ひととび 〜人と美の表現活動研究室

観ることの記録。作品が社会に与える影響、観ることが個人の人生に与える影響について考えています。

映画『ウルフウォーカー』鑑賞記録

恵比寿ガーデンシネマで『ウルフウォーカー』日本語吹替版を観てきた。

child-film.com

 

長野の映画館のスタッフさんがツイッターで強く推しておられたのに心動かされた。
そのツイートを見なければ、知らなかったし、出会えなかったかもしれない。

東京で暮らしていることと、昨今のオンライン世界への拡大で、「観るもの」がとにかくたくさんあるので、わたしもなかなか全部はチェックしきれないでいる。
こういう情熱からの発信はほんとうにありがたい。
 
予告を観てみて、これは息子と一緒に行ったほうがいいのではないかな、と思い、誘ってみたら、観てみたいとのことだったので、夕方から出かけた。
 
 
「お子様」が行くとこんなのをもらえるらしい。

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いやはや、これ、これは、ほんとにすごい映画!!

これは映画館で観ないとダメな作品。

こんなアニメーションがあったんだ!

胸が震える。。

 

力強く美しい物語!

なにより、子どもを見くびらない、ほんものさ。子どもに生きる力を与える物語。

これを息子に観せられてよかった。

 

重層的で示唆的。

生きる上でのとても大切なテーマが大きく二つある。

一つは、自然との共生。感染症流行の時代だけに、痛感する。

もう一つは、人は自分の中に作りあげた「牢獄」からいかに自由になれるか(映画『ライファーズ』)

それぞれが、それぞれの思う自由を求め、立ち上がり、自分の信じる道を切り開く物語。

新しい時代の神話。今のわたしたちに必要な物語。

 

すでにまた観たくなってる。

絵本と想像がいっぺんに動いているような美しい画面。日本語吹替版だと画面に集中できてよかった。

 

観てから何日も経っているのに、なかなかなめらかな文章としては書けないので、断片でもともかく置いておく。

 

・「征服の対象としての自然」の歴史の前にあった、自然と共生する時代を思い出し、学び、今のわたしたちとして生きる必要がある。

・城壁の中で閉じ込められる人間。外は脅威→進撃の巨人

・牧畜をやってきた民族の獣の象徴・オオカミ、森への恐怖。稲作民族にはわからない感覚もあるのか?

・"我々はこの国では歓迎されていない"(移民、難民の示唆)。人のやりたがらない仕事をすることで存在を保証される構造。

・児童労働、ストリートチルドレン、"檻"の中にいる子どもたち。現代の学校もそうかも?

・若さゆえの無鉄砲さであり、自由さ、野生。子どもの知恵。傷つけ合わない解決方法を知っていたのに、大人になるにつれて失っていく。大人のルールは子どもには通用しない、そこに目を向けられるか。

・「ルールに従う」「命令には従わないといけない」「言われたことをやっていればいい」操られていることに気づけず、逆らえない。生存の危機感、恐怖で支配される。支配できることを知っている。その呪いは世代を超えて、家族の小さな単位の中で、性別を閉じた中で、連鎖していく。「あなたのためなのよ」

・理解する大人がいるという希望

・権利の対立。対立しているように見えるけれども、一方的な主張かもしれず。

・ロビンがオオカミになってからの世界の見え方。人の中で生きれられるのか?

・居処のない者同士の出会い。

・民衆の憎しみの感情。その圧倒的な表現。熱狂、興奮。これほどまでに憎まれている。芯からの憎しみなのか、煽られているだけなのか。風見鶏。

・「ただ生きる」それ以上のことをしてしまう人間は、仮想敵をつくる。何のおかげで生きられているのかを忘れる。守ろうとして永遠に失う。

・救われたがっている魂の哀しさ。

・最後に残るのはユーモア。勇者のように見えない、声は小さく、しかし大きな存在。

 

 

前回恵比寿ガーデンシネマで観たのは、『ディリリとパリの時間旅行』。 アニメーションの可能性は果てしない。

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ウルフウォーカー世界の紅葉する森は、現実の外の世界と同じで、不思議なオーバーラッピング。


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公式サイトにあった、こちらのオンライン対談動画を観ていったのも、わたしにとっては受け取るものが多く深くなって、大変よかった。 もちろん観たあともおすすめ。

youtu.be

 

 

複雑な世界をこれほど美しく繊細に、誤魔化しなしに描く。作画はちょっと怖く感じるかもしれないけれど、子どもの頃に自由に行き来していた「あの世界」のことだと、観ているうちに思い出してくる。怖いのは、大人だから、というのもある。

見た目のわかりやすい可愛さではない。

そういうやり方で観客を喜ばせようとする感じがないのがいい。

本能を刺激してくる。見ちゃうし、目が離せない。

線の力がすごい。形も空間表現も。

それも瞬きをしている間にどんどん変化していく。
連れて行かれる。

 

「野生を呼び覚ませ!」を自分の体感で理解する。

 

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先日、新宿歴史博物館に小泉八雲展を観に行ったときのこととつながった。

アイルランドの大叔母に預けられた八雲。迷信を嫌った大叔母は、精霊や幽霊の話を禁じたり、信心深いいとこのジェーンは「神の思し召しに逆らう者は地獄の業火で焼かれるだろう」などと言う。

アイルランドといえばアニミズム、精霊の本場じゃないの?なぜ周囲はそんなふうだったのか?と疑問だった。ウルフウォーカーに出てくる護国卿(Load Protector)のような存在がかつてあって、その流れがこの大叔母やいとこにも汲まれているということだったのではと、思い当たった。

このへんもうちょっと勉強したい。

アイルランドケルトの歴史と文化。売店で参考になりそうな本が紹介されていたけど完売だったので、別途入手してみる。

もっと進んだら、先日訪問した東京子ども図書館の資料室も利用してみたい。

 

 

前作、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』と『ブレンダンとケルズの秘密』も近日中に観る。今となっては、公開時に映画館で観なかったのが悔やまれる。

 

 

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〈お知らせ〉12/21(月)2020 冬至のコラージュの会(オンライン版)ひらきます

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年に4回、暦の節目につくるコラージュの会をひらいています。
https://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2019/09/05/102543
雑誌やチラシや写真を切って、台紙に貼り付けていく、だれでも気軽に楽しめるコラージュです。

今回は冬至の日にひらきます。
冬至は、一年中で太陽が最も南に寄り、北半球では昼が最も短い日。
陰が極まる日。ここを境に陽に転じていきます。
2020年は、どなたにとっても厳しい現実と向き合う一年だったと思います。
自分の歩みをふりかえり、悼み、労い、喜び、来年を展望しましょう。

お申し込みはこちら

ptix.at



頭の中でもわもわしている好きなこと、したいこと、ほしいもの、行きたい場所。
あらゆる制限をとっぱらい、直感を頼りに写真や絵や文字を切り貼りしているうちに、
今の自分の状態とこれから生きたい世界の様が、おぼろげながら形をとってきます。

無心で集中する心地よい時間です。

制作のあとは鑑賞会。

他の参加者からの感想や質問があることで、理由もわからず貼っていたパーツにも、大切な願いを込めていたことに気づきます。

会が終わる頃には、作品にあふれる自分らしさを愛おしく感じることでしょう。
「今わたしに必要かもしれない」という気がしたら、どうぞご自身の直感を信じておいでください。
わたしは心を込めて皆さんをガイドします。


前回・秋分の会の様子
https://hitotobi.hatenadiary.jp/entry/2020/10/26/172354


●●● 詳しいこと ●●●

▼日時
2020/12/21(月) 13:00-16:00

▼会場
オンライン会議システムZOOM(お申し込みの方にお知らせします)

※事前に「Zoom」のインストールをお願いします。
 https://zoom.nissho-ele.co.jp/blog/manual/zoom-install.html
※当日は以下の環境を整えてご参加ください。
 -使い慣れたPC・タブレット(画面が大きいデバイスのほうが他の方の作品が見やすいです)
 -安定したインターネット回線への接続
 -雑音が少ない静かな場所
 -ビデオONの設定(参加者同士でのワークや作品を見せ合うため)
 -B4程度の紙を広げて作業しやすいスペース

▼参加費
3,000円

▼定員
5名

※Zoom 1アカウントで1名のご参加です
※材料はご準備ください


▼準備物
・台紙(100均ショップなどで売っています。使うのは大サイズ(約B4)なら1枚、小サイズなら2枚(約A4)が目安です。白画用紙や他に台紙にしたいものがあればそちらでOKです)
 
 

・雑誌(1冊でも十分です)その他、写真、ポストカード、チケットの半券、チラシ、マスキングテープ、シールなど、ご自分が貼りたいもの。
 

・はさみ、のり
 


▼進み方
お互いのことをちょっと知る(10分)

荷下ろしワーク(30分)

コラージュを作る(90分)

鑑賞会:こんなの作ったよ!(30分ぐらい)

きょうどうだった?

※製作の進み具合によっては早めに終わることもあります。

※適宜休憩時間をとります。

 

▼お申し込みはこちら

http://ptix.at/iCc8o6



▼キャンセルポリシー:
12/19まで:0%
(返金いたします。ただしコンビニ・ATM払いでチケットを購入した場合は、Peatixによる一律500円の手数料がかかります)
12/20〜当日:参加費の100%がかかります
(返金いたしません)


---問い合わせ---
・Peatixの問い合わせフォーム
・office★seikofunanokawa.com (★→@)

お気軽にどうぞ。


舟之川聖子(鑑賞対話ファシリテーター

芸術・文化、表現作品を通じた鑑賞対話の場を企画・進行するお仕事。
協働と変容、交流とつながり、エンパワメント、 鑑賞者自身の表現と学びの場づくりを得意とする。
500回以上の豊富な実践経験から、 場づくりゼミや個人セッションなどのアドバイザリーにも力を入れ る。
田端の映画館シネマ・チュプキ・タバタにて映画を語る場『ゆるっと話そう』を開催中。
2021年1月に共著『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』刊行予定。

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町田国際版画美術館『西洋の木版画 500年の物語』展 鑑賞記録

町田国際版画美術館で『西洋の木版画 500年の物語』展を観てきた。

hanga-museum.jp

 

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最終日に飛び込み。少し遠かったけれど、はるばる行った甲斐あった。

 

ひと言で言うと、木版画の印象が覆った!

初期の木版画
グーテンベルク登場後、
デューラーの(変態的!)木版画
銅版画との比較、
風俗画としての版画、
木口(こぐち)木版の追究、
絵本と多色刷りの進化、
近現代美術としての版画、
ゴーガンの版画、
まちだゆかりの作家・若林奮、
月岡芳年の月百姿……。

 

これも木版画、あれも木版画......。

木版画と聞くとつい、素朴さ、柔らかさ、大胆さのイメージが最初に出てくるけれど、それだけではなく、精密さ、繊細さ、洗練などもあったのだ。

そうだ、浮世絵も木版画じゃないか、といまさら気づいたり。


この500年を通覧する充実の展覧会。

大満足。

図録は残念ながら作っていないとのことだったので、写真を撮りまくり、メモを取りまくった。

 

展覧会のおかげで、版画についての知識と経験を段階を追ってじっくり積めた。断片的だった知識が、展覧会から体系的に提示されることで、わからなかったところが埋まった感触がある。

こういう「あるジャンルについての歴史」が一望できる展覧会はとても貴重なので、出会ったときがご縁ということで、最近はなるべく足を運ぶようにしている。

 

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印象に残った作品いくつか、美術館の公式ツイッターの投稿をお借りしながら紹介したい。

 

版木の高さと活字の版の高さを揃えて刷っていたとのこと。ここで疑問。活字は一字ずつ拾うのか、ある程度の決まった単語で揃っているものがあったのか(ドイツ語だとmit, ob, istなど)

 

デューラー木版画が変態レベルで慄いた。描き込みならぬ彫り込みの凄まじさ。銅版が出てきた時代に、「木版でもここまでできるんだぞ!」という壮大なアピールのようにも見える(勝手に)。

 

同じ主題で木版と銅版を並べて見せる展示がおもしろかった。このあたりでは銅版は洗練されていて、陰影の微細な表現が可能になるんだな、などと素人目には思っていたが、このあとに木口木版を見たときに、その感想はあっさり裏切られる。

 

目の詰まった木の断面を使った木口木版。このあたりから素人目には銅版と木版の区別がつかない......。実用性の中に芸術性が生まれてきている感じ。

 

これも木口木版。光の表現、黒から白へのグラデーションが美しい。スクリーントーンのような整然とした彫りも、これが手作業と思えない。

 

館長さんがブログでも書いておられるけれど、ほんとうにこれが木版画だと思えない!モチーフも美しいし、色もきれいで、ずっと見ていたい......。

 

木口木版は、輪切りにして年輪が見える板で、日本の浮世絵は、木の生えてる向きに沿って切った板目木版。主となる輪郭線線をとった主版と、色をわけてするための複数の色版で刷る多色刷りは手間がかかるので、西洋では最初はあまり発展しなかったとのこと。素人目には銅版画のほうが薬剤も使うし、手間が要りそうに見えるけれども。。ここのところもう少し知りたい。

 

ゴーギャン(ゴーガン)の版画がこれまたよかった。タヒチとの出会いで感じたプリミティブな魂が、木版という表現にぴったりに感じられる。

 

ヴァロットン!!冷たい感じもしつつ、やっぱり魅力がある。先日国立映画アーカイブで見た展示の中に、サイレント映画の映像が流れていて、黒白の濃淡や構図がすごくヴァロットンの版画に近いなと思った。時期的には同じぐらいだから、きっと影響があったはず。

 

 

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行く前に行く前の予習で観ていた資料。
長谷川潔展の図録は、だいぶ前に横浜美術館の回顧展で購入したもので、最後に版画の技法についての説明がある。

『西洋版画の見方』は国立西洋美術館売店で売っているもの。コンパクトで良い。

この版画展を観てから、本を読み返したらだいぶイメージが膨らむようになっていて、書いてあることが前よりも理解できていた。うれしい!


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1階ロビーでは版画についてのビデオ視聴コーナーあり。

1987年制作と古いものだけど、丁寧に作ってあるので、素人にも工程がよくわかるので、学びたい方にはおすすめしたい。

1本15分くらいはあったので、木版画と銅版画を見るだけでお腹いっぱいになり、石版画とシルクスクリーンその他は次回に。

 

 

インスタグラムにも写真載せておいたので、メモ。

https://www.instagram.com/p/CIEtCxfFoFT/
https://www.instagram.com/p/CIEtyqXFqlH/
https://www.instagram.com/p/CIEuUV0l1WZ/
https://www.instagram.com/p/CIEuuR7FfJx/

 

www.instagram.com

 

同時開催の企画展:まちだゆかりの作家 若林奮(わかばやし・いさむ)

www.instagram.com

 

 

おまけ。

美術館に行く途中の公園の中に、見たことのある球体が鎮座されていた。
東京都美術館にある、あれですな。あちらは《my sky hole 85-2 光と影》
こちらは《my sky hole 88-4》
連作なのでしょうか。他の場所にもあるのかな。


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たくさん版画を観たあとだから、穴あきの葉っぱもおもしろく見える。


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道路表示まで版画に見える!


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国立ハンセン病資料館 石井正則写真展『13(サーティーン)』鑑賞記録

国立ハンセン病資料館に行ってきた。 

www.hansen-dis.jp

 

以前から訪ねたかった東村山市の国立ハンセン病資料館。

石井正則さんの写真展の会期中に行けることになった。

http://www.hansen-dis.jp/03evt/photoexhibition20200229#online

感染症対策で入館者を絞っての公開なので狭き門だったが、たまたまキャンセルが出たところに滑り込んだ。

 

ほんとうに行けてよかった。

たくさん読み物や映像資料も世の中にはあるのだけど、やはりその場所に身体を運ぶからこそ、わかることがある。

行きたいと決めるからこそ、受け取れるものがある。

編まれた展示の中でこそ、物が語ることがある。

 

すごく遠くにある場所のように思っていたけれど、自宅から1時間とちょっとで着いた。住宅街の中にあって、清瀬駅久米川駅を往復するバスも何本もある。日本に13園あるうち、たぶん一番アクセスのいい療養所。

資料館の窓からは雑木林や、入所者の方達が植えた桜並木が見える。

春はさぞ美しかろう。

 

感染症対策のために、現在見学できるのは、資料館の展示室と図書室のみ。

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ここには20年以上前から来たいと思っていた。なかなかきっかけがつかめなまま時が流れ、去年、日曜美術館で「光の絵画~ハンセン病療養所・恵楓園 絵画クラブ金陽会~」を観て、やっぱり今行かなくては、という気持ちになった。

そんなタイミングでの石井正則さんの写真展がさらに背中を押してくれた。感謝。

気づいたら予約はいっぱいになっていたけど、「キャンセルが出るのであきらめないで」とのツイートを見て、しょっちゅうページ更新して確認していたら、たまたま空いていて、すべりこめた。

 

20年以上前から来たかったのはなぜだったか、今日資料館で思い出した。1996年、わたしが大学生だった時に「らい予防法」が廃止された。そのときに史実と現実を知って、驚いたからだ。そのタイミングで一度、調べた記憶がある。

 

会場での見学時間は90分しかないので、まず写真展を観た。大判カメラで撮られた手焼きのモノクロ写真。陰影の美しさと存在の強さ。戦災や天災の遺構とはまた違うもの。

石井さんという人の個人的な動機が発端だからこそ、記録としても貴重なものになっていると感じた。何があったかは想像するしかないが、常設展がその助けになる。

 

短い時間の中で必死にメモをとった。ざっくりとは知ってるつもりだったが、展示を見てみたら、知らないことばかりで、衝撃を受け続けた。

これから何を観ても、歴史の表舞台には決して出てこなかったこの人たちのことを自然に思い出すだろう。


なんとか当事者の方々の気持ちに近づこうと、先週、 国立歴史民族博物館で『性差(ジェンダー)の日本史』展を観たときのことを思い出した。

「制度がつくられるたびに社会から少しずつ排除されていく」「生きていたのにいないことにされる」ことの辛さと痛み。それも本日の見学に生かした。

血みどろの凄惨さよりも辛いのは、「いるのに、いないことにされる」ことだ。
選ぶ権利を剥奪されることだ。名前を奪われ、生を否定されることだ。

 

自由、権利、イニシアティブ。

自ら自覚し大切にするだけでなく、他者からもそれを尊重されること。

お互いに尊重し合うことが大切。

 

同様のことは用心していないと、また容易に起きる。

声を上げ続けなければ。わたしは学び続けなければ。

 

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

見学の最後に、全作品が掲載されている立派な図録をいただいた。他にもたくさんの資料。すべて読んでみた。思うことがありすぎて、まだ言葉にならない。

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www.instagram.com

 

多磨全生園に到着した時、緑豊かな園内を見て、春は桜が綺麗だろうなと呑気に思っていたが、実はあれらの木々は、戦後の物資不足で木が必要になったときに一旦全部切って、その後、入所者の方々が一から植え直したものだそう。だから武蔵野の原生林とは植生が違うし、きちんと公園設計をして植えた木でもない。その話を食堂は働いておられる方が、とある場で話されているのを聞いた。

 

 

おすすめ資料

ハンセン病資料館キッズページ

http://www.hansen-dis.jp/kids/

 

・展示会場でのトークライブ配信アーカイブ

1回目のライブ配信は手持ちのカメラの揺れで酔いそうだったけど、
2回目は3台の固定カメラを切り替えながらの配信で、とてもグレードアップしていた。

お話はとてもよかったです。1回目と2回目、違うお話です。

youtu.be

 

youtu.be

 

 ・石井さんへのインタビュー 記事

www.yomiuri.co.jp

 

・映画『あん』

an-movie.com

 

 

--追記--

news.yahoo.co.jp

サントリー美術館『日本美術の裏の裏』鑑賞記録

サントリー美術館で『日本美術の裏の裏』を観てきた。
 
公式ホームページ

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実は行ったことがなかったサントリー美術館
今までも興味深いテーマなのに会期を逃していたり、他の展覧会を優先していたために縁遠かったミュージアム
 
今回はぜったい行こう!と決めていたのは、展覧会のテーマが良かったから。
それと、なんとなく今年の後半は「ずっと行ってみたかった場所に行く」の流れがきている気がするので、「今しかない!」と思い、月曜日の朝一番に出かけた。
 
そう、ここは月曜日に開いている貴重なミュージアムなのだ。
 
 
青い日記帳さんの美術ブログでも、「この展覧会は展示に工夫が凝らされている」とのレポートがあったので、楽しみにしていた。

「日本美術の裏の裏」 | 青い日記帳

 
 
サントリー美術館のサイトをチェックしていたら、展覧会づくりの裏側を見せてくれる動画があった。

 

3人の学芸員さんがさらに解説をつけてくれているバージョンも楽しい。

youtu.be

 

 

 
行ってみてみての感触。こんな展覧会だった。

・「高尚で、知識がなければ理解し難いもの」と思われがちな日本美術を見方、楽しみ方を教えてくれる。これがバリエーションもさまざまに、とても親しみやすく、わかりやすい。

・骨董品としてではなく、作品が作られた当時の所有者や鑑賞者と、今の鑑賞者(あなた!)との出会いを演出してくれている。そのような展示の工夫が随所にある。

 

よく美術館に足を運ぶし、見巧者(みごうしゃ)であると豪語する方から、
美術館もあまり行かないし、日本美術もよくわからないので敬遠しがちという方まで、誰でも楽しめる展覧会です。

 

会場デザインにも、その世界に入る工夫と遊び心。

森を抜けていった先に滝があるところからはじまる。

(全作品が撮影可です)

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次の部屋は和室。襖を開けると向こうに屏風、という具合。

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楽園に行きたい!と思ったら屏風に描いて飾っちゃえばいい!季節が違うものがいっぺんに入ってても、いいの、いいの。

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じわじわくせになるこの描きぶり。誰が見ても「美しい」ではないものも楽しい。


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昔の人も小さいものがめちゃくちゃ好きだった。カワイイ!

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などなど、


こんなふうに観てみたらどう?

昔の人はこんなふうに楽しんでいたみたいよ?

気持ちわかるよねー?

あなたならどこが好き?どんなふうに楽しむ?

......という感じで、 展覧会から語りかけてくれるような、フレンドリーな空間。

そうそう、わたしも今までそんなふうに観てました!など、一人で観ているんだけど、展覧会と会話しているような気持ちになる。

 

知ってたら知ってたで楽しいけれど、いろいろ考えなくても、出てくる感想がけっこうシンプルで、

めっちゃきれい!

すっごい描き込み!

ちっちゃくてかわいい!

めっちゃユルい絵!

......という感じに自然となるので、ほんとみんなが楽しめる展覧会だと思います。

 

 

 

もともとこちらの美術館は、キッズのための鑑賞の手引きのような企画もよくやっていた印象がある。本物の価値や場の価値は落とさず、それでいてわかりやすく楽しく橋をかけるのがとてもお上手な美術館。

 

今回もキッズ向けの鑑賞カードがあったのでいただいてみました。


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すごく大事なことが書いてありましたよ。

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もともとは家の中でかざられたり、使われたりしていたもの。

注目するところがわかれば、想像力もふくらんで、どんどん鑑賞がおもしろくなってくるはず

そうそう!

 

美術館や博物館では、「昔の使われ方」や「見方」や「注目ポイント」については、もうわかっているという前提での解説しかないので、「知識がないから(涙)」と置いていかれた気持ちになってしまうことがある。

でも中には、こんなふうに鑑賞の楽しみ方を教えてくれる展覧会もあるので、こういう機会に試すのがおすすめです。

その後、別の展覧会を見たときに、この見方を使ってみたら、今までとは違う体験になるはず。

 

最初は「注目ポイント」を教えてもらって観るところから、だんだんと「自分だけの注目ポイント」なども出てくる。人と言って「ああでもない、こうでもない」と話しながら観ると、もっともっと観ることが楽しくなる。

 


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わたしの今回の発見メモ。

・ 動画で設営風景(メイキング)を観ていたので、実物を観られてかなりうれしい。この裏にはあんな作業やこんな作業があったのね、と想像すると楽しい。

・展覧会の英題を見て、原題と比較するのが好き。今回は「日本美術の裏の裏」が"Japanese Art: Deep and Deeper" に。なるほど、裏ってそういう意味だったのか!

・着物に入れていた文字模様(いわほとなりて)は、Tシャツにテキストを入れてメッセージを発信するのと同じ!昔からやってたんだ!きものkimono展でも「若紫」と入った小袖を見たっけ。

 書道博物館に行ったばかりなので、ここでも書に注目。流れるような草書体は何が書いてあるか相変わらずわからないけれど、一つだけ自信を持って判別したのは、百人一首の和歌「嘆けとて」「村雨の」の二首が一幅の掛け軸に収まっているもの。競技かるたやっててよかった。

・焼き物の見方。「景色を探す」は去年ミホ・ミュージアム備前焼の展覧会に行ったときに、はじめて愉しみ方を知った。今回はおさらいという感じ。自分の好きな正面を見つける感じについて思い出したことが2つ。
①子どもの頃から置物を飾るのが好きで、ときどき角度を変えたり、好きな角度があったり、その角度がキマると、部屋の雰囲気が変わることを体験としてすでに知っている。②最近買ったスカート。3枚の柄違いの布をはいであるので、正面にする柄によって、コーディネート全体のイメージが変わるのがおもしろいな、と思って買った。

難しく考えずに、「ああ、あれと一緒か」と自分の中で心当たりができると、とても身近なものになる。

・桜と楓を一緒に描いたものを雲錦模様と呼ぶと知った。永遠に巡る季節の象徴。またどこかで出てきそうなので、覚えておこう。

 

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図録を精読すればさらに鑑賞の軸がつかめそう。

展覧会に行っていなくても、読み物として楽しいし、会場で観て好きになった展示品があるならさらに楽しい。

前期・後期のどちらかしか展示されない品を観られるのも図録のよいところ。

サイズもA5でコンパクト。おすすめ。

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サントリー美術館の基本理念は、「生活の中の美」の"愉しみ方"。

よい展覧会でした。今後も楽しみにしています。また来ます!

 

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国立映画アーカイブ『公開70周年記念 映画「羅生門」』展 鑑賞記録

国立映画アーカイブに『羅生門』展を観に行ってきた。

https://www.nfaj.go.jp/exhibition/rashomon2020/

 

ついつい馴染みの「フィルムセンター」という名称で検索してしまうけれど、

東京国立近代美術館フィルムセンターは2018年4月1日に東京国立近代美術館より独立し、新しい組織「国立映画アーカイブ」となりました。(公式HPより)

ということでしたよね、そうそう。国立映画アーカイブ

 

一昨年くらいから、友だちが黒澤映画を見返していると聞き、その影響を受けて、今年2月に『七人の侍』の4Kデジタルリマスター版を映画館に観に行くなどした。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

長さを全く感じさせない!おもしろい!と、ただただ夢中で観た。

10代の頃に観ていたのとは、(当然ながら)全く違う景色が見えてきたことに驚いて、やっぱり作品に再会するってよいなと、また思った。

 

だから『羅生門』についても、当時の製作現場を知ることで、また違う見方ができるのではないかと期待した。原作である芥川龍之介の『薮の中』は、ずいぶん前に読書会でも扱ったことがあるので、馴染みのある作品。

 

行く前にもう一回観てみたら、いやはや、デジタル完全版は美しい〜!
きっとここのシーンにも、ここのカットにも、いろんな背景があるんだろうなぁと思ったら、展示が俄然楽しみになった。

 

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展示されているのは、『藪の中』が誰のどのような企画によって、映画『羅生門』の決定稿に至ったかの流れ、手書きを印刷した脚本に手書きのメモ、スナップやスティール写真、早坂文雄の手書きの楽譜、撮影風景(レフ板ではなく鏡)、香盤表。

崩れかかった羅生門のセットのつくり(1ヶ月で2,000人が作業、瓦4,000枚)や、雨のシーンの撮影(消防署のポンプ車3台が出て大量に放水したので、近所が断水して苦情きた)などの伝説も。

そうやって撮っていたのか〜〜!

 

会場構成に沿って歩んでいくと、たくさんの才能が関わって、たくさんの試行錯誤の中から生み出された映画だったということがわかる。

 

どんどん試す、その場でどんどん修正、改良されていった勢いを感じる。

 

もちろん『羅生門』が特別なわけではないけれど、世界から脚光を浴び、今も愛される作品であり、黒澤が日本で最も偉大な映画監督の一人にまでなったのは、やはり『羅生門』だったからなのだろうと思う。

今よりも現場は過酷だったろうと思うし、手放しで全部素晴らしいと言えないことも多々あったと思うけれども。作品としてはやはり素晴らしいし、制作過程においても、自分たちにはなかなか気づきにくい価値を、自分たちの手で見出していこうとする姿勢には、時代や分野も超えて共感できる。

 

 

 場内で紹介されている動画が、Youtubeにもあった。大賀しょうこ氏制作。

「誰もかれも自分のことばかりの世の中。人は信じられない」「人は捨てたもんじゃない」のラストは、まさに今の社会の状況ではないか、とドキッとする。

 

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会場で配布されている資料。英、中、韓語であり。

こういうとき、英語の資料のほうが要点だけ書いてあるので重宝している。


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今回初めて知ったのは、1951年のヴェネツィア映画祭に『羅生門』を出品するにあたっては、あるイタリア人の立役者がいたということ。 

ジュリアナ・ストラミジョリ(Giuliana Stramigioli)さんという日本文化研究者で、『自転車泥棒』などのネオリアリスモのイタリア映画を日本に紹介した人でもある。

往復書簡からは、最初は一緒に動いていた朝日新聞が降りたり、映画祭側からは『酔いどれ天使』と『野良犬』を出品してはどうかと言われたのを『羅生門』を推し続けた様子が見てとれる。

ちょうど今、 イタリア映画祭朝日新聞社も共催でひらかれているところなので、このことと何かつながりがあるのか、ないのか、勝手に想像してしまった。

 

ヴェネツィア映画祭での上映、金獅子賞受賞後のNYタイムズでの絶賛ぶり、ブロードウェイでの公演資料、各地での公開時のポスター(特に1952年西ドイツのHans Hillmannの墨のにじみとグラデーションを表現したものがかっこいい)、プレスシートなどの資料も数多く展示されている。

 

ロバート・アルトマンのインタビュー映像でも、「蜘蛛の巣城と並んで素晴らしい作品」「それまで観たことがなかった映画」「知覚や記憶に影響を与える、これは芸術だ」「太陽にカメラを向けたのは黒澤が初めて。自分もそのあと何度もやってみた」とベタ褒め。

また、「演技スタイルは西洋の俳優と違うが、日本人には違って見えるだろう。わたしたちには気づけないものがある。それが文化」「西洋で受けたのは、会話が少ないから。視覚に重きを置いている。観る者の視覚に訴える作品」との分析にも、なるほど。

 

観る時間がない方にも、2箇所で映像が流れているので、それだけでも十分に楽しめる。観たあとにぜひ本編を観るとさらに楽しい。

 

展覧会は2020年12月6日まで。 行けない方はぜひ図録で。

 

 

常設展のほうも見応えたっぷり。

限られた空間の中で、日本に映画が伝来した1897年から撮影所時代ぐらいまでの映画史を通覧できるようになっている。

幻燈の時代からの古い映写機や撮影機、映像展示もある。

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映画発明の親、リュミエール兄弟の会社であるリュミエール社が、技師を派遣して、「世界の珍しい風俗習慣を撮影していた」というのは知らなかった。日本にも1897から1899年にかけて技師がきていて、そのときの記録映像が流れている。

 

「関東大震大火実況」という映像では、1923年の関東大震災の報道に映画が取り入れられ、それが文部省の教育資料として配布されるきっかけになったそう。

炎がめらめらと燃え、黒煙が空を覆いながら流れる、小さなポンプ車での消火活動、焼け出され家財をリヤカーに積んで歩く市民、崩れた浅草の凌雲閣、背中の子をあやす女性.......。写真でしか観たことがなかった当時の様子が、映像で観るとまた全然違う。

 

1939年に制定された「映画法」は国策に沿って映画を有効に利用するという意図があり、検閲も行われた。美術や音楽など、芸術が戦争に利用された時代。当然映画も力を奮った。その痕。


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その他の写真はインスタグラムでご覧ください。

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本も図書館でアーカイブしなければ失われていくように、映画も記録、保存しなければ失われる。国の機関としてあり続けることの大切さをあらためて思った。

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映画『ホモ・サピエンスの涙』鑑賞記録

公開を楽しみにしていた『ホモ・サピエンスの涙』観てきた。

スウェーデンの映画監督、ロイ・アンダーソンの作品。

www.bitters.co.jp

 

第76回(2019年)ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞(最優秀監督賞)受賞作品。

www.cinematoday.jp

 

 

不思議で美しい映画。

写真集や画集を一枚一枚めくっているみたい。


グレーのフィルターがかかったような、ペールトーンな画面。

曇天の日に観るのにぴったりだった。

 

76分と短いので、隙間時間に観れちゃう。


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淡々と一定の距離にカメラを置いて、ただ人びとを見つめるだけ。

 

暗転はゆっくりとした瞬きのよう。
目を瞑り、開けるとまた違う場所、違う人たちがいる。
ナレーションのような、モノローグのような声。

これは天使の視点?

 

人類の誰かに起こるある瞬間。
その中にはわたしもいる。
何かに問題を抱えている人、救いを求めている人、迷う人、絶望する人、感情を無くした人、33の物語。

物哀しい瞬間と、ときどきの希望のようなものと。
まるで2020年の世界的な感染症流行を予見していたかのようにも思える。

雪の降る日のバーの物語がとても印象深い。季節柄、時節柄。

同監督の『散歩する惑星』『さよなら人類』がアマゾンプライムにあったので、近々観る。

 

ヒューマントラストシネマ、良いラインナップですね。『ウルフウォーカー』は、まだ感想書けてないけど、めちゃくちゃよかったです。ぜひ観てほしい。

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映画『はりぼて』鑑賞記録

シネマ・チュプキ・タバタで、映画『はりぼて』を観てきました。

公式ホームページ

haribote.ayapro.ne.jp

 

 "有権者に占める自民党員の割合が10年連続日本一"である保守王国、富山県の小さなテレビ局が地方政治の不正に挑み、市議14人がドミノ辞職。報道によって人間の狡猾さと滑稽さを浮き彫りにする様子を描いたドキュメンタリー。
(チュプキさんのチラシより)


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笑いながらも、なんとも言えずいやぁな気持ちと、興奮に浸りながら、帰宅しました。

 

観る前は、唖然として苦笑して怒って、となるのは想定していて。さらに何かを思いそう。いずれにしても、きっと今一番見たいものを見るんだろうなァ……と思っていました。

 

見終わっての感想-------

 

これはチュプキさんで観てよかった。
なぜなら字幕のおかげで『はりぼて』の茶番さが増幅されるから。

「飲むことが好きなもんですから」「行間を読んでいただいて」「また議員にでもなって(引き笑い)」とかね。

いやしかし、どんどんどんどん出てくる滑稽、醜悪、滑稽。
なんだこれは。なんなんだこれは。

 

とにかく大量のおっさんが出てくる。ひたすら顔が映り続ける画面は、ツァイ・ミンリャンの『あなたの顔』を思い出す。まぁでも今回はこの記事に書いたようなすてきな体験ではなかったが。

女性があまり見当たらない。ただ画面に写っていないのか、ほんとうに議会に少ないのか。

 

とにかくもう、

何言うてんねん。
何をやっとんねん。
何のためにそこにおんねん。

としか出てこない。

 

こんな稚拙でアホみたいな手口が横行する。

追及しても恥もない態度。

品もない、誇りもない。話も通じない。見ていて悔しくなる。

 

議員を「先生」って呼ぶのやめたほうがいいんじゃないかね。。

 

などと思う一方で、これほんとに現実?本人?というくらい芝居じみていて、驚く。

誰も彼もが役者に見えてくる。

あーそうか、はりぼてってタイトルだったか。議会だけでなく、行政も、市民も、メディアもはりぼて。役所の前でシュプレヒコールをあげる人たちまでが、滑稽に見えてしまう。

 

放っておくと人間の集団って堕落してしまうんだな。

 監視、牽制、批判、言論の大切さよ。

 

悪というのは見るからに悪というものと、一見して悪の顔をしていないがゆえに質(たち)が悪いものと、2種類ありそう。
前者が『アリ地獄天国』で、後者が『はりぼて』か?

 

「あーこういう奴おるおる」って思いながら観るわけだけど、それが自分とこの区政市政県政、そして国政に思い当たるというのが、なんともやりきれない。
そこらじゅうにある構図をただじっくり見てるだけ。観させられているだけ。
市民の声も、メディアの質問も、結局みんなでイネーブリングしてるなら、そら変わらんわと、ぢっと手を見る。

 

ドキュメンタリーのおそろしさも感じた。

写ってる人は何気なく撮られているのに、ずっと残り続けて、知らない人に観られ続けていくというのも。「公人やし悪いことしてたんやししゃーない」のか、どうなのか。TV用だからここまでの素材が揃ってる。

制作側にもその葛藤はあったようですね。編集されpublishされると、力を持ってしまう。その自覚を観る側としても持っていないとな、と思う。

 

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先に観た友人たちとチャットスレッドで感想を交わし、一晩寝て落ち着きました。

富山出身者の話も聞けて、ありがたい。

 

新聞記者なぜ君は総理大臣になれないのか→ はりぼて、という流れがわたしの中にはあって、背景では現実世界が動いていて……。

いやはや、すごい時代を生きていますね。
ようやくここまで来たとも言えるし、ヤバさが極まってるな、とも言えるし。

 

生きているうちに、少しでもよりよい社会にしていきたい、と思う。
諦めないぞーーー!

 

関係ないけど、先日、書道博物館に行ったところなので、題字の書が気になった。

いつもよりじっくり見た。見え方が違うのがおもしろい。

 

 

▼映画公式ツイッター

映画『はりぼて』公式 (@haribotemovie) | Twitter

▼五百旗頭さんのツイッター

五百旗頭幸男 (@yukioiokibe) | Twitter


▼12月にオンライン配信があるようです。スペシャトーク付き。

up.auone.jp

 

大田区立龍子記念館『青龍社から東方美術協会へ』鑑賞記録

大田区大森にある川端龍子の記念館へ。

https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/tabid/218/Default.aspx

 

 
3年前に東京国立近代美術館で龍子の「草炎」を見て以来、気になっていた館でした。

今遡ったら、こんなことも呟いていました。

龍子記念館の近くの大田文化の森という施設で、かるたの練習会に参加したときだな、たぶん。大田区の郷土歴史館もおもしろそう......。

 

そうやって3年前から行きたい行きたいと思いながら、なかなかきっかけがつかめずにいたところ、関係者の方のツイッター発信のおかげで、やっと今回タイミングが訪れました。最近ほんとこんなんばっかでうれしい!

 

 

来てみたら、ここ、ほんとうによいです!

想像以上によい!!


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記念館の建物が想像以上の規模で、大きい。龍のフォルムに設計されているんですって。うねうねとした龍の体内の両壁に作品が展示されている格好。
これは龍子本人の設計とのこと。

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屋根の上に載っているのはリュウ(龍)ゼツラン。旧邸のほうにも龍のモチーフがそここに。わたしは辰年生まれなので、勝手に親近感が湧きました。

 

記念館入ってすぐのところにかかっているのは、横幅7mもある巨大な『虎の間』。
こんなスケールの絵が何枚も入るのだから、とてもゆったりとした空間です。

 

近美の『草炎』のイメージが強かったけれど、いろんなモチーフ、人物も動物も風景も静物もどれも魅力的。生き生きとして、躍動感にあふれていて、遊び心があって、カッコよくて......すごく好き!!

 

正直なところ、今回のテーマ「青龍社から東方美術協会へ」だけ見ていたらあまり来ようと思わなかったのですが(すみません……知らない固有名詞だとつい......)、ギャラリートークがちょうど再開されたと知り、「それなら行ってみたい!」となりました。

師から弟子への技術と精神の継承の物語でした。川端龍子が立ち上げて、たくさんのお弟子さんを抱えていた青龍社。龍子の希望で亡くなったときに閉じられ、お弟子さんの中から新たに立ち上げたのが東方美術協会。

脈々と受け継がれているものがよくわかる展示でした。また戦中、戦後における創作活動がどのようなものだったのかにも、思いを馳せられる丁寧な解説。

隣に旧邸やアトリエがあることで、より想像し易くなります。

 

今回のわたしの一番のお気に入りは、「小鍛冶」。

お能の小鍛冶のハイライトシーン。ミニマルなお能の舞台ではほんとうに小さな動きなのが、想像力を目一杯につかうと、ほんとうにこんなふうに見えるよね!とお能仲間に出会えたような、龍子を身近に感じられたような気がしました。

「小鍛冶」を初めて観たときの感じ▼を思い出しながら、観ました。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

龍子公園(旧邸宅)のお庭は、四季折々楽しめるみたいだけれど、今が一番美しく快適に見学できるのでは。夏は蚊がすごいから。冬、2月頃も梅が咲いておすすめとのこと。

季節を変えてまた訪れたいです。

www.instagram.com


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そういえば横山大観記念館も、大観本人が建物も庭も設計し、植栽も決めたとのこと。庭はあまり手を入れず自然に生えるままにというところも、似ています。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

大森駅からのバスも何本もあってアクセスしやすいので、時間のゆったりとれるときに、ふらりと行くのも良し。

龍子公園のほうは、開館日には1日3回入れる時間帯があり、ガイドもしてくださいます。

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今気づきましたが、紹介動画もUPされていました。至れり尽くせり^^ 当日もガイドしてくださった、学芸員の木村さんの解説です。

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充実の記念館所属品の図録もよかったです。カッコいい表紙!

気になる作品を図録で見つけておいて、展覧会のときに会いに行くのを楽しみにできるのも、個人美術館ならでは。

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ここ数年で日本画がぐんぐん好きになっています。

よい機会に恵まれています。ありがたい。

〈レポート〉11/21 ゆるっと話そう『アリ地獄天国』 @シネマ・チュプキ・タバタ

11/21(土)夜、シネマ・チュプキ・タバタさんのコラボの感想シェアの場、〈ゆるっと話そう〉をシアターにてひらきました。

 

第17回ゆるっと話そう: 『アリ地獄天国』

ある会社員が理不尽な労働環境と待遇の改善を求めて、会社に立ち向かった3年間を記録したドキュメンタリー映画です。

www.ari2591059.com

 

 

こんなご案内を出しました


がんばって働いて、自分と家族を幸せにして、会社に貢献したい。
そんな思いを打ち砕き、踏みにじる会社の誠意のかけらもない仕打ち。
さらに明かされていく、驚くべき差別と搾取の実態。
ブラック企業の構造を明かしながら、尊厳をかけて闘う人たちを映し、映すことを覚悟した現代日本のロードームービー(労働映画)です。

主人公の西村有(あり)さんや、彼を支援する人たちは、このヤバい環境からなぜ逃げないのか、なぜ辞めないのか。なぜ闘うのか。怖くはないのか。
理不尽に見舞われたときに、人は何を思い、どのような状態になり、どう動くのか。
ここから思い出すこと、感じ考えることは人の数だけあるでしょう。
痛みも望みも、どちらも大切に分かち合えたらと思います。

当日は、監督の土屋トカチさんも参加者として一緒に感想を話してくださいます。
また、久しぶりのシアターでの開催でもあります。
ご参加をお待ちしております。

11月21日シアターで開催!『アリ地獄天国』を観てゆるっと話そう

 

当日は満席での開催!

この争議を報道で見て知っていた方、監督の前作から関心を持っていた方、親しい人からすすめられて観た方、別の日に観て再度足を運んでくださった方、チュプキの常連さんなど、様々な経緯でご参加くださいました。

上映終了後すぐでもあり、土屋監督にもご参加いただき、熱気と興奮を帯びながらスタートしました。

 

みなさんが安心して話せるよう、「固有名詞や、個人的な話も出てくるので、それを詳細にオンライン、オフライン問わず、口にするのはお控えいただきたい」とお願いし、1人2〜3分ぐらいの感想を一周話していただきました。

 

 

さまざまな感想が出ました

※一部をご紹介します。

・自分も誰かが抗議活動で声をあげているシーンに出くわしたら、「怖い」と思うこともある。一方で「それほどまでに訴えたいことがあるのだ」とも思う。

・西村さんの争議と監督の思いと、2つの物語が進行しているのが興味深かった。

・観るまでは正直他人事だった。観たら他人事ではなくなった。理不尽なことも訴訟をすれば通ることがあると知れて、認識を改めた。

・こんなことがあったんだと事実を知ることができてよかった。氷山の一角だと思うが、これが映画になって社会に影響を与えて、世の中が変わっていくのはよいことだ。

・辛さを無自覚にして、すぐには言葉にできないほどまでに、自分を抑圧していたところに胸が痛くなった。

・3年もの間、想像を絶するストレスだったと思う。

・監督が絶妙なタイミングで出てくるところが、つくりとして興味深かった。

・日本の雇用慣行の影響は大きいと思った。離職することが不利になるなど。ぜひ次回大きな視点から撮ってもらいたい。

・自分が過酷な労働環境で体調を崩して離職したことや、友人のことなどを思い出した。

・ずっと会社員をやってきて、会社から言われたことに従う、そういうもんだと思って慣れてしまっているところがある。

・シュレッダー係なんて、あれだけの規模の会社なら専属で置いたりはしない、ということは嫌がらせのためだけの処置だったのだと、驚く。

・わたしならさっさと辞めるだろう。でも彼には太さ、他の人とのつながりがあった。

・ムカつく、やり返す!からはじまった行動だったが、次第に西村さんの言葉に筋が通っていく、力が入っていく感じがした。監督の関わりが大きかったのでは。

・深刻だけど明るい。西村さんの人柄のせいか。

・おもしろいと言っていいのかわからなかったが、扱っているテーマのわりに明るくてよかった。

・ユニオンの代表は、なぜあれだけの強さを持つに至ったのか、彼女が気になる。

・労組にかかわっているが、自分は組合員を不幸にはしたくない。ただ、外から「会社を潰す」という体で来られると内部からは反発が起きやすい。よくする気持ちを持ちたい。

・マインドコントロールされているように見えて怖くなった。

・途中まで劇映画的に見えていて、日本に蔓延している危うさのようなものを感じた。

・最後の監督の言葉を多くの人に聴いてもらいたいと思った。特に経営者に。

 

 

たっぷり1時間。それぞれの経験や今いる場所から、シェアしてくださいました。

土屋監督から補足やコメントもあり、感想だけでもない、質疑応答だけでもない場で、映画をじっくりと味わう時間となりました。

 

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場をふりかえって

わたしが受け取ったのは、内なる変化、発見、学び、感銘、葛藤、違和感、疑問、悼み、勇気、無念さ、怒り、理解、怖れ、対峙、邂逅、諦め、驚き、省察、決意、自信、共感、喜び、願い、希望......などでした。

働くこと、仕事のことで苦しむ人や悲しむ人がいない社会にしたい、とあらためて思います。諦めずにいたい。

 

また、久しぶりの対面の場は、エネルギーの行き交いや、言葉の聴こえ方が全く違いました。

〈ゆるっと話そう〉は、4月から10月の半年間はオンラインで開催してきました。
オンラインは、遠くの方や、外出が難しい方にもご参加いただけて、それはそれでとてもよい場でした。でも、やはり実際に会うことには他に変えられないものがありますね。集えてほんとうによかったです。

一人ひとり異なる存在ながら、同じ作品からの思いや気づき。
今この時だけの感想を語ったり聴いたり。
共有することで、ゆるやかなつながりも感じられる。

人間にはこういう時間が必要なのです。

 

ご参加くださった方、ご関心をお寄せくださった方、ありがとうございました。

映画を観て、胸中にじっと抱いて帰るのもよいけれど、こうして誰かと感想を交わしてみるのもよかったな、と思っていただけたらうれしいです。

また、この映画のこと、チュプキさんのこと、シェアの場のことを周りの方にご紹介くださると、さらにうれしいです。

 

そして、土屋トカチ監督、一緒に場をひらいてくださるシネマ・チュプキ・タバタさん、ありがとうございました!

 


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▼参考資料

・土屋トカチ監督 インタビュー

www.bengo4.com

 

・土屋トカチ監督 舞台挨拶@ユーロスペース 2020.10.24

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・レイバーネットTV第91号「やられたらやりかえせ!When hit, hit back!

『アリ地獄天国』の主人公、西村さんが懲戒解雇された当時に出演していた番組アーカイブ。土屋監督が企画の一人として参加していた。

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・書籍『会社員のための「使える」労働法』

労働法についてザッと知りたい人も、今困っている人にもすぐに役に立つ本。相談先リストもあり。著者は、労働相談や外国人労働者の支援活動に取り組むNPO法人POSSEの代表。

 

・書籍『ブラック企業を許さない!』

映画にも登場するプレカリアートユニオン・清水直子さんの著書。ブラック企業や違法行為に気づくための知識や知恵、労働組合で戦うときの流れやポイントがよくわかる。相談先リストあり。

 

・書籍『10代からのワークルール』全4巻

10代向けに書かれたワークルールの本。「働く」や「仕事」についてこれだけは知っておきたいことが満載。大人ももちろん役に立つ。国会パブリックビューイング代表の上西充子さんの監修。全編カラー、全4巻。どれも大切なテーマ。

 

 

・書籍『過労死しない働き方』

岩波ジュニア新書。過労死の具体的な事例を示しながら、発生する原因を考え、なくすための方策を説明している。「知識は身を助ける」。たちまち困ってはいないが、少し考える時間があるときに読むとよい本。

 

 

・書籍『「もえつき」の処方箋』

刊行はかなり前(2001年)ですが、今でも良い本。自分をすり減らしてまでがんばってしまいやすい職種やそういう傾向のある人に、自分を大切にする方法を伝えている。医療・福祉・教育などの対人援助職やボランティア活動をしている方に特におすすめ。

 

ゲートキーパー(自殺の危険のある人に適切な対応をすることができる人)についての記事

精神障がいやこころの不調、発達障がいをかかえた親とその子どもを絵本やウェブサイトなどで応援し、普及啓発の活動をすすめる、ぷるすあるはさんに掲載の記事。
これからシリーズで掲載される模様。

kidsinfost.net

 

 

 

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鑑賞対話イベントをひらいて、作品、施設、コミュニティのファンや仲間をふやしませんか?ファシリテーターのお仕事依頼,場づくり相談を承っております。

日本民藝館『アイヌの美しき手仕事』展 鑑賞記録

 日本民藝館で『アイヌの美しき手仕事』展を観てきた。

https://mingeikan.or.jp/events/


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考古学でも民族学でも民俗学でもない、民藝としてのアイヌ工芸。

日本民藝館では、1941年以来のまとまったアイヌ工芸展だそうです。ちょっと意外な感じがしました。なんとなくしょっちゅうやっていそうだし、1941年は太平洋戦争の開戦時期、というようなこともあって。

 

日本民藝館主催のオンラインレクチャーに参加して、鑑賞ポイントを教えてもらってからの、本日の鑑賞。
さすが、受け取るものが多い!

 

日本民藝館は特別の空間で、展示ケースにも展示方法、配置にも民藝館ならではの伝統がある、と。ほんとそう。空間自体が鑑賞の対象なので、他の美術館や博物館で鑑賞するのとは全く異なる体験。博覧だけではなく、美的、芸術的にどうかという観点がある。そのあたりも、あらためて味わいながら観てみた。

 

また、多くの場合、水平の衣紋掛けに背面が見えるように展示されているが、着たときの立体感はどうかも見てください、ともおっしゃっていた。

肩口から袖の文様の表れ方を想像。

前からも見られるものは回り込んで見てみたり。

 

展示室には学芸員さんがいらしたので、きのうのレクチャーのお礼をお伝えできて、新たに生まれた質問もできて、よかった。

質問したのは、「どんなふうに着ていたのか?本州の着物のように、帯はあったのか?」

帯はなく、紐でくくったり、女性は上から前掛けをして留めたりしたそう。あるいは前あきでコートのように着るか。

地域の違いはあっても、衣服上に性別の差はなかった。身近な人のためにつくった服ではある。

……と聞いて、どんな体格の、どんな人のために作ったのか想像しながら見てみると、これは腕が細いから女性かなとか、肩幅広くて勇壮な文様に見えるからガタイのいい男性かなとな、など見えてきて、おもしろかった。

 

図録は売り切れ。
雑誌『民藝』の特集号は売店にあった最後の一冊をたまたま買えた。


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他の展示も、どれも美しく。
ただただ、眼福。

やはりここに来ると背筋が伸びます。


大津絵の「塔」をそのまんま立体化したような、木製の三重塔が気に入りました。
あとは燈火器ばかりが集めてある部屋も。
燭台ってこんなに美しかったのか!

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www.instagram.com

 

今も生まれつづけているアイヌ工芸については、八重洲のアイヌ文化交流センターで観られるそう。

その他、東京国立博物館国立歴史民俗博物館国立民族学博物館静岡市立芹沢銈介美術館早稲田大学會津八一記念博物館、そして今年開館したウポポイなど、アイヌに関する収集、展示している施設は多い。

 

点在するものをいろいろ訪ねて行って、鑑賞者それぞれの学びを立体的につくっていくことをしてほしい。

すべての視点を網羅する展示はない。とりわけ今回の日本民藝館での展示は、解説という点では最小限で、ある意味"不親切"とも言える。しかしその分、鑑賞者自身の持つさまざまな知見や視点を発揮したアプローチが重要になる。より高度な鑑賞姿勢とも言える。

このことは、オンラインレクチャーで話しておられたことでもあり、わたしの共感からの言葉でも、記しておく。

 

▼参考資料として以下が紹介されていた。次のステップのために、読んでみたい。

 

光の美しい日で、玄関ホールの大谷石の上に、ガラスを通ってきたたくさんのプリズムが光っていました。

 

 

東京国立博物館『きものKIMONO』展 鑑賞記録

2020年7月14日。

東京国立博物館で開催の『きものKIMONO』展を観てきた。

kimonoten2020.exhibit.jp

 

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当初4月〜6月の開催予定だったのが、感染症流行の影響で延期され、なんとか6月〜8月に開催となった展覧会。中止にならずにほんとうによかった。

この一つ前の百済観音と法隆寺壁画展は中止になって、残念だったので。

 

もともと行くつもりではあったけれど、展覧会の紹介記事を書いてらっしゃる青い日記帳のTakさんがベタ褒めだったので、ますます期待高まる!

特別展「きもの KIMONO」 | 青い日記帳

わたしにしては珍しく、先に図録を買って、パラパラ見ながら、開催を楽しみにしていた。

 

午後まるまるこの展覧会のために空けておいてよかった!というぐらい、充実の展覧会だった。どんなに駆け足で見る人でも、これは2時間はかかったんじゃないか。物量がすごいし、一点一点の作りが細かく、見がいがあるので自然と時間かかる。

一周目で驚き、二周目で再確認、三周目で新たな発見。という具合で、休み休み、3時間ぐらい観ていた気がする。

織りやデザインや刺繍、保守、継承。ここにあるものが人間の手作業の集積だと思うと、ひたすら圧倒された。

 

来館者は着物ファッションの方が多く、そちらもチラチラ見ているとほんとうに時間が……!

 

 

一点一点、誰が、どのような目的で誂えたか、どこに趣向を凝らしているか、時代背景などを解説も手がかりにして、自分独自の問いを立てながら観ていく。

オーディオガイドも借りると、展示の流れをつかみやすくなるし、俯瞰しつつ、目の前の一点に集中して鑑賞もできる、その助けをしてくれると、あらためて発見。

自分独自の問いとは、

・それがを着ているときの空間や場の支配のされ方がある。誰がどんな場でどんな力を示すために着たか。

・衣服とは何かの感覚が、今の時代と比べてどう同じか、どう違うか。階級社会における衣服、衣裳とは。

・去年から注目してきたトライバルやフォークロアの視点から観てみると、「わたしたちの民族衣装」はどのように見えるか。

 


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この展覧会で学んだこととして、大きく2つ。

1.  当たり前のように存在するものだった着物に、民族の歴史や文化を見ることができた。着物といえば、着付け、TPO、着こなし、(ざっくりした)日本文化らしさ、、などの文脈でしかふれたことがなかった。歴史として通覧する、自分たちの民族文化(トライバル、フォークロア)を客観的に見るよい機会だった。身近すぎるがゆえに、

 

2. 当たり前のように着物、着物と呼んでいるものは、「小袖」であり、室町時代の後期までは貴族階級の下着に相当するものだった、ということ。これだけ抑えることで、今後見聞きすること、ものの見方が変わってくる、ぐらいの感覚があった。

平安時代の貴族の衣服から、鎌倉、室町、安土桃山、江戸時代の着物、明治、大正、昭和の戦前、現代の着物、、と変化があるのはわかっているが、自分の知識は静止画で、「その間」はスキップしているような感じがあった。そこが今回の展示で段階的に流れるように、ストーリー性をもって埋めてもらえた。「小袖」へのフォーカスもその一つ。1.にも関連するが、「着物には変遷があり、それはこのような変遷である」と知れたことは、とても大きい。

 

その他の感想あれこれ。

・知っておいてよかったのは、吉祥文様の意味。2、3抑えておくだけでも、見え方が違う。

昨年、文化学園服飾博物館で購入した文様図鑑が鑑賞の役に立った。縁起や魔除けの文様は、入れるのは世界中で見られる風習。写真で見ていたものを実物でしかも大量に確認できた喜びがあった。ほんと良い本です!

 

・絵画と並べる展示スタイルもおもしろかった。美人画や浮世絵は、現代で言うファッション雑誌のようなものだった、という話が、この流れで示されることで、より体感的に理解できた。また、実物の着物を見てからすぐ、絵や屏風を眺めると、生き生きとしてくる、動きがある。これは新しい体験!

 

・着物をキャンバスに見立て、さまざまな表現を追求していてきた先人たちの姿が見えてきた。着る側も、好きな意匠、好きな絵画を纏える喜びが爆発している。物語を着ているようなものも。着物ってすごい。しかもこれ、掛けてあるときと着たときでまた印象が変わるでしょうね。片っ端から着てみたくなる。

 

・この展示にいくだいぶ前、着物に詳しい友人が、「民族それぞれの老いに合う装いがある。着物もやはり、日本の人の老いに合う装いではないか」と言っていたことが、忘れがたい。

 

・江戸時代に町人に贅沢禁止令が出て、金箔や金糸を使えなくなったときに、見た目は地味そうだけれど、すごく手間がかかる染めの製法を編み出したという、その執念が好き。豪奢から簡素へ、全体から裾へ、余白の詩情へ。どれも「わかる」感じがある。その延長上にある現代の自分の感性も、同時に眺めつつ。

 

・火消しの半纏や、遊郭の花魁のものなどは、だんだんヒーロー感やヤンキー感が出てくる。どう見えるかや、演じたいものは何か。

 


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展覧会自体もよかったけれど、図録も本として最高に美しい。
着物の写真集とはまた違う、やはり図録ならではの、構成と流れと配置がある。

これは一生モノだと思います。心に滋養と潤いだけでなく、今後「きもの」について参照する機会があったときに、何度でも役に立ちそう。

今からでも買って後悔なし。トーハクの売店で販売中ですよ〜

→通販サイトで見たら売り切れてました。売店にはあるかもしれないけど、未確認。ごめんなさい!

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民族のアイデンティティを表すものとしての着物。

言語(文字、言葉、会話)、食、音楽などと並んで、衣服、やはり大きいのだな。

 

受け取ったものがなかなかに大きくて、記録の手が全く動かず。秋が深まる頃にようやく書けた。

 

 

▼ロビーに展示されていた複製品。衣紋掛けで平面であるときと、着て立体になっているときと、印象が変わる。それが衣装、衣裳。


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▼この夏気に入っていたコーディネイトのひとつ


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▼夏らしく、とても湿気を含んで見える。今年は雨の日が多かった。


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映画『ぶあいそうな手紙』鑑賞記録

2020年7月の終わり。 映画『ぶあいそうな手紙』を観た。

▼公式ウェブサイト

moviola.jp

 

▼トレイラー

youtu.be

 

スペイン語関係の仕事をしている友だちがシェアしていて知った。

映画と、こちらの公開記念のオンラインイベント。

peatix.com

 

もちろん参加しました!

配給会社ムヴィオラ代表の武井さんと、字幕翻訳を担当された比嘉さんのパワフルなトークを、 わくわくしながら聞いていた。

映画も、高まる期待。

 

 

 

観てみて。

期待以上に、ほんとうに素晴らしい作品だった。

一緒に観に行った友だちと感想をもりもり話したら、満足してしまって、なかなかブログに書けずにいた。

手元にあるのはこのメモだけ。
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これから観る人のために、詳しく書くのは控えつつ、いくつか記録。

・丁寧に手を入れて、長い時間をかけて居心地よくしてきた住まいも、選りすぐって集めた自分の好きな物も、人生の終わりには持っていかないんだなぁ、ということ。

・予測がつかなくてハラハラするところもあるんだけど、芯はすごく「大丈夫」なビアと、偏屈で老いらくの恋に落ちちゃったの?!に見えて、ただ彼女の影響を受けて自分が変わってもいいと思えるオープンさを持っているエルネストのコンビがいい。

・エルネストと隣人のハビエルの関係。同じ言葉で同じルーツを分かち合える相手。長年東京に暮らすわたしが、関西ルーツの人と関西言葉で話せるときに感じているものに近いのかな。

・エルネストの息子、ラミロの複雑な心情描写の見事さ。出てくる人、出てくる人それぞれに共感できる描き方は独特。

・重要な役割を担った音楽。歌。詩。ポエトリーリーディングも忘れられないシーン。

 

この監督の次回作、とても楽しみです。

 

▼監督のインタビュー記事。

www.nippon.com

 

 

そうそう、イベントでも話題にあがっていた「言葉が入り乱れる感じ」も心地よかった。

近いから似てる、似てるけど違う、違うけど通じる。

もっと言葉がわかったら、ポルトガルポルトガル語とブラジルのポルトガル語の微妙な違いとか、ポルトガル語スペイン語の表現の違いもわかったりするんだろうな。(どちらも大学のときに第二、第三外国語で履修したけど、ものにするほどがんばれなかった)

 

家に帰ってから、

ブラジルのポルトアレグレってどこにあるんだろう?
サンパウロからポルトアレグレポルトアレグレからウルグアイモンテビデオってどのぐらいの距離なんだろう?

とふと思い、グーグルマップで調べたら、すっごく近かった。

「近かったよ〜」と友だちにお知らせしたら、「わたしも今地図帳見てたの!」とお返事が来て、考えること一緒だったねと笑った。

 

そして、このときの鑑賞が、先日観た映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』につながる。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

ウルグアイにまつわる映画を今年は二本も観た。

一生行くことはないかもしれない遠くの国、遠くの文化を見せてくれる映画に、いつも感謝。

映画を届けてくれる映画人たちに感謝。

 

 


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▼イベントで紹介されていたブラジル映画のおすすめ。

『父を探して』はすごくよいアニメーション映画とのこと。いつか観る機会がありますように。

newdeer.net

 

ウルグアイ、ムヒカが大統領の頃に出された大麻合法化についての映画『ハッパGoGo〜大統領極秘司令』。ムヒカも友情出演しているとのこと。

観ようと思っていたのに、ぼんやりしていたら逃してしまった。。

www.8855movie.com

イタリア映画祭『幸運の女神』鑑賞記録

イタリア映画祭の作品を観にイタリア文化会館へ。

 

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こちらにうかがうのは、去年のプリーモ・レーヴィの詩集刊行記念講演会以来。
▼そのときのシェア。

note.com



20回目となる今年の映画祭は、感染症拡大のため、GWから延期され、さらにリアル上映&オンライン配信のハイブリッドで対応されている。
中止にならず、ほんとうにありがたい。

リアル上映は抽選。いくつか応募したところ、『幸運の女神(La dea fortuna)』が当たった。一番観たかったのでうれしい。

youtu.be



謎めいたオープニングから、次第に明かされていく主要人物とそれぞれの関係性。映画が進むにつれて、かれらも自身も知らない秘密が次々と明らかになる……。

誰にでも秘密はあるし、忘れたい過去がある。
弱さと強さと、優しさと意地悪の両方を持っている。

そんな二人の人間の、とても現実的なパートナーシップの物語であり、セクシュアリティや人種、経済格差、前世代の因習との闘いでもある。

内包しているのはとても今日的なテーマ。

「なんでここに笑いを入れるのか!」という、斜め上からのユーモアも楽しいし、「そうだ、これがイタリアだよね!」とうれしくもある。

この先はどうなるかわからない。幸なのか不幸なのか。
不穏そうにも見えるし、明るいようにも見える。

「捉え方次第だよ」とアルトゥーロ。

この人たちはきっと大丈夫。
お守りもおまじないも、勇気もたくさんもっているから。


▼この日の様子

www.instagram.com

 

上映前の監督のビデオメッセージに、ほろりとした。

"spero che(〜を願う)...しか言ってないけど、ほんとうにそれしか言えないよ。ほんとうに日本に行って皆さんに会いたかったな!"

コロナでたくさん傷を負ったイタリアに、労りと祈りを。



イタリア映画祭のオンライン配信は2020/11/20〜12/20
ぜひチェックしてくださーい!この映画もラインナップされてます。

www.asahi.com

 

書道博物館 『中村不折の世界』展 鑑賞記録

書道博物館へ。

ずっと来てみたかったけれど、なかなかきっかけがつかめなかった館のひとつ。
うれしい。

 

台東区立書道博物館|中村不折コレクション 書の専門博物館

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今回の展示は、中村不折
この人のことはよく知らない。
でも、洋画家でもあった人。わたしは絵ならたくさん見てきているから、すんなり入れるのではないか?と思い訪ねました。

そして、着いてから、ここは中村不折自身の旧邸跡であり、彼が尽力して建てた博物館であることを知りました。


洋画家であり書家であり、本や新聞の挿絵、装丁もやるマルチな才能。

1901〜1905年にパリへ留学。アカデミー・ジュリアンでデッサンと油彩をガッツリ学んで、絵も描きながら、40歳を過ぎて書家デビュー。

森鷗外に、墓石の字は中村不折に、と託されたり、正岡子規と真向かいに引っ越したり、当世の名だたる文化人との親交も厚い。

先日の森鴎外記念館の展示鑑賞で、森鴎外を一人の人としてとらえた実感があったので、鷗外からの書簡なども味わい深く観た。(「森 林太郎」という署名とか!)

体験によって知ったこと同士がつながっていくこの瞬間が楽しい。

hitotobi.hatenadiary.jp

 

 

***

中村不折さんの書ですが、とにかくすごい!すごいんです!
2階までぶち抜きの縦に長い展示ケースがあって、そこに書が飾られているのですが、これがなんといってもすごい。おもしろいの。

新宿中村屋」の屋号の書の人といえば、「ああ!」となる方もいるのでは。

あんな感じのユニークな書です。

 

こちらの博物館、一点一点の見どころ解説も丁寧です。「書って難しい?」と思いがちだけど、解説を読みながら見ていくと、「このように鑑賞すればいいのか!」と、だんだんとおもしろさがわかってくる感じです。ありがたい。

井伊直弼の書も展示されていて、つい数日前に豪徳寺に行ってお墓にお参りしたばかりだったので、ご縁を感じました。

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パリのアカデミー・ジュリアンに留学中に絵の先生からもらった油彩習作や、ロダンの家に遊びに行ったときにもらったデッサンもいいです。
油彩画を壁掛けでなくて、展示ケースで上からみるのも新鮮。

1901-1905年のアカデミー・ジュリアン!もしかしてナビ派の人たちと同窓かな?と思ったら、かれらは少し前の1880年代でした。

***


本館はこれまた物量が凄まじく、「漢字が書いてある古いものはなんでも収集!」というぐらいの勢い。石碑、仏像(仏像があっても見るのは字)、青銅器、銅剣、甲骨(象形文字が書いてあって占いに使ったあれです)、瓦、ブロック、判子、などなど。

書道博物館だけど、紙に書かれた「書」の展示は少ない、というところが意外なポイント。

とにかく字、字、字を見よ!となるので、博物館を出てからもしばらくお店の看板や、道路標識や、コンビニ商品のパッケージなとがやたらと目に飛び込んできました。

おもしろい現象です。


また、わたしたちが今、日常で普通に使っている漢字と同じものが、紀元前の遺物の中にある。そして、それは四大文明の一つ、中国文明。他の3つの文明の文字はもう使われていないのに、漢字だけは今も尚読める字なところ。

そう考えると、すごーい!

 

あ、あと気づいたこと。

本館の石碑と仏像が展示されている部屋に、「中国では石と金属は不滅の象徴だった」という解説があり、これで今までの謎が一気に氷解した感じがありました。

不滅......この絶対感よ!

「不老不死」なんかもそうだし、兵馬俑万里の長城の規模を見ていても、とにかく「圧倒的に」「凌駕する」「有無を言わせない」感じ。

これは日本にはあまりない精神性のように思いました。不老不死も願いとしてはあったけど、「そうだったらいいのにな〜(でもそうじゃないから儚くて切ない)」みたいな方向に行くのが日本かも?もちろんこれは勝手な想像ですが、自分なりに納得しました。

 

***

 

 

会場に展示されていた読売新聞の記事にあった、

「文学、美術とは異なる芸術とみなされがちだが、詩書画一体が文人の境地だ」

の一文も、鑑賞の助けになりました。

そういうことだったのか、と納得して、館をあとにしました。

 

公式さんのキャラもじわじわきます。

twitter.com



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▼真向かいにある正岡子規の旧邸。子規庵。
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▼ねこさんたち。そういえば本館の入り口に「ネコが入るので開けっぱなしにしないで」というようなことが書いてあった。
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書道博物館の半券で、台東区内にある他4館のミュージアムの入場料が割引になります。どこも大変おすすめなので、ぜひ活用されたし。

半券割引サービスのご案内 | 台東区立書道博物館