ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

METLV『セビーリャの理髪師』鑑賞記録

2020年夏、METライブビューイングのアンコール上映で、ロッシーニの『セビーリャの理髪師』を観てきた。明るいのが観たくて。


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誰も死なない、傷つかない、損しない!

なんなら、不道徳でゲスい。

ツッコミどころ満載。

恋の喜びとユーモアと平和が、超絶技巧でサラリと歌い上げられ、ただただ楽しい!

ギター一本の弾き語りで伯爵が恋する気持ちを歌うところは、光源氏か!というくらいウットリしちゃった。

アグリッピーナで凄みを利かせていたジョイス・ディドナートの14年前。

可憐で野心的なお嬢さんも素敵であった。



2006-2007シーズンは、メトがライブビューイングを始めた年。

今に比べると全然こなれていないし、カメラの動きも切り替えもガタガタ、音のバランスも??というところがあるけれど、新しいことをやってみよう!という気概に溢れていて、そこからも元気をもらう。

2006-07シーズン | 演目紹介 | METライブビューイング:オペラ | 松竹




客席は、年代が上の方々がほとんど。
古典作品を何度も味わいにきてらっしゃるのかもね、と友人。
なるほど。わたしの後半生もそんなふうになっていけたら素敵。

兄弟的作品の『フィガロの結婚』も、これのあとで観たらより楽しめそう。

『翁 大名細川家の能の世界』展、鑑賞記録

2020年8月の終わり。

 

永青文庫に『翁 大名細川家の能の世界』展を観に行ってきた。

http://www.eiseibunko.com/exhibition.html#2020natsu

 


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お能の大好きな肥後の殿様のコレクション。
江戸時代に式楽に指定される前から代々大好きで、殿様方も自ら舞台に上がって演じたとか。

だから鑑賞用の収集ではなく、すべて実際に使っていたもの。

能面、能装束、楽器、小道具。
各藩でお能の文化はあったらしいけれど、火事や戦災で消失して、900点もの規模で一揃いが残っているのは珍しいのだそう。捨てたり、盗まれたり、売られたりとかもあったのかもなぁ、と勝手に想像。

今回の最大の発見は、能面は左右対称ではないということ。微妙な歪みや傾き、パーツの大きさ、くぼみの深さなどがあって、意図的という感じを受ける。能面、面打ちのこと、もっと知りたい。

細川家の第18代は細川護熙さん。元首相。
この人がまだ政治家やってたら、もっと芸術文化振興してくれてただろうか……。

 

その他メモ。
・45万石 肥後熊本藩

能楽コレクション900点のうち、能装束が500点。今回の展示はほーんの一部。

・烏帽子。絹製もあるが、紙を折って皺をつけ、漆を塗って固めたものもある。黒くて光っている、あれは漆だったのか

桃山時代までは普段着の小袖(kimono展でやってた!)で演じていたものが、江戸時代に式楽になってからは、日常から遊離した舞台演出の一部として装束となり、独自の進化を遂げた。豪華になるにつれ技術革新も。

・槌車の文様。中心に車、周りに8つの槌。槌は大地の霊を鎮め、回転は永久の継続を表す。細川家の家紋はここから?

・勝修羅能3曲に対し、負修羅能は30曲。能は鎮魂の芸能。

・般若の本面は貴重!「現在見られるほとんどの般若面はこれの写し」

・放映中の「麒麟がくる」の関連で、明智と細川の関係について解説したパネルボードもよかった。(細川ガラシャ!) 織田信長の自筆の文の写し(字がでかくて豪胆、イメージどおり)、光秀が本能寺の変のあと細川藤孝に支援を求めた文の写し(泣ける…)、羽柴秀吉から藤孝に忠義を称える文の写しなど。


いやぁ、行ってよかった!!

別館で上映中の『翁』の特別上演の10分編集版や、肥後細川庭園も大満足。

 

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後日、東京国立博物館で、面打ちの展示を観た。

気をつけてみていると、能面、能装束の展示は東京都内のいろんなところでやってくれる。

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『開校100年 きたれ、バウハウス ー造形教育の基礎ー』展、鑑賞記録

2020年8月の終わり。

すきま時間ができたので、東京ステーションギャラリーバウハウス展に行ってきた。

 

〈開校100年 きたれ、バウハウス ー造形教育の基礎ー〉

展覧会は、2019年8月の新潟を皮切りに、西宮、2020年高松、静岡、と巡回してきての東京でフィナーレ。

www.ejrcf.or.jp

 

 

2019年がバウハウスの開校100年にあたり、さまざまな催しがひらかれてきた。

そのうちの一つが今回の展覧会。

www.bauhaus.ac


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建築やデザインの人と行けばよかったかなぁと一瞬思ったけど、素人のわたしなりに新しい発見がありました。
洗練と言えばウィーン・モダンにも感じたけれど、体系化して教育機関にしながら、理念を体現したという点で全く異なるのかな。

素材の開発、組み合わせ、バランス
機能性と経済性と理論

美という言葉は一文字も出てこないんだけど、美しい。

バレエというか人形振りというのか、三幕の踊りのフィル厶は貴重でした。

今の関心はバウハウスと山𦚰道子。
日本の女性が学んでいたというのは知らなかった。
女性とバウハウス、もう少し調べたい。

勢いでバウハウス関連本を3冊も買っちゃって重い......本また増えた...。

次回の大津絵展も楽しみ。

 


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ドトールつくってる人いた!

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友だちのドイツ土産。宝!!
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NTライブ『ハムレット』鑑賞記録

2020年8月。

NT LIVEのアンコール上映で、『ハムレット』(2016年公開)を観てきた。

友だち4人で、終わってからあーだこーだと感想を話しまくった。

(観て語る文化を共有できる友達、最高!)

 
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今回の演出は、ハムレットの妄想と狂言の世界なのではと思えてくるようなつくり。

母親の貞操への執着、父親の影への思慕、どちらも異常なレベル。

言葉に人が惑わされていくこと、ある。怖い。

「死神の軽い拳が、堅牢に思えた王家をあっという間に滅ぼす」様も、見たことがある。400年前に描かれた人間の普遍なのだな。

 

あるいは、ほんとうになんらかの事情がこの「家族」にあったのかもしれない。

ありそうな匂いがぷんぷんする。

 

唯一無二の友人のホレイシオが冒頭と結末に登場する。

他の誰よりも、愛と信頼のある関係がここに?

ベネディクト・カンバーバッチの神経質で繊細で知的な感じが、ハムレットをよりリアルにしてる。芥川龍之介ってこんな感じだったのかな、なども話した。

 

2000年公開、イーサン・ホーク主演の映画『ハムレット』を観たことがあった。ひたすら美しい映像という印象しか残っていないけれど、今観たらまた感じることが違うかも。

 

 

今年は『真夏の夜の夢』をNTライブでも、野田版でも観られた。

シェイクスピアに何度目かの再会をした年。

 

これから、もっともっと掘っていきたい。

 

 

hitotobi.hatenadiary.jp


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映画『パブリック 図書館の奇跡』鑑賞記録

2020年8月。

 

映画『パブリック 図書館の奇跡』を観てきた。

longride.jp

 

Choose Life Projectの配信で知って。

eigajoho.com

www.youtube.com

 

 

薬物やアルコールの依存症、失業、貧困、人種差別。まるで2018年の作品だがBLMを予見していたかのような。いや、アメリカはいつだってこの問題を抱えてきたんだ。

 

Make Some Noise!(声を上げろ)のシーンが心に残る。それはある人にとってはNoise、でもある人にとっては自分の生存と尊厳をかけた魂の叫び。

 

人種に限らない差別と偏見もある。一つひとつのセリフの向こうに、現代社会の抱える苦悩が顔をのぞかせる。どれも複合的。 でも、たとえろくでもない結果が待っているとしても、自分の尊厳のために何をするかは自分が選べる。 愛とユーモア、アートとのコンタクト。

 

図書館司書の資格をとる勉強をしていたとき、利用者個人の権利と益を守ることについて、叩き込まれた記憶がある。座学だったんだけど、ほんとうに大事なことだと受け取っていた。「図書館の自由に関する宣言」も暗記するように言われた。民主主義の砦。知にアクセスする権利。

 

「理解できるように説明しろ」との要請に、もはやアートの“ことば”でしか届かないということはある。一見何を言っているのかわからないような表現になる外ないんだけど、ものっすごい本質だったりする。 現実を知った市民は、今後どう行動し何を選択するのか。観る者にも問うようなラスト。

 

そういえば『ニューヨーク 公共図書館 エクス・リブリス』で、ホームレスの人の利用について議論するシーンがあった。対応について結論は出ていなかった記憶がある。 「個人の権利と他の利用者の権利」か。場づくりでも出てくるテーマ。

人間が違うから決まった答えがあるわけではない。

 

 

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映画『東京干潟』『蟹の惑星』鑑賞記録

8月から鑑賞記録をつけられていなかったので、一気にアップしていきます。

細かく思い出せないものも多いので、ほんと記録用です。

 

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https://higata.tokyo/

 

 

研究とは何かを教えてくれる映画でもある。なんでこういう現象があるんだろう?を大切に、足を運ぶ、定点観測、データの蓄積、習慣づける、変化を見る、仮説を立て、検証する。 これが在野の研究者であるところがポイント。

わたしの出身地である滋賀県・琵琶湖の周りにも自然の観察と研究をしている市民がたくさんいて、滋賀県立琵琶湖博物館と共同で活動をすることもある、と昨年訪問したときに知った。アカデミックな研究者だけで物事が解明されていくわけではなくて、こういう在野の研究者が裾野を豊かに広げている。

 

好奇心や偏愛や、異分野の専門性があるからこその着眼点や発見。すばらしい、豊か。

 

わたしがお昼ごはんを食べている今も、多摩川河口の干潟では蟹たちが…と想像するのも至福。 小学生もとても喜んでました。親子室ならしゃべってもだいじょうぶだから、子どもからの質問に即答えられる。メモ取りながらも観られるからおすすめ。

 

最終日の8/15(土)の『東京干潟』と『蟹の惑星』各回の終了後、監督の舞台挨拶があるそうです。『東京干潟』も観たいし、監督のお話しも聞いてみたい。
監督の"聴き方"も、この映画のすごく良い、大事な要素だと思う。

どんな方なんだろう。

 

そう思って最終日に行ってきた。

『東京干潟』は、人に歴史ありとか、世界の豊かさと奥深さにうち震えた映画だった。

この社会の動きをこのような場所から見ている人がいて、その体すべてに時代の変化が刻み込まれていて、きょうもここからそう遠くないところで生きている。。

ミクロレンズとマクロレンズを行ったり来たり。
同じ干潟をめぐって異なる物語が展開する。

 

こんな東京、みたことがなかった。
やはり二本とも観てよかった。

 

監督は不思議な出会いを重ねてらっしゃるようだけれど、それもやっぱりみんな話を聴いてもらいたくなっちゃう方だからだろうな。

 

ランチは、なんとなく食べたくなって魚定食。

カレイの煮付けが美味しかった。

 

 

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映画『否定と肯定』鑑賞記録

先日、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のオンライン・スタディツアーに参加した。感想はこちらの記事に記した。

ポーランド人で日本語スピーカーのガイドさんが、レクチャーしてくださるもので、とても学びが多かった。また、これまでの人生で収集してきた経験、知見が一本の線で結ばれて、ひとつの全体像が見えてきた感覚があった。

 
ツアーの最中にはさまざまな思いがめぐったが、その一つとして、「なぜ歴史修正主義者は、これだけの痕跡、記録、証言、研究を見てもなお、"ホロコーストはなかった"と言えるのだろうか」という疑問を持った。
 
そこで、この映画を観ることにした。
 
否定と肯定』(原題:"Denial")
ユダヤホロコースト研究を専門とする歴史学者が、「ナチスによる大量虐殺はなかった」と主張する歴史家を批判し、名誉毀損で訴えられる。否定論者との1779日におよぶ闘いの実話を映画化したもの。2016年イギリス、アメリカ製作。
 
映画館で予告編を観て、気になってはいた。
今これを観れば何かわかるのではないか。
 

 

 
これは期待以上の内容だった。
まず映画としておもしろい。つくりが巧い。テンポとじらし。心理的仕込み。
 
また、史実の否定だけではなく、反ユダヤ主義、性差別、植民地主義アメリカ人とイギリス人の反目、アメリカの中での人種差別など、様々な対立や差別の構造も同時に浮き彫りにする。それぞれに歴史が長く複雑なので、見応えがある。
 
俳優たちの演技も素晴らしい。 主演のレイチェル・ワイズもこれ以上ないというぐらいぴったりだし、アーヴィング役のティモシー・スポールは見事すぎて、今後回ってくる役が類似のものにばかりなるのでは、と心配になるほど。
 
 
訴えられた(ほとんどいちゃもん)側は、否定論者と同じ土俵に立ってみても、決して敬意を払われるわけではない、むしろ酷い辱めを受ける。
衆人、メディアの前に否定論者を引出しても、発言する機会があればあるほど、チャンスを得て喜び、生き生きと裏付けのない主張を述べる。
"彼"は、自分の誤りや差別意識が指摘されることに、まったく恥の感覚を抱かない。
愕然とする言動が続いていくが、ただ正面から反論してもダメ。
こちらの出方によっては逆手にとられてしまう、相手を有利にしてしまう。
 
そんな緊迫した展開を見守りながらも、徐々に思い至る。
これはたまたま映画なのだけれど、現実でもよく目にするものだ。
なぜあの人がトップなのか、
なぜあの人が代弁者を名乗れるのか、
なぜ人の生命を預かる重要な職についているのか......。
 
すべての人間が同じように倫理観と道義心を持つわけではないという前提にも立ち返る。だからといって排除はしない。人権を守りながら、社会の安定を目指そうと、人々は法治国家とその運営のシステムを作り出したのだから。
 
 
また、以下の点が重要。
アマゾンプライムの配信ページのレビュー(Starlessさん)より引用させていただいた。

"まともな学者は膨大な一次史料から史実を読み解き、考え得る解釈を論理的につなぎあわせつつ緻密に歴史を編んでいく。一方、陰謀論者はそういう地道な作業をすっ飛ばして、自らの信条にとって都合の良い史料を取捨選択し、声高に明快な主張をとなえる。すると、後者の方がわかりやすいし、新奇性もあって聞き心地が良い。不特定多数への発信が容易になったネット社会だからこそ、こうした傾向に留意すべきだろう"

 
不満を持つものはわかりやすいものに飛びつく。
惹かれるものが埋め込まれているのだろう。
支持する者がいるから、差別主義者は存在できる。
ますます分断が大きくなる。
それも、環境や要因が整えば、誰でもなり得る。
 
ある発信が、「個人の認知の歪み」では済まされない影響力を社会に対して持ちはじめたときに、わたしたちはどのような行動をするか。どのように闘うか。
そのレッスンの機会を提供してくれる映画にも思えた。
 
 
ちょうどアメリカでは次期大統領の当選が確実となった。
 
4年前なぜトランプが大統領になったのか、
なぜ得票数が僅差になるほどに、差別より"治安"を重視する人が支持するのか、
現職大統領が選挙結果を認めず訴訟に持ち込もうとするのか、
明らかに差別の言動をしているのに"差別ではない"と言うのか。
 
ようやく実感をもって理解した。
 

 

〈レポート〉9/25 オンラインでゆるっと話そう『なぜ君は総理大臣になれないのか』 @シネマ・チュプキ・タバタ

9/25(金)夜、シネマ・チュプキ・タバタさんとのコラボ、〈ゆるっと話そう〉をオンラインにてひらきました。

 

第15回ゆるっと話そう: 『なぜ君は総理大臣になれないのか』

「ただ社会を良くしたい」、愚直に訴え続ける政治家・小川淳也氏の17年間をとらえたドキュメンタリー映画です。

www.nazekimi.com

 

 

こんなご案内を出しました。

 
「ただ社会を良くしたい」、愚直に訴え続ける政治家・小川淳也氏の17年間をとらえたドキュメンタリー映画。特に若い人たちが、続々と映画館へつめかけているそうです。
一人の政治家への関心をきっかけに、政治の話がしやすくなった、政治について知りたくなったという声もSNSで聞かれ、日本の未来に光を感じます。
 
しかも、小川氏は現役の国会議員。刻々と変化し続ける「その後」を追い続けることができるのも、観た人たちと追えるのも、この映画の面白い点でしょう。
 
日本の政党政治の変遷、政党組織、選挙制度、選挙活動、地方の実情、政治家の家族、政治家の資質、リーダーシップ......。
みなさんは何に注目しながら見ていましたか。
この映画を通して何を考えましたか。

政局が目まぐるしい今だからこそ、わたしたち観客に投げかけられている問い「なぜ君は総理大臣になれないのか」についても、みなさんと話してみたいです。

ご参加お待ちしています。

Facebookイベントページ

 

サプライズゲストがありました!

なんと当日は、大島監督が飛び入りで参加してくださいました。

急遽だったので、広くお知らせもできなかったのですが、監督がきてくださったおかげで、かなり突っ込んだ話しもでき、参加してくださった方にはとてもご満足いただける場となりました。

監督がいらっしゃると、どうしても監督への質問タイムになってしまって、観客同士の感想シェアになりにくいのかなと懸念していました。

が、予め趣旨をご理解いただいた上であれば、監督のティーチインでもなく、観客同士の感想だけでもない、ひとつの特別な場がつくれることがわかりました。

そんな経験も踏まえて、今後は監督や制作の方も混じっていただく〈ゆるっと話そう〉も企画していきたいと思っています。

 

 

感想いろいろ出ました 

みなさんが安心して話せるよう、

・特定の政党への勧誘や政治信条を押し付ける言動はご遠慮ください

・好き嫌いはOK、罵倒はNG

の2点を確認して話しはじめました。

 

まだ観ていない方にも、参考になる感想だと思います! 

・連日たくさんの人が観ている。雨の日も風の日も足を運ぶ。何がみなさんをそうさせているのか。観た人に聞いてみたいのは、「映画を観て何か変化したことはありますか?」

・観た人は、映画の中に自分と重ねる部分を見つけているようだ。組織の一員として小川さんに、妻として明子さんに、子として娘さんたちに、など。

小泉今日子さんのツイートを見て興味を持った。公開になった6月から、様々な政治の情勢の変化があって、一周まわってモヤモヤしていることがあるので、それを言葉にできたら。

・小川さんが話しているのを聞いて、生活をしている人の感じがした。市民感覚。はじめて政治家で「わかる言葉」で話している人がいると思った。

・小川さんは自分の言葉で話している。嘘がない。

・今まで政治家の話し方にうんざりしていた。論点をすりかえたり、言葉遊びをしているようで。でも人間として話が通じる。

・映画を観て、小川さんの発信を見るようになったが、どれも映画と差がない。あれはそのままの姿だったのだとわかった。

・親が子を誘ってくるだけでなく、小学生、中学生、高校生が親を連れてくる、というパターンもある。詳しいことはわからなくても、「政治家はなぜ政治家をめざすのか」が描かれていることで、子どもたち、若い人も関心を持っている。

・この映画をきっかけに、少しずつでも語れるようになるのではと期待。「ついていける/いけない」「知っている/知らない」の比較ではなく。

・政治の世界が特殊すぎる?

・「小川さんは政治家に向いていないのではないか?」という問いが映画で出てくるが、わたしたちの政治家のイメージが偏っているということの現れでは?中高年で恰幅がよくて眼光が鋭い、といったような。アップデートしたり、上書きする必要がある。

・「政治」という言葉に込められた、「やりたいことではなくても、世渡り上手であれ」というメッセージも、考え直してもよいかも。

投票率の低さが言われているが、関心がないのもあるかもしれないけれど、感染症の流行の影響で、生活が大変などの理由もあるのでは。逆に、これを機に興味をもつようになった人もいるはず。

・小川さんのような人が政治家としているなら、他にも出てくる可能性があるということ。光を感じる。

都知事選前に刊行された『女帝』は、小池さんを暴いたり批判する裏話的な内容だったけれど(いい悪いではなく9、『なぜ君』は、小川さんと大島さんとの信頼関係があって、似ているけれど全然違う。『なぜ君』は「政治家も人間」ということを思い出させてもらえる。

・なぜこの優秀な人が出世しなくて、なぜこんな人が......という人が出世する、真逆。こんな誠実な人が生かされない国なのか?

・前首相のときに、極端な言論を起こし続けたせいで、一般の人のあいだに大きな分断が生まれたような気がしている。

視覚障害のある方の感想で、「声を聞いていると17年経っても若々しい印象に聞こえるけれど、実際はどうなの?」と聞かれたので、「お疲れ気味だけれど、確かにいつまでも若々しい青年のような方ですよ」とお答えした。

・声や顔つきが変わらない、珍しい政治家では。変わらないでいるためには相当の日々の覚悟が必要。

・政治家が自分の言葉で語ることに限界があるのか。まるでロボットがしゃべっているみたいに見える。そうしないと心が生きていけないのだろうか。でも、信念から出てきた言葉を志のある人が我慢しなくてはいけない現状。

・たとえ小川さんに投票したくても、権利がある範囲で投票をいくらしても、わたしたちは入っていけない。どうやったら構造を変えられるのか。

・自分たちで国をよくしている実感がほしい。

・政治家に代弁してもらっている感じがしない。

・女性の政治家がもっと出ないと不均衡では。

・世代交代しても、今の若い人たちが前世代を踏襲したらどうしようもない。生きているうちに一石投じたいが、どうしたらいいか。

 

 

......などなど、文章にするとかなり硬い感じに聞こえますが、とても楽しい時間でした。

かなり突っ込んだ話題もあったので、すべては拾えませんでしたが、一端を感じていただけたら幸いです。

 

 

政治って話しづらい?

これまで〈ゆるっと話そう〉では、映画を通して、

家族、恋愛、老い、看取り、死刑、回復、人種差別、障害、性、戦争、歴史、文化......などなど、様々なテーマを扱ってきました。どれも日常会話ではなかなかじっくりと語りにくい、対立を怖れて口にしづらい、言ってみれば"センシティブ"なテーマです。

とはいえ、毎回いろんな方がご参加くださって、ゆるっと話そうで感想シェアを楽しまれていっています。

今回のテーマ「政治」にはどんな反応があるかな?と期待していましたが、いまだかつてなく腰が引けている方が多かったのに驚きました。

劇場のほうは毎回満席となるほどの人気。でも「感想を話したい!」となると、「政治のことはよくわからないから」「人と話せるほど知らないから」と引け目や恥の感情が出る。

これはどこから来るのかな、とずっと考えています。


でも、わかる。

わたしたち、子どもの頃から政治の話を日常生活でする習慣がないのですよね。教育の中で、さまざまな場の中で、半ば禁忌とされた話題。

選挙権は持っていても、自力で学びにいかないかぎり、仕組みもよくわからないし、ニュースを聞いても理解できないことが多くなってしまっている。

わたし自身も"詳しい"わけではないのですが、ただ、非常に個人的なことで大小さまざまなきっかけがあって、知る、調べる、人と話す、を繰り返しているうちにどんどん興味(動揺や怒りも)がわいていきました。

まずは"映画の感想"として、小さく口にできることからはじまっていく人もいるかもしれない。

鑑賞対話の場づくりでできることを、これからもコツコツとやれたらと思います。

 

ご参加くださった皆様、大島監督、一緒に場をひらいてくださるシネマ・チュプキ・タバタさん、ありがとうございました!

 

 

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▼映画のほうは2020年10月末現在も大ヒットロングラン上映中!

いろんな方に「なぜ君はこの映画を観ようと思ったのか?」を聞いてみたくなります。

劇場情報> http://www.nazekimi.com/#theater

 

▼最新情報UPされる公式ツイッター
 
 

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〈レポート〉8/28 オンラインでゆるっと話そう『タゴール・ソングス』 @シネマ・チュプキ・タバタ

もう2ヶ月も経ってしまいました......すみません......レポートをお送りします。

 

8/28(金)夜、シネマ・チュプキ・タバタさんとのコラボ、〈ゆるっと話そう〉をオンラインにてひらきました。

 

第14回ゆるっと話そう: 『タゴール・ソングス』

インド・ベンガル地方出身の偉大な詩人タゴール。彼の書いた詩を音楽にのせた「タゴール・ソング」が、100年を越えて人々に受け継がれる様を描く音楽ドキュメンタリーです。

tagore-songs.com

 

こんなご案内を出しました。

 
100年前のインドの偉大な詩人・タゴールの歌が、国境を超え、映画になってわたしたちのもとに届けられました。タゴール・ソングへの深い関心と愛を注ぐ、ひとりの人間の熱い思いによって。
初めて聴くのになぜか懐かしい。
タゴール・ソングをめぐって出会った人たちに親愛の情がわいてくる。
時間や空間を一瞬にして超える歌の力に驚く。
歌は、詩は、一人で味わって大切に胸にもっているだけでも、十分なのかもしれない。語ることは無粋なのかもしれない。
でも、わたしたちがこの映画を旅して感じたことをあえて言葉にして分かち合いたい思いもあります。
語りましょう。あなたの言葉で、声で。
ご参加お待ちしています。
 
 

 

こんな話題が出ました。

・こんな映画を待っていた!詩は技巧を知らないと味わえないのかなと諦めそうになっていたが、そうではない詩に出会えてうれしい。国語の勉強としての詩(読み解くため)ではなく、自分の生き方に照らし合わせて味わい、発見ができる。その助けになってくれる映画。

タゴールのことは『もっとほんとうのこと』という短編小説で知って、物語の力を感じた。そのあとで映画を知った。

・この映画を観て、インドってひとくくりにできないんだなと思った。地方によって全く違う。

・インドには貧困や差別のイメージが強かったけれど、当たり前だけどそれだけじゃないことが見られてよかった。

・分断されたベンガル地方の歴史を調べたくなった。ベンガル人アイデンティティとしてのタゴールソング。

・音楽もよいし、景色も美しい。

・楽器を変え、奏法を変え、年代問わず誰でもアクセスできる、タゴールソングの懐の広さ。

ベンガルの人たちにとって、神聖であり、身近でもあるタゴールの存在の不思議。

・10年後にもう一度観たい。

・オノンナさんの「一緒に歩きたい」という発言は、インドにおいては(地方や世代で様々だろうけれど)どのぐらい画期的な発想なのか。インドの男女の関係は、どちらが「上に立つ」などがあるのか。興味がある。

・自分が若い時に「若い時は親に借金してでも外国に行くべし」と聞いたけれど、やっぱりそう思う。(今はちょっと難しい時期だけれど)

・若い人に自分の血肉になったものを手渡したい思いが近頃強い。映画の中のオミテーシュさんにはその点で共感。

・あの人たちにとってのタゴールタゴールソングスは、どんな存在なのか。自分たちにとっては何にあたるんだろう。多世代みんなで共有する心の歌って?あの感覚をわかりたい。

・日本で言えば和歌?「君が代」は古今和歌集に収められている和歌が歌詞になっている。詠み人知らずだけれど、「ルーツや精神性を表す歌」という点でなんとなく近い?万葉集の時代の和歌が「百人一首」のカードゲームや競技で様々な形で受け継がれているのもおもしろい。

・出来過ぎと言いたくなるほど奇跡的なシーンが切り取られていて、演出なのか?一体どうやって撮影したのか、知りたくなる。

・市井の人々の暮らしや会話に詩がある良さ。日々の暮らしの中に、ふつうの人々の普遍的な願いが込められている。

・こんなに"密"な人たち、今どうしてるのか気になる。

・けっこう劇場にお客さんが来ていた。先の見えない中で、指針になる言葉を求めてこの映画を観にくるのかもしれない。

・都市化されていく中で、歌に織り込まれている美しい農村の原風景(赤土の道など)が、それを知らない若者の中でも息づき、拠り所になっているのは、やはり歌の力か。

 

 

〈ゆるっと話そう〉に参加してのご感想

・想定外の感想が聞けてよかった。学生の頃は友だちと観に行ったけれど、今は一人で空いた時間に行くから、誰かと話せるのがうれしい。

・観てからだいぶ経っていたが、みんなで感想を話したらまた観たくなった。

・観ている途中で寝てしまったので、会話についていけるか心配だったが、むしろ補われてよかった。

......などのお声をいただきました。

 

ありがとうございます。

 
100年前、1000年前、飛鳥奈良時代、明治時代......。
コルカタバングラデシュ、東京......。
いろんなところをみんなで旅して、いろんな言語や音楽にも浸ることができました。
映画の中の音を心の中で再生しながら話していたような、不思議な感覚が残っています。
 
タゴール・ソングス』、まだご覧になっていない方、おすすめです。
2回観るのもとてもよいです。
誰かと感想を交わすのも◎ 会話のきっかけを多く持っている映画です。
リバイバル上映も何度も起こりそうです。
 
▼上映劇場一覧
 
ご参加くださったみなさま、一緒にひらいてくださっているシネマ・チュプキ・タバタさん、ありがとうございました!
 

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ご参考
・土地の持つ背景を理解するのに、この解説がわかりやすかったです。

NHK高校講座 | 世界史 | 第33回 アジアの独立

もちろん知らなくても映画は楽しめるのですが、観るともっと知りたくなるので^^

 

・パンフレット

tagoresongs.thebase.in

 

タゴールの詩集

おすすめの二冊です。
パッと開けたページにある詩ひとつをじっくり味わうのもよいです。

  

 

・佐々木監督のインタビューやトーク

youtu.be

 

youtu.be

 

wp.tufs.ac.jp

 

 

タゴールソングについても情報満載な公式ツイッター

twitter.com

 

・佐々木美佳監督のツイッター

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〈レポート〉10/26 オンラインでゆるっと話そう『彼の見つめる先に』 @シネマ・チュプキ・タバタ

10/26(月)夜、シネマ・チュプキ・タバタさんとのコラボ、〈ゆるっと話そう〉をオンラインにてひらきました。

 

第16回ゆるっと話そう: 『彼の見つめる先に』

ブラジルのあるまちに暮らす10代の変化や成長を描いた、爽やかな青春映画です。

youtu.be



 

こんなご案内を出しました。

あるまちの、ある学校に通う、10代のささやかな日常。
もう守られてばかりの子どもじゃないけど、まだ大人ってわけでもない。

誰かを好きになるってどういうこと?
ここを出たい、誰も自分を知らないところに行ってみたい。 知らないことに挑戦するのはちょっと怖い、恥ずかしい。
同世代の子たちと気が合わない、馴染みたくもない。
 
苛立ったり、恥ずかしかったり、衝動的になったり。 自分でも訳がわからない感情でいっぱいになる。

あなたにも覚えのある瞬間、あったでしょうか?
ポップで爽やか、ピュアで胸キュンなシーンの数々と、大切にしたい気持ち。
 
他の人の注目ポイントを聞いて、自分には"見えなかった"部分を発見したり、 あのあと彼らはどうなっていくのか想像したりして、ゆるっと話しましょう。
 
ご参加お待ちしています!

お知らせより)
 

 


ご参加くださったのは

視覚障害の方お二人、音声ガイドを担当された彩木さん、字幕吹き替えの役者さん方(レオ役の石神さん、ジョヴァンナ役の山内さん)、シネマ・チュプキ・タバタ代表の平塚さん。
 
いやはや、たいへん贅沢でした!
 
まず、主人公レオが視覚障害者であることから、「視覚障害を持つ方々が、当事者としてどんなふうにこの映画を観たか?」を場でシェアしていただけるのが、とても貴重でした。レオは先天盲(生まれたときあるいは乳幼児の頃に失明して,ものを見た記憶がない)で、参加された方々は中途失明ということで、感覚の違いなども感じられたようです。
 
そして音声ガイドに関わった方々。シネマ・チュプキ・タバタでは、主に視覚障害の方のために、すべての映画に音声ガイドをつけて上映しています。(主に聴覚障害の方のために、字幕もつけています)
今回はブラジル語の映画なので、情景描写は通常の音声ガイドですが、セリフ部分は字幕に出ているものを役者さんが日本語に吹き替えています。
セリフ部分は、それぞれの登場人物に、それぞれの役者さんがついています。
 今回はこの音声ガイドを書いて出演もされている方と、役者さんたちが、ゆるっとにご参加くださったというわけなのです。
 
すごい!
 
「あの役はどんなところを大切に演じたんですか?」
「あのシーンのところはどういう意図ですか?」など、きけちゃうわけです。
登場人物の代理人というか、憑依した人というか、独特の立ち位置からのお話はとても興味深かったです。
 
「この顔ぶれ......。ということは、音声ガイド版も絶対観て(聴いて)おかないと場が成り立たない!」と前日になって気づき(遅い......)、慌てて観に行きました。間に合ってよかったです。
 
 
こんな話題が出ました
 
・二人はいつ恋に落ちたの?
・自分の性的嗜好にいつ気づいたの?
・あのシーンの意味は?
・あの子とあの子は、実はこんな関係では?
・音声ガイドや声の演技の工夫ポイントは?
視覚障害者から見て気づいたことは?
など、いろいろな話題が展開しました。
 
※ まだご覧になっていない方は、ここは薄目で読んでくださいね ※
 
・ジョヴァンナはいい子なので、幸せになってほしい。ジョヴァンナを選ばないなんて、レオはもったいないことをした!
・レオはジョヴァンナを異性としては全く見ていない。友だち。友だち以上の濃いつながりのある関係。きょうだい。ジョヴァンナはレオに対して深い愛情がある。
・この短期間のあいだに、ジョヴァンナは一気に成長して強くなったと感じる。それを象徴するカッコいいシーンがあった!
・親がいつまでも過干渉、過保護はあるある?!
・目が見えないと、相手のどんなところに魅力を感じる?
・ガブリエルがレオに対して、レオがガブリエルに対して、どのタイミングで"恋に落ちた"のか?何がポイントだったのか?
・自分の性的嗜好についての認識はあったのか?それを言葉ではっきり言っていないのがこの映画の良さかも。
・実はファビオはジョバンナが好きだったのでは?!レオのことも好きだった可能性も?ファビオもいろいろ抱えていそう。いろいろちょっかい出しても箸にも棒にもかからないから気になるのでは。
・レオは、感情を抑制して内にためこみがちなキャラクター。実は舌打ちが多い。気が強い印象。
白杖の出し方がポイントになっている。たとえば一緒にいる人が信用できたら出さない、もう信用しているから白杖は要らないけれど人目を気にしてわざと使ったりする、一人ですたすた歩くときはガンガン使う、心がすれ違ったときには白杖を出す、など、心情を表している。
・プールやシャワーなど、水のシーンがたびたび登場するのは、観客をどきどきさせたいからでは(笑)
ウォッカウイスキーの違いもわからない、飲み方もわからなくてストレートで飲んじゃうような子どもが危うくて、思わず親目線でハラハラした
・学校がゆるくてびっくり。キャンプにお酒持ち込んだり、夜中にプールで泳いだり。
 
などなど。
 
それぞれのバックグラウンドや感性、この映画との関係、などから出てくる感想はひたすら興味深く、楽しかったです。

映画のワンシーン、ワンカットが鮮やかに立ち上がり、まさに今、みんなでしゃべりながら映画を楽しんでいるような気分になりました。
 
「当日は参加できないから」と、参加者さんに託して感想をシェアしてくださった方も。
・純粋できれいだった。恋愛がきれいなものなんだとはじめて知った。音声ガイドを聴きながら観たら、「見る感情」と「聴く感情」の両方が同時に別々に動く体験だった。
 
新しいご参加の形、うれしかったです。
 
ほんとうにきれいだし、明るくて、生命力にあふれた希望のある映画です。ぜひいろんな方に観ていただきたい!
 
 
ご感想

・一人で映画を観に行ったので、他の人はどんな感想をもったのか聴いてみたかった。思いもかけなかった視点が出てきて楽しかった。
・一人で役の練習をしているときも、収録現場でもいろいろ発見があったが、きょうもこういう見方もあるのか〜!と思った。共感がたくさんだった。
・普段、映画は一人で観て、感想を人に話すこともないけれど、こうやって出してみと、思いもかけない感想が出てきたのがおもしろかった。
・見る前に申し込んだので、つまらない映画だったらどうしようと思ったけれど、いい映画だったし、みなさんと感想を話せて、結果大満足だった。
 
 
ファシリテーターのわたしも、とてもよい時間を過ごさせていただきました。
ご参加くださった皆さま、一緒に場をつくってくださるチュプキさん、

ありがとうございました!

 

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11月の〈ゆるっと話そう〉は、ただいま作品選定中です。
日程など決まりましたら、またお知らせします。

 

 

 

 

ゆるっと話そうはこんな場!

hitotobi.hatenadiary.jp

 

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seikofunanokawa.com

 

2020年秋分のコラージュの会、ひらきました

9月22日(火) 秋分の日。
オンラインでコラージュの会をひらきました。

collageautumn2020.peatix.com

 

コロナの感染症がまだまだ流行し続ける中、いろいろ配慮すればリアルの場でもひらけそうだけど、どうしようかな……とグズグズしているうちに日程は迫り、結局今回もオンラインでひらくことにしました。

 

でもそうしてよかったかも。

今回参加してくださった方は、医療福祉関係のお仕事をされていて、あまり積極的に外出できないとのことだったので。

 

まずはいつものように、製作前の時間。

今 "頭"に浮かんでいるキーワードをどんどんマス目に出していきます。
「それらのキーワードを眺めて思うこと、今話したいこと」をテーマに一人が5分話します。終わったら聞き手が3分ほどフィードバックします。

その後、さっき聞き手だった人が今度は5分話します。聞き手が3分ほどフィードバックします。

お互いの話を聞いてみて、聞いてもらって、思うことなどを分かち合います。

 

やはり浮かんできたのは、今年に入ってからの激動の日々について。

喪ったこと、変わったこと、わかったこと、見つけたもの。

そして湧き上がってくる、今この瞬間への感謝。

 

それをもって、製作時間に入りました。

オンラインでつながっていることを感じながら、それぞれに好きな音楽を聴きながら、好きな飲み物を楽しみながら、ゆっくりたっぷり時間をかけて作りました。

 


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変わらないものを大切に、変わり続けるわたしたち。

やっぱりわたしはいつでもわたしらしい。

揺れる時だからこそ、立ち止まって見つめたい。

たまたま同じ時を共にしてくれた人がいること、取り組んだ自分を知っていてくれる。


今回もとてもよい時間でした。秋の収穫の恵みを味わいました。

ありがとうございました。

 

・・・・・・

次回は冬至

12月21日(月)は平日ですが、やはり天体の運行に沿ってひらきたいと思うので、当日に行う予定です。次回もオンラインです。

近々こちらのブログでご案内します。

 

 

ご自身のサークルなどでコラージュの会をひらいてみませんか。

オンラインでの開催、出張開催のご依頼、承ります。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

書籍『ある晴れた夏の朝』

『ある晴れた夏の朝』小手鞠るい/著(偕成社, 2018年)

 

どなたのツイートだったか忘れたけれど、ふいに流れてきた紹介に惹かれて、そのまま図書館に予約を入れた。

 

本を読んで涙するのは久しぶりというぐらい、とても心揺さぶられた。

 

主人公はアメリカのハイスクールに通う日系アメリカ人の女の子。
誘われるままに夏休みのディベート大会に出場する。テーマは、"広島と長崎への原爆投下の是非"。彼女は否定派のスピーチを務める。リサーチや当日の体験を経て、自分のルーツに触れ、成長する姿を描く。

......というのが大枠。

 

まず驚くのは、本格的なディベートってこうやるんだ!と知ったこと。
ワークショップの一環で、真似事みたいなことはやったことがあるけれど、これほど綿密なリサーチを重ね、いくつもの手札を準備して、チームで勝ちに行く戦略を立てるようなディベートはやったことがない。

さすがスピーチ文化のアメリカ(を舞台にしている)。

 

そして、ディベートを通じて浮き彫りにされていく、様々な過去の事実にも驚いた。
わたしは知らなかった。
あるいは、指摘されるまでその繋がり、繋がり方について気づいていなかった。

どこかで止まっていた思考を、スピーチのたびに繋げてもらっているという感覚があった。否定派、肯定派にかかわらず、一人ひとりの人間のルーツや背景、感性からの言葉が読み手を揺さぶってくる。わたし自身も問われている。
答えに窮する瞬間も含めて、まるで読みながら同じ会場にいるかのような躍動を感じた。


8月6日と9日に起こったことだけではない。

人類に起こってきたこと、起こっていることすべてが、このディベート大会に集約されているように感じられて、胸が熱くなった。

勝つことを目標にするから本気で戦える。

けれども目的はこのような議論の場をつくることだ。

考え、感じ、表現し、人びとと分かち合うことだ。

人びとと分かち合うことだ。

 

 

小説なのだけど、運びはとても漫画のようで、そのつくりもおもしろかった。

これは言ってしまうとおもしろくないので、ぜひご自身で確かめていただきたい。

 

〈お知らせ〉10/26(月) オンラインでゆるっと話そう『彼の見つめる先に』

今月のシネマ・チュプキ・タバタさんとの〈ゆるっと話そう〉第16回は、
『彼の見つめる先に』です。

youtu.be

 
10月26日(月)20:00〜21:15 オンラインZOOMにて

この映画を観た方なら、どなたでもご参加いただけます。

お申し込み、お待ちしております。

https://coubic.com/chupki/857963

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あるまちの、ある学校に通う、10代のささやかな日常。
もう守られてばかりの子どもじゃないけど、まだ大人ってわけでもない。

誰かを好きになるってどういうこと?
ここを出たい、誰も自分を知らないところに行ってみたい。
知らないことに挑戦するのはちょっと怖い、恥ずかしい。
同世代の子たちと気が合わない、馴染みたくもない。
苛立ったり、恥ずかしかったり、衝動的になったり。
自分でも訳がわからない感情でいっぱいになる。

あなたにも覚えのある瞬間、あったでしょうか?
ポップで爽やか、ピュアで胸キュンなシーンの数々と、大切にしたい気持ち。
他の人の注目ポイントを聞いて、自分には"見えなかった"部分を発見したり、
あのあと彼らはどうなっていくのか想像したりして、ゆるっと話しましょう。

ご参加お待ちしています!
 
シネマ・チュプキ・タバタ以外で観た方も参加大歓迎です!
 
詳細・お申し込み

 

 

▼監督インタビュー(2018年来日時)

cinema.ne.jp

 

tokushu.eiga-log.com

 

 

 

▼おまけ

わたしが映画を観て、真っ先に思い出したのがこの本。

 

 


スペインの人気ブロガーが、ネットを通して知り合ったセクシャル・マイノリティの若者たちの体験を下敷きに書いた小説です。

アウティング、いじめ、自傷、DV......。
ゲイの高校生オスカルが、苦境に立たされながらも、柔道のクラブで出会ったセルヒオとの出会いを通し、生命力と誇りを回復していく物語。

 

『彼の見つめる先に』よりも主人公の置かれた環境や立場はきついけれど、リアルに描いてくれるからこそ、理解できることがたくさんありました。

恋するときめきもせつなさも目一杯で、一気に読んでしまいました。

なにより人が回復し、自立していく物語には勇気と希望をもらいます。
若い人にも、もっと大きくなった人にも、ぜひ読んでもらいたい。

 

『ぼくを燃やす炎』の作者も、『彼の見つめる先に』の監督も、自身がセクシャル・マイノリティ。同性愛嫌悪の環境に苦しむ若い人たちに、作品を通して寄り添いと励ましを送っているように感じられます。

わたしにとっては、この2つの物語は、全く異なる存在ながらも、特別なつながりを持っています。

 

映画をご覧になった方はこちらもぜひ。

より作品の深みに気づけると思います。

 

 

▼ゆるっと話そうはこんな場です。はじめての方のご参考になれば。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

 

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絵本『梨の子ペリーナ』

BL出版から2020年9月に刊行されたばかりの絵本、『梨の子ペリーナ』

 

 

イタロ・カルヴィーノの『イタリア民話集』からとられたお話に、酒井駒子さんの絵。魅力的すぎる。

そして関口英子さんの、カルヴィーノ節を残しながらも、日本語としても美しく仕立ててくださっている訳!

関口さんが書かれた「あとがき」もとてもいい。どんな風土から生まれたお話なのか、橋をかけてくださっている。

カルヴィーノに、あなたの書いた本はこんなにすばらしく展開していますよ!と教えてあげたい。

 

昔話の中にはこんなふうに理不尽な目に遭っている子どもが、理不尽な人や状況に対して勇敢に立ち向かい、幸運をつかんでいく話が多い。

子どもは近代になってはじめて"発見"されたというけれど、実はこんな物語によって、守っていた部分もあったのかもしれない。

あるいは、子どもの姿に託すことで、人が生きる希望を物語に見出そうとしたのかもしれない。

 

昔話では、国の境界線が消えて、「土地」という単位になり、風土や季節を感じることができる。人間が意図的に決めたわけではない、自然な淘汰と発展の中で積み重ねられてきた物語には、時間や場所を超えた普遍性が生まれる。そこがおもしろい。

 

今年度の読み聞かせボランティアは、対面ではできなくなって、放送室からの朗読を届ける形になった。給食時間は、全員黒板のほうを向いて、おしゃべり禁止で黙々と食べることになっている。「せめて週に2回でも耳からお話を聞けたら」ということで学校から打診があったことから。

次回は、この『梨の子ペリーナ』を読もうかな。
朗読に向くお話、向かないお話があるので、指定された本から選ぶことになっているけれど、リーダーさんに相談してみよう。

 

 

〈お知らせ〉9/25(金) オンラインでゆるっと話そう『なぜ君は総理大臣になれないのか』

今月のシネマ・チュプキ・タバタさんとの〈ゆるっと話そう〉第15回は、
『なぜ君は総理大臣になれないのか』です。

http://www.nazekimi.com/

 

9月25日(金)18:00〜19:15 オンラインZOOMにて。
お申し込み、お待ちしております。

https://coubic.com/chupki/934045

 

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「ただ社会を良くしたい」、愚直に訴え続ける政治家・小川淳也氏の17年間をとらえたドキュメンタリー映画。特に若い人たちが、続々と映画館へつめかけているそうです。一人の政治家への関心をきっかけに、政治の話がしやすくなった、政治について知りたくなったという声もSNSで聞かれ、日本の未来に光を感じます。

しかも、小川氏は現役の国会議員。刻々と変化し続ける「その後」を追い続けることができるのも、観た人たちと追えるのも、この映画の面白い点でしょう。

日本の政党政治の変遷、政党組織、選挙制度、選挙活動、地方の実情、政治家の家族、政治家の資質、リーダーシップ......。みなさんは何に注目しながら見ていましたか。この映画を通して何を考えましたか。
政局が目まぐるしい今だからこそ、わたしたち観客に投げかけられている問い「なぜ君は総理大臣になれないのか」についても、みなさんと話してみたいです。

ご参加お待ちしています。

※映画の感想を語る場です。特定の政党への勧誘や政治信条を押し付ける言動はご遠慮ください。ご協力をお願いします。

 

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6月に観たときのわたしの感想。初見の衝撃から3ヶ月。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

政治の話と思うと、詳しくないし話せることなんてない、と身構えてしまうかもしれない。でも、これは小川さんの話で、見所いっぱいの「映画」なので、きっとわいわいと盛り上がれるんじゃないかなと思います。

わたしも映画の周辺のことを予習していきます。楽しみ。

 

ちなみに、ゆるっと話そうはこんな場です。はじめての方のご参考になれば。

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