たり前を問い直そう!映画”Most Likely To Succeed” を語る会

アメリカのドキュメンタリー映画Most Likely to Succeed” (以下MLTSと略)を観た人と、教育を変えていくために動きたい人たち同士で感想を語る場です。これからの日本の教育について立ち止まって考えたり、具体的なアクションの中身について話せる仲間に出会えることを目指しています。

午前中:映画の同時再生、午後:トークセッションの二部に分かれています。
同時再生から参加してもよいですし、映画は事前に観ておいて、当日トーク時間に合流しても、どちらでもOKです。

---

 
映画を語る会なので、何を感じてもOKなのですが、場の目的自体はかなり明確です。
イベントタイトルもかなり思いきったものをつけました。
この日は、「難しいですよね、はNG」という気構えでおります。
開催背景など、みっちり書きましたので、ご興味ある方はぜひ読んでいただきたいです。

 
 f:id:hitotobi:20210201172407j:image
 
 
アメリカのドキュメンタリー映画Most Likely to Succeed” (以下MLTSと略)を観た人と、教育を変えていくために動きたい人たち同士で感想を語る場です。
これからの日本の教育について立ち止まって考えたり、具体的なアクションの中身について話せる仲間に出会えることを目指しています。
午前中:映画の同時再生、午後:トークセッションの二部に分かれています。同時再生から参加してもよいですし、映画は事前に観ておいて、当日トーク時間に合流しても、どちらでもOKです。
 
------詳細------
▼日 時
2021年2月7日(日)11:00〜15:30
【第1部】同時再生(11:00-12:30)
※各自で再生ボタンを押してください
映画視聴ページ https://vimeo.com/ondemand/mostlikelytosucceed/318863199
Vimeoに会員登録の上、レンタルまたは購入してご視聴ください。
【第2部】トークセッション(13:30-15:30)
※鑑賞済みの方はこの時間からの参加OK
▼会 場
オンライン会議システムZoom
※URLはお申し込みいただいた方にお送りします。
▼定 員
30名
▼参加費
一般 ¥2,000
25歳以下 ¥1,500
※映画の鑑賞料金は個別に実費でお支払いください。
トークセッション内容(予定)
・アイスブレイクトーク「MLTSどう観た?」(内藤&舟之川のトークを鑑賞)
ブレイクアウトトーク(小部屋に分かれて数人ずつ)
・全体シェア(メインルームで全員)
・ふりかえり
▼参加にあたってお願い
・ご自身の感想を話す意欲があり、他の方の話も聴きたいという好奇心をもってご参加ください。疑問や異論は歓迎ですが、持論を展開したいだけの方、意見の違う方への攻撃は固くお断りします。
・録音および画面キャプチャ、スクリーンショット他の写真撮影はお断りします。
・事前にZoomのインストールおよび動作確認をお願いいたします。
 
▼開催の背景
主催者の内藤千裕と舟之川聖子は、それぞれ異なる経緯から、日本の教育(主に学校教育、公教育、教育行政等)に疑問を持ち、変革を求めて日々活動しています。
わたしたちが教育について、より深く話すようになったきっかけに、内藤が卒論で研究していたイヴァン・イリッチの『脱学校の社会』があります。
『脱学校の社会』を読み、MLTSを観て、また様々な立場や価値観の人と対話や議論を重ねる中で、わたしたちの問題意識はより強くなりました。
社会が大きく変わっているのに、学校だけが特殊な環境のまま取り残されていたり、評価や統一テストがあるために学びが非常に限定的になっていたり、能力主義を助長し格差を拡げることを後押ししていること。そして、もう機能しなくなったシステムが慣性の法則で動いているだけのようであったり、そのために人間の尊厳や権利が奪われているように、わたしたちからは見えています。
もちろんプロジェクト型学習(PBL)や探究学習をベースとした、学習指導要領に依らない新しい学校や、新しい教育の形も出来てきてはいますが、学校自体の存在意義を問い直す活動は、全体から見ればまだまだ少なく、誰もがアクセスしやすい状況にはありません。
学習指導要領自体の改訂も行われてはいますが、学校的な価値観(人をデータとして扱う評価と選抜のしくみ、人間の発達段階を無視したカリキュラム、知識は分類できる・他者が学ぶことを決められるという前提など)を問い直さなければ、いくら内容が変わっても、学校が社会と接続しているとは言えないのではないか、と考えています。
知的好奇心を封じられ、与えられることに慣れて、カリキュラムのタスクをこなすことが日常になると、カリキュラム以外のことを学ぼうと思わなくなったり、カリキュラム以外を役に立たないものと捉えることが起こります。
生活や人生、生きることのすべてが学びの実践場であるにもかかわらず、現状はカリキュラムが優勢すぎて、落伍者になることの恐れだけをかきたてる装置になってしまっています。そうではなく、学びたいことにしたがって生き、自分で自分の人生をつくっていく感覚を持ち、希望と共にその感覚を持ち続けることが、学びの本質ではないでしょうか。
MLTSに登場するHigh Tech Highは学校ではありますが、学校自体の存在意義を問い直し、学びの本質から場を築いている。そんな観点からこの作品を鑑賞し、語り合うことは、大きな刺激になるという予感があり、選びました。
 
▼この映画について
Most Likely to Succeed”
予告編

vimeo.com


本編視聴 
MLTSは、「人工知能 (AI) やロボットが生活に浸透していく21世紀の子ども達にとって必要な教育とはどのようなものか?」というテーマについて、「学校は創造性を殺しているのか?」TEDトークで著名なケン・ロビンソン卿、カーンアカデミーのサルマン・カーン氏、ハーバード・イノベーション・ラボ所属の、トニー・ワグナー氏などの有識者や多くの学校取材を2年間積み重ねられ制作されたドキュメンタリー作品です。2015年の公開以来、7000以上の学校や図書館、公民館といった公共施設や、SXSW edu を含む教育カンファレンスなどで上映されています。(futureedu tokyo website http://www.futureedu.tokyo/most-likely-to-succeed より)
 
▼主催者が目指していること
わたしたち自身は、「学校に行かなければいけない社会は変えられない前提で、学校の機能を拡充させたり、より質の良いものにする」ことを目指すのではなく、「新しいタイプの学校や塾を一からつくる」のでもない、何か別の形で提示したいと考えています。
それがどんな形なのか、何をするのか、まだわかりませんが、実際に自分たちなりに行動しながら探っていきたいと思っています。
2021年から、まずは映画の上映会と、その後に続くイヴァン・イリッチ『脱学校の社会』の連続読書会を通じて、学びと議論、共に活動できる仲間との出会いの場をつくるところからスタートしていきます。
MLTSに映っているのは、新型コロナウイルス感染症流行前の姿ではありますが、これまで当たり前とされていた「教育」や「学校」の前提を覆し、社会の変化に合わせて変えていこう、と試行錯誤と創意工夫を重ねる、様々な立場の人の声を聴くことができます。
アメリカの先進事例を知って、それを日本でどう実践できるか」を考えはじめるというよりは、まずは「自分の立場や関心から、印象に残ったところ」から話しはじめたい。
対話を重ねながら次第に、どんな社会に生きたいか、他者と共に生きるためにどんな学びを得たいか、そのためにどんな機会を得たいか、自分は何がしたいか......などまで探っていくことができたらと思います。
 
▼こんな人に来てほしい
・人が幸せに生きるための学びの場を探求している人
・学校があることによるデメリットを感じている人
・教育分野で実践しているが、焦りと孤独を感じている人
・自分と、社会と、つながって生きる人を増やしたい人
・子どもの教育に対する親の負担が大きいのは仕方がない、教育にお金はかかるものだ、という社会に違和感をもっている人
・教育のためにアクションを起こしたい人
 
 
▼主催者について
・内藤千裕(ないとう・ちひろ
1997年生まれ。新潟県燕市出身。新卒で株式会社アスノオトにて「さとのば大学」の広報や「しごとバー神田」の運営をしている。自分や社会とつながって学ぶ人で溢れる社会の実現を目指す。
twitterhttps://twitter.com/soymaru_0102
note: https://note.com/soymaru0102
・舟之川聖子(ふなのかわ・せいこ)
表現作品を鑑賞して、感想を語り合い、学び合う場を企画、進行する「鑑賞対話ファシリテーター」。〈集い・機会・関係性〉の面から、イベントやコミュニティをつくりたい人の相談にものっている。温故知新、学びのシェア、エンパワメントと連帯、芸術文化の振興と継承が活動のテーマ。2020年12月に共著『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』を出版。10代の人たちに向けて、”社会も人生も自分の手でつくれるよ!”とのメッセージを込めて、「場のトリセツ」「シチズンシップのトリセツ」などの執筆を担当。
hp: https://seikofunanokawa.com/
twitterhttps://twitter.com/seikofunanok
MLTS鑑賞直後の感想:https://note.com/hitotobi/n/nfbce06e01279
最近の問題意識:https://note.com/hitotobi/n/n0ba4544ff1c2
 
▶︎お問い合わせ
office★seikofunanokawa.com(★→@)
 

 

開催まで1週間となり、こちらのコメントも加えました。

こんにちは。主催の一人、舟之川と申します。

多くの方から関心をお寄せいただいております。ありがとうございます。
Peatixでの申し込み時に「この場への期待」をうかがっているのですが、一人ひとりが熱いメッセージを伝えてくださり、やはり企画してよかった!と奮起しているところです。
 
・教員として、保護者として、教育事業に関わる者として思うことがある。
・日本の教育制度、環境、手法の問題点をこのドキュメンタリー映画を通して探ってみたい。
・俯瞰したり、様々な角度からふれたり、具象を見つめたり。
・自分の立場からどのように変えられるか。
・手がかりがほしい。対話する中で見出したい。
 
そんな声をいただいています。
25歳以下の方は割引料金を設定しております。いろんな世代の方と語り合えることも期待しています。
  
もう少し雑談をします。

わたしが今、当日までの準備としてやっていることは、まずは"Most Likely To Succeed"や『脱学校の社会』をおさらいすること。

その他に、100分de名著『資本論』を観たりテキストを読んだり、ブルシット・ジョブについての言論にふれたり、ベーシック・インカムについての本を読んだり、日本型雇用についての動画を観たり、サッチャー政権下の教育改革についての論文を読んだり、ブレイディみかこさんの本を読んだり......などしています。

一見関連がないようなことも含め、今のわたしの関心下にあるものは、なるべく持って行ってみようと思います。教育のことを教育のことだけでは完結はできない。おそらく労働について、社会保障について、政治について語ることにもつながるでしょう。

わたしは学校教員の経験はありませんが、作品を鑑賞して感想を語りあう場は、知や学びをシェアする場であり、教育の本質に近いと感じています。ファリシテーターという職能についても同様です。自分の役割を問い直す場にもなりそうだと感じています。
 
舟之川についてお知りになりたい方は、以下のページをお訪ねください。(告知文に載せたものと同じです)
著書『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』https://amzn.to/2MDJWpx
MLTS鑑賞直後の感想
 
最近の問題意識
参加される方お一人お一人のバックグラウンドから、この映画がどう見えるのか、感想を聴かせていただくのを楽しみにしています。
ご参加お待ちしております。
また、周りの方へのご紹介も大歓迎です。
よろしくお願いいたします。

 

 

内藤より

今回のイベントでもお話したいなと思っていて、わたしがずっと持っているテーマでもある「脱学校」という概念について、noteにまとめてみました。
イベントに参加予定のかたも、今回は難しい方も、ぜひ読んでいただけたらうれしいです。

 

 

 

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鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。

2020年12月 著書(共著)を出版しました。

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』

〈お知らせ〉2/16(火) オンラインでゆるっと話そう『ウルフウォーカー』

シネマ・チュプキ・タバタさんとコラボでひらく鑑賞対話の場〈ゆるっと話そう〉。

今月もオンラインでの開催です。全国、全世界(!)どこからでもご参加OK。
 

2月はこちらの作品! 

『ウルフウォーカー 』(2020年/アイルランドルクセンブルク合作)
2021年2月16日(火) 20:00〜21:00

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youtu.be

child-film.com

 

アイルランドの町、キルケニーに伝わる伝説を元にしたアニメーション映画です。

 
ふたつの異なる世界に住む少女たちの友情、自然と人間との共生、男性権威主義からの解放、自己統合と葛藤など、多様なテーマを含み、見応えがあります。
 
アクション映画のようなスピード感と躍動感にあふれ、手描きアニメーションの可能性を広げる美しい作画と共に、身体全体で楽しめる映画でもあります。
観る者の野生を目覚めさせて生きる力を与える物語は、混乱の時代にもたらされた新たな伝説とも言えそうです。
 
独特の作画にちょっと怖さを感じるかもしれません。でも、子どもの頃は自由に行き来していた「あちら側の世界」ってこんなふうだった気もします。分かりやすい可愛らしさではなく、あえてこの手法をとった制作者の意図を感じてみるのもおもしろいでしょう。
 
さて、観終わって、どんな感想を持たれたでしょうか。
上に挙げたのは、ほんの一部の見方でしかありません。観た人の数だけ注目ポイントがあります。ぜひそれをシェアしに来てください。
 
ご参加お待ちしています!
 
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日 時:2021年2月16日(火)20 : 00 〜 21 : 00(開場 19 : 45)
参加費:1,000円(予約時決済/JCB以外のカードがご利用頂けます)
対 象:映画『ウルフウォーカー』を観た方。
オンライン会議システムZOOMで通話が可能な方。
    UDトークが必要な方は申し込み完了後、ご連絡ください。   
    Mail)cinema.chupki@gmail.com     
会 場:オンライン会議システムZOOM    
    当日のお部屋IDは、開催前日にお申し込みの方へメールでご連絡します

参加方法:予約制(定員9名)
※お子さん(高校生以下)とご一緒に参加の場合、1名でお申し込みください。

ご予約はこちらから。

 
*前日時点で2名以上のお申し込みで開催します。
*「ゆるっと話そう」は、どこの劇場でご覧になった方も参加できますが、これから観る方はぜひ当館でご覧ください。日本で唯一のユニバーサルシアターであるシネマ・チュプキ・タバタを応援いただけたらうれしいです。
 
◉映画『ウルフウォーカー』の上映期間
2月1日(月)~18日(木)10:00~11:43<水曜休映>
映画観賞のご予約はこちら https://coubic.com/chupki/639698
 
 
 
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<これまでの開催>
 
第18回 ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ
第17回 アリ地獄天国 第16回 彼の見つめる先に
第15回 なぜ君は総理大臣になれないのか
第14回 タゴール・ソングス
第13回 この世界の(さらにいくつもの)片隅に
第12回 プリズン・サークル
第11回 インディペンデントリビング
第10回 37セカンズ
第9回 トークバック 沈黙を破る女たち
第8回 人生をしまう時間(とき)
第7回 ディリリとパリの時間旅行
第6回 おいしい家族
第5回 教誨師
第4回 バグダッド・カフェ ニューディレクターズカット版
第3回 人生フルーツ
第1回 沈没家族
 
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<主催・問い合わせ>
シネマ・チュプキ・タバタ
TEL・FAX 03-6240-8480(水曜休)
cinema.chupki@gmail.com
 
ついに来ました、わたしの昨年度のイチ推し映画!
もちろん毎回一推し映画を選んではいるのですが!
とにかく観てほしいし、みなさんと感想を交わしたいです。
初めて参加の方、他館で観た方も歓迎です。
 
チュプキさんでは、字幕版(英語原音)での上映ですが、各座席のコントローラーにイヤホンを繋げれば、音声ガイド と一緒に吹替えの声が聞けます。
お子さんや、字幕を追うのが苦手な方も楽しめます。ぜひイヤホン持参で!
 
若い方々にも観てもらいたいし、ゆるっと話そうに参加していただきたいということで、今回高校生以下の方と参加される場合は、1名扱いとさせていただきます。(通常は1名ずつお申し込みのところ)
 
もしかすると人によっては「怖いッ」となるシーンもあるかもしれません。
わたしはちょっとドキドキしました。
残酷さではなく、怒りや憎しみが噴出する、強大な力がのしかかってくるとか、そういう怖さです。
ちょっと心配な方は、チュプキさんの親子鑑賞室を利用するのもおすすめ。会話しても劇場側に音は漏れないし、音量も調節できます。鑑賞時にご予約くださいね。
 
みなさんとお話するのを楽しみにしています。
 
詳細・お申し込みは▶︎こちら◀︎から

 

 

▼わたしの感想

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

▼ゆるっと話そうは、どんな場?

hitotobi.hatenadiary.jp

 

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没後70年吉田博展・東京都美術館 鑑賞記録

吉田博展へ行ってきた。

yoshida-exhn.jp

www.tobikan.jp

 

昨年から開催を楽しみにしていたので、はりきって2日目に乗り込んだ。

まだフレッシュさの残る展示空間は、人も少なめで、ゆったりと鑑賞できた。


いつものようにまとまらない感想やら調べ学習の結果をバラバラと。

・とにかく美しい。美しい世界の中に身を浸せる。静けさの中、心を遠くに飛ばせる。

・1枚目の展示は「朝霧」。25歳のときの水彩画。世界観はこの頃にもう出来上がっている。光の取り込み方、対象との距離感。描きたいもの、捉えたい美。彼が自然に見出している形の複雑さや色の種類なども。画家としての基礎を作ったときに、師からどんな教えがあったのか聞いてみたい。

・44歳で木版に出会い、49歳で本格的に木版画に取り組む。この時期は「奇跡の1926年」と題されたコーナーで、作品点数が人生で最も多いのだそう。たまたま前日にすみだ北斎美術館に行って、葛飾北斎と名乗りだしたのが45歳。45〜50代までが最晩年に次ぐ作品点数なのだと知った。なんとなくこの40代で二つ目のキャリアのスタートというあたり、自分の肌感覚としてもわかるような気がする。

・国費でフランスに留学する若い洋画家たちを尻目に、親戚から金をかきあつめて片道切符と自作だけを持ってアメリカに渡航した23歳の吉田。若さって素晴らしい。「えー!」と反対されたり、馬鹿にされたりしたけれど、実行したんだろうな。全く違う気候、自然、言葉、人、文化、感性に出会い、しかも自分の作品が熱狂的に迎えられ、評価された。こんなにも大きな原体験。生涯に渡って影響を及ぼしていたというのも理解できる。どれほどの刺激だったか!

木版画に関わった最初だという「明治神宮神苑」。本殿の造営費は国費だが、それ以外の聖徳記念絵画館、競技場、野球場などの施設や杜は、民間から寄附を募って建設された。その返礼として3,000枚が刷られたのだそう。今でいうクラウドファンディングのリターンだ。しかも明治天皇が詠まれた和歌入り。

ちょうど展覧会に行く少し前にこんなツイートを見ていたので、あ、あれのことだ!とすぐに結びついた。植原さん、ありがとうございます。

 ・木版は、木目や木肌が、大気や湿度をやわらかく表してくれているように感じる。

・版木の性質や絵具、紙によっても違うだろうし、天候、気温、湿度なども違う、力加減も違う。その、意図と完全にぴったりには現れないところがおもしろさなのだろう。吉田の水彩、油彩、スケッチを見れば見るほど、ただ描くだけでも相当再現している、描きたいものを描いているように感じられるが、木版の形でしか現れない偶然や不確実さ、変数の多さがよかったのだろうか。あるいは、版木がある限り、何度でも再現できる、挑戦できるのがよいのか?最近消しゴムハンコで表現活動をしている友人のことを思い出す。

・「瀬戸内海集 帆船」のシリーズは何度観ても興味深い。同じ版木でも摺りの技術の使いようによって時刻も変えられるし、見せたいものも変えてしまう。太陽を出したり引っ込めたり、夜は対岸の明かりを目立たせたり、奥の帆船の存在感を出したり消したり、空と海を一体化させたり、連続をもってグラデーションをかけたりしている。粒を出したり、滑らかにしたり。絶妙な技!

・写真の現像や、印刷の技術でも、細かなデジタルの目盛りを調節して、表したいものを表していくのだろうけれど(シュタイデル社のドキュメンタリーや、さかざきちはるの本展で感じた)、これはその挑戦を原始的なやり方で、素人にもわかりやすく教えてくれているようだ。ある効果を求めるための探究過程を見せる。表現に含まれる技術の因数分解

・「帆船」のバリエーションは、例えばモノクロでしか見たことがなかった昔の写真がカラーになったときの衝撃に似ている。物の見方が固定されていた、一つのイメージにとらわれていたことに気づかされる。批判的に観る、つくる姿勢。

・絵が上手いのは当たり前で、その先を妥協なく目指していく姿の物凄さ。かといって、山登りでいえば、絶壁や絶頂だけを好んだのではなく、裾野や麓も愛したという。バランスの良い人という印象。

・朝焼け、夕焼け、昼間のあの光、あの色を留めておきたい、とわたしもしょっちゅう思うけれど、写真にとっても再現はできない。脳裏に焼き付けているしかない「あの感じ」を取り出して、こんなふうに自分の手で留められたら、どれだけの喜びだろうか。

・色あいが色鉛筆やパステルの優しさ、柔らかさも感じる。繊細でありながら、のびのびと息ができる。

・ほとんどの作品、左上に〈自摺〉と入っている。これは「吉田が自分で摺った」という意味ではなく、江戸時代からの版元がコントロールする形での木版画の制作システムではなく、絵師がディレクターとなって制作するシステムをとっていたということらしい。絵師の元に彫師と摺師を従属させ、監督が納得するまでやらせて刷り上げた一枚、ということらしい。(東京美術の『吉田博 作品集』より)

・「雲井櫻」山桜の希少な大木から特大版(1辺が70cm超)を作るときに、桜をモチーフにしたところが、桜の精への鎮魂のようで粋。紙や版木の収縮率の違いからズレることもあるらしいが、作品として展示されているものはどれもそんな努力の跡も感じさせず、最初からこのように存在していたかのように美を放っている。

・版木も美しい。色数が多い、摺りが多いからといって色版の数が多いわけではない?(この点、知りたい)

・膨大な写生の山にも惹かれる。会場には写生帖の一部が展示されていたが、もっともっと多いのだろう。わたしで言うところのメモ魔みたいなものだろうか。記録であり、日々の練習であり、創作の源。"一期一会を速筆で描き留める"、その勢いが伝わってくる。

・山に親しんでいる人ならより山の作品に愛があるだろう。わたしは山も好きだが、それよりも水のそばで生まれ育ったので、水ほうへの親しみが強い。水の描写をよく見てしまう。水の流れ、揺れ、枯れ木の映る水面、山を映す水。

・摺りの回数が凄まじい。30回はざらで、88回、最高96回も摺りが重なっているという。江戸時代の浮世絵が十数回というのが少なく感じる。

・義妹で、のちに妻となる「ふじを」さんのことが気になった。アメリカに展示をしに渡航したときには、ふじをの作品を博と同数出している。博が好きに芸術を極めている中で、ふじをは女性ということで葛藤もあったのだろうか。東京美術社の「吉田博 作品集」にはふじをについてのコラムがあったので読んだが、もう少し突っ込んで知りたいところ。歴博の「性差の日本史」展のあとでは、制作活動を支えていた(多くの場合自分の表現には光が当たりづらい中で)女性の存在は、どうしてもジェンダーの面から気になる。

・次男の吉田穂高さんは1995年に亡くなられたが、町田市国際版画美術館のAVコーナーで木版画の解説映像で会える。この解説がとても丁寧でわかりやすいので、同館へ行かれたときはぜひ。

・67歳で木版の制作が途絶えている。やはり版画制作には体力が要るのだろうか。(メスキータ展の図録に書いてあって、まだピンときていなかった)

・自然物のようにただそこにあり、インスピレーションを与え続ける作品。もしもそういう点からダイアナ妃やフロイトが愛したと言われるなら、納得。(ダイアナ妃が〜という宣伝文句にやや食傷気味だったので)

・世界は複雑で千変万化。子どもが見たら、勇気付けられるのではないかと思った。ほら、やっぱり山は緑、空は青の一色ではないんだ!と思えるのでは。

・一色や一塗りでは描き表せない何かがある、でもどうしても表したい。それこそがあなたがとらえた美であり、あなたの中のアート。

 

 


とにかく、よい。気づいたら3時間ぐらい観ていた。

どれだけ精細な印刷やモニター画面であっても、この繊細さや奥行きは生でしか感じられないので、行ける方はぜひ現地で鑑賞していただきたい。

点数が多く見応えがあるので、時間に余裕を持ってお出かけいただくのがよいかと。

動画解説が2点あるので、それぞれは短時間だけれど、余裕があったほうがおもしろく観られる。

単眼鏡か、単焦点の双眼鏡をお持ちの方は、ぜひ持参で。近くで観られるのだけれど、覗いてみると繊細な部分まで確認できる。

 

わたしも予定が合えば、会期中、再度訪れたい。

  

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左:1997年 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(現SOMPO美術館)での図録

右:2020年 東京都美術館での図録

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観終わって外へ出ると、世界がぜんぶ吉田博の作品のように見えた。

美術館を出るといつも思うけれど、世界は美しい。

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今年10月のSOMPO美術館での川瀬巴水展も楽しみ。

www.sompo-museum.org

 

 

 

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鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。

2020年12月 著書(共著)を出版しました。

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』

 

書籍『2019年夏 香港民主化デモ 逮捕された記録』読書記録

早稲田の書店NENOiさんで出会った本。冊子、ZINE。

タイトル 『2019年夏 香港民主化デモ 逮捕された記録』
著者  40代日本人男性

 

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ストリートアートとしての落書き、消された落書き"graffiti removal"を求めて世界各地へ出かけ、写真を撮っている人。2019年の民主化デモの最中に香港へ渡り、そこで動いているうちに、突然逮捕されてしまう。

 

日中英の3ヶ国語で綴られたテキストと、落書きと香港の街並みの写真がおさめられている。

 

 

わたしは2017年3月末、息子と香港に行った。当時香港に暮らしていた友人に会うため。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

思いかえせばあのとき、そう、ちょうど3月26日だ、行政長官選挙の結果がカフェのテレビで流れていた。
林鄭月娥(キャリー・ラム)。

 

 

香港のことは、まだ全然気持ちが整理できていない。

わたしたちが行ってからたった2年で、あの香港がこんなことになってしまって、衝撃と混乱と悲しみがあまりにも大きすぎて、ニュースは追いながらも直視できず、時間が過ぎてしまった。

 

わたしは天安門事件を知っている。10代の頃であまりよくわかっていなかったけれど、香港のデモ鎮圧を観たときに、フラッシュバックしてきたものがある。

www2.nhk.or.jp

 

映画『香港画』も12月に公開された。どうにか機会と体調を捉えて観たい。

トレイラーだけでかなりショッキングなので、できたら配信で休み休み観られると助かります。

hong-kong-ga.com



対岸の火事ではない。

わたしの人生に食い込んでいるもの。

 

 

 

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2020年12月 著書(共著)を出版しました。

『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』(三恵社